きょうのコラム「時鐘」 2010年9月4日

 タレントの萩本欽一さんが、テレビ画面で地デジ対応を促している。「ごめんね、勝手に変えちゃって」

奇妙なシカや美女アナの笑顔の告知は、何か押し付けがましい。欽ちゃんの一言で、重い腰が上がった。頼みもしないのにアナログ放送が打ち切られ、懐が痛むのである。まず謝罪し、「勝手に変えた」とへりくだるのが、頼み事の基本であり、美徳であろう。さすが欽ちゃん、名演技である

大相撲の生中継再開が決まった。「ごめんね、勝手に決めて」と欽ちゃん流を通すわけには、さすがにいくまい。相撲協会の謝罪と反省があり、「視聴者の理解」が得られると判断した、と報じられた。政治家の「国民の理解」みたいで、便利な言葉だが、心に響くものはない

先場所は、取組のダイジェスト版が放映された。北陸のファンからはもの足りなさを嘆く声をよく聞いたが、あれで十分という声もあった。苦肉の策のはずが、場所中継よりも視聴率が高い地区もあったという

相撲に限らず、中身が退屈なら生中継もデジタル放送も値打ちは薄れる。欽ちゃんも二度も「ごめんね」とは言いたくないだろう。