西日本新聞

プサン・韓国ニュース

日本家屋で交流カフェ 元韓国総領事館職員の朴さん 故郷・浦項で開店

2010年06月14日 12:39
日本家屋を生かしたカフェ「古里」。2階のバルコニーや装飾が印象的だ=韓国浦項市
日本家屋を生かしたカフェ「古里」。2階のバルコニーや装飾が印象的だ=韓国浦項市
 日本が朝鮮半島を植民地支配した時代に、日本人が住んでいた家屋を保存する取り組みが韓国各地で進む中、東南部の浦項(ポハン)市で朽ちた日本家屋を再生させたカフェが先月末、開店した。経営者の朴妹〓(パクジュヨン)さん(46)は元駐福岡韓国総領事館職員。今年3月末に退職して24年住んだ福岡から浦項へ帰郷し、「韓国と日本の人々を結ぶ場に」と両国の民間交流に一役買っている。(浦項・神屋由紀子)

 「2階のバルコニーがかわいい」。「日帝時代(日本統治時代)の家らしい」。浦項市の大学生、李相潤(イサンユン)さん(19)たちは白と水色のペンキで塗られた木造の建物を不思議そうに見上げていた。

 浦項市中心部から車で約40分の九龍浦(クリョンポ)地区。細い露地に往時の日本家屋が立ち並ぶ一角にカフェ「古里」はオープンした。壁に博多祇園山笠の手ぬぐい、飾り棚には杯や急須を置き、和風に演出している。

 「ここは時間が止まったような町。日本人も韓国人も懐かしく感じる場所だから」。朴さんの店名に込めた思いだ。

   ■   ■

 韓国では冬の珍味「クァメギ」(サンマの寒風干し)の産地で知られる港町・九龍浦は、1902年に山口県の漁船50隻が寄港したのをきっかけに、戦前、数多くの日本人が移り住んだ。

 市は一昨年、一帯の日本家屋の保存事業に着手し、「日本人家屋通り」と名付け、観光客を誘致。昨年は8千人を超す日本人が訪れた。

 「休めるところもなかった」。朴さんがカフェを思い立ったのは、九龍浦を旅した知人のひと言だった。

 浦項市が2008年に福岡市に事務所を構えたのを機に、双方の交流を仲立ちする機会も増えていた。日本に留学し、総領事館職員となって20年余り。「そろそろ別のことをしたい。やるなら今だ」と転身した。

   ■   ■   

 戦前、「ミドリ薬局」と呼ばれた古びた家は、外側をペンキで塗り替えた以外は、柱も細い階段も昔のままだった。いざ借りてみると、ネズミが出て、トイレも旧式で臭う。「いっその事、つぶしたほうがいい」と途方に暮れたが、地元の人に「日本式の家はどこもこんなものだ」と諭され、思い直した。

 開店当初は「観光客が憩う場に」と思っていたが、思いのほか近所の人が立ち寄る。

 「あのころこの辺に美容室があって…」。90歳過ぎのおじいさんは、日本統治時代の集落を思い起こしながら、その記憶を留めてほしいと朴さんに託した。「あんたと日本語で話せないか」と訪ねてきた80代半ばの男性とは韓国人同士なのに会話はいつも日本語だ。

 「植民地時代といえば普通、お年寄りは悪い感情を持っているというけれど、ここは当時、日本人と韓国人の関係がよかったんでしょう。幼いころを懐かしむ人が多い」

 何かと年配の人に日本語で話し掛けられて当初は驚いた朴さん。しかし「日々発見。私が役立つなら」。驚きはやりがいに変わりつつある。


=2010/06/14付 西日本新聞朝刊=

バックナンバー

おすすめ情報【PR】
アクセスランキング
  1. 「犯罪者扱いされた」 テレ朝の報道 ...
  2. ワンマン“乱脈”経営 強引販売社員に...
  3. 通年議会条例公布せず 懇談会で阿久根...
  4. 丸美 二重帳簿作成か 元幹部証言 経...
  5. 阿久根市 不承認の専決処分強行 「放...
おすすめ情報【PR】
天気・交通情報
九州・山口の天気 福岡の天気 佐賀の天気 大分の天気 長崎の天気 熊本の天気 宮崎の天気 鹿児島の天気 九州・山口の天気 交通情報
九州のりものinfo.com
イチオシ! 特集記事
デジタルフォトムック「一本の頂点(てっぺん) 玉竜旗編」より 【電子】
金鷲旗・玉竜旗の感動を
インターネットで
初の電子写真誌を出版
 【経済】九州新幹線 食卓ハシる デザイン箸
 【受賞】ワープロ競技 全国大会でV 水俣高
 【農業】豚の競り再開 宮崎県 4ヵ月ぶり
 【自治】阿久根市長「地域施設維持費地区負担を」
注目コンテンツ
47CLUB探検隊

小ノ上果樹園のプラム2kg【送料込み】 (福岡県・小ノ上果樹園)

小ノ上農園のすもも (すももレシピ付き) すももが身体に効くって知ってますか? 昔から保存食として、干したりエキスにした...

>> 記事を読む

>> 47CLUB探検隊へ