白鵬直訴、琴光喜の断髪式へ「力士会として協力したい」

力士会に出席した白鵬（中）は新十両の城ノ龍と笑顔で握手

　大相撲の力士会が３１日、両国国技館で行われ、同会会長でもある横綱・白鵬（２５）＝宮城野＝が放駒理事長（元大関・魁傑）に対し、野球賭博問題で解雇された元大関・琴光喜（３４）の断髪式実現へ力士会として協力したいとの要望を直訴した。解雇力士の断髪式に力士会が協力するのは極めて異例。理事長は即答を避けたが、横綱を始めとする力士の思いが協会を動かすのか注目される。

　白鵬が放駒理事長に直訴した。午後１時からの力士会。理事長が暴力団等排除宣言の順守を力士に求めた直後だった。最前列に座った横綱が口を開いた。

　「琴光喜関の断髪式を力士会として協力したいんですが。お願いします」

　思わぬ要望に放駒理事長は「すぐには答えられない」と即答を避けたという。琴光喜は野球賭博問題で７月４日に解雇した力士。過去、解雇した関取の断髪式に力士会が協力した例がないだけに、すぐに答えが出ないのは当然だろう。理事長は「独立委員会などの意見も聞かないといけない」と応答して退席した。

　複数の関取によると、琴光喜の断髪式への協力は夏巡業中に白鵬ら上位とベテラン力士が中心に話し合い、力士会会長として白鵬が協会に要望することを決めたという。ある関取は「やったことは悪いことだが、今回はほかにも野球賭博にかかわった力士がいた。琴光喜は大関まで昇進し、協会のためにも頑張ってきた。同じ土俵で戦った仲間として何とか最後はいい形で送り出してやりたいんだ」と熱く語った。

　通常、断髪式は引退した力士個人や部屋が主催し、協会はタッチしない。力士会は主催者から要望を受けて取組などに協力する形で参加する。今回も琴光喜側から要望があることが前提で、ある関取は「頼まれれば、国技館は使えなくてもどこかホテルなどでやらせてあげたい」と明かす。

　関係者によると現在、琴光喜は断髪式を行う予定はないという。果たして協会は、解雇力士の断髪式への力士会の協力を認めるのか。「今回の問題の発端だから軽々しいことは言えない」と放駒理事長は慎重だった。

　◆解雇処分などを受けた力士の断髪式
  ▽双羽黒（師匠とのトラブルで１９８７年１２月３１日に廃業）８８年３月６日に帝国ホテルで行い、約３００人が参加。協会関係者は床山１人だけ。
  ▽若ノ鵬（大麻所持で２００８年８月１８日逮捕、２１日解雇）０９年２月１日に都内のホテルで。力士、関係者の出席者はなく、約２０人の知人がはさみを入れたという。