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平泉の影響示す仏像、鎌倉で発見 頼朝の都、彷彿させる貴重な手がかり
平安末期、奥州藤原氏3代にわたり岩手県・平泉に花開いた仏教文化の影響を示す仏像が、鎌倉幕府の文化圏である神奈川県横須賀市で見つかった。調査した同県立金沢文庫によると、鎌倉幕府の初代将軍、源頼朝が平泉の文化を目標に都を開いたことは文献上知られていたが、裏付けとなる実物が確認されたのは初めて。頼朝が目指した新しい“武家の都”を思い起こさせる貴重な史料として注目を集めそうだ。
この仏像は、横須賀市の大善寺が所蔵する「伝毘沙門天(びしゃもんてん)立像」。金沢文庫が調査し、平泉の国宝、中尊寺金色堂の増長天(ぞうちょうてん)立像と共通する様式であることを確認した。動きある姿勢やメリハリある表情などは、鎌倉武士のために仏像を手がけた仏師、運慶に見られる力強く写実的な様式の先駆けと位置付けられるという。
鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」では、幕府を開いた頼朝が平泉の仏教文化を参考に寺院を建立したと伝えており、平安時代と鎌倉時代をつなぐ平泉の文化的役割は文献上では知られていた。しかし、当時の伽藍(がらん)は失われており、平泉の影響を示す実際の仏像などの存在は、これまで一般には知られていなかった。
山本勉清泉女子大教授(日本彫刻史)の話「東国の先進地だった平泉の文化は、鎌倉武士の美意識の形成に影響を与えた。頼朝が造った初期の鎌倉は時代の変遷で失われたが、平泉には“プレ鎌倉”が残っている。今回の発見は、頼朝の新しい都を想像する手がかりとなる」(寺田理恵)