鳥越俊太郎 ニュースの匠

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ニュースの匠:またぞろ「政治とカネ」=鳥越俊太郎

 民主党の代表選挙が始まりましたが、またぞろ「政治とカネ」という言葉がそちらこちらで飛び交う、と思うとうんざりしますね。なぜかって? それはその言葉を使っている当人が「政治とカネ」の事実関係について正しい知識もなく、ある種のレッテル張りに使っているケースが多くて不愉快だからです。

 そんなある日のこと。テレビ朝日「スーパーモーニング」でちょっと面白いシーンを目撃しました。金曜日でしたので私は出演していない日です。民主党の国会議員2人が出席していて、そのうち1人、生方幸夫議員が「政治とカネ」の話を持ち出し、小沢一郎氏の批判を始めました。私はあーあ、またか、と思いながめていると、この日のアンカー役、山口一臣・週刊朝日編集長が生方議員に向かって問いかけました。「『政治とカネ』とあなたは言うが、被疑事実は何なのか知ってるんですか?」

 生方議員はムニャムニャ分からないことをしゃべっていると、山口編集長はズバリと喝破しました。それはまさに“喝破”の名に値する寸言でした。

「生方さん、あの事件は虚構ですよ」

 スタジオは一瞬静まり返り、話題はすぐ変わりましたが、“虚構”という言葉がコダマのように私の頭の中で響きました。私もそう思うからです。捜査のプロ・東京地検特捜部が必死になって捜査して出した結論が「不起訴」。検察審査会は“市民目線”と新聞では持ち上げられてはいますが、しょせん素人の集団。もし強制起訴になれば小沢氏も堂々と受けて立てばいいだけの話なのです。

 それにしても小沢氏が代表選出馬を表明した翌朝の新聞各紙の社説見出しはひどかったですねえ。「政治とカネ」の言葉に惑わされているんですね。「小沢氏出馬へ あいた口がふさがらない」(朝日新聞)……だって。あいた口がふさがらないのはこっちだよ。新聞は小沢氏が嫌いらしい。

毎日新聞 2010年9月6日 東京朝刊

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