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第2章 統一教会の救済観の問題点

【7】 「実存と法廷的評価」の分離は「キリスト教型の救済観」

 さて、このような“実存の中身と客観的法廷的評価を分離する”という考え方こそ、統一教会が、新約段階の「霊的救い」に留まっているとして、その“不十分性““未完成性”とを指摘してきた、従来のキリスト教会における「救済観そのものであり、まさにその救済論の中核ともいうべき「信仰義認論」こそが、そのような「法廷論的義認」に他ならないのです。

  キリスト教では、イエス・キリストの十字架による代贖を根拠に、「洗礼」や「聖餐式」等の儀式を通じた「信仰告白」によって、人は罪人にして義人という、いわば天的な「法廷論的義認」を受けることによって“既に救われている”とみなされているのです。つまり“罪を犯す性質(堕落性)を残したまま”、神の前に“罪なき者(義人)”と“みなされている”ということなのです。

  現在の統一教会における「法廷論的贖罪観」は、まさにこのような“キリスト教型の救済観の再現”であり、信仰告白を示す「サクラメント(礼典)」の内容が、キリスト教では「洗礼」や「聖餐式」であったのに対し、統一教会では「聖酒式」を中心とした一連の「祝福」の儀式に取って代わられているに過ぎません。

 かつてクリスチャンに対し、“そのような救いではいけない”として、新約的段階の「霊的救済」から成約的段階の「実体救済=霊肉共の救い」への転換を力説してきた統一教会において、皮肉にも何故、キリスト教と同様な「新約的段階の救済観」が現われてきているのでしょうか。(それはH氏が指摘するように、何らかの摂理的理由により、明らかに「祝福」によっては、教理の目指す本来の内容が“実現しなかったから”ということができるでしょう。)

 しかし、このようなキリスト教型の「罪人にして義人」といった、「実存」と「法廷論的評価」が分離し、実存の中身としては相変わらず“堕落性をもったまま”の状態で救われているといったような、形式的で内実を伴わない「救い」が、果たして本当に、文先生がその『御言』を通して示そうとされている「実体的救済(霊肉共の救い)」なのでしょうか?

【お断り】 本書で登場する「実存」という単語は、「実存哲学」の扱う「実存」概念ではなく、単純な「実体存在」という意味で用いています。

 

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救済論の問題点 目次
はじめに
第1章 統一教会における教典問題
【1】統一教会の「教理」と『原理講論』
【2】『原理講論』の“教典的位置”としての問題点
【3】『統一神学』の問題点
【4】『統一思想』の問題点
【5】「統一教会の教理」に関するその他の「解説書」
【6】文先生の『御言』の中にある「最終的真理」
 
第2章 統一教会の救済観の問題点
【1】「霊肉共の救い」を主張した統一教会
【2】統一教会の主流的救済観─「法廷論的贖罪観」の問題点
【3】「法廷論的贖罪観」が強調されるようになった経緯
【4】「法廷論的贖罪観」の強調は、“反対牧師対策”がその背景。
【5】「法廷論的贖罪観」の問題点。
【6】統一教会内にあった「二つの見解」
【7】「実存と法廷的評価」の分離は「キリスト教型の救済観」
【8】「罪」と「堕落性」の関係
【9】「罪と堕落性」という“対比の仕方”の問題点
【10】「堕落性本性」の内容と「罪」との関係
【11】「性質としての罪」の概念
 
【12】「堕落性」という言葉
【13】 「思い」や「性質」は“罪ではない”と主張する統一教会
【14】 「堕落性と罪」のより適切な対比表現
【15】 キリスト教における「堕落性と罪」の概念
【16】 「原罪」ついての二つの捉え方
【17】 人類始祖の犯罪行為としての「原罪」概念の問題点
【18】 「神の血統」の真の意味
【19】 「淫行関係」と「血縁関係」の概念の混乱
【20】 「罪の遺伝(転嫁)」とは?
【21】 「法廷論的贖罪観」の論理的問題点
【22】 もう一つの救済観─「生物学的血統転換論」の問題点
【23】 統一教会に混在する「二つの救済観」
【24】 『御言』にみる「正しい血統的転換論」
【25】 「心の遺伝」
【26】 「救済論」における「義認」と「聖化」
【27】 統一教会の救済論の重点は、「義認」より「聖化」
【28】 「義認と聖化」は“同時的”に実現
【29】 「罪と堕落性」「義認と聖化」からみた「イスラエル(選民圏)の変遷」
【30】 統一教会の本来の目的は「聖化」の完成
【31】 「第三イスラエル」としての統一教会と「第四イスラエル」時代の到来
あとがき