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きょうの社説 2010年9月4日
◎「歴史都市」事業 地方の意欲そぐ予算縮減
歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」事業の大幅な予算縮減は、第1号認定の金沢市
などで成果を挙げていることを見ても、なぜ、ここで国がブレーキをかけるのか理解に苦しむ。高岡市でも今年度内の認定を目指して準備が進んでいる。事業の行方が不透明になれば、せっかく機運が盛り上がってきた歴史資産を生かした地方の都市づくりに水を差すことになる。「歴史都市」事業は都市の基盤として歴史や文化を明確に位置づけ、京都、奈良など古 都保存法で認められた都市以外に支援を広げた点で国の都市政策を転換する意義を持っていた。歴史まちづくり法は国土交通省、文化庁、農林水産省が共同所管し、行政の縦割りの弊害を改め、補助金としての使い勝手も格段によくなっていた。 国交省によると、すでに16都市が認定され、約100都市が認定に意欲を示している 。これらをすべて対象にすれば、確かに予算は膨大な額になる。広く薄く支援するのか、重点化するのか、これから制度を見直す余地はある。だが、法律制定から4年目で一律的に予算を削減するのは、制度の意義を考えても唐突に映る。 国交省の来年度予算概算要求では、景観・歴史的環境形成総合支援事業が今年度当初比 で2億6千万円減の5億9千万円にとどまった。その柱は「歴史都市」制度であり、事業の縮減は避けられない見通しである。 景観・歴史的環境形成総合支援事業は6月の行政事業レビューで「国が行う必要性、国 が行うにふさわしい戦略的な目標や優先順位の設定といった観点からゼロベースで考え直す」とされ、「いったん廃止」となった。このため、国交省は、観光振興を重点的に図る区域を要件に加え、認定計画の対象事業を絞り込むという。 認定を目指す自治体の中には単なる補助金目当てもあるかもしれない。そこはバラマキ にならないよう厳密に審査する必要がある。一方で、金沢のように制度を積極的に生かし、街づくりを進めている例もある。見直すなら、効果的に執行されている制度のプラス面をさらに強化する方向で検討してもらいたい。
◎「海兵隊不要」発言 普天間問題の迷走に拍車
小沢一郎前幹事長が沖縄駐留の海兵隊を不要とする認識を示し、党内外に波紋が広がっ
ている。日米両政府は、普天間代替施設を名護市辺野古沿岸部に建設するとした専門家協議の報告書を先月末にまとめたばかりであり、普天間移設問題の迷走に拍車が掛かる懸念も出てきた。小沢発言は、日米合意の見直しを示唆する内容であり、米国側に改めて不信感を持たれ るのは間違いない。非現実的な「県外移設」をあおって迷走を重ねた鳩山前政権の二の舞になりはしないか。 小沢氏は、菅直人首相との公開討論で、在沖縄海兵隊8千人のグアム移転を引き合いに して、「米軍は前線に大規模な兵力をとどめておく必要がなくなった」と述べ、「米海軍第7艦隊だけで、米国の極東でのプレゼンス(存在)は十分」とした過去の発言についても否定しなかった。 とはいえ、辺野古移設に代わる「腹案」があるわけではなく、日米合意についても「白 紙に戻すと言っているわけではない」と弁明するなど、言葉を濁す場面もあった。小沢氏の発言は、日米同盟の根幹を揺るがす重大な内容を含んでいるにもかかわらず、熟慮を重ねたものとは思えない。日米と沖縄の三者が歩み寄れる妙案があるならまだしも、日米両政府がようやく積み上げた合意内容をぶち壊しにしかねない乱暴な発言は避けるべきでなかったか。 政府が発表した報告書は、滑走路2本をV字形に配置する案(現行計画)と滑走路が1 本のI字形案を併記し、最終決着を11月末の沖縄県知事選以降に先送りする内容である。本来なら11月の日米首脳会談で正式決定する予定だったが、菅首相は面倒を嫌がって先送りしてしまった。ただでさえ、沖縄の同意を得るのが難しい状況下で、火に油を注ぐようなことを言うのは理解に苦しむ。 永田町では、小沢氏は党内の左派勢力の支持を得るために、あえて言ったという見方が ある。県外移設を主張し、連立を離脱した社民党対策との声も聞かれる。代表選を有利に戦うために普天間問題を利用してほしくない。
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