ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

ブラジルで日々おこることをマーケッターの目で解説するページ。広告業界の情報も。筆者はブラジル在住22年目のマーケッター。

流通の二重構造

2010-09-03 07:53:32 | 小売
流通の二重構造

ブラジルには、ミニショッピングという業態の小売がある。ビルの中を小さく区切って店を作って販売するもので、電気製品、パソコン、服飾品、自然食品などさまざまなものが売られてている。

中でも一番強いのが、パソコンやそのアクセササリー、携帯電話、デジタルカメラなどである。一般の小売店やネット販売よりも安く買える。30%くらい安いんではないだろうか。物によっては半額ぐらいのものもある。ほとんどすべて輸入品で、パソコンを含めて国産のものはない。これはいわばブラジルの裏の流通といえるものだが、実施は裏というより、一般的な身近なものとなっている。僕なんかとってもパソコン関係の小物を買うときには不可欠な存在だ。

それを仕切っているのは中国人だ。ブラジル人の業者はマイノリティ。売っているものがどこも似通っているので、大きい胴元がいてそれを卸しているか、独立店のように見せて実際はいくつかのグループが商売をしているのかもしれない。売り手はまともにポルトガル語が話せないのが大部分だけど、そんなのお構いなしで堂々と客商売をしているのは、モノとその値段だけの関係だけの商売だからできる芸当だ。

偽物、不良品、保証なしと心配する人もいるけど、僕の経験では動かないものをつかまされたことはないし、カードの番号を盗まれたこともない。メーカーの保証書などはないけど、店が独自の紙をくれて半年くらいは保証してくれる。

そんなに安値で売れるなら、大成長して巨大グループができるだろうというのは間違いで、企業など購買を経費として計上しなければならない買い手は使えない。なぜなら会計上処理に必要なNota Fiscal(売上伝票)をもらうことができないからである。個人では関係ないだろうといっても、そんな大規模な脱税を認めるほどブラジルの税務署は甘くない。だから大きくなれないし、なろうともしない。

ブラジルは脱税を防ぐために物、サービスなんでもお金と仕事・製品が動くときNota Fiscalが必要となる。店が伝票を発行するということは、税務局がそのお金と仕事の動きを把握するということで、結果として税金が発生する。この伝票はかつては紙で、まぁごまかす方法も存在したが、現在では、すでにほぼ全部の業種で電子伝票が義務づけられ、がっちりと把握される。

この国ではこの税金というのが半端ではないので、もし税金なしでの取引ができれば、その分最終価格は安くなるのは当然。リーマンショックのとき政府が真っ先に使った刺激策は、車と電化製品の工業税をゼロにしたことである(車によって3.5〜7%)。車と家電は裾野の広い業界だから、その効果はたしかにあった。因みにその他の刺激策は銀行の中央銀行への保証積立金の減額と、利子を下げたこと。

税金にはその他、サービス流通税(ICMS)、法人税がある。厳密にいうともっとたくさんの種類がある。

さてこのミニショッピング、伝票をださないので税金を「自主免除」して商いをしている。輸入税の方はどうなっているか知らなけいど、たまに中国人の大物の業者が摘発されたりするから、そこにも「工夫」が施されているのだろう。

当然ミニショッピングという業態は違法で、実際、税務局の摘発がしょっちゅうあるのだが、これがなくならない。それも当然で電化製品へのアクセスをはじめたCクラス、Dクラスが一般のシッピングセンターの店で、同じスペックのものを高く買うわけがない。大衆家電店チェーンも安きなってきたが、さすがにミニショッピングにはかなわない。大型チェーンが勝てるシチュエーションは、分割払いのときである。10回、12回、最近では18回なんていう長期ローンでテレビやパソコンが販売されている。これはミニショッピングの業者は真似できない。クレジットカードも使えないことが多く、せいぜいデビットカードで払わせてくれるくらいだ。

企業家が求める税制改革を政府が実現するまでこの流通の二重化、あるいは住み分けは続くだろう。正規のルートで販売されるものが、先進国並みに下がるまで続くだろう。ブラジルの消費市場は巨大な胃袋だが、食道にはいくつもの経路がある。
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2014年W杯の開幕スタジアムはコリンチャンスの新スタジアムか

2010-09-02 08:51:04 | ワールドカップ2014
サンパウロのサッカークラブのコンリンチャンスは昨日で100周年だそうだ。比較的、所得層の高いサンパウロクラブと比べて、コリンチャンスは大衆的なクラブで、ファンの数からいうとブラジルで一番。

このタイミングで新しいスタジアムを建設、そこでワールドカップの開幕戦を行うと発表した。

サンパウロのスタジアムはモルンビ競技場(サンパウロのホームグランド)が最初に名乗りを上げたが、FIFAに警備、規模などの問題でさんざんいちゃもんををつけられて「予選落ち」の流れだ。

今日の日経新聞のサイトでは、「迷走」でまだ決まらないと報道しているが、こういうのは政治も絡み、グジャグジャになりながら、辻褄が合うのがブラジルのやり方なので、コンリンチャンスのプロジェクトの方が強いような気がする。ルーラ大統領そのもがコリンチアーノで、100周年の式典にも出席している。建設費をスタジアムにスポンサーの名前を付けることによって捻出というのは甘いような感じがするが、それはクラブと建築会社で摺りあわせればよくて、FIFAも政府も結果だけを求めればいい。

しかし、建設予定地のイタケーラは地下鉄があるといっても終点駅で遠いんだよな。車なんかでいったら、ハジアル・レステの大渋滞で辿りつかない。これが大問題。
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新幹線か都市交通か

2010-09-01 06:43:23 | 新幹線
先週の『Exame誌』で強烈な新幹線プロジェクト批判が行われていた。

サンパウロ市南部地区に住む家政婦が、朝7時に勤め先のJardim Paulista(中の上の住宅地)に着くには、4時20分に家をでて、バスを三つ乗り継ぐ。そのどれもラッシュで満員。帰るのには4時間かかるという。距離は30キロ。渋滞がなかったら1時間ぐらいのものだろう。

大部分の都市労働者がこんな劣悪な交通・通勤環境にあるのに、200億ドルもの費用をかけて新幹線を作る必要があるのだろうか? もっと優先すべきものがあるのではないか、それは都市の地下鉄、道路、バス網などの公共交通の整備ではないかというのが趣旨である。平均的なブラジル人のとらえ方だと思う。

ルーラとジルマの選挙戦略とも思える強引さで入札条件が発表されたプロジェクトだけに、対抗馬のセーラも優先事項はたにあると主張している。

新幹線プロジェクトは国が費用をだすわけではなく、民間が出資して建設、運営することによって利益をだすというものだ。しかし、政府は落札業者に政府系銀行を通じて最大約110億ドルの融資を年率3%の超低利(ブラジルではただみたいに安い)でだすことを約束しているし、税制恩典も用意してその負担額は34億ドルというから、国民が負担しないというわけではない。

たしかにこういう国家プロジェクトは国の勢いをつけるのに役立つし、直接、間接の雇用の増大も経済を活性化させる。しかし、このサンパウロの最悪の渋滞、地下鉄の込み具合に悩まされていると、こっちの方を何とかしてくれという気になる、実際。

需要、環境規制とライセンスで、実際どれくらいの費用がかかるか読めないといわれているが、三井物産を幹事とする日本連合も政府の後押しがあるので、後には引けないだろう。しかし、日本企業は本音でいえば、もっと現実的な都市のモノレール建設の方に興味があるそうだ。
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大統領選挙の政見放送が始まった

2010-08-19 03:17:12 | 政治
セーラは保健大臣時代の実績を全面にだし、医療・健康政策にほとんど終始した。現在のルーラへの高支持率(70%を超える)では、政府批判は機能しないし、有権者に彼がいえることはこれしかないだろう。

真面目は真面目とはいえ、ユーザー、市民の証言(つまり賛辞)を積み重ね、医療の現場に自分も登場するというオーソドックスなスタイルだった。映像として一定のレベルには達しているが、クリエイティブな驚きはなかった。明らかにこれまでの枠からでない、「普通」のフィルムだ。大統領候補というより、保健大臣候補のプロモーションフィルムかな。

ジルマのフィルムは予想の通り、ルーラのイメージを自分に結びつけることに力を注いだ内容だ。ルーラも少なからぬ回数登場し、喋りまくった。

ブラジル全体を扱って、雄大なイメージ、今のブラジル力強さを見事に見せている。勢いのあるBGMにのせて、北から南のプロジェクトの現場を、クリエイティブな映像で表現しているし、セリフの喋り方は、明らかにリーダーとしてのイメージを意識している。迫力と自信に溢れていいて、これは演技指導した演出家の成功だ。アマゾンにいるルーラとのかけ合いのテンポのよさは、きちんと計算された効果、つまり二人の一体感を伝えることに成功している。

フィルムとしてのできは完全にジルマの方が上で、これでもう選挙の結果は決まったかもしれない。誰もどの候補が何を喋ったなんて覚えない。音と絵がどれだけ印象に残るか、そのイメージがメッセージだ。

昼はまた違ったバージョンが流れたのだけど、これからそれぞれの陣営は相手のフィルム、世論の変化、マスコミの論調を見ながら調整して毎日、違うバージョンを出していくことになる。製作スタッフは体力だけが勝負だろうね。

セーラのフィルム

ジルマのフィルム

政見放送について

各候補者のプロフィールなど
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今日からテレビで大統領選挙の政見放送

2010-08-18 01:23:00 | 政治
今日から大統領選挙と統一選挙(上院の半分、下院、州知事、州議会)の政見放送がはじまる。これはブラジルのすべてのテレビ、ラジオで同時放送されるもので、一日あたり2時間10分。日曜日を除く毎日放送される。放送局によるこのスペースの提供は義務となっている。義務だけど、代償はあり広告の定価の80%を法人税から割り引くことができる。その金額が今回の選挙では4億8000万ドルにのぼり、4年前の1億3000万ドルから3.5倍以上に増加している。広告枠の定価は需要と供給の関係で、まぁ大体インフレ以上に改定さっるから、それの影響もあるだろうが、この膨張の本当の原因は僕には不明。

テレビの放映時間は午後1時からと夜の8時30分から。昼はともかく夜は完全にプライムタイムだ。この間の広告収入を逃すのはテレビ局としては痛いところで、それを政府がある程度補償するとうことだが、これは局の大小によってとらえ方がちがうだろう。視聴率の高い番組を持たないところは、収入が保証されることになるから。

それにしてもブラジル国民は毎日、この選挙放送を見させられるか、スィッチを切ることになる。しかし、逃げ道もある。衛星、ケーブルの有料チャンネルに切り替えることだ。有料チャンネルでは政見放送は放送されない。やっぱり選挙演説を聞いても面白くない。

しかし、候補者の方は、これに賭けている。どの候補も選挙マーケティング担当のプロを雇って勝負しているのだが(高いギャラをとっていることに加え、候補者が当選したときは政府系の企業や政府そのもののキャンペーンのアカウントが転がり込むことが多い)、彼らの主な腕の見せ所は、この政見放送の良し悪しだ。またお金のかけ方も桁違いで、それぞれの陣営の運動費の半分くらいがこのフィルムの製作に投入されことになる。ジルマの場合は、1700万ドル、セーラはその倍の3400万ドルと報道されている。選挙は見えないお金が動くから、実際はそれ以上の金額となっていることが想像される。

さて劣勢のセーラがどのように巻き返しをはかるか? どういうイメージを作ろうとしているのか?
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