菅首相は同日夜、記者団に「首相の職務を全うしながら裁判闘争できると思うか」と問われ、「仮定の話にはお答えできません」と述べるにとどめた。
■法曹界「当事者が言うのは…」
法曹関係者からは批判や疑問の声があがった。
強制起訴の導入など検察審査会法改正の議論にかかわった国学院大学法科大学院の四宮啓教授は「首相が刑事被告人になれば日本の外交・内政への影響が大きい。有罪が確定するまで『推定無罪』というのは刑事裁判としては当然の原理だが、政治には別の倫理があるのではないか」。審査会のあり方に関する小沢氏の発言に対しては「プロの判断が常に正しいとは限らず、国民感覚とずれることもある。普段は選挙という民意を重視する小沢さんの姿勢と矛盾する」と述べた。
また、ある法務省幹部は「『素人』発言はまずかった。第三者が指摘するならまだしも、俎上(そじょう)にのっている当事者が言うのはおかしい」。市民の感覚が司法に採り入れられたばかりで見直しの議論をするのは「時期尚早だ」と語った。
ただ、法務・検察内部には、市民感覚や被害者感情が重視され過ぎ別の立場からの意見が言いにくい現状を疑問視する声もある。「法廷に出される被告の負担は大きい。その気持ちがあって小沢氏も発言したのだろう」。この幹部は一定の理解も示した。
審査会の法改正にかかわった高井康行弁護士は「『素人の意見だからダメ』という言い方は審査会の存在意義を否定することになり、不見識と言わざるを得ない」と話す。その一方で、審査会の議決にどの程度の力を持たせるかについては「議論の余地があるのは事実」と指摘する。「小沢さんは言葉足らずで、論点を踏まえたうえで発言したのかどうかはわからない。どこに問題があると考えるのか。きちんとした説明が必要だ」