2010年8月30日10時39分
江戸時代に文人画を得意とした絵師、池大雅(1723〜76)が40歳を前に描いた掛け軸の大作「比叡山真景図」が、東京都練馬区立美術館で来月、半世紀ぶりに公開される。作家の故・五味康祐氏の遺品から見つかり、このほど修復を終えた。
この画は縦94.0センチ、横140.5センチの紙本墨画淡彩(しほんぼくがたんさい)。左側に比叡山を配し、奥に琵琶湖を望んだ景色には、「大津」「勢田」などの地名も書き込まれている。画の右上には大雅の筆で1762年に儒者・三上孝軒と比叡山に登り、眺望を詠じた三上の詩を基にこの画を描いて贈ったことが記されている。
画中には三上の詩も書かれており、新たに、能書家の亀山藩家老、松平敏の書であることが美術館の調査でわかった。大雅は、自分と対話する三上の肖像画も残しており、相当に親しかったようだ。
佐藤康宏東京大学教授は「当時の日本に入ってきた西洋の銅版画から受けた遠近法の影響も感じられる。伝統文化の枠組みを意識しながら、新しい表現も採り入れていく、江戸中期の画家の態度がよく表れている」と話す。
同館によると、この画は1959年発行の『池大雅画譜』に五味氏の所蔵として掲載されていた。遺族の没後、遺品を寄贈された練馬区が、08年に五味氏の書斎にかかっていた画を発見。2年かけて修復した。同館は「壮年期の大雅の基準作になる」としている。
公開は9月14日〜10月24日(月曜休み)。9月20日と10月11日は開館、その翌日が休み。(小川雪)