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第2章 統一教会の救済観の問題点

【16】 「原罪」ついての二つの捉え方

 さて、「救済論」における最も重要なテーマと言えば、何と言っても「原罪の清算」ということになるのですが、では、そもそも「原罪」とは一体何なのでしょう。
 「原罪」は英語では「original sin」といいますが、“origin(起源、始源)”とは一体何を指しているのでしょうか。
 実は、この「origin」をどのように捉えるかによって、全く異なる“二つの原罪観”が存在しているです。

 

 (1) 動機・性質としての「原罪」

 

 ひとつは、既に述べてきたような“実存的な捉え方”で、ひとりの人間の中に内在する「罪を犯させる要素(性質)」としての「原罪」の概念です。つまり、一切の犯罪行為の根底にある「堕落性本性(自己中心の動機)」としての「原罪」であり、「原因(origin)としての罪」という意味です。キリスト教において「罪(sin)ともろもろの罪(sins)」という並べ方をするときの「罪(sin)」の概念です。

 

 (2)人類始祖の犯罪としての「原罪」

 

 もう一つは、「遺伝的罪」「連帯罪」「自犯罪」と並べられるときの「原罪」の概念です。それは、「人類」という「血統的有機体」の「原初」、つまり「人類始祖(origin)」である「アダムとエバが犯した罪」という意味での「原罪」です。この「原罪」の概念は『原理講論』では、「人間始祖が犯した霊的堕落と肉的堕落による血統的な罪」と定義されています。

  このように「原罪」には全く異なる“二つの概念”が存在しているのですが、結論から言えば、文先生が『御言』の中で示されている「原罪」の概念は、どちらかといえば、より前者に近いものであることがわかります。後者は『原理講論』に書かれている概念ですが、不思議なことに文先生の『御言』自体には、「遺伝的罪」「連帯罪」といった単語がほとんど出てこないのです。つまり、文先生は「原罪」という言葉を「堕落性本性」、即ち「腐敗した自己中心的な動機」とほぼ“同義の概念”として用いられているのです。

後述するように「遺伝的罪」「連帯罪」といった概念は、ユダヤ教では顕著に見られますが、キリスト教(特にプロテスタント神学)においては、基本的に否定されています。

 

 さて、“後者の概念”、つまり「原罪」「遺伝的罪」「連帯罪」「自犯罪」という並べ方における「原罪」の捉え方には、いくつかの検討すべき問題点があります。

 

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救済論の問題点 目次
はじめに
第1章 統一教会における教典問題
【1】統一教会の「教理」と『原理講論』
【2】『原理講論』の“教典的位置”としての問題点
【3】『統一神学』の問題点
【4】『統一思想』の問題点
【5】「統一教会の教理」に関するその他の「解説書」
【6】文先生の『御言』の中にある「最終的真理」
 
第2章 統一教会の救済観の問題点
【1】「霊肉共の救い」を主張した統一教会
【2】統一教会の主流的救済観─「法廷論的贖罪観」の問題点
【3】「法廷論的贖罪観」が強調されるようになった経緯
【4】「法廷論的贖罪観」の強調は、“反対牧師対策”がその背景。
【5】「法廷論的贖罪観」の問題点。
【6】統一教会内にあった「二つの見解」
【7】「実存と法廷的評価」の分離は「キリスト教型の救済観」
【8】「罪」と「堕落性」の関係
【9】「罪と堕落性」という“対比の仕方”の問題点
【10】「堕落性本性」の内容と「罪」との関係
【11】「性質としての罪」の概念
 
【12】「堕落性」という言葉
【13】 「思い」や「性質」は“罪ではない”と主張する統一教会
【14】 「堕落性と罪」のより適切な対比表現
【15】 キリスト教における「堕落性と罪」の概念
【16】 「原罪」ついての二つの捉え方
【17】 人類始祖の犯罪行為としての「原罪」概念の問題点
【18】 「神の血統」の真の意味
【19】 「淫行関係」と「血縁関係」の概念の混乱
【20】 「罪の遺伝(転嫁)」とは?
【21】 「法廷論的贖罪観」の論理的問題点
【22】 もう一つの救済観─「生物学的血統転換論」の問題点
【23】 統一教会に混在する「二つの救済観」
【24】 『御言』にみる「正しい血統的転換論」
【25】 「心の遺伝」
【26】 「救済論」における「義認」と「聖化」
【27】 統一教会の救済論の重点は、「義認」より「聖化」
【28】 「義認と聖化」は“同時的”に実現
【29】 「罪と堕落性」「義認と聖化」からみた「イスラエル(選民圏)の変遷」
【30】 統一教会の本来の目的は「聖化」の完成
【31】 「第三イスラエル」としての統一教会と「第四イスラエル」時代の到来
あとがき