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帝京大病院:多剤耐性菌に46人が院内感染 9人が死亡か

会見する帝京大病院の森田茂穂病院長(左)=東京都板橋区の帝京大学で2010年9月3日午後5時17分、佐々木順一撮影
会見する帝京大病院の森田茂穂病院長(左)=東京都板橋区の帝京大学で2010年9月3日午後5時17分、佐々木順一撮影
アシネトバクター菌の電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)=共同
アシネトバクター菌の電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)=共同

 帝京大病院(東京都板橋区、1154床)は3日、ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニに患者46人が院内感染し、27人が死亡したと発表した。うち9人は死亡と感染の因果関係が否定できないという。国内で同菌の大規模な院内感染が明らかになるのは、09年の福岡大病院に次いで2例目で感染者数は最多。帝京大病院は5月には認識したが、保健所に報告したのは今月2日で、都は「報告遅れは不適切」として厳重注意した。警視庁は業務上過失致死の疑いもあるとみて調べている。

 同病院によると、感染したのは、肺がんや脳梗塞(こうそく)など重症の病気で入院した92~35歳の男女46人。27人は昨年10月~先月にかけて死亡した。うち12人は死亡と感染の間に因果関係はないとみられ、6人は因果関係が不明という。

 同病院は今年2月、患者4人から同菌が見つかり、福岡大病院の例もあったことから、感染制御部が院内各科に同菌への警戒を呼びかけた。その後、4月に9人の感染が確認されたことなどから、5月の連休明けになって院内の感染制御委員会が「院内感染」として対策に乗り出した。過去にさかのぼって調査した結果、耐性パターンの同じ感染患者が46人確認され、第1例は09年8月に検出された患者と推定されることが分かった。感染ルートなどは分かっていないという。

 東京都福祉保健局によると、都は病院が板橋区保健所に報告した今月2日、病院への立ち入り検査を実施。報告遅れについて病院側は「(感染が増えた)4~5月は現場での対策を重視した」と釈明したという。

 また都医療政策部は会見で、感染が広がった原因について「11の病棟で感染が確認されたことを考えると、医療スタッフによって拡大した可能性は否定できない」と指摘。帝京大病院の感染防止対策の専従の医師と看護師が1人ずつだったことから、同規模の病院に比べて態勢が不十分との認識を示した。【佐々木洋、石川隆宣】

 ◇アシネトバクター・バウマニとは

 最近10年で世界的に急増している、複数の薬剤が効かない細菌の一種。アシネトバクター菌自体は水や土壌の中などに存在しており、健康な人は感染しても発症しない。しかし免疫力が低下した人が感染すると、肺炎や敗血症で死亡することがある。

 アシネトバクター・バウマニの多剤耐性菌は90年代から欧米で増加し、00年ごろにはほとんどの薬が効かない種類が出現した。国内では09年に福岡大病院で、同菌による院内感染が判明した。

毎日新聞 2010年9月3日 21時08分(最終更新 9月4日 0時46分)

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