インドIT企業の社長と会う
昨年出席した友人の結婚式でインドの小規模IT企業の社長さんと同じテーブルになったので興味本位で名刺交換をした。年が明けてから、来日するので会いましょうという連絡を受け、先週うちの会社に来てもらってお会いした。
結論から言うと、インドITに対する見方が180度変わってしまった。
***
日本のIT業界では、インドへのプログラミング業務の発注は2000年くらいに流行り、その後中国にとって変わられて最近インドに発注する例は、少なくとも僕の周りではあまり聞かない。インドも中国も合理的な国民性からか優秀な人も多いのだが、中国の方が断然エンジニアの日本語習得意欲も高いし近いので行き来しやすい。そんなこともあって英語中心のコミュニケーションになるインドは避けられてるんだろうなと考えていた。
(とはいえ、依然西葛西がインド人だらけであることを考えると、仕事はあるんだろう。)
そんなわけで、インドのIT会社が今どういうことになっているのかは興味があったが、正直取引するのは厳しいだろうなあと思いながら面談をはじめた。面談の前にそのことを話した何人かからは、変わったところに興味を持つなあ(つまり物好きだね)と言われた。
その会社の規模は50人くらい。日本語が流暢に話せるのはそのうちの8人。彼らがブリッジ・エンジニアとしてインドの技術者との橋渡しをする。来年中くらいに200人まで増やしてIPOすることを目標のひとつに置いている。社長自身も日本語は超ぺらぺらだ。
「最近は日本の仕事は少ないんですよ」
と言うので、「そうだろうな」と思いながら話していると、その言葉の意味が僕の解釈と違うということが分かってきた。
「日本にはIT投資額を減らす会社が増えてきてます」
「これからIT投資が伸びるのはインド国内、及び中東やアフリカです」
「インドはワールドワイドでどこででも通用する英語力を生かしてそれらの国の仕事を受注していきます」
「今日本で探しているのは仕事を発注してくれる会社ではなくて、インド市場を共同で開拓するパートナーです。一緒にインド市場を開拓し、そこを足がかりに中東やアフリカに進出する、ということに興味はありませんか」
そう、日本がインドに発注しなくなったんじゃない、インドが日本を市場として見なくなってきているのだ。言うなれば、市場としての日本は既に見限られているのだ。このことは新聞やニュースを見ていてなんとなく感じてはいたが、初めてリアルに感じた気がした。
そこまで聞いて不思議だったのが、インド市場を開拓するのに日本の会社と組んでメリットがあるのかという点。その点を聞いてみると、会社を大きくするにはインド政府・地方自治体の仕事など、大きな仕事を受注する必要があるということで、受注するにはまず信用が必要なのだと。
インド政府から見て信用の出来るインドの大手IT企業は、自社で抱えるエンジニアで全て作ってしまって外注をしないという企業文化であること、対してうちの会社も含む日本のIT企業は外注するやり方をすることが多いことから、政府・官公庁・自治体からも信用される日本の大手企業と組むという可能性を模索しているようだ。インドを足がかりに世界市場にチャレンジする企業がもし日本にあれば、双方のメリットが一致していいビジネスになると考えている。
なるほど。
すぐにうちの会社でそういうビジネスに手を出すのは考えにくかったし僕もそういうことを検討する立場になかったので、今具体的な話を進めることは出来ないが、いずれそのような話が出来る状況になってきたら必ず連絡すると言って、その日の面談は終わった。
***
今日お会いできたことに感謝をして別れた後も僕は少し興奮していた。
冒頭に述べたとおり、インドITに対する見方がこの1時間弱で180度変わってしまったのだ。
そして日本と言う国が置かれている立場が、新聞やニュースで聞く以上にリアルに感じられたから。
インドが(ひいては世界が)日本を市場と捉えなくなりはじめたことを生で感じたことへのショック。
市場がないと知るとすぐさま次に伸びる市場にあたりをつけて攻め入るインド人のしなやかさ、そして、英語力と言う武器で世界中どこの仕事も出来るという自負、というか事実、
中小企業の社長でさえ視点がワールドワイドであり、日印双方の企業の利害の一致する方法を模索しているということ。
よく考えたら、中国もそのうち日本を踏み台にしてから日本を後にし、世界市場で戦っていくようになるのではないかということ。
そういうことを考えた。
と思ったら、日本のIT企業でもそういうことはとっくに考えているようです。無知でした。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071207/289067/
しかもこれ、2年以上前の記事ですね。
こんなのもあります。これも2年弱前ですね。僕の上記見方とは矛盾しますが、2年で状況も変わってるかもしれません。
http://www.atmarkit.co.jp/im/cpm/serial/indiaoffshore/01/01.html
細っていく国内企業のIT投資、これが避けられない事実なら、またIT企業のビジネスモデルが今のままである限り、細っていく市場でしのぎを削っていくことになる、そうじゃなくて肥えていく市場に自ら打って出なくてはならないのではないか。
そんなことを考えさせられた日でした。
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