パソコンはいまだ「工業製品」にあらず?

日本メーカーの突破口を考える(前篇)

2010.08.13(Fri) 両角 岳彦

技術立国・日本論

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このコラムではここまではもっぱら、私自身にとって専門領域と言える自動車産業を題材にして日本の「技術立国の今」を考えてきた。この辺りで他の分野にも視点・論点を広げてみようと思う。

 そのテーマは、パーソナルコンピューターをはじめとする電子デバイス。「iPhone」、さらに「iPad」の出現によって、ハンディーサイズの通信デバイスからコンピューターまでの境界が消えつつあるのだが、その中で日本ならではの「技術開発」と「ものづくり」を見出し、世界をリードする可能性はまだ十分に残っている。私の中にその確信が形づくられつつある。

 そこに至る伏線はずっとあったのだが、ここでそれが、「実感した」と言えるまでの具体的な形で見えてきたのは、実は私自身の「負の体験」による。まずはその話から始めよう。

冷却ファンから騒音、バッテリーは認識せず

 最近、私自身が日々使っている日本製プロダクツに、あれこれトラブルが起こっている。中でもいささか不便を来したのは、仕事も含めてフルに使っていたノートパソコンの故障。そしてもう1つは携帯電話の、たった1年で「経時劣化」が現れてきたかのような細かな不調。

 その中でもノートパソコンに発生した問題を整理してみる。この機材は、2008年4月に購入したものだが、今年の初め頃から冷却ファンの騒音がひどくなり、さらに6月に入って突然、バッテリーを認識しなくなってしまった。

 他にもいくつか問題が発生していたのを我慢しつつ使い続けていたのだが、起動するやいなや「バッテリーが装着されていません」というメッセージが出て(もちろんバッテリーはちゃんと装着してある)、電源に接続していないとそのままストンと「落ちて」しまうのでは、さすがに危険すぎ、修理に出すことにしたのだった。

 幸いにして(?)、今年前半にあれこれ考え、いつものように検討を繰り返し、その中でこのパソコンに発生していた他の問題(後述)への対応も考えた結果、より大型で仕様・性能もレベルアップしたパソコンを別に購入していたので、仕事や日常生活への影響はごく少なくて済んだ。格段にかさばって重い機材を持ち歩くことの大変さは別にして、だが。

 問題のパソコンは、13.3インチワイド画面の薄型ノートで、それなりのハイスペック機。自宅兼仕事場の常用機材の1つであり、もちろん外出先での講演や打ち合わせ、あるいは出張などにも携行するもの。

 ノートパソコンとしてはごく普通の使い方であり、継続使用時間、バッグ類に収めて携行する機会やその環境などは、企業の営業部門、あるいは私の仕事仲間で言えばカメラマンなどの状況に比べると、さしてシビアとは言えないパターンである。もちろん私自身、こうした機材の弱点は知っているから、持ち運び時の保護などにはそれなりに気を遣ってきた。

 にもかかわらず、まず丸2年でリチウム電池が、それもわざわざ大容量のものを組み合わせて購入し、新幹線の中で使う時も100ボルト電源のある車両、座席を選ぶなどしてできるだけ電源をつないで使っていたにもかかわらず、性能劣化してパソコン側の電力管理ソフトが認識できなくなってしまった。

 冷却ファンの不具合に関して言えば、もともとCPUもグラフィックボード(ディスプレイの表示をコントロールする素子と回路)も、それなりに高性能仕様を実装しているので、発熱はかなり多い。その一方で筐体の空間はぎりぎりに絞ってあるから、通風による冷却の負荷は小さくはないはず。

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