殺人事件としても、一部否認事件としても県内初となる裁判員裁判は3日目の2日、山形地裁(伊東顕裁判長)で、再び裁判員の被告人質問があり、6人全員が質問した。佐原ナツヱさん(当時75歳)に対する殺人などの罪に問われている佐原二男被告(57)に対し、検察側は無期懲役を求刑。弁護側は「懲役13年が相当」と主張し結審した。裁判員が評議し8日午後に判決を言い渡す予定。【鈴木健太】
裁判員は佐原被告を厳しく追及した。
女性裁判員「どうして検察官の質問には答えないのか」、佐原被告「性的暴行目的とか言ってもないことを調書に書かれた。いくら話しても無駄だ」▽女性裁判員「法廷で弁護士と話す時はいつもにこにこしている。ナツヱさんに申し訳ないという気持ちはないのか」、佐原被告「雑談なんだから笑って話すのは普通でしょ」
検察側は2日、証人として佐原被告の弟の妻を呼んだ。妻は08年3月から事件の約1週間前まで佐原被告から嫌がらせ電話を受けていたと証言した。
検察側は論告で、ガムテープを用意するなど計画的な性的暴行目的だったことは明白▽弁護側は知的障害を主張しているが、タオルを焼却して証拠隠滅を図るなど一般人と何も変わらない--と主張。また佐原被告が捜査段階で性的暴行目的を認めていたことは「十分に信用できる」として無期懲役を求刑した。
一方、弁護側は最終弁論で「性的暴行目的ではなく、葬式代の手間賃をもらうためにナツヱさん宅を訪問した」と性的暴行目的を否定。「軽い知的傷害のため、被告独特の思考方法や行動への理解が必要だ」と主張。強姦致死を否定し「懲役13年が相当」とした。
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起訴状によると、飯豊町添川の無職、佐原二男被告(57)は、昨年11月15日夜、性的暴行目当てに義理のおばにあたる近くの無職、佐原ナツヱさん(当時75歳)宅に侵入。ナツヱさんの顔を数回殴り、タオルで首を絞めて窒息死させ、現金1万2000円を盗んだとしている。性的暴行は果たせなかった。問われている罪は、殺人、強姦(ごうかん)致死、窃盗、住居侵入。
毎日新聞 2010年9月3日 地方版