2010年7月19日 21時55分
民主党は衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」を政策ごとの連携で乗り切るため、野党側に積極的に協力を呼びかけていく構えだ。自民党が大敗した98年参院選後の金融国会で野党案を丸のみした経緯や、07年参院選後のねじれ国会でも与野党の協議で成立した法案があることなどが念頭にある。しかし、主導権が野党に渡り、政権の求心力が急速に落ちた自公政権の例を繰り返さない保証はない。【須藤孝】
民主党の細野豪志幹事長代理は18日のフジテレビの番組で「臨時国会でできるだけ議論ができる場を設定したい。互いに歩み寄る努力をしたい」と述べて、30日に召集予定の臨時国会で予算委員会の開催に応じる意向を表明した。今後も野党の協力なしでは国会運営が成り立たないことを踏まえ、政権側から野党に呼びかける場を設定したい考えだ。
最近、政府・民主党内では「熟議」という言葉がよく使われる。「熟議の民主主義によって、新しい合意形成をはかるのが国会の場」(13日、仙谷由人官房長官)▽「熟議の民主主義的手法で考えた時に、どのような手法、手段も否定しない」(15日、蓮舫行政刷新担当相)--。法案修正も含め、野党と実質的な議論に政権側も前向きに臨むという意味だ。
07年参院選後から昨年の衆院選まで続いた前回の「ねじれ国会」のもと、07年11月に成立した改正被災者生活再建支援法では与野党が別々に法案を提出後に修正協議し、全会一致で可決された。民主党幹部は「金融のような危機対応や弱者救済では野党も責任ある対応をとる」と指摘する。今回の「ねじれ国会」は衆院で再可決に必要な3分の2以上の議席がなく、野党側の反対の影響が大きい分、野党にかかる責任も重いと見ている。金融国会を経験している枝野幸男幹事長は周囲に「これまでのやり方を9割変える」と漏らしている。
だが、子ども手当や農家への戸別所得補償など民主党の主要政策は昨年衆院選、参院選での争点になり、野党側も厳しい対応をとらざるをえない。子ども手当は来年の通常国会で法案が通らなければ、来年度からの支給ができない。政権には子育て支援を重視する公明党に期待する声もあるが、その場合でも相当の譲歩が必要になる。
そもそも、民主党が日銀総裁人事などで徹底的に反対して自公政権の首相を次々退陣に追い込んだのはつい最近のことだ。野党側の徹底抗戦で菅直人政権が追い込まれないとも限らない。