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HOME > 救済論の問題点 目次 > 【1】 「霊肉共の救い」を主張した統一教会
第2章 統一教会の救済観の問題点

 

 それでは、統一教会の説く「救い」とは、一体いかなるものであり、その救済観にはどのような検討すべき神学的課題があるのでしょうか。

【1】 「霊肉共の救い」を主張した統一教会

 統一教会、すなわち「世界基督教統一神霊協会」は、キリスト教が2000年にわたって説いてきた人類の「救い」を完成させる、「再臨主の運動」として登場いたしました。従ってその「救済観」の一番大きな特徴は、何と言っても「完成段階における救い」すなわち、従来のキリスト教が提供してきた救いを“未完成な”「霊的救い」とするならば、それは“完成された”「霊肉共の救い」であり、それはまさに「実体的救済」による「地上天国の実現」ということに他なりません。

  その「救い」の内容は、長い間、キリスト教が“キリストの再臨があって初めて”この地上に実現すると主張してきた、未来における希望としての「最終的な段階の救い」を意味しています。

  さて、このような、まさにクリスチャンにとっては衝撃的とも言えるメッセージを掲げて登場した統一教会は、創立以来既に50年以上の歳月が経過した今日、果たしてその目的を“達成した”、あるいは“達成しつつある”と言うことが本当にできるのでしょうか?

 

 再臨主による完成段階の「救い」の問題を考えるためには、従来のキリスト教神学の「救済論」に登場する、「堕罪、サタン、贖罪、回心、悔い改め、信仰、義認、新生、サクラメント(聖礼典)、聖化、堅持、千年王国、掲挙、栄化、」等といった概念と、統一原理に登場する、「霊的堕落と肉的堕落、成長期間、間接主管圏と直接主管圏、信仰基台と実体基台、蕩減復帰、アベル・カイン、長子権復帰、メシヤのための基台、復帰された天使長、イスラエル(選民圏)、三位基台、ホームチャーチ、真の父母、氏族的メシヤ、血統転換、胎中聖別、祝福(結婚)、重生、再臨復活、縦横の八段階、王族圏と皇族圏、四大心情圏、三大王権……」等といった様々な概念との、救済路程における位置付けと役割、及びその神学的概念の比較を明確にしていく必要があるのです。(但し、本書ではその詳細に触れることはできませんが……。)

 

 (1) 文先生の思想は「新しいパラダイム」

 

 更に、文先生の思想である「統一原理」はキリスト教を超える「新しいパラダイム」であり、その扱う思想的領域は、“キリスト教よりはるかに広く深い”ため、統一原理に登場する様々な概念を、従来のキリスト教組織神学の概念(枠組み)の中だけで説明を試みることは、もともと限界があり、キリスト教以外の諸宗教、特に仏教儒教等の東洋思想実存哲学、更に唯物論進化論といった様々な非宗教的な哲学概念までも含めて、いわば人類史に登場した“全思想を総動員”しなければ、その概念の解説を試みることは極めて困難であると言えるでしょう。

 特に、「救済論」の前提となる、「神論」「天使論」「霊界論」「人間論」といった、いわば哲学でいう「存在論」の領域は、現代に至り、著しく発達した物理的宇宙観、すなわち「相対性理論」「量子力学」「超ひも理論」や、数学分野における、カントールの「集合論」やゲーデルの「不完全性定理」といった理論によって提示された、“新しい科学的事実”“思考方法(パラダイム)”の助けなくして、その正確な概念を把握することは極めて困難なものと言えるでしょう。

■ 文先生の思想の“新しさ”はその“トータル性”
 文先生の思想の全領域は、過去に登場した思想の部品ともいうべきカテゴリーを、ただ寄せ集めるだけで全て説明し尽くされるといったシンクレティズム(混合主義)的性格のものではなく、全く新しい前人未到のカテゴリー(領域)をもっていることは明らかなことです。
 従ってその概念の説明のために、新しい言語(用語)を必要とすることも少なくありません。しかし、文先生の思想の、過去の思想に対する“優越性”“新しさ”というものは、ひとつひとつの新しい“個別な概念”というよりも、何よりもその“トータル性”にあり、今まで決して融合されることのなかった様々な思想を“統一する視点”を示し、そのパラダイムによってはじめて見えてくる、全く新しい「世界観」であり、「宇宙観」であると言うことが出来るでしょう。

 

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救済論の問題点 目次
はじめに
第1章 統一教会における教典問題
【1】統一教会の「教理」と『原理講論』
【2】『原理講論』の“教典的位置”としての問題点
【3】『統一神学』の問題点
【4】『統一思想』の問題点
【5】「統一教会の教理」に関するその他の「解説書」
【6】文先生の『御言』の中にある「最終的真理」
 
第2章 統一教会の救済観の問題点
【1】「霊肉共の救い」を主張した統一教会
【2】統一教会の主流的救済観─「法廷論的贖罪観」の問題点
【3】「法廷論的贖罪観」が強調されるようになった経緯
【4】「法廷論的贖罪観」の強調は、“反対牧師対策”がその背景。
【5】「法廷論的贖罪観」の問題点。
【6】統一教会内にあった「二つの見解」
【7】「実存と法廷的評価」の分離は「キリスト教型の救済観」
【8】「罪」と「堕落性」の関係
【9】「罪と堕落性」という“対比の仕方”の問題点
【10】「堕落性本性」の内容と「罪」との関係
【11】「性質としての罪」の概念
 
【12】「堕落性」という言葉
【13】 「思い」や「性質」は“罪ではない”と主張する統一教会
【14】 「堕落性と罪」のより適切な対比表現
【15】 キリスト教における「堕落性と罪」の概念
【16】 「原罪」ついての二つの捉え方
【17】 人類始祖の犯罪行為としての「原罪」概念の問題点
【18】 「神の血統」の真の意味
【19】 「淫行関係」と「血縁関係」の概念の混乱
【20】 「罪の遺伝(転嫁)」とは?
【21】 「法廷論的贖罪観」の論理的問題点
【22】 もう一つの救済観─「生物学的血統転換論」の問題点
【23】 統一教会に混在する「二つの救済観」
【24】 『御言』にみる「正しい血統的転換論」
【25】 「心の遺伝」
【26】 「救済論」における「義認」と「聖化」
【27】 統一教会の救済論の重点は、「義認」より「聖化」
【28】 「義認と聖化」は“同時的”に実現
【29】 「罪と堕落性」「義認と聖化」からみた「イスラエル(選民圏)の変遷」
【30】 統一教会の本来の目的は「聖化」の完成
【31】 「第三イスラエル」としての統一教会と「第四イスラエル」時代の到来
あとがき