誤用される医学用語
医師と一般の人の両方が、慣習的に間違った使い方をしている医学用語も多い。代表的な例が「避妊薬」だ。「○○薬」というのは、当てはまる症状や病気を治す薬という意味だ。「高血圧薬」は高血圧を治す薬であり、「うつ病薬」はうつ病を治療する薬だ。よく「ネズミの薬(殺鼠〈さっそ〉剤)」といわれるものもネズミを取るための薬であり、ネズミのための薬ではない。
従って、避妊薬をそのまま解釈すると、避妊を治療する薬となってしまう。つまり、まるで妊娠のための薬であるかのように解釈できる。これは、本来の意味とは反対の意味で使われていることになる。このような場合は、ある薬理作用をもたらすという意味の「薬剤」という用語を用いて「避妊剤」と呼ぶべきだ。頭痛薬は頭痛を治す薬で、鎮痛剤は痛みを落ち着かせる薬だ。下痢の際に使う薬は止瀉(ししゃ)薬であり、ネズミ薬は殺鼠剤だ。
糖尿と糖尿病を区別せず、混同して使ってることも間違った例だ。糖尿は、文字通り、尿から正常では含まれないはずの糖が検出される症状だ。これは糖尿病の幾つかの症状の一つであり、病名ではない。従って、「糖尿患者」は間違った用語で「糖尿病患者」と言わなくてはならない。
心筋梗塞(こうそく)と肝硬変も同様だ。「心筋梗塞症」「肝硬変症」のように語尾に「-症」を付けて病名として呼ぶのが正しい。反対に「結核」を「結核病」と呼ぶことがあるが、結核はそれ自体が病名であるため、あえて結核病と呼ぶ必要はない。普通「盲腸炎」と呼んでいる病名も不適切な言い方だ。正確には、盲腸に付いている虫垂の炎症であるため、虫垂炎と呼ぶべきだ。
合併症と後遺症も混同され、間違って使われる場合が多い。合併症は本来、病気が進行する中で、新たに病気が発生することを指す。例えば風邪が長引く中で、さらに肺炎にかかると、風邪の合併症となる。一方で、後遺症は、病気を治療しても完全に治らずに残る症状を指す。脳卒中を患った後に、手足がまひする症状は脳卒中の後遺症だ。糖尿病患者に網膜症が現れると、これは合併症であり、それによる視力障害は後遺症となる。
参考:『チ・ジェクン博士の医学用語の話』
金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者
- 暗号のような医学用語(上) 2010/09/05 09:59:37
- 暗号のような医学用語(下) 2010/09/05 09:59:48
- 「医学用語、認知度高いものは生かすべき」 2010/09/05 10:01:15