【社説】恥を知る心

 柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商部長官の娘が先月、同部の専門契約職員(5級=日本の課長補佐級)として特別採用された事実がメディアで報じられると、特別な配慮により合格したのではないかという疑いが取りざたされ、柳長官の娘は3日に就職をあきらめた。外交部は当初、1回目の書類審査の際、柳長官の娘を含む応募者全員を該当者なしとして不合格にした。しかしその1カ月後、2回目の審査では柳長官の娘を含む3人を通過させ、面接試験を経て柳長官の娘を最終的に合格させた。面接官5人中2人が外交部の関係者だった。外交部では、「採点者は、応募者が長官の娘かどうかは分からないようになっていた」と話した。柳長官の娘は、父親が外交部次官だった2006年にも、今回と同様の契約職に特別採用され、3年間勤務した。

 今回の特別採用をめぐって波紋が広がったことを受け、柳長官は3日午前、「(娘が)父親が首長を務める組織に採用されることが、特恵を受けたという疑いをもたらす点を見過ごしていた。このことについて、申し訳なく思っている」と謝罪した。大統領府(青瓦台)が発表したところによると、李明博(イ・ミョンバク)大統領は、「長官の判断は冷たいと思われるほど厳格であるべきだ」と述べたという。

 ある程度の組織の責任者なら、自分が人事権を持ち、自分の部下が採点する試験にわが子が応募すると言ったら、まず引き留めるのが常識だ。自分の子どもが合格した場合、その試験の公正性と厳正さが問われるということを本能的に感じるためだ。かつて朝鮮時代の官吏たちも、自分の息子や孫、婿が科挙(公務員試験)を受ける場合、出題や採点などに関連する官職につくことを避けた。しかし、それから数百年が過ぎた現代の韓国の長官は、他人の息子や娘が失業して苦しんでいる中、自分の娘を特別採用しようと、上がってきた決裁書類に自ら署名した。

 これはつまり、公職に就く者として「恥を知らない」ということだ。恥を知るということは、自分の役職にふさわしい行動が何かを知っていることで、それに反する行為に対し恥ずかしいと思う心だ。なぜ、韓国の公職社会はここまで落ちぶれてしまったのだろうか。国家の指導者といわれる人たちが恥を知らないというのに、ましてや国民が法の怖さを知り、国がまともでいられるだろうか。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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