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【スポーツ】

45歳・山本昌、最年長完封

2010年9月5日 朝刊

巨人戦に先発し、最年長完封記録を達成した山本昌投手=4日、名古屋市東区のナゴヤドームで(谷沢昇司撮影)

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 プロ野球中日の山本昌(本名山本昌広)投手は4日、ナゴヤドームで行われた巨人23回戦で6安打に抑えて完封勝ちし、45歳24日での史上最年長完封を達成、60年ぶりとなる快挙を成し遂げた。試合は3−0で中日が勝利した。

 これまでの記録は1950年に若林忠志投手(毎日)が近鉄戦で記録した42歳8カ月。完投勝利も2008年8月24日の巨人戦で自らがつくった43歳13日を更新する史上最年長記録となった。

 8月11日で45歳になった山本昌投手は、プロ5年目の88年9月に初完封。06年9月の阪神戦で41歳1カ月での史上最年長ノーヒットノーランも記録しており、阪神、巨人との優勝争いが続く中で再び快挙を達成した。

 完封は07年4月以来、通算30度目で今季は4勝0敗。通算成績は544試合に登板し、209勝159敗5セーブ。通算勝利数は歴代19位タイ。

◆「すげーおじさん」60年ぶり快挙

 久しぶりに客席が埋め尽くされたナゴヤドーム。ファンが総立ちになって声を届けた。「あと1人」。45歳になってもマウンドで堂々と立ちはだかった。自分の人生を、その勇姿に重ねられる存在だからこそ、胸を打つ。山本昌はファンの心をとりこにした。

 最後の打者は強打者阿部。綿密に計算された外角低めへのスライダーにバットをかろうじて当てさせただけ。力のない飛球が上がると、優勝を勝ち取った瞬間のような大きな歓声がドームの屋根をたたいた。

 「自分が投げていていいのか、と。勝てばそのたびに記録になる。そのうち、誰かが抜いてくれると思うが、これまで一生懸命やってきた結果だから」

 顔つきがりりしく、輝いて見える。何よりも今、笑顔が似合う。数カ月前、ナゴヤ球場でのぞかせた表情は、違っていた。出口の見えない2軍の調整を強いられた。いうことをきかない体へのいら立ちが顔に張り付いていた。うつむき加減。口数も少なかった。それでも、自分が何をすればいいか心得ていた。こつこつと練習を重ね、プロで生き抜くすべを体現した。

 あるスタッフは「1年間、ローテーション投手として投げ続けてほしい、なんてみんな求めていない。1つでも2つでも勝ってくれるだけで、チームに大きな意味がある」と、励ました。3学年下の近藤真市投手コーチは、記録を達成した先輩に「すげーおじさん」と感嘆した。

 「そうチャンスもないし、最後の完封かもしれないと思って楽しんだ」。軽やかな言葉とは裏腹に、底知れない限界にどこまでも挑戦し続け、あふれ出てくるすごみを感じた。 (運動部・村井博美)

 山本 昌(やまもと・まさ) 84年に神奈川・日大藤沢高からドラフト5位で中日に入団。米国留学でスクリューボールを会得して頭角を現した。93、94、97年に最多勝に輝いたほか、93年に最優秀防御率、97年に最多奪3振のタイトルを獲得。94年には沢村賞に選出された。通算成績は209勝159敗5セーブ。186センチ、87キロ。左投げ左打ち。神奈川県出身。45歳。

 

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