2010年7月19日 21時51分
参院選で自民党は51議席を獲得し、民主党の44議席をしのいで01年以来の「改選第1党」を確保した。民主大敗ショックが続いているが、実は自民党内にも勝利の高揚感はない。選挙区、比例代表とも得票総数で民主党の後塵(こうじん)を拝し、比例は過去最低の12議席にとどまったためだ。改選数1の1人区を重視する戦術で勝ちをもぎとったものの、政権奪還に向けた長期戦略は手探り状態が続いている。
「民主党のオウンゴール3発で、シュートを一本も打てなかった自民党は負けずに済んだ」。11日の投開票翌日、河野太郎幹事長代理は自身のメールマガジンにさっそく辛口の総括を書き込んだ。石破茂政調会長も12日の日本テレビの番組で「敵失で議席を取るのは本物ではない」と指摘した。
こうした党内の空気や「おごっていると批判されかねない」という周辺の助言を受け、谷垣禎一総裁は15日になって、同僚議員と8月7、8両日に予定していた富士登山を取りやめた。別の党幹部は「羽目を外すのはいけないが、山に登ってなぜ悪い。総裁にもプライベートがある」と、行き過ぎた「自己規制」に首をかしげるが、自民党全体が神経質になっているのは間違いない。
こうした懸念をデータが裏付ける。
選挙区の獲得議席は自民39対民主28。差が開いたのは、菅直人首相の「消費税10%」発言などの影響で、1人区で自民党が21勝8敗と大きく勝ち越したためだ。だが、全選挙区の得票総数では民主2275万票、自民1949万票と逆転する。
しかも、改選数2以上の選挙区に原則2人の候補者を擁立する民主党の作戦は必ずしも失敗ではなかった。18ある複数区で民主党候補が共倒れした選挙区はゼロ。複数区での自民、民主両党候補の合計得票を比較すると、自民党が上回ったのは、福岡選挙区だけで、自民の1勝17敗だった。獲得議席は自民18対民主20とほぼ互角だったが、票を掘り起こしたのは民主党の方で、次期衆院選にもつながるといえる。
比例代表はいっそう深刻だ。民主党は1845万票で16議席、自民党は1407万票で12議席。みんなの党など新党の参戦でともに07年参院選より減らしたが、自民党は過去最低だった98年と07年の14議席を下回った。自民党から派生した新党改革とたちあがれ日本の1議席ずつを加えても14議席で、低迷を脱していない。中堅議員の一人は「比例代表は党のイメージの反映だ」と不安を漏らす。
こうした中、自民党は衆院選に向け、党公認候補となる支部長が決まっていない104小選挙区で公募を積極的に導入する。参院選では栃木、鳥取、香川など18選挙区に公募や予備選による候補者を立てて13勝5敗の好成績を収め、党選対幹部は「世襲や密室選考という批判を抑え、党員が一丸となって支えることができる」と自信を深める。ただ、公募が失敗し現職議員の離党につながった徳島県連のようなケースもあったため、党本部主導で統一の公募ルールを作る方針だ。【中田卓二、木下訓明】