京都大への3度目の合格体験を本にまとめた高鍬博さん=中京区
昨春、60歳で京都大文学部の入試に合格した元医師の男性が、受験勉強の方法や学生生活をつづった本を書き上げた。京大の理学部と医学部の卒業生でもあり、京大生になったのはこれで3度目。仕事や子育てから解放された「アラカン」(アラウンド還暦)の団塊世代に「隠居勉強」の魅力を伝えたいという。
男性は京都市山科区に住む高鍬(たかくわ)博さん(62)。今月中旬に「還暦 三度目の京都大学合格記――究極の脳トレは受験勉強――」(ナカニシヤ出版、1575円)を出版する。受験で使った参考書や勉強法に加え、学生生活の様子も紹介している。
高鍬さんは、ノーベル賞を受けた湯川秀樹博士にあこがれ、高校卒業後の1968年に京大理学部に入学した。だが、公害が社会問題になっていたころで、科学の限界も感じた。「後悔しない仕事がしたい」と思い直し、卒業した年に医学部を受験して再入学した。
30歳で卒業してからは、消化器内科の医師として働いてきた。2000年から今春までは、奈良県天理市の天理よろづ相談所病院で消化器内科部長を務めた。
アラカンでの大学受験を決意したのは在職中の07年夏。認知症を患う母を介護する時間を作るため早期退職することにし、空いた時間を生かして大学で勉強に取り組むことにした。
「趣味として学べる」と考え、3度目に選んだのは文学部。「医師を辞めるのはもったいない」と反対する友人もいたが、妻からは「好きなように、したいことをしたらええ」と励まされ、4人の子どもも応援してくれたという。
仕事が一段落した08年春、受験勉強を始めた。医療現場は多忙を極め、帰宅は午前0時を回ることもあった。週末は母の介護もあり、まとまった時間を確保しづらいのが悩みだった。電車通勤中の往復2時間が勉強時間になった。