【ローマ=南島信也】年金や失業手当などの不正受給がイタリアでも相次ぎ、今年1〜7月だけで1億ユーロ(約108億円)にのぼることが全国社会保障保険公社(INPS)の調査で判明した。受給対象者の死亡後に遺族らが不正に年金を受け取っていたケースも多く、同公社は捜査当局と連携して詐欺行為の摘発に本格的に取り組むという。
イタリアのほとんどの労働者が同公社に加入している。同公社によると、対象者死亡後の不正受給と、企業が労働者を雇用しているかのように偽装して補助金をだまし取ったケースが合わせて6400万ユーロ(約69億円)で、被害全体の6割を超えた。
伊南部カターニアでは、95歳で昨年死亡した大おばの遺体を冷凍庫に隠し、大おばが受給していた毎月2千ユーロの夫の遺族年金を1年以上にわたって不正に受け取っていたとして、43歳の男が警察に拘束された。
男は疑われないように大おばの家を毎週2回訪ねるなどの偽装工作をしていたという。大おばの姿を見かけなくなったことを不審に思った近所の人が通報し発覚した。
ほかにも、医者らと共謀して障害者年金を受け取っていたケース(1100万ユーロ)、失業手当や農業従事者手当などの不正受給(2500万ユーロ)もあった。同公社によると、今年だけで約5300人が不正受給で捜査対象になり、135人が逮捕されているという。同公社のマストラパスクワ長官は「INPSと国をだまそうとする連中との戦いはこれからもっと激しくなる」と話し、不正のあぶり出しに意欲を示している。