前頁へ



「あらら……ミラったら……」
「くすくす……どうしたのかしら?ボーッとしちゃって」

ミラの目に映ったピグマリオンとディアナ。その二人は人間の格好をしていなかった。
ピグマリオンは体の各部分を覆うように歪な形をした二枚貝がプロテクターのように付着し、体との隙間から粘液に塗れた軟体質の体がうねうねと顔を出している。
逆に爪先や指、肩や肘などの関節部には先端の鋭い巻き貝が無数に伸び刺々しい印象を与えてきている。
特に右手の手首の先は槍のような鋭い巻き貝にすっぽり覆われ、まるでピグマリオンのもう一つの体、機人ガラティアの武器のドリルが付いたようになっていた。
頭の猫耳のようなヘッドギアがあったところには代わりに軟体質の触覚が生え、先端には金色の目玉がついていて忙しなく動きながらミラを睨んでいる。
ニタニタと薄笑いを浮かべる顔は毒々しい紫色に染まり、同じく紫色をした長い舌がだらしなく口からこぼれていた。
その姿は人間と複数の貝が融合したようなグロテスクなもので、見ているだけで不快感をもよおしてくるものだ。

一方ディアナは全身に不規則に夥しい数のフジツボのような物体が付着し、所々から紫煙を噴き上げている。
肩の後ろからは巨大な蟹のハサミのようなものが一対生え、ガチンガチンと忙しなく開け閉めしており、腋からは四本づつ計八本の蟹の脚部が伸び、ガラス状のレンズのような先端があちこちを睨んでいるように見える。
ところどころから見える肌は鮮やかな水色で、体中に意匠された蟹やフジツボと妙にマッチしている。
ピグマリオンが貝と人間が融合した姿なら、ディアナは甲殻類と人間が融合した姿で、ピグマリオンよりはマシなもののそれでも十分に見るものを不快にさせる外見をしていた。

「え……、な、なにそれ……。君達、だれ……?」
自分の視線の先にいる二人の姿が信じられないミラに、ピグマリオンとディアナは顔をあわせてクスクスと笑いあっていた。
「姉さん…、ミラったら私たちがよく見えていないらしいわよ」
「ちょっと、私たちがよく見えるようにミラをこっちに向けなさいな」
ピグマリオンの命令を素直に聞いた皇魔がミラをぐるりと振り向かせ二人のほうへと近づいていった。
ミラの目には、嫌でも皇魔になった二人の姿が入ってくる。
「ほら、これでよく見えるでしょう?もう分からないなんて言わせないわよ」
ディアナが肩のハサミでちょんちょんと自分を指差している。
「ほら、言いなさいよ。私の名前は?」
「…い、いや……」
ずいと迫って来るディアナに、ミラは脅えたように顔を青くしていやいやと首を横に振った。
「ほんの数ヶ月あっていないだけってのに、随分と薄情ねぇミラ」
ピグマリオンが体中の貝の隙間から触角を伸ばして迫り、触覚の先についた金色の目玉がじろりとミラを睨んでくる。
「いやぁぁ……」

「「ほら、言いなさいよ。私の名前は?」」

ディアナのハサミが、ピグマリオンの触覚がぞわりとミラの両の頬を撫でた。
その瞬間、ミラの恐怖心の『たが』が外れた。

「ひぃやあぁぁ〜〜〜〜〜っ!!
うそだ、うそだ、うそだぁぁぁぁl!!!!
お前なんかピグマリオン様じゃない!ディアナ様じゃないぃぃ!!
あっち行け、あっち行けぇぇ!本物のピグマリオン様とディアナ様を出せェェ〜〜〜〜ッ!!」
もうミラの二人を見る眼は憧れの先輩に対するものではなく、おぞましい化け物を見るものに変わっていた。
頑なにあくまでもピグマリオンとディアナが皇魔になったことを否定し続けるミラに、二人は嬲りがいのある獲物を見る獣の目を向けていた。
「ねえ姉さん、ミラッたら私たちのこと偽者だって言っているわよぉ」
「これは許せないわね……。少しお仕置が必要だわ」
二人はミラの後ろにいるマステリオンに顔を向けると恭しく頭を下げて

「「皇帝陛下、
こやつの精気を啜る前に私たちに下準備をさせていただけないでしょうか」」

と言い放ち、マステリオンは無言で光の触手をミラの足元から遠ざけた。
それをマステリオンの許可と受け取った二人は、舌なめずりをしながらミラへと近づいてきた。
「どきなさい」
ピグマリオンはミラを掴む皇魔をミラから無理矢理引き離し、全身から伸ばした触角で代わりにミラの四肢を固定した。
「ひぃやぁぁぁ!!」
体中を滑るぬるっとした触覚の粘液とこりこりした目玉の感触に、思わずミラは情けない悲鳴を上げてしまった。
「や、やめろ!くすぐった……あひゃあぁ!!
体を振って逃れようとするミラの全身を、ピグマリオンの触覚がぐにぐにと刺激し、目玉はぐりぐりとミラの皮膚に擦りつけられてくる。
そのくすぐったさとおぞましさに、ミラは背筋をぞわぞわと震わせた。
「うふふ、可愛い声で泣いて抵抗しちゃって……。まるで、あの時のディアナみたい」
ミラを触覚で弄びながら、ピグマリオンはくすくすと笑ってディアナを見た。
その視線に気づいたディアナは頬を染めながらぷいとそっぽを向いてしまった。
「余計なこと言わないでよ!あれは、あれは姉さんが……」
「そうそう、泣いて嫌がるディアナを触覚で縛り上げて酸でアンダーウェアを溶かし、乳首や耳に目玉突っ込んでこりこりと弄くったら、ディアナったらあっという間に蕩けちゃって私の触覚美味しそうに口に含んで、いやらしい音を立ててしゃぶって…」
「姉さん!!」
これ以上続けたらダメ!とディアナはピグマリオンの口を抑えようとしたが、ひょいとそれをかわしたピグマリオンはさらに饒舌に続けた。
「皇帝陛下の触手を欲しい、欲しい!って子供のように大声でおねだりして、前も後ろもお口まで触手を突っ込まれたらあまりの気持ちよさに失神までしちゃって……」
「………」
とうとう姉を黙らせることを諦めたディアナは引きつった笑顔を浮かべるしかなかった。
「皇帝陛下の光の触手を見た時は、涎を垂らしてちょうだい、ちょうだい!と喚き散らして、前も後ろもお口も触手に挿してもらってよがり狂うほど悦んで、そのまま皇魔獣に生まれ変わったわ。私のようにね……」
「えっ……?!」
ギョッとしたミラがマステリオンの背中から無数に生える光の触手を見た。さきほど、自分も突っ込まれそうになったおぞましい触手を。
「あ、あれが……、ピグマリオン様とディアナ様を……?!」
「そうよ。皇帝陛下の光の触手を受け入れて、私は下らない人間から素晴らしい存在に昇華したわ。
今の私は北斗七星第五星団長・巨重星ピグマリオンじゃない。
魔粘獣ピグマリオン。これが今の私の名前よ」
「そして私は妖殻獣ディアナ。一度皇魔の快感を知ったら、もう人間なんかやっていられなくなるわよ……」
ミラの前のディアナも八本の蟹脚を広げてじりじりとミラに迫って来る。上から下へじーっと動く視線は、ミラの品定めをしているかのようだ。
「だからミラも、どんなに抵抗しても無駄だと知りなさい……。この気持ちよさに逆らえる人間はいないのだから…」
「!!」
ミラを睨んでくるピグマリオンの目には、好色さの中に凍りつきそうなほどの冷徹さがあった。
そこには以前の同僚、後輩に対する愛情や配慮は欠片も見えない。
(こ、このままじゃボクも皇魔にされちゃう!)
これまで人間の世界を守るために懸命の努力を重ねてきたのに、このままだとその守ってきた人たちを狩る側へと堕ちてしまう。
ミラの脳裏に皇魔の襲撃を防いだ時に感謝を述べた人々の顔。世界を守るためと皇魔に立ち向かい、散っていった部下の顔が次々に浮かんでくる。
このままピグマリオンたちやマステリオンに犯されたら、ただ処女を失うだけじゃない。
もっとおぞましい未来がミラを待っているのだ。
「い……いやだぁぁっ!!」
そんな未来を断固阻止するため、ミラは全身のありとあらゆるところへ力を込めた。
すると、それまで故障していたと思っていたオウムガイ型のヘルメットの触腕がグニッと動き、ピグマリオンの顔を強かに打った。
「ギャッ!!」
思わぬ不意打ちにピグマリオンはついミラを縛る力が疎かになり、その隙を突いてミラは右肘をピグマリオンの鳩尾に叩き込んだ。
「えいっ!」
「ぐはぁ!!」
かなりのダメージを受けているとはいえそこは精鋭部隊『北斗七星』の軍団長を担う一角。渾身を力を込めた肘打ちにピグマリオンは吹き飛ばされ、派手にぶっ倒れた。

「今!」

逃げ出すのは今しかない。
ミラはまるで猫のように素早く動き、呆気に取られるディアナの側面を抜けていった。
「ま、待ちなさい!」
ディアナが慌てて手を伸ばすも、もうそこにミラはいない。
ミラはメットの触腕を伸ばして広間の上の窓のサッシに絡みつかせた。皇魔が跋扈する広間をまともに抜けようとしても叶わないから、あまり皇魔のいない上方面を狙ったわけだ。
「これで、ここから出られれば!」
そうすれば今の皇魔族の脅威、とりわけ皇魔が人間を攫って皇魔へと生まれ変わらせ、対人間の尖兵としていることを知らせることが出来る。
まだ世界には大きな人間の抵抗拠点が幾つか残っているから、そこまで行くことが出来れば……
「よしっ!」
触腕がガッチリ食い込んだのを確認して、ミラは大きく足を蹴って飛び上がろうとした。
そのとき

プスリ

「え……」
なにか首の後ろにチクッとした痛みが走った。
すると、見る間にミラの全身から力が抜けて、全く踏ん張ることも出来ずにその場にへなへなと崩れ落ちてしまった。
もちろん、飛び上がることなど出来るはずも無く、ミラの脱力が伝わったのか触腕も力なくくたくたと外れ、ミラのもとに戻ってきてしまった。
「な、なにこれ……体が、うごかな……」
「やってくれるじゃないの、ミラ……」
訳がわからず混乱するミラの後ろから、ピグマリオンの怒りに満ちた声が聞こえる。
「でも詰めが甘かったわね。そう簡単に貴方をここから逃がすわけには行かないわ……
ねえミラ、イモガイって知っているかしら?」
「イ、イモガイ……?」
その名前は昔図鑑で見たことがある。
猛毒を持つ貝で、獲物を捕らえるとき体内で自家製の毒を含んだ銛を作って、吻と呼ばれる口から発射して獲物をしとめるというものだ。
「あれと同じでね、私も銛を出すことが出来るのよ。こんなふうにね」
ニッと笑ったピグマリオンの口からは長さが50cmにも届くかというくらいの舌が飛び出て、先端には孔が開き本当のイモガイの吻のような形になっている。
その吻からは銛に塗った毒液だろうか、紫色の液体がポタポタと滴っていた。
「安心しなさい。今あなたに撃ったのは猛毒ではなく強力な筋弛緩剤よ。皇帝陛下に捧げるあなたを殺すわけにはいかないからね」
とはいえ、全く動けないミラにとってこれは死刑宣告と同じものだった。
人間のミラを殺されるという意味で。
「どう?指一本動かせないでしょ。全身の筋肉がだらんと伸びて、締まることも出来はしないのよ」
「はっ……あひっ……」
筋力が低下しているからだろうか、ミラは呼吸すらいまいち覚束なくなってきていた。どこかに力を込めるということすら出来ず、口を動かすことすら億劫になってきている。
碌な反応を返してこないミラに、毒がバッチリ聞いていることを確信したピグマリオンは吻の先からまた新たな銛を覗かせてきた。
さっきまでの毒々しい紫色の筋弛緩剤とは異なり、今度の銛は目にも鮮やかな蛍光ピンクに彩られている。
「そこに、もしこの幼女ですら発情させる超強力な媚毒を打ち込んだらどうなるかしら……」
「っ!!」
媚毒と言われミラはぎょっとなった。
身動きすらままならない状態で媚薬など打たれようものなら、体の疼きを抑えられないもどかしさで下手をすると発狂しかねない。
しかもピグマリオンは『超強力』な媚薬を自分に打つといっているのだ。
そんなことをされたら、自分を保っていられる自信など全くない。
「や、やめてぇ!ピグマリオン様!!それだけは、それだけはやめてくださぁい!!
そんなことされたら、ボク、ボクおかしくなっちゃうぅ!!」
力が入らずに擦れる声帯を振り絞ってミラはピグマリオンに懇願した。
しかし、ピグマリオンのほうはそんなミラに同情するどころか射殺すような冷たい視線を投げかけてきている。
「…あなたが悪いのよミラ。
逃げたりなんかしなかったら、あなたを気持ちよくさせて天にも昇る気持ちのまま皇帝陛下を受け入れさせてあげたのに…
自分の浅はかさを呪いなさい。もっとも、そんな感情が残ればの話だけれどね!!
「ひっ!いやぁぁぁ〜〜〜〜っ!!」
狙いをミラの柔らかい首筋にしっかりと定めていたピグマリオンの舌吻から、嘲りと共にピンク色に光り輝いた銛がプシュッと音を立てて打ち出され、泣き叫ぶミラの首に正確にぷすりと突き刺さった。
「ひぎっ!!」
先ほどと同じチクッとした痛みと共に銛に塗り込められた媚毒が血液に溶け込んであっという間にミラの体に拡散されていく。
媚毒はまるで氷水のように冷たく、ミラには毒がどのように回っているか感覚で理解することが出来た。
「やだ、やだぁ!やだやだやだやだ………やっ!」
そして、それが脳や脊髄、生殖器周りにまで行き渡った瞬間、まるでミラは体の中が爆発したようなショックを受けた。

「やっ……あっ………っ!
あきゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」

ミラの目の前は一瞬で真っ赤になり、子宮は痛いほどに熱く戦慄いてまるでお漏らししたみたいに愛液が滴り、乳首周りは小指の先ほども勃起して、脊髄が背中から飛び出てきそうなくらいズキズキと疼き始めた。
「こ、こんあのらめぇぇぇ!!あ、あつい!ボクの体があちゅいいぃぃいいい!!」
顔からは汗と涙と鼻水と涎が一気に噴き出し、ミラは体の内から沸きあがった爆発的な快楽に悶え狂った。
もし体の調子が万全なら、ミラは即座に人目もはばからずに両手を股間に突っ込み、狂ったようにオナニーを始めただろう。
実際、そうしなければ数分と持たずに脳が快楽に焼き尽くされ廃人になってしまいかねないほどの快楽だ。
しかし、今のミラは筋弛緩剤の効果で指一本動かせない。
動かせないということは快楽を静める術を持たないということだ。
媚毒の効果で体の疼きはどんどんと増していってきている。が、それを抑える方法が今のミラには無い。
「うぁぁぁ!!熱い!痒いぃ!ボクが、ボクの体が、体がぁぁぁ!!
な、なんとかして!!ボクの体、誰か、誰かなんとかしてぇぇ!!!」
為す術が無く床に転がりながら悶え狂うミラにピグマリオンとディアナがニヤニヤしながらこちらを眺めているのが見える。
ピグマリオンの全身から伸びる触角。
ディアナのフジツボ状の孔から伸びる触手。
さきほどまではおぞましい印象しか受けなかったそれらが、今のミラにはひどく魅力的なものに見えてきていた。
(あ、あれでボクの体をかき回して貰ったら……!)
きっと、魂が飛ぶくらい気持ちよくなることが出来るだろう。
こんなはしたない妄想、媚毒を打ち込まれる前だったら絶対にすることはなかった。
だが、今のミラは媚毒で頭を狂わされ、すべての思考がエロ寄りに傾いている。
「ピ、ピグマリオンさまぁぁ!ディアナさまぁぁ!!
お願いです!その、その触手でボクの体を弄ってくださぁい!メチャメチャにしてくださぁい!!」
あらゆる液体でグチャグチャになりながら、ミラは二人に懸命の懇願をしてきた。
だがピグマリオンもディアナも、当然の如くミラのほうに行こうとしない。
「ですって、姉さん」
「ふぅん……。さっき私に犯されたくなくて小突いて逃げようとしたのに、今は自分を犯してくれだなんて随分勝手な言い草よね」
際限なく高まり続ける快楽にもう息も絶え絶えのミラを、ピグマリオンもミラも意外なほど醒めた目で見ていた。
そこからはミラに手をつける気はまるで感じられない。
「い、いっ、いぃっ!!」
自分の目の前にこの肉の疼きを満足させてくれる手段があるのに、自分ではそれを扱えず持ち主は扱う気すらない。
手立てが全く無い状態で放置されるより、手段がある状態で焦らされるほうが確実に心は速く折れる。
切羽詰ったミラの瞳孔は限界まで開かれ、ガチガチと食いしばる歯からはあまりの力の込めように血が流れ出ている。
「お願いです!お願いです!このままじゃ、このままじゃボクおかしくなる!狂う!狂っちゃうよぉぉ!!!」
「いや別に……あなたに狂われても別に私たちには関係ないし……けど」
そう言いながらピグマリオンが手に添えてミラの前に出してきたのは、うねうねと蠢く光の触手だった。
「私たちじゃなくて、皇帝陛下があなたを天国に上らせてあげるって仰られているわよ……」
「うっ……!」
先ほどミラの膣内に潜り込もうとしていたマステリオンの光の触手。
あの時ミラは屈辱と恐怖から、触手に処女を奪われるくらいなら舌を噛んで死ぬと啖呵を切ったものだ。
だが、媚毒に犯されきった体にはあの太くて艶かしい触手は酷く魅力的なものに見えている。
「あぅ、あぁあ……」
ミラは伸ばせない手を必死に伸ばして光の触手を掴もうとした。が、もちろん筋弛緩剤が効いている体は手どころか指すらまともに動かすことは出来ない。
辛うじて動く目で物欲しそうに光の触手を見るミラに、ピグマリオンは触手を腕に絡ませながら言い放った。
「でもぉ…、皇帝陛下を受け入れるということは……、あなた人間じゃなくなっちゃうのよねぇ……。それでもいいのかしら?」
「!!」
そうだ。マステリオンの光の触手をこの体に挿すということは、目の前にいるピグマリオンやディアナのように力を吸い取られた挙句にマステリオンの部下である皇魔にされてしまうということだ。
つまり、この肉の疼きを抑えてくれる唯一の手段は、同時にミラが人間をやめてしまうということにも繋がるのだ。
(そんなこと、そんなことは…)
ミラの心に逡巡が走る。これまで人間のために戦ってきたという思いが、自分の欲望に負けて人間を敵にするということに深い罪悪感を与えてくる。
しかし
ミラの前に蠢く触手はそんな人間の尊厳すら一瞬で吹き飛ばすほどの魅力があった。
ピンク色に滑るそれを見るだけで子宮の奥がズキンと疼き、それを咥えることを思うだけで熱い蜜がごぼごぼと湧き出してくる。
自分に対する情けなさと周りに対する申し訳なさ、その思いが強まれば強まるほど、それらをメチャクチャにぶち壊した時に味わう開放感と爽快感もまた大きく高まるというものなのだ。
「さあ、どうするのかしら?私は強制したりはしないわ。もしあなたが皇帝陛下を望まないというならそれでもいいわ。
その時は…、私たちが皇帝陛下のお相手をなさればいいだけなのだから」
ピグマリオンが光の触手の先端を自らの口へと導き、青黒い舌でちろちろと舐め回す。
光の触手に絡まれているピグマリオンの体はそれと見て分かるほどに興奮しており、下半身からは潮の匂いにも似た蜜が糸を引いて滴っていた。
もしミラがこのまま何も意思表示をしなければ、ピグマリオンは嬉々として光の触手を自らの体に突っ込んでしまう事だろう。
そうなったら、ミラはそれを指を咥えて…いやそれすらできずにただ見ていることしか出来ない。
ただでさえ体の疼きが痛いほどに高まっているところにそんなものを見せられるのは、もはやただの拷問だ。
「あぅ……あぁあ………!」
ミラの目からはいつの間にか滝のような涙が溢れていた。
それは自分を律することが出来なかった悔しさなのか、守るべき人たちを裏切ることになった悲しさなのか。
いずれにしろ、ミラは引き返す道を自ら閉ざすことを決意していた。
それでも僅かに躊躇ったが、もう自らの心を抑えることは出来ない。
「い……いいです!!人間をやめてもいいです!人間の敵になってもいいです!!皇魔になっても構いません!
ボクの、ボクの体をメチャクチャにしてください!!その触手でズボズボ犯して、この体の熱さを抑えてくださいぃ!!」
ついに自ら人間をやめることを言い放ったミラは、全てを述べた後その場でワァワァと泣き出した。
そんなミラを、ピグマリオンもディアナもニヤニヤと眺めていた。
「遂に自ら堕ちることを宣言したわね」
「よく決意したわミラ。これであなたも私たちの仲間になれるのよ」
ピグマリオンとディアナは泣き崩れるミラの両側面に回ると其々がミラの太腿を抱えて持ち上げ、ミラをまるでおしっこをするかのようなポーズをとらせた。
ぱかりと開かれたミラの股間は、媚毒の影響で蜜がダラダラとこぼれ膣口は痛々しいほどに真っ赤に充血していた。
「こ、こんな格好……」
自らとらされた格好のあまりの卑猥さに、涙でぐしゃぐしゃになったミラの顔が真っ赤に染まる。
だが、そんなミラに迫ってきた光の触手を見てそんな思いも一気に吹き飛んだ。
「あぁあ……!」
自分の力を吸い取るために来た触手。自分に人間をやめさせる触手。
それはとても恐ろしいはずなのだが、今ではその触手がとても魅力的に見えて仕方がない。
「あれが、あれがボクのアソコにぃ……!」
ミラの鼓動は自然と高鳴り、発情した体はボッと燃え上がって淫らな熱をこんこんと沸きあがらせ、期待に輝く瞳は異様な光を放っていた。
「さあ記念すべき瞬間よ。
北斗七星・海迅星ミラがその力と心を皇帝陛下に捧げられるというね!!」
ピグマリオンの歓声が広間に響き渡った瞬間、ミラの股間を目指す光の触手の先端がビッと裂け、中から血管がびっしりと走ったグロテスクな眼球がにゅっと顔を出してきた。
眼球はまるで品定めをするようにミラの顔をじっと覗き込んでくる。
「ひっ!」
そのあまりのおぞましさにミラは引きつった悲鳴を漏らすが、次の瞬間眼球がミラの膣口にぷちゅりとキスをしてきた。

「っ!〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

そのあまりの心地よさにミラは声にならない嬌声を上げ、めりめりと肉を割って眼球と触手が潜り込んでくる快感にミラの意識はあっという間に闇に沈んでいった。
「いらっしゃいミラ。とっても気持ちよくて素敵な皇魔の世界に…」
消え行く意識の中、ミラの耳にテラスの優しげな、しかしどこか蔑んだ声が響き渡っていた…


次頁へ




戻る