暗号のような医学用語(下)

■日本式の患者用語

 近代医学が日本を通じて韓国に入ってきたという歴史的経緯から、医学用語には日本式の漢字語彙(ごい)が多く、特に、人体の臓器を指す解剖学用語に多い。例えば、「膝(しつ)関節の人工関節置換手術」で、「膝関節」は「ひざの関節」、「置換手術」は「入れ替え手術」のような、より簡単な用語があるにもかかわらず、医療現場では難解な専門用語を用いている。

 腕(わん)関節は「手首の関節」、足(そく)関節は「足首の関節」、股関節は「またの関節」、肘(ちゅう)関節は「ひじの関節」、肩関節は「肩の関節」を使うことを医師協会は勧めている。手根骨(しゅこんこつ)は「手首の骨」で、肩甲骨は「肩の骨」だ。上腕は「上の腕」で、前腕は「前の腕」だ。

 頸椎(けいつい)は、「首の骨」、胸椎(きょうつい)は「背中の骨」、腰椎(ようつい)は「腰の骨」、尾椎は「尾骨」と言い換えると理解しやすい。回転筋は「回す筋肉」、外転筋は「広げる筋肉」、内転筋は「寄せる筋肉」に、腋窩(えきか)は、「脇」と言い換えることができる。腋窩多汗症は、脇の汗過多症と言う方が分かりやすい。

■易しい用語があるのに

 「上気道感染は、耳閉感と悪心を誘発することがあり…」病状説明の一例だ。これは「風邪を引くと耳が詰まったような感じがして、吐き気がすることがあり…」という意味だ。

 似たような事例は無数にある。膨疹(ぼうしん)や蕁麻疹(じんましん)は、「できもの、吹き出物」のように言う方がいい。眼球震盪(しんとう)は、「眼球の震え」、腫脹は「はれ、むくみ」、天疱瘡(てんぽうそう)は「水ぶくれ」と言い換える。心悸亢進は、「動悸」、喀痰(かくたん)は、痰だ。脈拍がゆっくりの場合「徐脈」と言うが、「ゆっくりした脈」の方が分かりやすい。頻脈は「速い脈」だ。刺傷は「刺し傷」、咬傷(こうしょう)は「かみ傷」、裂傷は「裂けた傷」と表現すればよい。

 医師らは、患者の状態を知るために聴診器で聞いて、手で触り、器具でたたいてみることを理学的検査と呼ぶが、診察と言えばよい。

 薬の形態や名称も、わざわざ難解なものを用いていることが多い。錠剤は「丸薬」、散剤は「粉薬」と言えばよい。内服薬は「飲み薬」、塗布剤は「塗り薬」だ。患者に提供する食事のうち、軟動食(流動食)は「軟らかい食べ物」、固形食は「硬い食べ物」と言えば聞き取りやすい。

金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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