民主党代表戦に臨む菅総理と小沢前幹事長の1日の共同記者会見を見た。
記者会見では主に内政に質問が集中したが、日本国総理を選ぶ選挙であると同時にその一方で世界第3位の経済大国の主、アジアのリーダーを選ぶ選挙でもあるので外交についても質問があっても良さそうなものだ。
外交問題が論点とならなかったことで外国特派員らの関心は半減したものの、それでも普天間基地の移転に関する質問があった分、記事にはなったようだ。
この問題では菅さんは総理大臣としてすでに方針を打ち出しているので改めて聞くまでもないが、小沢さんがこの問題にどう答えるのか、大いに関心があった。
この日の会見で小沢さんが「沖縄も米国政府も納得できる案は、知恵を出せば必ずできると確信している」と発言したので、菅さんならずとも「何か妙案でもあるのだろうか」と誰もが思ったはずだ。「今、この席で申し上げるわけにはいかない」と口をつぐみ、それ以上多くは語らなかったが、普天間基地の問題を円満解決できるなら、小沢さんに一度総理をやらしてみたらどうかと思ったりもした。
ところが、昨日(2日)の日本記者クラブでの会見では「今、具体案を持っているわけではない、日米合意を原点として尊重していく」と答えていた。現状ではどうやら腹案は持ってそうにもないようだ。
沖縄の県民の意思と日米合意は180度VS関係にある。双方を納得させることは現状では奇跡に近いと言えば大げさかかもしれないが、至難の業だ。
沖縄県民の総意は、ずばり普天間基地の県外移転である。県外となると、これまでの日本での議論では本土か、グアムの二者択一しかなかった。
この7月に、琉球新報とのインタビューで「日米安保と沖縄駐留米軍を韓国がどう見ているのか」を聞かれたことがあった。それで、「韓国では、政府も国民も、沖縄駐留米軍だけでなく、在日米軍を朝鮮半島有事の際の『助人』とみなしており、従って、撤収とか、国外移転には反対している。今、焦点となっている普天間飛行場がグアムなど国外に移設されれば、韓国の安全に深刻な影響が出ると韓国政府は不安に思っている」と、韓国政府及び一般の韓国人の声を代弁した。断っておくが、私個人の意見ではない。
日本の新聞紙上にしばしば登場する知日派の尹徳敏外交安保研究院教授にいたっては「沖縄基地問題に関する限り、韓国は当事者だ」とまで公言していた。その理由について「グアムに移してしまうと、朝鮮半島との距離を考えた場合、沖縄の海兵隊が持つ有事の際の即応戦力の役割を果すことが難しいからだ」と言っていた。これが、おそらく、韓国政府及び国防部の公にしたがらない公式見解だろう。
尹教授が言うように韓国も沖縄基地問題では当事者ならば、沖縄県民だけにリスクとコストを負わさず、韓国も当事者としてそれなりの責務を負うべきであると考えている。沖縄駐留米軍が日本の防衛よりも「朝鮮半島有事」のために必要不可欠とするならば、なおさらのことである。
韓国人が「グアムは遠すぎるので反対」と言うなら、韓国、例えば済州島にもっていってもらうのも一つの手ではないか。何も沖縄が、台湾や韓国など他国の防御のためにいつまでも犠牲を払い続ける必要はない。
沖縄島と済州島を比較すると、面積は1,845㎡と1,207㎡と沖縄のほうが広く、また人口も済州島(50万人)より2倍も多いが、済州島には飛行場もあるし、港もある。「韓国のハワイ」と称されていることもあって米海兵隊にとっても悪くはないだろう。グアムよりは、台湾海峡にはるかに近いので「台湾有事」の際にも便利である。米国に異論はないはずだ。
調べてみたら、グッドタイミングにも済州島では現在、海軍が基地を建設中だ。基地完成後は、独島級揚陸艦と建設中の最新鋭潜水艦を集中配備するそうだ。どうやら機動艦隊用前進基地にする計画のようだ。ならば、もってこいではないか。
まして、李明博政権は、哨戒艦沈没事件を機に米韓軍事同盟強化の必要性を強調している。現在2万8千5百人いる駐韓米軍は一兵たりとも撤収してもらっては困るし、できるならば軍備も増強してもらいたいと米国に懇願している。事実、2年後に韓国に委譲する予定だった戦時作戦統制権も拝み倒して、3年間延長させている。
「北の脅威」が除去され、朝鮮半島に平和が定着するまでは米軍は韓国にとって「仏様、神様、米軍様」なのでこの機に普天間の飛行場も米海兵隊をそのままそっくり韓国に移転させたらどうだろうか。韓国政府が望むよう形の統一がいつ実現するかわからないが、なんだったらその日までリースしたらどうだろうか。
平たく言えば、朝鮮半島有事の際に最も緊急に展開される米海兵隊の戦力がいなくなると困るというならば、それが理由で普天間基地のグアム移転に反対ならば、韓国は日本に安保タダ乗りせず、それなりのリスクとコストを払ってしかるべきではないだろうか。
人のフンドシで相撲を取るほど、韓国はもう貧しくはないはずだ。中国に先駆けて、五輪も開催し、万博もやり、この秋にはG20を主催するほどの経済成長を遂げたと豪語しているわけだから、十分に余裕はあるはずだ。それでも財源が困難で無理と言うならば、日本が一部、あるいは全額肩代わりしてあげればよい。普天間にそのまま置いても、辺野古やグアムに移転させてもどっちみちコストは同じようにかかる。
上記のインタビューでは「鳩山前政権も、菅政権も、この問題で随分と頭を痛めているが、今度李明博大統領に会ったら勇気を持って『いらない?』と打診してみたらどうだろうか?李大統領が何と答えるのか、興味がある。まさか、『ノー』とは言えないだろう」と半分冗談を言っていたが、驚いたことに李明博大統領にはどうやらその気があるみたいだ。というのも、今年6月にカナダ・トロントで開かれた米韓首脳会談の場で李大統領がオバマ大統領に普天間基地の韓国への移転を秘かに提案していたというのだ。
この情報元は、「文藝春秋」9月号に掲載された記事(「オフレコ公開 李明博が『普天間韓国移設』を極秘提案」)だが、それによると、李大統領はオバマ大統領に普天間基地移転問題が米日同盟で最悪のシナリオとなった場合、普天間基地の代替敷地を韓国が提供できると提案していたそうだ。これが、事実ならば、普天間の基地問題は円満に解決できる。小沢さんの言う「三人集まれば、文殊の知恵」とは、ずばり日米韓3か国による協議のことではないのか。
ところが、この話が韓国に伝わるや、野党民主党のキム・ドンチョル議員は先週「国際情勢と国益に全く符合しないような発言を一国の大統領がやったとの報道は大統領と大韓民国に対する大変な名誉毀損になる。事実でないならば、直ちに訴訟を起こして、正すべきだ」と青瓦台に迫っていた。民主党の実力者の1人であるパク・チウォン議員は「国政監査でこの問題を追及する」として、李大統領の「韓国移転話」に反発していた。
騒ぎが大きくなるや大統領府(青瓦台)は「文藝春秋」の記事を「対応する価値もない、完全な小説である。必要な場合は訂正報道請求など措置を取る」(ホン・サンピョ広報首席補佐官)と述べ、鎮静化につとめているが、実際にはなんら措置も講じていない。
李大統領が本当に提案したのか、しなかったのか、当人のみぞ知るだが、実は、李大統領には前科がある。
大統領に就任した年の2008年7月の日韓首脳会談で福田康夫総理(当時)が中学校新学習指導要領解説書に竹島を表記することを通告した際、李大統領が「今は困る。待ってほしい」と要請したと、読売新聞(2008年7月15日付)がすっぱ抜いたことがあった。
日本の主張を容認するような大統領の発言が明るみに出るや慌てた大統領秘書室長が「大統領はそのような発言はしていない」と弁明に追われていたが、これに納得しない市民らが「韓国国民の領土権が侵害された」として読売新聞を相手に損害賠償と訂正報道を求め集団訴訟を起こしたことがあった。
裁判では市民らの訴訟は却下されたが、これまた青瓦台が読売新聞社にこの問題で訂正報道を求めたことはなかった。言うなれば、「読売」の報道が正しかったということだ。
今回の李大統領の「発言」について韓国内では米韓FTA(自由貿易協定)に消極的なオバマ大統領を説得するための「切り札」として、普天間基地の韓国への移転を「手土産」にしたのではと見る向きも一部にはある。
今回、仮に李大統領が言ったとすれば、単なるリップサービスなのか、それとも本気なのか、次期総理は今度李明博大統領に会ったらズバリ打診してみたらどうだろうか?
何しろ、南北関係では日本は戦後一貫して韓国の立場を支持し、今も長年の外交懸案である拉致問題よりも韓国の哨戒艦沈没事件を最優先し、韓国に同調し、北朝鮮との対話も、6か国協議の早期開催も拒んでいるわけだから、韓国から一度ぐらい「恩返し」があっても良さそうなものだ。
仮に「ノー」と断れば、米軍は「北の脅威」に直面している韓国にとっても「招かざる客」「お荷物」ということがはっきりする。
韓国にも歓迎されないのならば一体、誰のための、何のための沖縄米軍駐留なのか、日本人は一から問うべきではないだろうか。
小沢前幹事長の「普天間発言」と「韓国移転」
- 2010年09月03日 18時00分
- コメント(16)
記事本文
執筆者プロフィール
辺真一
ジャーナリスト
1947年東京生まれ。明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。1980年 北朝鮮取材訪問。1982年朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。1986年テレビ、ラジオで評論活動を開始。1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。1992年韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ) 1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。1999年参議院朝鮮問題調査会の参考人。2003年 海上保安庁政策アドバイザー。2003年沖縄大学客員教授。現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。
- 2010年09月03日 18時58分
- このコメントに返信
「韓国にも歓迎されないのならば一体、誰のための、何のための沖縄米軍駐留なのか、日本人は一から問うべきではないだろうか。」ここで、日本人と言っているが、近視眼的な見かたである。小沢の言っている事が日本人の言っている事と取り違えないで欲しい。日本人にも嫌われているのが小沢なのだから。
- 2010年09月05日 09時24分
小沢さんは何も言ってないじゃん…(笑)
- 2010年09月05日 07時03分
かと言って 辺野古移設が日本人の意見だとは いかなsense6688 さんも思ってはおられないでしょう
ならば 嫌いな小沢の言うことでも 一考に価するとは思いませんか
菅の現実的な 自民党時代そのままの 古色蒼然とした辺野古沖案なんて 防衛族以外に誰が望んでいるものですか
- 2010年09月05日 06時34分
ネットの情報を鵜呑みにするのも危険。
- 2010年09月04日 11時36分
小沢さんは日本人に嫌われてはいませんよ。
大好きな人はいっぱいいます。現に小沢さんが意見を言うと、マスコミが群がるじゃありませんか。
嫌いならほっとくでしょう。
あなたは大手マスコミだけを信じるのですか?
ネットのアンケートも見て欲しいですね。
- 2010年09月04日 11時55分
- このコメントに返信
「小沢さんの言う「三人集まれば、文殊の知恵」とは、ずばり日米韓3か国による協議のことではないのか。」
すごい!!!まさにそれだと思います。
- 2010年09月04日 09時02分
- このコメントに返信
国民の目線を勉強してください
- 2010年09月04日 07時47分
- このコメントに返信
拝啓 菅様 今回首相になりましたら 是非小沢一郎さんを財務大臣に任命し 二人で協力して国家の財源を寄りよい政策に運用して下さい。
- 2010年09月04日 02時38分
- このコメントに返信
拝啓 小沢一郎様 昨年の衆議院選挙で掲げた約束を忠実に実行して貰いたい。今の菅政権では当時の約束から方向が違っております。例えば消費税論議です。論議する前にやるべきことが有ります。みんなの党にお株を奪われておりますが元々昨年約束したことではないでしょうか。是非小沢首相のもとで元に戻して実現して頂きたい。
- 2010年09月04日 00時10分
- このコメントに返信
朝鮮戦争時、日本は掃海艇を派遣したが憲法を改正・再軍備し義勇軍を出すべきであった。
国連軍下、日韓両軍が北朝鮮・共産中国と戦っていれば両国関係や東アジア情勢は全く違うものに
なっただろう。
それを特需と浮かれ隣人の辛酸を甘露と貪った時から、日本はサムライの国から町人国家へ堕ちたのだ。
私はそれを残念に、そして申し訳なく思う。
- 2010年09月04日 00時12分
続き
掃海艇派遣では殉職者がでたが、吉田茂はしらばくれ30年後に勲八等が与えられた。
もし小沢ならば躊躇無く日本軍を国連の下、半島に送るだろう。
それが「普通の国」であり、下卑た吉田ドクトリンとの決別である。
小沢は必ず対米従属の日米安保を、対等な同盟国としての日・米・韓の極東集団安保に変える。
だから韓国民よ、「行く言葉が美しければ、来る言葉も美しい」
韓国も変わる事を切に期待する。
- 2010年09月03日 22時17分
- このコメントに返信
一主婦です、国内外問題山積の状態なのにとあきれますが、経済を立て直すには、まず雇用と話されていましたが、円高で小企業は悲鳴を上げています。日本には、優れた技術の企業がたくさんあります、只、小さい会社では不況に飲み込まれてしまいます、それを政府でカバーして盛り上げて欲しいと思います、企業が活気づけば雇用も自ずと出てくると思います。
- 2010年09月03日 21時57分
- このコメントに返信
そしてその見返りとして、日本は仙石官房長官の言う「韓国国民へ戦後補償」をして、小沢さんをはじめ民主党議員が韓国や在日本大韓民国民団に「公約」した外国人参政権を実現させるわけですね。わかります。
- 2010年09月03日 21時22分
- このコメントに返信
税金を払いたくなる日本、地方にしてほしい。
故郷納税制度がありますが、地元でも税金を納税したくない場合の制度も設置してほしい。
- 2010年09月03日 21時17分
- このコメントに返信
小沢さんの、普天間基地のコメントに関しては、妙案がありそうなことを言ったり、何も策はないと言ったり、
まるで鳩山さんの間抜けな回答を思い出しました。
- 2010年09月03日 19時14分
- このコメントに返信
対北を中心に考え、海兵隊がホントに必要というのであれば、移転先で最も適切なのは、竹島なんじゃないかと思います。
あそこは、元々日本の領土だし。
どういう訳か、基地も存在するからね。
もちろん、「不法占拠」はヤメてもらわんとならんのだけど。
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