釣り鐘作戦で作業員引き上げ　チリ落盤

　チリ北部コピアポ郊外の鉱山落盤事故で、地下に閉じ込められた作業員３３人を「釣り鐘作戦」で救出する全容が、１日分かった。チリ政府当局者が明らかにした。約７００メートルのトンネルを掘り、そのトンネルに全長約２メートルの特注アルミ製のカプセルを落として、作業員を１人ずつ引き上げるもの。トンネルが掘れれば３日以内に３３人全員を救出できると、チリ政府は自信をみせている。

　地下約７００メートルに閉じ込められた３３人の作業員を救い出すのは“釣り鐘”だった。チリ政府当局者が１日明らかにしたところによると、高さ約２メートル、重量１００～１２０キロの特注アルミ製カプセルを救出作戦に投入するという。

　カプセルの通称は「釣り鐘」。定員は１人だ。重機で引き上げる力業を駆使する。作業員をしっかりと固定するベルトがあり、引き上げる際に発生する衝撃から保護するためのクッションも装備されている。途中で動かなくなるトラブル対策としてランプ、酸素ボンベ、地上と交信できる通信機器もついている。通信機は、引き上げ途中で救出される作業員が不安にならないように精神的に落ち着かせるため設置された。

　地上に引き上げるのは１人につき約４０分かかる。トンネル内は全行程がエックス線で映し出されていて、カプセルの動きを見逃さずに追っていく。このカプセルは海軍傘下の造船会社が製作した。この釣り鐘救出作戦が始まると、３日以内に３３人全員を地上に運ぶことができるという。

　トンネル掘削作業は８月３０日からスタートし、作業開始から「２日で約４％の約２５メートルに達した」と当局者は述べた。救出のためのトンネルは通気用の小トンネルを拡張して、２本目も掘られる予定。効率よく掘削するための大型機械も数日のうちに来るという。

　救出時に心配されるのは、地下約７００メートルで長時間にわたって暗い中で生活することから、自然光のまぶしさに耐えられるか、どうか。黒い幕などを当てて目を保護するという。また夜間に作戦が行われる可能性もある。地上にたどり着いたら、健康状態によっては首都サンティアゴの病院に搬送される。

　１日は、生存確認ができてから初めて温かい食べ物が差し入れられた。順調に掘削作業が進めば、１１月には全員が地上に戻れるというが、救出作戦には世界が注目することになる。

　［2010年9月3日8時5分　紙面から］