拝啓、神様お元気ですか?俺は元気です。あの時歩道で困っているお婆さんを見かけて一緒に道路を渡り、そこに居眠り自動車が突っ込んできて何故かお婆さんに突き飛ばされ車に轢かれた俺を哀れに思い第二の人生を送らせてくれて感謝しています。
海鳴市や冬木市、ペンギン村や雛見沢なんてお約束の世界に送らせてくれたら良かったんですが。いえ、流行りの最強モノにするなんて贅沢は言いません。ただ、その世界に生きる人達に会いたかった。それだけです、実際にはとんでもない所に送りやがったなと腸煮えくりかえっています。ええ、生き返らせてくれた事には感謝していますよ?
詰まる所、回りくどい事はなしにして尋ねましょう。あんた(神様族)、面白がってこの世界に送っただろ!あの時、妙に違和感あるなと思ったら“かのう様”と同類の腹黒さじゃないですか!!気付くのが遅すぎた俺が悪いですけど……現在、願いの原石を持たない“二人目”として目を付けられているんですよ!?
いつか、あの時貴方が言った出会える日を楽しみにしています。その時は、貴方がどんな格好をしていても迷わず蹴り飛ばすので覚悟してください。敬具。
追記、俺に変な力とか渡してませんよね?関係ないのに、度々神様ゲームに巻き込まれるんですけど……
――願え、願え、この世はすべからく。さすれば叶えてやらぬこともない。
――そして、妾の願いを叶えておくれ。
そんな電波を受信した俺は、迷わず断言する。
「俺を巻き込むな」
「は?急に何言ってんの?」
「いや、何でもない。いつもの電波を受信しただけだ、気にしないでくれ」
「……ねぇ、やっぱり一度病院に行かない?絶対変よ、それ。変なんだけど……その電波に助けられた事もあるのよね……」
そりゃあ、この世界の事はよく知ってますから。この世界がライトノベルだと知ったら、こいつはどんな反応をするだろう。言わないけど、この秘密は墓場まで持っていく。その覚悟はある、俺は誓う。
そんな決意をして叶野市の商店街を歩く俺たちだった、因みにデートじゃないよ?幼なじみの買い物の荷物持ちをさせられてるだけです。隣を歩くツインテールの少女を見ながら、手にした袋をしっかり持つ。
そう叶野市、それが俺の第二の人生。腹黒い土地神のかのう様がいる町である、とある理由からこの町は最悪。何でもかのう様が出すゲームをクリアしなければ……思い出すのはよそう、頭が痛くなってくる。
「ほら、次はあそこの店よ。きりきりと歩きなさい!」
「無茶言うな……」
幼なじみの声に叱咤され歩きだす、そんなある日の日曜日。
この世界に送った神様に再会するまで、あと……