2010年09月03日

ブログへのコメントについて

 このブログを見て下さっている方、有難うございます。

 このブログを貴方が見て下さっているから、このブログは続くわ
けです。

 で、ブログといえばコメントがつきもの。私も、ブログを始めて間
がない頃は、コメントを寄せてもらうと大変うれしかったことを思い
出します。

 ただ、コメントは、原則、ハンドルネームで行われています。と
いうことは、匿名だ、ということです。匿名だと、人間が変わりま
す。普段はおとなしい人かもしれないのに、突然乱暴な言葉遣い
になり‥

 まあ、そんなことがなくても、私は、匿名のアンケートとかに以
前から疑問を持っていました。だから、匿名のコメントの全てに対
して本気で回答するのも如何なものかと思っていた次第です。

 で、最近、ある人の言葉の使い方を巡って意見を言う方がい
て、それを非難したわけです。

 しかし、私に、何故そのような記事の掲載を認めたのかと言わ
れても困る訳です。それは、一見してとんでもないことを言ってい
るのであれば別でしょうが。但し、その方は、その言葉をとんでも
ない表現と受け取ったということは想像ができます。

 いずれにしても、私としては、匿名の意見に対して
一々応える
ことはできないのです。それどころか、それは適当ではないと考
えます。
 
 よく、突然電話がかかってきて、貴方はどこの電話会社、或い
はどこのプロバイダーと契約していますか、なんてことを言う電話
がありますが、アホじゃなかろうか。

 つまり、そういうことなのです。

 何故、相手がどのような人かも分からないのにまともな話がで
きるのか、と。

 しかも、貴方は、何故、○○さんのことばかり肩を持つのかと言
われても困るわけです。

 匿名の人からの勝手な想像に一々答える余裕はないのです。

 俺は有料マガジンを購読しているとか、友人にも宣伝しておい
たというのであれば、話は別です。

 私、事務局を通して以前言いました。

 メールでご意見や質問をされるのであれば、基本的にご返事を
します、と。今回の件でも、メールをして下されば、意思疎通がで
きるわけです。

 ですから、どうしてもこちらの考え方を知りたいと思う人は、ご自
分の身元をはっきりさせた上でメールを下されば、ご返事ができ
るということです。

 その旨、ご理解頂きたいと思います。

 では、失礼します。



columnistseiji at 18:06|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

小沢氏の経済リテラシー

 菅対小沢の対決。議員の支持率では小沢氏が優勢。しかし、
国民の支持率は大差をつけて菅氏が優勢。

 何故かといえば、まだ菅さんは総理になって間がないから。そ
れに、小沢氏には政治とお金にまつわる疑惑が払しょくされてい
ないからだ、と。

 ということで、テレビのワイドショーなどもかなり菅さんよりの発
言が目立っていたわけですが‥、本日のテレ朝のスパモニを見
ていたら、随分雰囲気が違ってきています。

 あのマスコミ嫌いでテレビ嫌いの小沢氏がスパモニに登場した
のです。

 先ずは、政治とお金の話からスタートします。その話題を避け
ることはできないないとテレビ局は考えたのでしょう。そして、小
沢氏も、当然そのことを聞かれると思っていたのでしょう。ですか
ら動ずることはありません。

 で、その後、円高の問題、財源の問題、普天間基地の移転の
問題、閣僚の記者会見の問題、外交の問題、核の問題等々、
様々なテーマについて質問が浴びせられた訳ですが、スタジオ
内の雰囲気は意外に和気あいあいとして、悪くはないのです。


 しかし、小沢氏の主張には多くの?が付くのも事実です。

 小沢氏は、昨日の公開討論会で次のようなことを主張しました。

(1)日本経済の体質
  「(日本は)内需で最低限の経済成長ができる体質になってい
   ない」

(2)為替介入
  「急激な円高のしわよせは大企業より中小零細企業に来る。
   市場介入といっても、日本の単独介入では効果はない。円
   高を利用して海外の資源などに投資すべき」

(3)財源論
  「ひもつきの補助金は、一括交付金にすれば、経費が半分ほ
   どで済む。国の予算のうち政策経費は30兆円以上に上る
   (それらが削減の対象になり得る)」

(4)無利子国債の発行
  「高速道路を地方で造れるように提案。そのために無利子国
   債で補てんすることを考えている」

(5)消費税
  「4年間は消費税の引き上げは行わない。但し、議論をするこ
   とは自由」


 これらは、全て正論なのか?

 いろんな疑問が浮かぶのです。


<消費税>
 16年前の国民福祉税構想は何だったのか? イチロウ・ジロ
ウ・コンビで国民福祉税をぶち上げたではないのか、と。つまり、
16年前に消費税の増税を叫んだのに‥

<日本経済の体質>
 確かに、1年ほど前、民主党はそんなことを言っていました。し
かし、今や国際協力銀行の前田氏まで参与に採用して、インフラ
輸出にやっきになっているわけです。

 まあ、それはそれとしても、政治家が大体、輸出に依存するな
ということ自体がおかしい!

 企業は、海外で売れるから輸出するだけの話。

 我が国は、少子高齢化が益々進むと予想されているわけです
が、そうなれば、もし輸出を当てにしなければ、潜在成長率がマ
イナスになることも懸念されるわけですが、それを受け入れるの
か?

 それに、日本は資源の輸入国。だから、どうしても輸出で稼が
ざるを得ないと。

 さらに、日本は20年間も経済が停滞していると言われるなか、
決定的な危機に陥らずに済んでいるのは何故か? 韓国などと
違って、何故日本はアジア通貨危機に巻き込まれなかったの
か?

 それは、輸出で稼いだ外貨の蓄積があったからなのです。

<財源論>
 まだまだ予算の組み替えで財源の捻出が可能であるというの
であれば、何故昨年末、小沢氏は、ガソリン税率の維持を主張し
たのでしょうか?財源不足を痛感していたからではないのでしょ
うか。

<無利子国債の発行>
 無利子国債については、次のような俗説があるかと思います。

 高齢者が保有している多額の預金が、無利子国債の発行を通
じて、市場に還流することになれば、寝ているお金が動き出すの
で、景気を活性化することにつながるのだ、と。

 これ、全くの誤解です。何故かといえば、本人がそのお金を使う
ことがなくても、その預金は企業への融資の財源などになってい
るからです。


 以上


 詳しく内容を知りたいという方は、経済ニュースゼミ有料版をお
読み下さい。


 小沢氏は、為替介入を果敢にやると言いながら、単独の為替
介入には効果がないと言っていた。がっかりだぜ、と思った方、ク
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columnistseiji at 15:23|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)民主政権 

2010年09月02日

小沢一郎の経済観

 菅対小沢の一騎打ちが始まりました。

 「小沢さんが予算委員会に長い間、座っている場面はなかなか
想像できない」

 「菅さんが予算委員会で居眠りしている場面は簡単に想像でき
る」


 こんなやり取りがあったはずはありません。 悪しからず。

 本日は、菅さんと小沢さんの主張を採点してみたいと思いま
す。 
以下、敬称略


<小沢>
 日本は今、日本人の誇りであった「経済大国」という言葉がむな
しく響くほど経済が停滞を続け‥

<菅>
 バブル経済の崩壊から20年も続く閉塞状況の中、我が国の病
弊は限界に達しています。

■採点 
 二人とも、何を見ているのだろうか? 確かに、雇用環境には
厳しいものがあるが、街を歩いていて、或いはデパートの中を歩
いていて、それほどの悲壮感は漂ってこない。
  それに、そんなに酷い状況なら、どうして中国から大挙して旅
行者が押しせるのか? しかも、ちゃんと日本製と書いてあるの
を確かめてお土産を買うわけです。
 二人の、選挙民にこびるような姿勢が厭になります。
 菅総理などは、毎晩ホテルのレストランやら中華料理やらで豪
華なものを食べているではないですか? 我が国が本当に限界
にあるなら、そんな余裕はないはずです。

<小沢>
 就職できずに人生に絶望している若者や、自らの命を絶つ人た
ち、行方の知れない高齢者が相次ぎ、社会が急速に崩壊しつつ
ある。そのような閉塞感の打破を国民に約束した昨年の総選挙
のマニフェストと政権交代の原点に立ち返り、総選挙マニフェスト
を誠実に実行することに全力を挙げる。

■採点
 前半部分は異議なし。しかし、そのこととマニフェストの実行が
どう関係するのか?
 小沢氏は、マニフェストの実行は、国家予算207兆円の全面組
み替えで可能だというが、それは無理でしょう。

<菅>
 日本が直面する限界を打破し、「元気な日本の復活」を目指し
ます。第一の柱が、「雇用」を起点とした国づくりです。第一に「雇
用」、第二に「雇用」、第三に「雇用」で取り組みます。

■採点
 気持ちは分かります。弱者や若者を助けたいと。その志は大い
に結構! しかし、どうやって雇用を創造するのか? 菅さんは、
医療や介護や環境の分野でというだけです。
 雇用というのは、企業が投資に前向きにならないと生まれない
のです。では、どうしたら投資に前向きになるのか? 金利を下
げたらいいのか? そんなことではありません。儲かる環境を実
現することが必要なのです。つまり、不必要な規制は撤廃すべ
し! でも、そうしたことに対しては、それは市場原理主義だから
と、菅さんは反対するわけです。

<小沢>
 円高効果を生かす一方、今後の急激な円高については、日本
経済をまもるために、市場介入を含むあらゆる方策を果断に実
施する。
 
■採点
 今後の急激な円高とは、具体的にどういう状況を意味するの
か? それに、米国の意向に反してまで為替介入をするつもりが
あるのか? 口だけのような気がします。


<小沢>
 子ども手当は、平成23年度から月額2万円に引き上げ、平成
24年度から満額の2万6千円を支給する。

■採点
 財源はどうするのか? 207兆円の国家予算を全面的に組み
替えても、大した金額にはならないでしょう。また、子ども手当な
ど配るから、円高対策のために使うお金がなくなってしまう。

<小沢>
 漁業についても、平成23年度から段階的に所得補償を導入す
る。

■採点
 ばら撒きをやっても、日本の漁業の強化にはつながらない。

<菅>
 財務省こそ野放図の財政を放置してきた張本人。財務省主導
を改めなければならないというのが、私の政権の眼目だ。

■採点
 認識がおかしい。財務省は絶えず増税を企んできたはずだ。野
放図な財政は、政治家の無責任さがもたらしたものだというべき
だ。

<小沢>
 国の資産のうち200兆円ぐらいは証券化できるといわれてい
る。十分、我々の主張する政策の財源は捻出できる。

■採点
 おかしい、全くおかしい。確かに霞が関の土地建物、或いは国
会議事堂などを売却するとか、証券化してその証券を売却すれ
ば、少しはお金が手に入るかもしれないが、そうなると、今度は、
そうした土地建物を賃借りしなければならず、逆にお金がかかる
結果になってしまう。


 こうしてみると、小沢氏は、相変わらずばら撒き体質であること
がよく分かる。その意味では大変に無責任だと思う。一方、菅総
理は、その点では現実的になっているが、気持ち先行で経済の
ことがまだよく分かっていないという感じがする。

 菅総理は、国民が主体的に参加する民主主義を標榜する。国
民の声を政治に反映させるべきだ、と。しかし、選挙戦での消費
税引き上げの発言にしても、菅総理は、実際にはいろいろな意見
を聞いて判断をするのではなく、独断で何でも決めてしまう性癖
がある。官僚の意見も含めて、専門家の意見をもっと聞くべきで
はないのか。

 菅総理がしゃかりきになればなるほど、菅総理の支持率は落ち
る傾向があるようだ。


 
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columnistseiji at 11:53|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)民主政権 

2010年09月01日

リフレ派対反リフレ派

 池田元久財務副大臣が、昨日、為替介入をやる場合には、日
銀は非不胎化をはっきりやってもらわないといけない、と言ったと
いいます。

 為替介入もできないくせに、為替介入をやった場合には‥なん
て言っても意味ないじゃん!

 その前に、非不胎化と聞いて、すぐ意味が分かりますか?

 そうですね、為替介入して‥、つまり外為市場で円を売りドルを
買った結果、市場にはその分円があふれ出るわけですが、それ
を日本銀行がオペを通じて市場から吸収することをいう訳です。

 つまり、日本銀行が過剰な流動性を市場から吸収するために
行動するのが不胎化ということであるわけで、その反対に、何に
もしないのが非不胎化ということになる、と。

 だから、細かい話で恐縮ですが、仮に池田財務副大臣が持論
を述べるとすれば、不胎化はやるべきでない、というべきなので
す。

 まあ、いずれにしても、この人は、デフレ脱却議連の顧問をやっ
ているだけあってリフレ派に属すると思う訳ですが、経済のことに
ついて分かっているとは思えない‥と。

 ですから、そんな政治家たちが、脱官僚を目指すと口で幾ら格
好のいいことをいっても、それは余りにも空虚にしか聞こえないと
いうことなのです。


 で、本日は、この池田副大臣のことを批判するのが目的かとい
えば、そうではなく、リフレ派の考えを含め現下の経済問題を解
決するためにどんな考え方が主張されているかを改めて整理し
てみようと思う訳です。

 歴史をちっとだけ遡ることにしましょう。

 マンガマンと揶揄されたあの麻生首相の時代。

 彼は、海外から経済の専門家が来て会談するとよく、こんなこと
を言っていましたね。

 「日本では、長い間、金利がほぼゼロの水準になっている。し
かし、こんなに金利が下がっても、企業は銀行からお金を借りよ
うとしない。それどころか、これまで借りたお金を銀行に返してい
る。こんなことが起きるなんて経済学の教科書にはこれまで書い
てなかった。で、そうした状況では、政府が国債を発行して公共
事業を行うのは適切な行為なのだ」

 で、麻生さんの話を聞いていた外国人が何と返答していいか黙
っていると、麻生さんは、俺はすごいだろ、と得意な顔をするので
した。要するに、教科書よりも俺の言っていることの方が的確な
のだ、と。

 確かに、教科書は、不況対策として財政政策と金融政策があ
ることを教えています。そして、金融政策の場合には、不況にな
ったら金融を緩和し、金利を引き下げるべきである、と。

 しかし、教科書をよく読めば、金融を緩和しても、金融政策に効
果がない場合もちゃんと記述されているわけです。それに、あの
ケインズでさえ、起業家のマインドが弱まっている場合には、
少々金利を下げたところで効き目がないこともあると言っている
わけなのです。

 つまり、麻生さんが、そうした現象を初めて発見したわけではな
いのだ、と。

 いずれにしても、麻生さんは、金融政策の効果がないのなら、
財政政策を発動するしかないという立場になります。言うまでも
ありませんが、あの亀井氏なども、同じような発想で、財政出動
をいつも口にしている、と。

 ということで、先ずは、財政出動派という人がいるわけです。
で、更に細かくいえば、この人たちのなかには、そうは言っても、
余りに国の借金が増えるのも考えものだという人もいれば‥、そ
うではなく、国の借金とはいっても、それは厳密には政府の借金
であり、また、日本国が海外から借金をしているわけではないの
で、どんなに国債を発行してもいいのだ、という人もいる訳です。

 で、麻生総理は、積極的に財政出動をすべきであり、また、ど
れだけ国債を発行しても何も恐れることはない、とあっけらかんと
しているわけです。

 貴方は、麻生さんの考え方を支持しますか?

 支持するという人もいれば、そうではないという人もいるでしょ
う。

 ただ、経済界の大勢や国民の多くは、消費税の増税に理解を
示しており、そのことから考えると、国債の発行には一定の歯止
めが必要であろうという意見の方が主流だということになるわけ
ですが、そうなれば、なかなか財政出動もままならぬ、と。

 では、どうするのか?

 ここにリフレ派が登場します。

 財政出動には限界があるかもれないが、デフレを直すために
は、財政出動に頼らなくても世の中に出回るお金の量を増やしさ
えすればインフレが必ず起きるはずであり、そうなればデフレか
らの脱却が可能である、と。

 つまり、リフレ派は、日本銀行の尻を叩いて世の中にどんどん
お金を流通させることを主張するのです。お金の量が増えさえす
ればインフレが起き、そしてインフレが起きれば、貨幣の価値が
下がるから、人々は価値が下がる前にお金を使ってしまおうと思
うだろう、と。そして、そうなれば、消費が活発化し、経済は回復
する、と。

 そんなことを主張するのは、竹中教授であり、クルーグマン教
授であり、そして、あの高橋洋一教授は、財政出動派とリフレ派
を兼ね備えたアグレッシブな意見の持ち主である、と。また、お札
に有効期限を設けることを主張する深尾教授もいるわけです。

 しかし、リフレ派の言い分は根拠がないというのが、野口悠紀
雄教授であり、小幡績教授であり、また、ブログ界で特に著名な
あの池田信夫教授であるのです。

 私、池田信夫教授は、考え方の基本的方向は支持できるので
すが、そのキャラクターにとてもついていけない部分もあり、何と
言っていいのか‥

 で、乱暴な言い方をすれば、リフレ派に反対する考え方の多く
は、どちらかと言えば、サプライサイドの面を重視することになる
と思う訳です。

 野口教授は言います。物価が低下しているのは、新興国との
競争が激しいからという要素が大きく、そのため、日本として海
外との競争に勝ち抜くためには、人件費の面で顕著な差がある
新興国と真正面からぶつかり合うのではなく、例えば、企画は日
本国内で行っても、製品の生産自体は新興国にアウトソーシング
し、そして、先進国でその製品を売るようなことにすればいい、
と。そうすれば、人件費の格差が大きいとしても、日本の競争力
は維持できる、と。或いは、製造業にばかり目を向けずに、金融
立国を目指すようにすればいいのだ、と。

 まあ、私の場合には、金融立国というのを主張する気はありま
せん。それは、今でさえ、日本の金融には大きな規制がかかって
いるからです。

 否、別に個別の金融機関が海外を目指すのなら、一向に構わ
ない、と。

 しかし、そんなことは簡単には認められないわけです。

 考えたらおかしな話です。

 日本の金融機関は、もう長い間、資金需要がないと愚痴をもら
してきました。

 国内には、後ろ向きの資金需要はあっても、将来性のある融資
先は限られている、と。仮に貸したいところが見つかっても、すぐ
大手の銀行が乗り込んでくる、と。

 そんなにお金を豊富に持っているのであれば、何故海外に子
会社を作り、海外の企業や消費者にお金を貸さないのか?

 ところが、日本の金融機関というのは、バブルが崩壊した後、
悉く駐在員事務所や海外支店を閉鎖してしまったわけです。つま
り、そうした事務所や支店は本来の役割を果たしていなかったの
だ、と。

 もし、日本の金融機関が融資先がないといって困っているので
あれば、金融庁は、金融機関の海外進出をもっと積極的に認め
るべきではないか、と思うのです。

 ちょっと話が横道に逸れた感がありますが‥

 財政出動派、リフレ派、サプライサイド派‥、それ以外にもあります。

 何と名づけていいか迷いますが、社会主義派とでも言いましょ
うか‥

 そう、菅総理のブレーンをしている小野教授の考え方です。

 景気が悪いのは、国民がお金を使わなくなっているからだ、特
にお金持ちがお金を使わないのが原因だ、と。だとすれば、お金
持ちに税金をかけてそのお金を国が代わりに上手に使って上げ
れば、景気はよくなる筈だ、と。

 私も、小野教授の言いたいことは多少は分かります。

 しかし、問題は、お金持ちにだけ重い税金をかけることの合理
性をどこに求めるか、ということです。それに、お金持ちは、政治
家を陰で操るわけですから、なかなかお金持ちに税金をかけると
いうことは難しいということで‥。

 いずれにしても、まとめると、次にようになるわけです。

 景気が悪いのであれば、財政出動をすべきだ、と。これが財政
出動派。

 そして次に、デフレの原因は、世の中に出回る貨幣の量が少な
いことが原因だから貨幣の量を増やす政策をとるべきだ、と。そ
して、インフレを起こせば景気回復につながる、と。これがリフレ
派。

 そして、そういうことではなく、日本の企業の競争力を維持強化
することが本質だという、サプライサイド派。

 そして、最後に、お金持ちに税金をかけてお金を徴収し、政府
がお金持ちの代わりにお金を使えばいいという考え方。これが社
会主義派。


 私は、財政出動派の考え方は支持できません。財政出動をす
れば、確かに一時的には経済成長率の落ち込みを防ぐことがで
きるのですが、それ以上に国債残高が累増してしまいます。そし
て、財政出動に頼る姿勢があるために、つい無駄な事業にもお
金を使ってしまい、結果として無駄の温存をしてしまっているの
です。それに、今はまだ問題が顕在化していませんが、いずれ海
外投資家の日本国債の保有割合が増大するような事態になれ
ば、日本の経済的安定性が大きく脅かされることになってしまい
ます。

 リフレ派の考え方に対しては、中央銀行というものは、金融の
引き締めは比較的容易に行うことができても、金融の緩和を行う
ことには限度があるということをリフレ派の人は殆ど理解していな
いことを指摘したいと思います。

 私は、インフレにする方法がないと言っているのではありませ
ん。しかし、インフレにするためには、日本銀行の尻を叩いて金
融を緩和させることよりも、もっと効果的なことがあるのです。早
い話、工場の操業を一時停止させたり、或いは海外からの輸入
を一時停止させて、モノ不足の状態を人為的に作り出せば、簡単
にインフレは起こります。或いは、政府が、国債の発行に限度を
設けることなく、そして子ども手当どころか、全国民を対象にした
国民手当を一人当たり100万円でも支給すれば簡単にインフレ
になるでしょう。でも、そうやってインフレが起きても、事態は改善
すると言えるのでしょうか。

 クルーグマン教授は、お金の価値がなくなると、人々はモノの
購入を急ぐはずと言いますが、必ずしもそうはなりません。お金
の価値がなくなると、金(ゴールド)や他の資産、或いは外国の通
貨に交換されるだけの話かもしれないのです。

 やっぱり、不必要な規制をとっぱなるなどして、企業にとってもっ
と儲かるような環境を整えるようなことが基本であるのです。儲
かれば、企業は投資をし、儲からないから投資を控えるのだ、
と。


 
 貴方は、どの考え方を支持しているのでしょうか?


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columnistseiji at 12:06|この記事のURLComments(4)TrackBack(0)デフレ | 景気

2010年08月31日

トロイカ体制と茶番劇

 闘うと言ったからには、真剣勝負でやって欲しい!

 それが視聴者の願いというものです。勝っても負けても、必死で
勝負するから観ているものを感動させるのだ。

 ところがどうだ。鶴の恩返しならぬ鳩の恩返し!

 小沢様には恩義がある。このまま黙っている訳にはいかぬ、と
ばかり鳩さんがしゃしゃり出たわけです。

 だとしたら、3カ月前のあの親指を立てたポーズは何だったの
か、と。

 でも、鳩様は、私は暫く別室でお仕事がありますが、決して覗か
ないでね、と言って‥

 へー何て思っていると、トロイカ体制なのだとか。

 トロイカ?

 実は、国民の皆様はご存知ないでしょうが、3人そろってお寿司
屋さんに行っているのですよね。場所と日時は言うことができま
せんが。


 板前さん「へい、いらっしゃい! 何にしましょう」

 鳩さん「お勧めは?」

 板前さん「何でも入ってますよ。でも、今日は中トロが‥」

 鳩さん「じゃあ、トロ」

 菅さん「じゃあ私は‥」

 鳩さん「その前に、一郎さんは何を頼みます?」

 菅さん「えー?」

 一郎さん「というか、豆腐を買ってきたのだけど、ここで食べる
わけにもいかないだろうから‥、なあ、直人君」

 菅さん「実は、私もラーメンを食べたばかりで‥」

 鳩さん「菅さんは、ガリだけでいいの?」

 菅さん「じゃあ、イカをお願い!」

 鳩さん「イカだけに、イカスなんていいたいの?」

 一郎さん「生かすも殺すも数だということが‥」

 板前さん「お客さんは何を?」

 鳩さん「だからいったでしょ。一郎さんは、お豆腐を美味しく食べ
たいのだ、と」

 一郎さん「豆腐は家で食べるとして、私は、鯛を食べようかな。
 じゃあ、鯛を食べたい!」

 鳩さん「やあ、おもしろい、サブトン一枚!」

 板前さん「鯛ですね。美味しいのが入っていますよ」

 鳩さん「僕ちゃんも頼みたくなっちゃったな」

 板前さん「他にもいいのが‥」

 一郎さん「あれ、あんの?」

 板前さん「はい?」

 一郎さん「韓国の人が好きなエイの刺身」

 板前さん「入っていますよ」

 一郎さん「じゃあ、エイもね」

 鳩さん「エイ、じゃあ、私が全て支払わせてもらいます」

 菅さん「鳩さんはいつも気前がいい!」

 鳩さん「お礼をいうのならママにね!」

 板前さん「先ずはトロ、さあ、どうぞ。次にイカ。で、その次が
鯛、で、最後にエイ」

 

 それを傍のカウンターで聞いていた記者が、本社に報告しまし
た。

 「トロ、イカ、タイ、エイです」

 「えっ、トロイカ体制?」

 ちゃんちゃん!


 それにしても、今頃になって、代表選に出ないなんていってもら
ったら困ります。でも、よく聞いていたらでるのですね。

 トロイカ体制なんて言葉はきれいかもしれませんが、要するに
三竦み状態になっているだけではないですか。

 三竦み‥‥ 蛇はナメクジを恐れ、ナメクジは蛙を恐れ、蛙は
蛇を恐れる、と。


 菅さんは、数の優位から一郎さんを恐れ、しかし、一郎さんは
国民の支持という点で、菅さんを恐れ、そして、数の優位を確立
するためには鳩さんの力を必要とし、そして鳩さんは、過去の人
とならないためには、菅さんの支援を必要とする、と。

 それに、一郎さんも鳩さんもお金の問題で脛に傷があるので、
現職の菅さんが変な動きに出ると、それはそれで大変困ることに
なる、と。

 皆が、それぞれにカードを持った状態!

 決して本気で協力しようなどとは思っていない状態!

 戦略的互恵関係とでもいいましょうか‥

 民主党の代表は一郎さんで、しかし、総理は菅さんのままでい
いや何て考えているということでしょうか。

 

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columnistseiji at 18:50|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)民主政権 

経済対策に自信が持てない理由

 昨日、政府が経済対策の基本方針を発表しました。

 財源がないなかで何とかしたいという気持ちは分からないでは
ありません。その意味では同情したくもなるわけですが、しかし、
政治家たるもの国民に同情されるようでは頂けません。

 政治家たるもの、国民に夢と勇気を与えるとともに、時として厳
しいことをいうことも求められているのです。

 いずれにしても、経済対策の基本方針を読むと、おやおやと思
ってしまうわけです。何故ならば、一番最初に出てくる言葉が、デ
フレ脱却が当面の目標だ、というからです。

 物価のことなんか気にするな、と私は言いたい。

 物価のことばかり気にしているから、どうしても日銀ばかり批判
したくなり、そうして、不況の原因から目をそらしてしまうことにな
るからです。

 あの竹中教授は言いました。デフレは貨幣的現象である、と。
そして、貨幣的現象であるから、中央銀行が貨幣を大量に放出
すれば解決できるのだ、と。

 しかし、物価が低下するのは、貨幣の供給量が少な過ぎるから
起きているのではありません。供給能力が現実の需要に比べて
大き過ぎることが物価が下落する主因なのです。だとしたら、デ
フレを貨幣的現象として理解し、従って、デフレの原因は全て中
央銀行にあるとする考え方が適当かどうかはすぐ分かるというも
のです。

 しかし、今や、みんなの党を始めとして多くの政治家がそうした
考え方に洗脳されてしまっているのです。

 経済対策の基本方針というからには、もっと大切なものが最初
にくるべきではないのでしょうか?

 例えば、この円高にどう対応するのか、とか、円高は何故起こ
っているのか、とか、日本の製造業の将来をどのように展望する
のか、とか。

 話は跳びますが、皆さんに一つだけ言いたい。

 多くの人が、デフレと円高に大変だと悲鳴を上げている訳です
が、では、最近の日本がデフレではなく、物価が年率数パーセン
ト上がり続けていると仮定してみて下さい。いいですか、物価が
下がる状態ではなく、物価は上がっているのだ、と。で、そうした
状況で今のような円高になったら、日本はどうなっているか?

 いいですか、例えば、物価がここ数年年率3%ほどで上昇を続
けており、そして、1ドル83円台になってしまった、と。

 デフレが起きていない分、今より円高の影響は軽く済んでいる
と言えるのか?

 答えは、ノー。

 もし、ここ数年日本で物価が上がっていたとして、輸出企業のド
ル円の想定レートは、もっと円安になっていたはずだからです。
何故ならば、原材料費や人件費などが上昇している分、円に換
算した輸出代金は増加しないと採算が取れなくなるからです。

 つまり、今、1ドルが83円台だとか84円台だとかで困っている
のが事実だとしても、もし、これまでに日本で物価が上がってい
たとすれば、日本の輸出企業の痛みは今以上になっていたとい
うことなのです。

 物事には、表と裏があります。いい面もあれば悪い面もある、
と。どうして悪い面ばかりみてしまうのでしょう。その点で、もう貴
方は負けている、と。

 
 いずれにしても、幾ら日銀の尻を叩き、そして政府が自ら経済
対策を打ち出そうと、我々はなかなか自信を持てないでいるのが
事実ではないでしょうか?

 では、何故自信が持ていないのか?

 それは、我々が、真実から目を遠ざけようとしているからなので
す。

 何故、我が国の企業は、豊富な手元資金がありながら、それを
投資に回そうとしないのか?

 さあ、何故でしょう?

 それは簡単なことなのです。

 つまり、少子高齢化の影響もあり、なかなか消費が伸びないか
ら。つまり、売れないから。もちろん、細かく見ていけば例外もあ
るでしょう。例えば、この10年、20年の不況のなかでも、通販や
健康食品などは大きな成長を遂げていると言っていいでしょう。し
かし、全般的には、売り上げはなかなか伸びていないどころか、
落ちている、と。

 で、そうやって儲からないことが予想されるから、企業は投資に
二の足を踏むのだ、と。そして、企業が投資を控え、労働者の採
用を控えるから失業者が増えてしまう、と。

 でも、幾ら国内の消費が盛り上がらないとしても、輸出によって
儲けるという手もあります。現実に、リーマンショックの前までは、
輸出という手段に頼って緩やかな景気回復を果たして来ていた
わけです。

 では、今後も輸出に頼るしかないではないか、と。

 確かにそうかもしれませんが、その輸出に今円高が襲いかかっ
ているわけです。つまり、円高が起こると、輸出企業の採算が合
わなくなってしまい、儲けることができなくなる、と。で、そうなる
と、ついには海外に脱出しまうところも出てくるのだ、と。

 では、円高を阻止すればいいではないか、と。

 確かに、政府・日本銀行が為替介入に打って出る手段は、ある
と言えばある訳です。

 しかし、我が国よりも遥かに高い失業率に悩む米国が、円安ド
ル高にするような為替介入を黙って見逃す筈がありません。そん
なことをすれば、とんでもないリアクションがあるはずである、と。
それに菅総理はやっと気がついたから、今は、為替介入なんて
言葉を口に出すことはないのです。

 為替介入ができなければ、日本の輸出企業は、海外との競争
に打ち勝つことはできないのか?

 そんなことはないのです。日本が幾ら為替を円安にもっていくこ
とができなくても、もし、賃金を大幅に切り下げることが可能であ
れば、企業の採算ラインを大きく下げることが可能になり、我が
国の輸出メーカーも海外に脱出することなど必要はなくなるので
す。

 では、我が国において、国際競争力を維持するということで、賃
金を大幅に引き下げることが可能であるのか?

 これは、大変に難しいであろう、と。

 そうでなくても、デフレのなかで賃金の伸びが止まってしまって
いるのに、これをもっと下げるなどと言えば、国民が黙っている筈
はないでしょう。

 確かに、そうなのです。賃金の大幅な引き下げなどできないと
いうべきでしょう。

 しかし、冷静になって考えると、海外には、日本人の賃金の半
分とか、或いは1/10でも働いてくれる労働者がいるわけですか
ら、一般的には、そうした国の企業と互角に戦おうとすることがそ
もそも無理だということに気が付かなければなりません。

 だとすれば、残る手段は、そうした新興国では生産することが
できないような製品を我が国が開発するしかないということになり
ます。

 結局、日本が、今後も世界との競争に打ち勝っていくために
は、そしてそうすることによって国内の労働者に働く場を提供す
るためには、日本独自の技術を開発をし、維持していくしかない
ということなのです。

 つまり、政府は、民間企業が手を出しづらい基礎研究にもっと
お金を費やしたり、或いは、独自の技術や商品を開発したような
企業をもっと優遇するような措置を取るべきなのです。そして、労
働者の育て方にしても、一律に子ども手当を支給したり、高校の
授業料の無償化をするのではなく、努力をし成績が伸びたような
子どもに対し授業料を免除するなどの措置を取るべきなのです。

 いずれにしても、儲からないから企業は今投資をしようとしない
のです。従って労働者の採用も行わない、と。

 だとすれば、企業が儲かるような環境作りが必要である、と。

 では、どうすれば、企業は儲かるのか?

 一番簡単な方法は、円安にして輸出競争力を強化することでし
ょう。で、それがダメな場合には、賃金の決定方式をもう少し柔軟
にして、賃金を下げることも考えられるわけですが、それは現実
的に難しかろう、と。

 だとすれば、残るは、企業や労働者自身が切磋琢磨して、技術
力や能力を磨き、日本が他の国が真似できないような製品を作り
出すほかないということになるのです。

 そのためには、地道な努力が必要であるのだ、と。

 そうしたことは、貨幣の量を増やしたからどうかなるというもの
ではないのです。


 後は、世界のお金持ちのニーズをよく探り、彼らが欲しくなるモ
ノを生産するとか、日本食の美味しさを世界のお金持ちに分かっ
てもらい、日本の農業や漁業を育てることも考えられます。


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columnistseiji at 15:51|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)景気 

2010年08月30日

日銀の追加金融緩和策

 日本銀行は、本日、臨時の金融政策決定会合を開き、追加金
融緩和策を決定しました。

 具体的には、昨年12月に導入した新しい資金供給手段の規模
を現在の20兆円から30兆円へ増額するというものです。但し、
期間がこれまでの3カ月ではなく6カ月となるということで、結果と
して、期間3カ月の資金供給規模が20兆円となり、期間6カ月の
資金供給規模は10兆円になるということです。


 まあ、こうしたこともあって、本日株価は大きく回復しているとこ
ろです。

 皆さんは、今回の決定について、どう考えますか?

 遅過ぎたが、よかった?

 しょぼい内容かもしれないが、何もしないよりよかった?

 でも、今回の新型オペの拡充案に関しては、日銀の政策委員
のうち、お一人が反対の票を投じたのだとか。

 反対したのは、須田美矢子審議委員。

 須田さんは、3月に、この新型オペを10兆円の規模から20兆
円の規模に拡大するときにも反対をしていました。

 皆さんは、どう思います? 反対した須田審議委員のこと。

 とんでもない人だ?

 私は、そうは思いません。彼女は信念を貫いたと思うのです。

 で、本当は他にも反対したいと内心思った人がいないこともな
いと思うのですが、大人の対応をしたのだ、と。

 つまり、ここで変な意地を張って、政治家やマスコミやマーケット
を失望させても仕方がないではないか、と。

 何故、私がこんなことを言うのか?

 それは‥

 我が国の企業は、今、余裕資金が過去最高の水準にあるから
です。今年3月末の時点で、金融機関などを除く民間企業の現
金・預金残高は、何と過去最高水準の202兆円もあるのだとか。

 それに先日ご紹介したように、我が国の企業は、最近、有利子
負債を長期の社債で保有する動きに出ているとかで、少なくても
大企業は、資金の調達面では全然困ってはいないのです。

 ですから、いくら新型オペを拡大するといったところで、それを
一般の企業が有難がるということは余り考えられず、単に資金繰
りに困っている銀行などが助けられるというだけの話ではないで
しょうか。

 というのも、この新型オペは金利入札方式ではなく、固定金利
方式であるため、資金繰りに困っている銀行も、低利で長期間の
資金調達が可能になるからです。


 ということで、専門家であれば、殆ど効果はないであろうと思う
今回の決定も、しかし、日本銀行が臨時の金融政策決定会合を
開催したということで、それなりの敬意を示したというだけの話で
あるのでしょう。

 

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columnistseiji at 13:36|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)日本銀行 

2010年08月29日

バーナンキ議長の悩み

 昨日、バーナンキ議長の4つの追加緩和策を紹介しました。し
かし、そのうちのインフレ目標値の設定は完全に可能性がなく、
残りの3つの選択肢も、さらに状況が悪化した場合に実施の可能
性があるというだけです。

 つまり、バーナンキ議長は、まだまだ手段は残されているとは
いうものの、その態度は極めて慎重である、と。

 では、何故彼はそこまで慎重であるのか? 本日は、それにつ
いて考えてみたいと思います。

 昨日もご紹介したとおり、バーナンキ議長が、こうした選択肢は
さらに状況が悪化した場合に行うと言っていることに対して、あの
ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授は批判をしていま
す。

 今やらなくて、何時やるのか、と。

 リフレ派の親分のようなクルーグマン教授です。彼は何と言って
いるのでしょうか?

 
 PBSのNEWSHOUR からです。

 Yes, he said we will do something if the situation
warrants. But here we are. You know, this is -- we're now 
32 months into this slump. Unemployment is disastrously
high. Growth, we -- the economy needs to grow about 2.5
percent annual rate just to keep unemployment from
rising. It's not doing that.

「彼は、状況が求めれば対策を打つことになると言った。しかし、我々の
状況はどうなっているのか。我々は今や32ヶ月間このスランプに落ち込
んだままである。失業率は壊滅的に高い。経済成長率は‥、失業率が上
昇しないようにするためには、約2.5%の成長率が必要である。しかし、
そうはなっていない。

What would it take to justify action? So, you know, it was
a good signal that he is saying, you know, the Fed is kind 
of, sort of willing to do something, maybe, which is better
than previous statements. But, if this isn't a situation
that warrants action now, what would be that kind of
situation? Do we have to have a whole Great Depression
to get the Fed moving?

「行動を正当化するためには何が必要であるというのか? 彼が、連銀
は喜んで何かをしようといっているのは、以前の表現よりも改善はしてい
る。しかし、今が行動を正当化する状況でないとしたら、どうならないと行
動しないというのか? 連銀が動き出すためには、大恐慌に陥る必要が
あるのか?」


<中略>

I think it should be throwing everything, including the
kitchen sink, at the problem. I mean, Doug is saying that
there's -- the Fed has done all it can do. That's not what
the Fed says. The Fed says it has ammunition; it
continues to have the ability to act. So, we should take
them at their word and see them actually act. They can do
purchases of long-term bonds. They can raise their
inflation target, which, you know, Ben Bernanke, when he
was a Princeton economics professor, advocated for Japan
when it was in a similar situation.

「連銀は、この問題に対し全ての策を発動すべきだと考える。Dougは、
連銀はできることは全てやっていると言う。しかし、連銀の言うことは違
う。連銀は弾薬を持っていると言う。引き続き行動できると言っている。彼
らは長期債券を購入することができる。彼らはインフレ目標値を引き上げ
ることができる。それはバーナンキ氏が、プリンストンの経済学の教授で
あったときに、日本が似たような状況にあったとき日本に勧めたものであ
るのだ」

Sure. The -- the Fed has -- it has in its mind and more or
less publicly an idea of what it wants the inflation rate
to be over the next five years. It's -- that's believed to
be about 2 percent. If the Fed were to make it known
that, look, we actually think it should be 3 percent, that
would at least give some incentive for people,
corporations that are sitting on piles of cash to say, you
know, that cash is going to be worth a little bit less. We
should spend more, give it a -- make it a little bit more
attractive for people who are deciding that they have a
good investment project, but they're not really sure
whether they should borrow for it.

「連銀は、心中、向う5年間におけるインフレ率をどうしたいかという考え
があるのだ。それは、約2%であると信じられている。もし、連銀がそれを
知らせることがあったとすれば、それは3%でなければならないと思う。
3%あれば、お金の上に座り込んでいる国民や企業にインセンティブを与
えるであろう。そうしたお金が、価値がなくなるということになるのだ。我々
はもっと支出をしなければならない。よい投資案件があると思いつつも、
そのためのお金を借りるべきか判断がついていない人々にとって投資を
魅力のあるものにしなければならない」


It will make them think, well, it will be a little easier
to service that debt. It's something that can move
decisions at the margin. There is a whole list of things
that the Fed can do. They are all uncertain, because we
are in uncharted territory. We haven't been in this kind of
situation, where short-term interest rates, which the Fed
really controls directly, are basically zero. We haven't
been in this situation since the 1930s.

「そうすれば、彼らは、借金の元利払いが少しは楽になると考えるであろ
う。そして決心をさせることができる、と。連銀が行うことのできる政策の
一覧表がある。それらは、全て不確かなものだ。何故ならば我々は海図
なき領域にいるからだ。我々は、このような状況に至ったことはなかっ
た。連銀が直接誘導する短期金利が基本的にゼロになっているのであ
る。1930年代以降、こんな状態になったことはないのだ」

But that's not a reason not to act. And yet the Fed is sort
of saying well, you know, it's -- things are uncertain.
Maybe things will improve. And this may not look like a
crisis to the Fed, but to the very large number of people
who are unemployed, to the near-record number of people
who have been unemployed for more than six months and 
more than a year, this is a crisis. I'm amazed that there is
no greater sense of urgency here.

「しかし、それは行動をしないことの理由にはならない。連銀も言ってい
る。状況は不確かだ、と。多分状況は改善するであろう。連銀にとっては
危機には見えないかも知らない。しかし、職を失った多くの人々にとって
は、あるいは半年以上、1年以上失業している過去最高に近い数の失業
者にとっては危機であるのだ。緊急性を感じないことが不思議でならな
い」


<中略>

We need to do something to make this economy stronger,
not five years from now, not 10 years from now, but now.
We need to prop this up. Yes, it's true that the aftermath
of financial crises is usually a long period of poor
economic performance. But that's not something to just
accept.

「我々は我が国経済を強固なものにするために何かをすることが必要で
あるのだ。5年先とか10年先とかいうのではなく、今やることが必要なの
だ。経済を元気づける必要がある。金融危機の結果、通常、経済の悪化
が長期間続くというのは、そのとおりだ。しかし、それを受け入れるべきで
はない。

We're supposed to do something different. When Japan
had a somewhat similar situation in the 1990s, after its
bubble burst, American economists, American officials
were caustic about the unwillingness of the Japanese to
take strong action to deal with their problem, the way
they were just sitting there. And now we're doing the
same thing.

「我々は違った何かをすると思われている。日本が1990年代に、バブル
が弾けた後同様の状況にあったときに、アメリカのエコノミストや官僚は、
日本人がそうした問題を解決するために強力な行動に出ようとしないこと
に辛辣に批判した。ただ、手を拱いてみているだけだ、と。しかし、我々
は同じことをしているのだ」

We are turning Japanese in our economic policy. This is
not something we should be accepting.

「我々は、経済政策に関して、日本人になってしまっている。これではいけ
ない」


 さあ、如何でしょうか?

 リフレ派の人は、さぞかしわが意を得たりと感じていることでしょ
う。

 では、バーナンキ氏が慎重である理由を振り返ってみましょう。
彼は4つの選択肢について、どう言っていたのか?

 先ず、連銀による長期国債の買入。

 これについては、十分な経験がなく、長期国債の購入がどのよ
うな効果とどのような副作用があるかについて不確かであり、慎
重にならざるを得ない、と。

 第二の選択肢は、FOMCの声明の表現を修正する案です。

 まあ、これは非常に玄人っぽい話で、一般の人にとっては、どう
でもいいような話かもしれません。

 バーナンキ氏は、参考になる話として、カナダ銀行の例や日本
銀行の例を挙げていましたが、いずれにしても連銀の真意を伝
えるのは難しい、と。

 第三の選択肢は、超過準備用金に対する金利の引き下げです。

 これも非常に専門的な話で、一般の人で理解している人は非
常に少ないでしょう。それに、そんなことをしてもどれだけ効果が
あるかと、バーナンキ議長は言っています。

 しかし、彼が重要なことを言っているのを見逃してはいけませ
ん。彼は、ゼロ金利にすべきではないと言っているのです。

 何故?

 今米国は、事実上のゼロ金利政策を採用していると言われな
がらも、実際の政策金利の平均値は、0.15%〜0.20%の範囲
にあると言います。他方、日本がゼロ金利政策を採用していた頃
は、ご承知のとおり、政策金利は0.001%となっていたのです。

 0.001%というのは、ほぼゼロという水準です。

 ヘリコプターからお金をばら撒いてもデフレを回避するのだ、と
いうバーナンキ議長でさえ、ゼロ金利は回避すべきだと言ってい
るのです。

 何故?

 そんなことをすれば、フェデラルファンズ市場が死んでしまうか
らだ、と。つまり、金利がゼロであれば、市場への参加者はいなく
なってしまうではないか、と。そして、市場を殺してしまったら、正
常な状態に戻ったときに、金利を操作する手段を失ってしまうこと
になる、と。

 最後の、インフレ目標値の引き上げについてはどうでしょうか?

 バーナンキ氏は言います。予想インフレ率の上昇につながるよ
うなことをすれば、連銀の物価のコントロール能力に疑いが生じ
てしまい、副作用が大き過ぎる、と。そうなると、物価だけでなく、
一次産品の価格や通貨なども乱高下しやすくなってしまう、と。

 バーナンキ議長は、この4番目の提案は、何人かのエコノミスト
からなされているものだというわけです。そして、その中にはクル
ーグマン教授が含まれており、従って、今や、バーナンキ議長と
クルーグマン氏が激論を闘うせているということになるのです。

 で、もちろんのこと、クルーグマン教授は、リフレ政策を発動せ
よ、と。何故ならば、インフレになると、お金を使わないでもってる
とお金の価値が下がるので、人々は早くお金を使わないと損に
なると考え、お金を使うからだ、と。深尾教授も、そんな考え方で
したよね。

 その一方で、バーナンキ議長は、先ほど言ったようにインフレ
になれば、連銀の物価のコントロール能力に対する信認が揺ら
いでしまう恐れがある、と。

 つまり、バーナンキ議長は、今はインフレの恐れがないとは信
じつつも、それでもインフレに導きそうなことだけは避けたいとい
うことのようなのです。

 彼は信念を変えたのでしょうか?

 そうではないのでしょう。彼は、FRBの名議長として名を残すこ
とを目標にしているということでしょう。勿論、景気を立て直すこと
が重要であるが、だからといって、もし、インフレを起こしてしまえ
ば、FRB議長としては失格だ、と。何故ならば、連銀の本来の仕
事はインフレを起こさないことであるのだから、と。

 それに‥

 重要な事実を忘れてはいけません。

 米国は、輸出を倍増して雇用を創造する戦略に立っています。
ということは、人民元をもっと切り上げさせる。そして、安いドルを
長期間容認することになる、と。
そうなれば、黙っていても、国内
物価の上昇の可能性が大きいということになります。

 景気が回復するかどうかとは関係なく、為替の動向により今後
インフレが起きる可能性は大きいのだ、と。

 そのような状況が予想されるのに、もし、インフレ率の目標値を
3%と明言したり、そして、それを実現するために長期国債の大
量購入を行ったら、人々はどう感じるか、と。
当然のことながら、
インフレに火が付く可能性がある、と。

 そして、インフレに火が付いたら、自分はFRB議長失格だ、と思
っているということです。


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columnistseiji at 11:40|この記事のURLComments(1)TrackBack(0)FED 

2010年08月28日

バーナンキ議長の追加緩和策

 「FRB議長講演 米、追加緩和を検討」とあります。(本日の日経1面)

 無策だと言われる日本銀行とは打って変って、米国の連銀は、さらなる
追加策を打ち出すというのでしょうか。

 でも、後どういう手段が残されているというのか?

 長期国債の買い取りを復活させるのか?

 ということで、バナンキ議長のスピーチを読んでみました。

 バーナンキ議長は、まだ4つほど手段が残されていると言っているよう
です。

 (1)長期国債の買い入れ
 (2)FOMCの声明文の表現を工夫
 (3)超過準備預金に対する金利の引き下げ 
 (4)インフレ目標値の引き上げ

 しかし、このうちの(4)については、今のアメリカにとって有効であると
は言っていないようです。では、残りの3つはどうか? 直ぐに実行すると
いうのか? そうでもないのです。こうした措置には、効用もあるが副作
用もあるからだ、と。副作用の大きさもよく吟味したうえで、実際にそうし
た措置を実施することが適当かどうかを決定すべきである、と。

 
Notwithstanding the fact that the policy rate is near its 
zero lower bound, the Federal Reserve retains a number of
tools and strategies for providing additional stimulus. I 
will focus here on three that have been part of recent 
staff analyses and discussion at FOMC meetings: (1) 
conducting additional purchases of longer-term securities, 
(2) modifying the Committee's communication, and (3) 
reducing the interest paid on excess reserves. I will also 
comment on a fourth strategy, proposed by several 
economists--namely, that the FOMC increase its inflation 
goals.

「政策金利がゼロの限界に近付いているという事実はあるが、連銀は、
更なる追加刺激策を講じるための手段を保持している。私は、最近、
FOMCの会合で検討されたもののうちから3つを選んでみたい。(1)長期
債券の追加的購入、(2)委員会の情報提供の改善、(3)準備預金の超
過分に対し支払っている金利の引き下げ。それから何人かのエコノミスト
から提案されている案についても、4番目の戦略としてコメントしたい。そ
れは、FOMCがインフレ目標値を引き上げるという案だ」


A first option for providing additional monetary
accommodation, if necessary, is to expand the Federal
Reserve's holdings of longer-term securities. As I noted
earlier, the evidence suggests that the Fed's earlier
program of purchases was effective in bringing down term
premiums and lowering the costs of borrowing in a
number of private credit markets. I regard the program
(which wassignificantly expanded in March 2009) as
having made an important contribution to the economic
stabilization and recovery that began in the spring of
2009. Likewise, the FOMC's recent decision to stabilize
the Federal Reserve's securities holdings should promote
financial conditions supportive of recovery.

「必要とあらば、流動性をさらに供与するという最初の案は、連銀の長期
債券の保有額を増大させることになる。これまでに私が言及したとおり、
連銀の債券購入策は、多くの金融市場における期間プレミアムと借入コ
ストを引き下げるうえで有効であったことがデータにより示されている。こ
の措置(それは2009年3月に拡大されたが)は、経済の安定と2009年
春に始まった景気回復に大きな貢献をした。同様に、連銀の証券保有を
安定化させるためのFOMCの最近の決定は、景気回復を支援する金融
環境の整備を促進するものとなろう」


I believe that additional purchases of longer-term
securities, should the FOMC choose to undertake them,
would be effective in further easing financial conditions.
However, the expected benefits of additional stimulus
from further expanding the Fed's balance sheet would
have to be weighed against potential risks and costs. One
risk of further balance sheet expansion arises from the
fact that, lacking much experience with this option, we do
not have very precise knowledge of the quantitative effect
of changes in our holdings on financial conditions. In
particular, the impact of securities purchases may depend
to some extent on the state of financial markets and the
economy; for example, such purchases seem likely to
have their largest effects during periods of economic and
financial stress, when markets are less liquid and term
premiums are unusually high. The possibility that
securities purchases would be most effective at times
when they are most needed can be viewed as a positive
feature of this tool. However, uncertainty about the
quantitative effect of securities purchases increases the
difficulty of calibrating and communicating policy
responses.

「私は、長期債券の追加的な購入は、もし、FOMCがそれを行うと決定す
るのであれば、金融情勢をさらに緩和させる意味で効果があると信じる。
しかし、連銀のバランスシートをさらに拡大することから期待されるメリット
は、それに伴うリスクとコストの観点から評価される必要がある。連銀の
バランスシートを拡大させることの一つのリスクは、この政策に関して
我々は経験が不足していることから、長期債券の保有が金融情勢にどの
ような数量的影響を及ぼすかについての正確な知識を有していないこと
から発生する。特に、債券購入のインパクトは、ある程度は金融市場と経
済の状態に依存するかもしれない。例えば、そうした債券購入のインパク
トは、経済や金融が苦しい状況にある時に最も大きくなるであろう。その
ようなときは、市場は流動性が枯渇し、期間プレミアムは異常に高くなっ
ているときなのだ。債券の購入が、それが最も必要とされるときに実施さ
れるのであれば、それは最も効果的であるということが、この措置のプラ
スの特徴と考えられる。しかし、債券購入の数量的効果に関する不確か
さのためにこの案を実施することの困難さが増し、また、この案に関する
反応の情報伝達を難しくさせる」


Another concern associated with additional securities
purchases is that substantial further expansions of the
balance sheet could reduce public confidence in the Fed's
ability to execute a smooth exit from its accommodative
policies at the appropriate time. Even if unjustified, such
a reduction in confidence might lead to an undesired
increase in inflation expectations. (Of course, if inflation
expectations were too low, or even negative, an increase
in inflation expectations could become a benefit.) To
mitigate this concern, the Federal Reserve has expended
considerable effort in developing a suite of tools to
ensure that the exit from highly accommodative policies
can be smoothly accomplished when appropriate, and
FOMC participants have spoken publicly about these tools
on numerous occasions. Indeed, by providing maximum
clarity to the public about the methods by which the FOMC
will exit its highly accommodative policy stance--and
thereby helping to anchor inflation expectations--the
Committee increases its own flexibility to use securities
purchases to provide additional accommodation, should
conditions warrant.

「この債券の追加購入に関するもう一つの懸念は、連銀のバランスシート
を更に拡大させると、連銀は将来適当な時期に緩和策を終了させ、そし
て出口戦略を実施することが難しくなるのではないかという、人々の信頼
の低下がある。仮にそう思うことが根拠のないことであっても、人々の信
頼の低下は、予想インフレ率を引き上げてしまうかもしれない。(もちろ
ん、予想インフレ率があまりのも低過ぎると、或いはマイナスだったりする
場合には、予想インフレ率の上昇が有益な場合もある)この懸念を緩和
するために、連銀は超緩和策からの出口戦略がスムーズに実施されるこ
とを確かなものにするための一連の手段を開発する努力をしており、ま
た、FOMCの参加者は、多くの機会をとらえてこうした手段について公の
場で話をしてきた。事実、FOMCが超緩和策から抜け出すことができるた
めの措置に関して公に対し最大限明らかにすることにより、そしてまた、
インフレ予想に錨を付けることにより、当該委員会は、状況が認めれば、
追加的緩和策を実施するために柔軟に債券購入を実施する」

A second policy option for the FOMC would be to ease
financial conditions through its communication, for
example, by modifying its post-meeting statement. As I
noted, the statement currently reflects the FOMC's
anticipation that exceptionally low rates will be warranted
"for an extended period," contingent on economic
conditions. A step the Committee could consider, if
conditions called for it, would be to modify the language
in the statement to communicate to investors that it
anticipates keeping the target for the federal funds rate
low for a longer period than is currently priced in markets.
Such a change would presumably lower longer-term rates
by an amount related to the revision in policy
expectations.

「FOMCにとっての第二の選択肢は、情報伝達を通じて金融情勢を緩和
することである。例えば、会合後の声明文を改善することによってであ
る。既に言及したとおり、声明文には、例外的に低い金利は経済情勢に
もよるが、長期間保証されるであろうというFOMCの予想が最近反映され
ている。当該委員会が検討することのできる一つの手段は、もし状況が
そうしたことを求めるのであれば、声明文の表現を修正して、委員会とし
ては、フェデラルファンズレートの目標値を現在市場が予想しているより
も長い期間において低く保つことを投資家に分からせるようにすることで
ある。そうした修正は、金融政策の予想に関する修正の分だけ多分、長
期金利を低下させることになろう」

Central banks around the world have used a variety of
methods to provide future guidance on rates. For
example, in April 2009, the Bank of Canada committed to
maintain a low policy rate until a specific time, namely,
the end of the second quarter of 2010, conditional on the
inflation outlook.Although this approach seemed to work
well in Canada, committing to keep the policy rate fixed
for a specific period carries the risk that market
participants may not fully appreciate that any such
commitment must ultimately be conditional on how the
economy evolves (as the Bank of Canada was careful to
state). An alternative communication strategy is for the
central bank to explicitly tie its future actions to specific
developments in the economy. For example, in March
2001, the Bank of Japan committed to maintaining its
policy rate at zero until Japanese consumer prices
stabilized or exhibited a year-on-year increase. A
potential drawback of using the FOMC's post-meeting
statement to influence market expectations is that, at
least without a more comprehensive framework in place, it
may be difficult to convey the Committee's policy
intentions with sufficient precision and conditionality. The
Committee will continue to actively review its
communication strategy, with the goal of communicating
its outlook and policy intentions as clearly as possible.

「世界の中央銀行は、金利の誘導に関し、様々な手段を使用してきた。
例えば、2009年4月、カナダ銀行は、インフレ見通しの条件付きながら、
特定の時期、即ち、2010年の第二四半期が終わるまで低金利政策を維
持すると約束した。この手段は、カナダにおいては巧く機能しているように
見えるが、一定の期間金利を固定すると言明することはリスクを伴う。即
ち、市場参加者は、そうした約束は究極的には、如何に経済が変化する
かにかかっている(そのようにカナダ銀行は注意深く述べているが)ことを
十分に理解しないかもしれない。他の案としては、中央銀行が経済の特
殊な進展に中央銀行の措置を縛り付けることである。例えば、2001年3
月、日本銀行は、日本の消費者物価が安定化するまで、即ち、前年比で
上昇するまで政策金利をゼロに維持することを言明した。市場の予想に
影響を与えるための手段としてFOMCの声明文を利用することの潜在的
な欠点は、少なくても、複雑な構造を理解してもらった上でないと、委員会
の政策意図を正確にそして条件を付けて伝えることが困難であるかもし
れないということだ。委員会としては、情報伝達の手段について、引き続
き見直しを行うこととする。そして、委員会の見通しと政策意図が可能な
限り明確に伝わることを目指す」


A third option for further monetary policy easing is to
lower the rate of interest that the Fed pays banks on the
reserves they hold with the Federal Reserve System. 
Inside the Fed this rate is known as the IOER rate, the
"interest on excess reserves" rate. The IOER rate,
currently set at 25 basis points, could be reduced to, say,
 10 basis points or even to zero. On the margin, a
 reduction in the IOER rate would provide banks with an
 incentive to increase their lending to nonfinancial
 borrowers or to participants in short-term money
 markets, reducing short-term interest rates further and
 possibly leading to some expansion in money and credit
 aggregates. However, under current circumstances, the
 effect of reducing the IOER rate on financial conditions in
 isolation would likely be relatively small. The federal
 funds rate is currently averaging between 15 and 20 
basis points and would almost certainly remain positive
 after the reduction in the IOER rate. Cutting the IOER 
rate even to zero would be unlikely therefore to reduce
 the federal funds rate by more than 10 to 15 basis
points. The effect on longer-term rates would probably be
 even less, although that effect would depend in part on
 the signal that market participants took from the action
 about the likely future course of policy. Moreover, such an
 action could disrupt some key financial markets and
 institutions. Importantly for the Fed's purposes, a further
 reduction in very short-term interest rates could lead
 short-term money markets such as the federal funds
 market to become much less liquid, as near-zero returns
 might induce many participants and market-makers to
 exit. In normal times the Fed relies heavily on a well-
functioning federal funds market to implement monetary
 policy, so we would want to be careful not to do
 permanent damage to that market.

「更なる金融緩和の第三の選択肢は、連銀が市中銀行の準備預金に対
し支払う金利を引き下げることである。連銀内では、この金利はIOERレ
ートとして知られている。超過準備への金利ということだ。IOERレート
は、現在25ベーシスポイントに設定されているが、10ベーシスポイントか
ゼロにまで下げることが可能だ。IOERレートを低下させることは、市中
銀行に対し、非金融機関向け貸し付けを増加させることや短期金融市場
への参加を促すインセンティブになるであろう。そして、それによって短期
金利は更に低下し、マネーサプライの増大につながる可能性がある。し
かし、現在の状況では、IOERレートを単独で引き下げるだけでは効果は
比較的小さいであろう。フェデラルファンズレートは現在、平均して
0.15%から0.20%の間にあり、IOERレートを引き下げてもほぼ確実に
ゼロを切ることはないままであろう。IOERレートを仮にゼロにまで引き下
げたところで、それによってフェデラルファンズレートが0.1%から0.15%
以上は下がりそうはない。長期金利に対する影響は、恐らくそれよりも小
さいであろう。もっとも、その影響は、一部には市場がそうした措置から受
け取る将来の政策変更に関するシグナルに依存するであろうが。さらに、
そうした措置は、金融市場や金融機関にも影響を与えることになろう。連
銀の目的のために重要なことは、極めて短い期間の金利のさらなる引き
下げは、フェデラルファンズ市場のような短期の金融市場を、より流動性
が少ない状態に至らしめるということである。というのは、殆どゼロの金利
では多くの参加者が市場から退出するためだ。正常なときであれば、連
銀はフェデラルファンズ市場を利用して金融政策を実施するので、我々と
しては、市場にダメージを与えるようなことがないように注意したい」


A rather different type of policy option, which has been
 proposed by a number of economists, would have the
 Committee increase its medium-term inflation goals
 above levels consistent with price stability. I see no
 support for this option on the FOMC. Conceivably, such a
 step might make sense in a situation in which a
 prolonged period of deflation had greatly weakened the
 confidence of the public in the ability of the central bank
 to achieve price stability, so that drastic measures were
 required to shift expectations. Also, in such a situation,
 higher inflation for a time, by compensating for the prior
 period of deflation, could help return the price level to
 what was expected by people who signed long-term
 contracts, such as debt contracts, before the deflation
 began.

「多くのエコノミストによって提案されている選択肢は、少し毛色が変わっ
たものであり、委員会が中期のインフレ目標値を物価が安定しているレ
ベル以上に引き上げようというものである。考えられるところでは、そうし
た手段は、長期間にわたるデフレが中央銀行が物価の安定を成し遂げ
ることの能力に関し懸念を持つようになり、その結果、そうした予想を覆
すためのドラスチックな手段が必要なときには意味があるかもしれない。
また、そうした状況においては、一時期高いインフレ率が続くことが、長期
の借り入れをしたような人々が予想するような、デフレが始まる前のレベ
ルにまで物価のレベルを戻すことに一役買うであろう。デフレの期間に対
する補償をすることによってである」

However, such a strategy is inappropriate for the United
 States in current circumstances. Inflation expectations
 appear reasonably well-anchored, and both inflation
 expectations and actual inflation remain within a range
 consistent with price stability. In this context, raising the
 inflation objective would likely entail much greater costs
 than benefits. Inflation would be higher and probably
 more volatile under such a policy, undermining confidence
 and the ability of firms and households to make longer-
term plans, while squandering the Fed's hard-won
 inflation credibility. Inflation expectations would also
 likely become significantly less stable, and risk premiums
 in asset markets--including inflation risk premiums--
would rise. The combination of increased uncertainty for
 households and businesses, higher risk premiums in
 financial markets, and the potential for destabilizing
 movements in commodity and currency markets would
 likely overwhelm any benefits arising from this strategy.

「しかし、そうした戦略は現下の状況の米国にとっては適当とは言えな
い。インフレ予想は、十分に押さえつけられており、予想インフィレ率、そ
して、現実のインフレ率も、物価が安定しているとみられる範囲に収まっ
ている。この関係で、インフレ目標値を引き上げることは、メリット以上に
負担をかけてしまうことになろう。そうした政策の下では、連銀が苦労して
築いてきた信頼が失われる一方で、企業や家計は長期の計画が立てに
くくなり、インフレ率はより高く、より変動が激しくなるであろう。予想インフ
レ率は、また、安定的ではなくなりそうである。資産市場のリスクプレミア
ムも、インフレリスクプラミァムを含め、安定的でなくなり、予想インフレ率
は上昇するであろう。家計と企業の不確かさが増し、また、金融市場のリ
スクプレミアムが高くなり、そしてまた、一次産品市場や通貨市場の動き
を不安定にする可能性があるので、この戦略からもたらされるメリットより
も弊害の方が大きくなりそうである」


Each of the tools that the FOMC has available to provide
 further policy accommodation--including longer-term
 securities asset purchases, changes in communication,
 and reducing the IOER rate--has benefits and drawbacks,
 which must be appropriately balanced. Under what
 conditions would the FOMC make further use of these or
 related policy tools? At this juncture, the Committee has
 not agreed on specific criteria or triggers for further
 action, but I can make two general observations.

「FOMCが更なる金融緩和のために利用可能なこうした選択肢は、長期
債の購入、意思伝達手段の変更、IOERレートの引き下げということであ
るが、これらはそれぞれにメリットと欠点を持っているが、適切にバランス
を取る必要がある。どのような状況の下で、FOMCはこうした選択肢を使
うことになるのか? この点に関し、委員会は、特別の基準に合意してい
るということはないが、二つだけ言うことができる」

First, the FOMC will strongly resist deviations from price
 stability in the downward direction. Falling into deflation
 is not a significant risk for the United States at this time,
 but that is true in part because the public understands
 that the Federal Reserve will be vigilant and proactive in
 addressing significant further disinflation. It is
 worthwhile to note that, if deflation risks were to
 increase, the benefit-cost tradeoffs of some of our policy
 tools could become significantly more favorable.

「第一に、FOMCは、物価が安定している状態から下方に振れることに強
く抵抗するであろう。デフレに陥ることは、現在のアメリカにとって大きなリ
スクではないが、人々は連銀が大きな物価の低下に対して大変警戒をし
ており、また先を見越して行動するをすると理解していることから、物価の
下振れリスクに抵抗するのは真実である。もし、デフレのリスクが上昇す
るようであれば、我々が有する選択肢の利点と欠点のトレードオフの関
係は、さらに好ましいものになり得る」


Second, regardless of the risks of deflation, the FOMC will
 do all that it can to ensure continuation of the economic
 recovery. Consistent with our mandate, the Federal
 Reserve is committed to promoting growth in
employment and reducing resource slack more generally.
 Because a further significant weakening in the economic
 outlook would likely be associated with further
 disinflation, in the current environment there is little or
 no potential conflict between the goals of supporting
 growth and employment and of maintaining price 
stability.

「第二に、デフレのリスクにも拘わらず、FOMCは、経済回復の継続を確
かなものにするためにできることを全て行う。我々の任務に沿って、連銀
は、雇用の増加を促進させることとと遊休資源を減少させることを言明し
ている。しかし、経済見通しが更に弱まるようであれば更なる物価の低迷
が伴いそうであり、現在の状況では、経済成長や雇用の支援という目標
と物価の安定維持という目標の間において、利益の衝突が起こることは
ない」

 


 さあ、如何でしょうか?

 4つの手段を紹介しつつも、インフレ目標値の設定はアウト!

 で、残りの3つの手段にしても、可能性があると思われるのは、長期国
債の買い取り程度。

 そして、その長期国債の買い取りにしても、そのような状況になったらと
いう条件が付いています。

 あのクルーグマン教授は、この条件に異議を述べています。今やらず
に何時やるのだ、と。


 いずれにしても、バーナンキ議長も新聞で報道されるほど積極的では
ないことが分かります。


 日本銀行は、どんなことを打ち出すのだろうか、と思う方、クリックをお
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columnistseiji at 14:21|この記事のURLComments(4)TrackBack(0)FED 

2010年08月27日

円高問題の本質

 円高をなんとかしろ! 政府・日銀は無策だ! 日本を沈没さ
せる気か!

 円高で採算悪化に悩む企業からは、円高対策を求める声が上
がって当然と言えば、当然。だって、利益がふっとんでしまうわけ
ですから。

 で、輸出企業は言う訳です。このまま円高が進むようでは、海
外へ脱出するしかないかもしれない、と。

 まあ、そんなことを言われると、我々も非常に弱いわけです。空
洞化が一段と進めば、失業は増えるし、輸出立国日本はどうなっ
てしまうのか、と。

 ただ、ここまで来ると円高の最大の弊害がよく分かる訳なので
す。

 円高は、我が国の産業の空洞化をもたらすものだ、と。そんな
ことを手を拱いてみていていいのか、と。

 しかし、よーく考えてみて下さい。

 企業の海外脱出は、何も今始まろうとしているわけではないの
です。もう何年も前から始まっているのです。中には一旦海外に
出て行って戻ってきた企業もあるわけです。

 それに、企業というもの儲けることが宿命であるわけですから、
国民や政府が何と言おうとも、海外に行くときは行くのだ、と。

れが企業というものなのに、これ以上円高が続けば‥なんて仰
るわけです。

 確かに、円高になれば企業の採算が悪くなるのは理解できるこ
とです。そうなれば、海外の同業他社との競争も厳しくなる、と。

 しかし、ここでもよーく考えたら、企業が海外に出ていく本当の
理由が分かるのです。

 つまり、先進国の企業は、常に新興国の企業から追いかけられ
る運命にある、と。新興国側の企業は、安い労働力を武器に低コ
ストで生産が可能である、と。それに対し、先進国側の労働力は
桁が違うほど高いために‥

 もう言いたいことがお分かりだと思います。

 要するに、我が国企業は今、円高で大変だと騒いでいるわけで
すが、事柄の本質は、海外との競争が大変だということに尽きる
わけです。で、海外との競争が大変である本当の理由は、新興
国の労働力が安いからだ、と。

 だとすれば、理屈の上では、我が国も賃金水準を下げれば、ど
んなに円高になろうとも競争力を回復することが可能であるので
すが、現実問題としてそれは無理!

 つまり、賃金を大きく下げるなどということはそう簡単にできる
話ではない、と。

 ということで、円高を何とかしてくれ、と今我が国は騒いでいる
わけですが、本当は、そうした切り口からだけではなく、新興国の
追い上げが厳しい中、日本の産業の将来ビジョンをどのように描
くかという戦略が望まれるということであるのです。

 産業の長期ビジョンを描くのは誰か?

 それは、企業自身であり、また、経済産業省の役割であるでし
ょう。

 しかし、その経済産業省がやっていることといえば、単に悲鳴を
上げている企業の代弁をするばかりで‥、つまり、円高対策をや
ってくれというばかりで、本来やる務めを果たしていないというこ
となのです。

 そうしたことに答えを出すことができるような人こそが、我が国
のリーダーに相応しいのではないでしょうか。


 円高問題は長期的な視点で対策を考えるべきだ、と思う方、ク
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 これまでに配信した経済ニュースゼミ有料版の円高の記事をご紹介し
ます。 
 
 ・第39号 2009年10月9日 ドルの命運

<内容>
1.はじめに
2.経常収支と為替レート
3.市場で形成されるレートは常に合理的なものと言えるのか?
4.政府は為替介入すべきなのか?
5.固定相場制度と変動相場制度
6.ドルが暴落する可能性

<ポイント>
(1)最近のドル安の背景には、先月のG20の金融サミットで、世界経済
  の不均衡是正の必要性が確認されたことがある。
(2)過去30年間ほどの間、米国の経常赤字はほぼ一貫して赤字額を拡
  大してきており、2006年には年間8000億ドルの赤字に達した。
(3)プラザ合意が発表された1985年の米国の経常赤字は、1000億ド
  ルを突破した程度であったので、それと比べれば、現状では経常赤字
  が途方もなく膨れ上っていると言える。
(4)これだけ経常赤字が拡大すれば、当然にドルが弱くなって当然だと
   いう考え方があるが、それは必ずしも正しくない。為替レートに影響
   を与えるのは、経常収支だけではなく資本収支も同様に影響を与え
   ているからだ。
(5)経常収支の赤字が途方もない額にまで達しながらも、同様に、資本
   収支の黒字も途方もないほど発生しているので、思ったほどにはド
   ル安にはなっていない。
(6)政府の為替介入の判断は、政治的に行うより方法はない。
(7)輸出業者などからすれば、固定相場制度の方が都合がいいように見
   えるかもしれないが、固定相場制度においても、経済の実情に応じ
   て為替レートの見直しが必要になり、そうなると投機を招く恐れがあ
   る。
(8)今後ドルの暴落が起きる可能性があるのは、何らかの理由によって
   米国においてインフレが起きる場合と、逆に、米国の景気回復が遅
   れ、いつまでも超低金利政策を続けることによりじりじりとドル安を招
   き、そして、そのことが原因で米国債の魅力が薄くなったような場合
   であろう。

 

・第44号 2009年11月13日 不均衡是正と強いドル

<内容>
1.はじめに
2.不均衡とドル相場の実態
3.米国の関係者の胸のうち
4.日本、欧州及び中国の考え

<ポイント>
(1)世界の主要国は今、世界経済の不均衡の是正が必要だと言うととも
   に強いドルを歓迎する姿勢を示しているが、これは論理的にいって
   おかしく見える。
(2)米国は、1982年からほぼ一貫して赤字が拡大し続けている。
(3)近年のドルの価値については、1990年代の終わりごろから2000年
   代の初頭にかけてドル高の時代を迎え、そしてそれと歩調を合わせ
   るように経常赤字が急増している。
(4)ドル安になっても経常赤字を縮小できるとは言えないが、だからと言
  って、ドル安にならない限り経常赤字の縮小は期待できない。
(5)ドル高が続くと経常赤字は拡大する傾向にある。
(6)米国の関係者が不均衡是正の必要性を訴える理由の1つは、世界
   経済の不均衡がバブルを生んだ1つの要因だという理論で、責任を
   転嫁することにある。
(7)もう1つの理由は、中国が米国の最大の債権者になっていることに対
   する警戒感からのものである。
(8)いずれの国も、ドルの急落によって得るところはないので、ドルの急
  落が起こる可能性は少ないが、不均衡がいつまでも続く訳はないの
  で、今後緩やかなドル安が進むと思われる。


・第46号 2009年11月27日 円高襲来

<内容>
1.はじめに
2.円高なのか
3.為替介入の条件と実効性
4.円高とデフレ

<ポイント>
(1)円は14年ぶりに1ドル86円台になって、円高が急速に進行してい
   る。
(2)円高のピークは、1995年4月につけた79.75円(瞬間的に)である。
(3)ただ、1ドルが86円になったという事実は、円の対ドルとの関係の
   実力しか示しておらず、円の総合的な実力を知るためには、実効
   為替レートをみる必要がある。そして、実効為替レートの最近の推
   移をみると、ドルが全面安になっている様子が窺われる。
(4)しかし、真に円高が進行しているかどうかを知るためには、各国の
   物価変動の相違を調整した実質ベースの実行為替レートを見る必
   要がある。そして、実質実効為替レートの推移をみると、最近の円
     は過去のピークに比べれば、なお相当に低い水準にあることが分か
   る。
(5)人々は、為替レートというと、どうしても名目のドル円のレートにだけ
   目が行きがちであり、その意味では、1ドル86円台というのは、相当
   な円高だということになる。
(6)為替介入を求める声が強くなっているが、為替介入が行われるに
   は、円の独歩高という状況になることと、さらに急速な円高が進むと
   いうことが条件となろう。
(7)但し、為替介入の効果に関しては、米国が緩やかなドル安を歓迎し
   ている以上、限定的であろう。
(8)日本は、輸出よりも輸入が上回る構造になっているので、国全体と
   しては、円安のメリットの方が大きいという議論は合理的ではない。



・第55号 2010年2月5日 ドル暴落の可能性

<内容>
1.はじめに
2.為替レートに関する我が国の対応
3.自国通貨の価値を固定化する政策
4.政府が為替差損を被る危険性
5.ドル大暴落の危険性

<ポイント>

(1)輸出を増加させることによって雇用を創出したいと考えている米国
   は、中国が2008年夏ごろから人民元のレートをドルに対して固定
   化させていることを不満に思っている。
(2)二国間の為替レートは、二国間の事情を反映して決定されるので、
   通常一国の意思や行動のみで、為替レートをコントロールするのは
   難しい。
(3)しかし、為替介入や金融政策を通して、為替レートにある程度の影
   響を及ぼすことは可能。

(4)日本や中国の巨額の外貨準備は、自国通貨を安くするために行わ
   れた為替介入の結果であると言える。
(5)但し、自国通貨をドルにペッグさせるような政策には犠牲が伴う。
   つまり、通貨の価値の維持を優先するならば、金融政策の自由度を
   放棄しなければならないということだ。
(6)日本は現在、100兆円弱の外貨準備を有し、その大半は米国債など
   ドル資産となっているが、これは、外貨準備の本来の目的から考え
   ると必要以上の規模と思われ、また資産内容もドルに偏っているた
   め将来為替差損が発生するリスクが大きい。
(7)今後中国の実質GDPが毎年年率10%伸び、そして人民元がドルに
  対し毎年5%強くなれば、7〜8年後には中国のGDPが米国を追い抜
  くことになろう。
(8)中国のGDPが米国を抜くことが現実に意識され始めると、当然ドル
   に対しての見方に大きな変更が生じ、主に人民元に対しドルが暴落
   することが予想される。


・第73号 2010年6月11日 円安と日本経済

<内容>
1.はじめに
2.円安が有利になるという俗説
3.マーシャル・ラーナーの条件
4.円高の短期的影響
5.円高の長期的影響
6.極端な円安になったら

<ポイント>
(1)輸出の比重の高い日本の場合には、円安は日本経済にとってプラス
   になるという意見があることを承知していると菅総理が述べた。
(2)しかし、そうした考え方は俗説と言わざるを得ない。何故ならば、
   もし、そうした考えが正しのであれば、貿易収支が赤字の国は、自
   国通貨の価値が高い方がいいということになるが、そうなれば益々
   貿易赤字は拡大してしまうからだ。
(3)為替レートと貿易収支の関係については、マーシャル・ラーナーの
   条件というのがある。この考え方の本質は、為替レートの低下が起
   こった場合の、輸出額の増加の程度と輸入額の減少の程度によっ
   て貿易収支は改善をすることもあれば、悪化することもあるというも
   のだ。
(4)仮に、円安が起きても、日本の輸出製品の数量がそれほどは伸び
   ず、その一方で、日本の原油や資源などの輸入数量が殆ど変わら
   ないとすれば、円建てベースでの輸出額は増加するが、ドル建てベ
   ースでの貿易収支はむしろ悪化することもあり得る。
(5)日本の輸出企業が、円安によって利益を受けるというのは、円安に
   なれば、輸出代金の円換算額が増加し、利益が膨らむからである。
(6)急激な円高になると、輸出企業の利益は1円の円高で○○億円吹っ
   飛ぶというニュースが報じられるが、ミスリードな面がある。それ
   は、1円の円高とはいっても、それが1年間続けばという条件付きだ
   からである。従って、急激な円高が発生しても、それが長く続くことが
   なければ影響は軽微である。
(7)さらに、1円円高になれば利益が○○億円吹っ飛ぶという計算には、
   円高に伴って原材料費が軽減されるプラスの効果が含まれていな
   いことに注意すべきだ。
(8)急激な円安が起きれば、海外の投資家にとっては円安による為替差
   損が発生することから、日本株を投げ売りするような動きが出るこ
   とも懸念される。


以上



columnistseiji at 16:21|この記事のURLComments(8)TrackBack(0)為替 

2010年08月26日

菅対小沢の対決(円安への誘い)

 最近の円高現象は、どうも不思議です。何故ならば、政治の世
界ではねじれ現象が起こり、しかも、今の政権の経済政策は大
変に頼りないのに円高になっているからです。

 普通、政権がそのように頼りない場合には、その国の通貨は安
くなってしかるべきでないのか?

 いずれにしても、あくまで名目為替レートではあるのですが、大
変な円高になっているわけです。

 しかし、政治家はこうして円高になっていても、それよりも民主
党の総裁選の方が大切だといわんばかりに、行動している、と。

 
 で、現政権に批判的な人々は言う訳です。

 そんなことをしていると、日本が沈没してしまうではないか、と。

 そうすると、総裁選を争う人々は言う訳です。

 「人々が、日本が沈没してしまうのではないかと懸念するように
なれば、円はどうなるのか?」

 「うーん、そうなれば円は売られる」

 「だろう? 円が売られて円安になるだろう?」


 そんなことを菅総理や小沢一郎氏は考えているとでも言うので
しょうか?

 そういうことはないでしょうね。


 いずれにしても、小沢氏が出馬表明をしたので、俄然我々の関
心は民主党の総裁選の方に向いてしまいます。何故ならば、勝
った方が総理になるわけですから。

 でも、どうして小沢氏は出馬を決めたのでしょうね?

 私、思います。それは小沢派内の不満です。こんなに数を制し
ているのに、自分たちを要職につけないのはけしからん、と。例
えば、最低限幹事長のポストを自分たちに渡すのであれば、裏
取引も可能であったが、菅総理は全く譲歩しないではないか、
と。

 では、何故菅総理は幹事長のポストを差し出すことができなか
ったのか? そんなことをすれば、自分が拠って立つ基盤が崩壊
してしまうからです。

 そういうことで、小沢派は不満を持っているわけですが、
ただ、
そうであっても、もし、菅総理の人気が絶大であれば、小沢派も
目立った動きには出なかった筈です。しかし、菅総理に対する国
民の期待は大きかったが、総理になったら国民の期待を裏切る
ようなことをしているではないか、と。だから、小沢派は勢いづい
ているという要素もあるのです。

 いずれにしても、仮に小沢氏が総理になれば、また諸外国から
言われるわけです。今年3人目の総理だ、ね、と。

 その時小沢氏は何というわけでしょうか?

 「我々は伝統を重んじる国民だから‥」

 だとしたら、小沢氏が仮に総理になっても、短い任期で終わるこ
とになるのでしょうか?


 最後にまた円高の話に戻りますが、円安にするよい手立ては
ないのものか?

 金利は、これ以上下げることができないレベルにありますし‥、
為替介入も現実的には難しそうだし‥

 押してもだめなら引いてみな!

 つまり、金利を下げることができないななら、この際金利を上げ
てみろ、ということです。

 「そんなことしたら益々景気が悪くなってしまうじゃないか!」

 そうでしょ? だったら、投資家はどう判断しますか? 日本の
景気は益々悪くなってしまう、と。だったら、円安になるのが当然
ではないか、と。つまり、円安に簡単に誘導できるということで
す。

 利上げをして円安を実現しようという人はいないのでしょうか?


 利上げをすれば確かに円安になるかも、と思った方、クリックを
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columnistseiji at 13:03|この記事のURLComments(11)TrackBack(0)政治 | 為替

2010年08月25日

為替介入ができない理由

 円が1ドル83円台を付け、為替介入を求める声が強まっている
ようです。

 まあ、それにしても最近、非常識な論調が目立ちます。先ほど
スパモニをみていたら、あの森永教授が、何故今円高なのかを
解説していましたが、その解説を聞いていたらアホらしくなりまし
た。

 リーマンショック以降、米国やヨーロッパはマネタリーベースを倍
増させたが、日本の場合には1割ほどしか増加させていない。つ
まり、市場に出回るドルやユーロの量は急増しているのに、日本
の円は殆ど増えていないので、円が強くなるのは当然だ、と。そ
して、この円高を食い止めるには、日銀がもっともっと円を市場に
供給すべきなのだ、と。

 よくこの程度の知識で教授をやっているものです。そして、また
この森永氏に話をさせるテレ朝のレベルは。

 確かに米国の場合、リーマンショック後にマネタリーベースが、
それ以前の2.5倍ほどまでに拡大しているのは事実ですが、そ
れは単に、市中銀行などの準備預金が増大しているだけの話
で、実際に世の中に出回るお金が増えているというわけではな
いのです。

 それに、仮に世の中に出回るお金が増えたからといって、その
ことが直ちに為替相場に影響を及ぼすものではないのです。為
替相場に影響を及ぼすのは、飽くまでも為替市場における需要
と供給の関係なのです。

 その辺のことを分かっていないのでしょうか。

 まあ、でも、そのことはおいといて‥

 為替介入を求める声が強まっています。

 では、実際に為替介入は行われるのでしょうか?

 私は、その可能性は小さいと判断しています。

 何故か?

 それには、大きく二つの理由があるように思われます。一つ
は、為替介入に対する米国の態度です。

 恐らく、米国は日本が為替介入に出ることに強く反発することで
しょう。何故ならば、米国では依然として失業率が高い水準にあ
り、また景気の減速懸念が強まっているからなのです。そうした
なかで輸出を武器として雇用の回復を図りたい米国としては、弱
いドルを歓迎しているわけですから、そうした動きに対抗する日
本の為替介入を許す筈がありません。

 でも、もちろん、日本政府がそれでも介入するのだ、と決断すれ
ば介入ができないわけでもありません。しかし、9月には、日米首
脳会談が予定されているではありませんか。そうでなくても、基地
問題などで負い目がある菅総理が、米国の意向を無視すること
などできるわけはない、と。だから、菅総理の発言も急に元気が
なくなっているというわけです。


 為替介入がないと考える第二の理由は、仮に日本が独自に為
替介入を行っても、その効果が殆どないと考えられるからです。
それどころか、もし為替介入をやっても円高が進むとなったら逆
効果になってしまうことも考えられるわけです。だったら伝家の宝
刀は抜かない方がいいということになるわけです。

 今、為替介入を求める人たちは、為替介入の効果など殆ど考
えていないように見受けられます。ただ、少しばかりヒステリー状
態になっているだけだ、と。

 私が、こんなことを言えば、6年ほど前までは大規模な為替介
入を行っていたではないかという人がいるかと思います。

 確かに我が国は、2004年の3月までの数年間において、大規
模な為替介入をした経験があります。今は島根県知事になって
いる溝口氏が財務官をやってた頃の話です。

 では、この頃何故介入が認められたのか?

 それは、米国が景気の悪化を懸念して超低金利政策をとって
いたからです。つまり、米国の政策金利は、景気対策のために
2003年6月から2004年6月にかけて、それまでの最低レベルで
ある1.0%にまで引き下げられていたわけなのです。

 こんなことを言えば、今は、もっと政策金利は低いではないか、
ゼロ金利政策をとっているではないかと言われそうですが、その
当時は、超低金利を採用しても、ドル安にはもっていきたくなかっ
たという考えが米国側にあったのに対し、今は、ドル安を敬遠す
るどころか、ドル安にもっていきたいというようにスタンスが大きく
変化しているのです。

 では、当時はどうしてドル安を敬遠したのか? 

 それは、もし、ドル金利が異常に低いことによってドル安が引き
起こされるならば、資本が海外に逃避することを米国当局は懸念
していたということなのです。つまり、海外の投資家が米国債を
買わないようなことになれば、却って長期金利の上昇を招いてし
まうので、それだけはどうしても回避しなければならない、と。

 で、そうしたことからすれば、日本が為替介入をしてドルを買い
支えてくれれば、米国は安心して超低金利政策を続けることがで
きる、と。

 つまり、当時は米国と日本の利害が一致していたわけなので
す。しかし、今は利害は一致していない、と。米国は、失業率が
途方もない水準に達しているために、雇用の回復を最優先課題
に考えていることから、ドル安による多少の副作用は気にするこ
となどできないのです。

 ということなので、現実問題として為替介入によって円高を回避
することは難しい、と。

 では、円高を回避する手段は何もないのか?

 実はあるのです。

 お知りになりたいですか?

 普通の人なら、円安に誘導するには、為替介入をすることを考
える訳です。そして、為替介入をすれば、自然と外貨準備高が増
加し、我が国政府の米国債保有高も増加する、と。

 実は、これと逆のことをやれば円高は食い止めることができる
のです。

 つまり、日本政府が保有している米国債を売っぱらってしまえ
ばいい、と。

 米国債を売るということは、ひいてはドルを売ることになり、そう
なれば益々円高が進行するように思うでしょうが‥

 でも、それは一時的な現象です。もし、日本政府がどんどん米
国債を売り続ければ、米国債が暴落し、米国はそれを見逃すこと
はできなくなる、と。何故ならば、国債の暴落は長期金利の急上
昇をもたらし、経済回復の大きな足かせになってしまうからです。


 米国は、そこで、強いドルの有難味を感じるわけです。弱いドル
も魅力的だが、急激なドル安は弊害が大き過ぎる、と。そして、そ
うなれば、再び米国は強いドル政策の方向に舵を切る必要が生
じ、そうなれば、円高が止まるということが予想される訳なので
す。

 でも、この手段、大変にリスキーです。


 最後に、為替に関するG7の共通認識を示しておきたいと思い
ます。
G7、即ち、先進7カ国の蔵相たちは、為替に関して次のよ
うな認識を共有しています。

 「為替レートは、経済ファンダメンタルズを反映すべきだ」

 今の1ドル=84円とかというレートはファンダメンタルズを反映
していないと、日本は主張できるのでしょうか?

 確かに、名目レートで考えるならば、相当に円高になっているこ
とは確かです。しかし、物価の変動率を加味した実質レートで考
えると、とんでもないほどの円高にはなっていないことも事実であ
るのです。それに日米の関係では、構造的に日本の貿易黒字
が続いているわけですから。

 だから、幾ら日本が円高であることを欧米の訴えようとしても、
イマイチ説得力に欠けるわけなのです。

 その辺のところも、マスコミは報道すべきではないでしょうか?


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columnistseiji at 10:52|この記事のURLComments(13)TrackBack(0)為替 

2010年08月24日

1ドル=83円台に

 円高が進んでいます。でも私流の言い方で言えば、名目円レー
トが。

 それはそれとして、名目でも相当な円高になっていることは、こ
れは厳然たる事実。

 では、何で円高になっているのか?

 その理由は、既に報じられているとおり。

 菅総理と白川総裁の電話会談が失望を誘ったとか‥

 しかし、その前に言いたい!

 何故、財務官を使わないのだ、と。

 財務官は何のために存在しているのだ、と。

 幾ら天下りを根絶しようとも、そして、官僚支配を排除しようと
も、それとこれは別!

 そもそも為替の話は、日銀の任務の範疇ではなく、外国為替特
別会計を所管する財務省の任務であるのだ。

 ああ、それなのに、それなのに‥


 為替介入をするとかしないとかの前に、何故、財務官ととことん
話をしないのか?

 
 
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columnistseiji at 22:46|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)為替 

政務調査費

 ローカルなニュースで恐縮ですが、長崎県議会の議員の政務
調査費の使い方が問題になっています。

<収支報告書の公開で分かった使途>

・ボクシングの試合観戦
・旅行カバン購入(半額を計上)
・万年筆を購入(半額を計上)
・iphoneの使い方を解説した雑誌などを購入
・代行運転を利用


 さあ、このような政務調査費の使い方は適切と言えるのでしょう
か?

 もちろん、多くの方は、「これはおかしいぞ!」と感じるわけで
す。また、だからこそ新聞の記事にもなるわけです。

 でも、取り敢えず議員さんの言い分も紹介しておきしょう。

「生死を懸けた真剣勝負の世界を学ぶことは議員活動にも有益
で、支出は適正と考えた」

 はあー?

 まあ、私は詳細を承知していないので、コメントは控えますが‥
でも、圧倒的多数の人は、おかしいと感じるわけなのです。

 しかし、一般論として言えば、そうしたお金の使い方が本当に
おかしいかどうかは、事情をよく分析したうえでないと結論は出
せないでしょう。というのももしかしたら、特殊な事情があったかも
しれないからです。

 例えば、ボクシングの試合をみるために政務調査費からお金を
支払ったとしても、例えば、当該県がスポーツの振興に力を注い
だ結果を確認するために試合を観戦したとしたら‥

 但し、多くの場合は、プライベートな目的に公金(政務調査費)
を使っていることが多いのも事実でしょう。

 では、そもそも政務調査費とは何か?

 政務調査費とは、地方議会の議員が政策調査研究等の活動
のために支給される費用である、と。

 この政務調査費、東京都議会議員の場合には、月額60万円
(年間720万円)支給されているそうですが、支給額や支給方法
は自治体によって異なっているのだとか。

 そういえば、この政務調査費に似たものがありますよね。そうで
す、国会議員の文書通信交通滞在費というやつです。歳費とは
別に月額100万円が非課税で支払われている、と。

 この非課税というのが、政治家には魅力的に響くのでしょうね。
何故ならば、その100万円分を歳費に含めてもらってしまえば、
それには所得税が課せられてしまうからです。

 いずれにしても、国会議員の場合には、歳費(給料)が月額
129万7千円出て、それ以外にこの文書通信交通滞在費が100
万円も出る、と。そしてまた、政党に属していると立法調査費が
月65万円支給され、そして、JRや航空会社のパス等が支給され
る、と。


 私が言いたいのは何か?

 議員はお金をもらい過ぎているということか?

 でも、私には、それを判断する材料が十分ではありません。そ
れに議員によって、多すぎると感じる人もいれば、これまでの国
政に対する貢献度などからすれば、必ずしも多いとは言えないと
いう人もいるでしょう。

 政務調査費などの使い道を厳しくチェックしろということか?

 そうではありません。そんなことクソ食らえ!

 支給されたお金を何に使おうとあんたの自由! その代わり、
議員に支給するお金は全て歳費に一本化する。それでボクシン
グを見ようと旅行カバンを買おうと、はたまた飲み会の後、代行
タクシーを呼ぼうと自由!

 しかし、もはや政務調査費や文書通信交通滞在費などは一切
認めない、と。

 では、議員に渡す歳費の総額はどうするか?

 これまで議員は、見た目の歳費の額を小さくしつつも、別名目
でお金を受け取り、つまり、政務調査費や文書通信交通滞在費
という名目で第二の歳費を受け取っていたというわけです。

 何故、そんなややこしいことをしているのか?

 有権者から、議員は一体幾ら給料をもらっているのだと聞かれ
た時、金額を低めに抑えることによって有権者の批判を逸らすこ
とが目的なのです。

 我々国民は、そんなテクニックに騙されてはいけません。

 政治家も、本当に政治活動にお金がかかるのであれば、堂々
と歳費の値上げを主張すべきです!

 まあ、今支給している総額を、今後も丸々議員たちに渡すかど
うかは、有権者がよく考えてから決めればいいだけの話です。

 いずれにしても、議員がもらったお金をどう使うかなどということ
に有権者が気を使わないといけないとすれば、それは大変な時
間と労力の無駄ということになるのです。


 議員に政務調査費とかという名目でお金を支給すべきではな
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columnistseiji at 12:28|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)バカもん 

2010年08月23日

バーナンキ議長がデフレを怖がる理由

 本日の日経の1面の記事に気が付かれたでしょうか?

 「企業の負債 低金利で長期化進む」

 どういうことかといえば、最近長期金利が低下しているので、
上場企業は有利子負債の長期化を急いでいるのだ、と。

 月内にも新日鉄やKDDが期間10年の社債を発行する予定だ
とあります。

 さあ、貴方は、この記事をお読みになって何かお感じになりま
せんでしたか?

 「10年物国債が0.9%台で推移しているほどだから‥」

 ということは?

 「長期金利が大きく低下しているということ」

 だとすれば、企業の借入負担が増大するようなことは起こって
いないと?

 「変なことを言うね」


 もう一度貴方にお聞きしたい!

 貴方は、リフレはですか、それとも‥

 もし、リフレ派の立場でありながら、上のようなことを頭に描いた
としたら‥


 私は、一体何を言おうとしているのか?

 バーナンキ議長が、まだ議長になる前の2002年11月に行った
スピーチの抜粋を先ず確認下さい。

 タイトルは、Deflation - making sure “it”dosen't happen
 

Deflation is defined as a general decline in prices, with 
emphasis on the word "general." At any given time,
especially in a low-inflation economy like that of our
recent experience, prices of some goods and services will
be falling. Price declines in a specific sector may occur
because productivity is rising and costs are falling more
quickly in that sector than elsewhere or because the
demand for the output of that sector is weak relative to
the demand for other goods and services. Sector-specific
price declines, uncomfortable as they may be for
producers in that sector, are generally not a problem for
the economy as a whole and do not constitute deflation.
Deflation per se occurs only when price declines 
are so widespread that broad-based indexes of prices,
such as the consumer price index, register ongoing
declines.

「デフレとは、価格の全般的な低下と定義されるが、『全般的』という言葉
に意味がある。最近の経験がそうであるように、特にインフレ率が低い状
況にある時には、幾つかの財やサービスの価格は低下するものである。
特定の分野における価格の低下は、生産性の向上や急激なコストの低
下のために起こり得ることである。或いはまた、その分野の生産物に対
する需要が他の分野と比べて相対的に弱いために起こり得る。特定分野
での価格の低下は、生産者にとっては心地よいものではないが、経済全
体にとっては何ら問題となるものではなく、また、デフレを引き起こすもの
でもない。デフレそれ自体は、価格の低下が幅広い領域において起こる
ために消費者物価指数などの価格インデックスが継続的に低下する場
合にのみ起こるものである」


The sources of deflation are not a mystery. Deflation is 
in almost all cases a side effect of a collapse of
aggregate demand--a drop in spending so severe that
producers must cut prices on an ongoing basis in order to
find buyers. Likewise, the economic effects of a
deflationary episode, for the most part, are similar to
those of any other sharp decline in aggregate spending--
namely, recession, rising unemployment, and financial
stress.

「デフレの原因は、ミステリーでも何でもない。デフレは多くの場合に、総
需要が崩壊したことの副次的な結果であるのだ。支出の落ち込みが酷い
ため、生産者は購入者を探し出すために常に価格を低下させることが必
要となる。同様に、デフレの経済的な効果というのは、総需要が急激に減
少したような場合の効果と類似のものである。例えば、景気後退、失業率
の上昇、或いは金融不安である」

 

However, a deflationary recession may differ in one
respect from "normal" recessions in which the inflation
rate is at least modestly positive: Deflation of sufficient
magnitude may result in the nominal interest rate
declining to zero or very close to zero. Once the nominal
interest rate is at zero, no further downward adjustment
in the rate can occur, since lenders generally will not
accept a negative nominal interest rate when it is
possible instead to hold cash. At this point, the nominal
interest rate is said to have hit the "zero bound."

「しかし、デフレによる景気後退は、通常の景気後退とある点で異なるか
もしれない。通常のデフレというのは、インフレ率が少なくともプラスの状
態で起きるデフレである。相当な規模のデフレが起きると、名目金利は
ゼロに向かって低下し、殆どゼロ近くにまでなり得る。そして、一度名目
金利がゼロになると、それ以上の金利の低下は起こり得ない。というの
も、貸し手は、現金を保有する代わりにゼロ金利になることが可能である
としても、一般的にマイナスの名目金利を受け入れることがないためだ。
この地点で、名目金利は『ゼロ境界』に達したと言われる」


Deflation great enough to bring the nominal interest rate 
close to zero poses special problems for the economy and 
for policy. First, when the nominal interest rate has been 
reduced to zero, the real interest rate paid by borrowers 
equals the expected rate of deflation, however large that 
may be. To take what might seem like an extreme
example (though in fact it occurred in the United States in
the early 1930s), suppose that deflation is proceeding at
a clip of 10 percent per year. Then someone who borrows
for a year at a nominal interest rate of zero actually faces
a 10 percent real cost of funds, as the loan must be
repaid in dollars whose purchasing power is 10 percent
greater than that of the dollars borrowed originally. In a
period of sufficiently severe deflation, the real cost of
borrowing becomes prohibitive. Capital investment,
purchases of new homes, and other types of spending
decline accordingly, worsening the economic downturn.

「名目金利をほぼゼロにさせるほどの酷いデフレは、経済にとっても、そ
して政策にとっても大きな問題となる。第一に、名目金利がゼロにまで低
下すると、借り手が支払わなければいけない実質金利が、物価の予想低
下率と同じ大きさになってしまう。どんなに物価の低下率が大きくてもであ
る。極端なケースを挙げると(それは、1930年代の初めに米国で実際に
起きたことであるが)、デフレは年率10%のスピードで起きるのである。
ゼロの名目金利で1年間お金を借りる者は、実際に10%の実質金利を
負うことになる。というのも、ドルの購買力は、当初借入したときよりも
10%大きくなっているからである。デフレが酷いときには、実質借入コス
トは法外なものになるのである。設備投資、住宅購入、そして他の支出
も、それに従って減少し、景気を悪化させるのである」

Although deflation and the zero bound on nominal interest
rates create a significant problem for those seeking to
borrow, they impose an even greater burden on
households and firms that had accumulated substantial
debt before the onset of the deflation. This burden arises
because, even if debtors are able to refinance their
existing obligations at low nominal interest rates, with
prices falling they must still repay the principal in dollars
of increasing (perhaps rapidly increasing) real value.
When William Jennings Bryan made his famous "cross of
gold" speech in his 1896 presidential campaign, he was
speaking on behalf of heavily mortgaged farmers whose
debt burdens were growing ever larger in real terms, the
result of a sustained deflation that followed America's
post-Civil-War return to the gold standard. The financial
distress of debtors can, in turn, increase the fragility of
the nation's financial system--for example, by leading to a
rapid increase in the share of bank loans that are
delinquent or in default. Japan in recent years has
certainly faced the problem of "debt-deflation"--the
deflation-induced, ever-increasing real value of debts. 
Closer to home, massive financial problems, including
defaults, bankruptcies, and bank failures, were endemic in
America's worst encounter with deflation, in the years
1930-33--a period in which (as I mentioned) the U.S. price
level fell about 10 percent per year.

「デフレと名目金利のゼロ境界は、お金を借りようとする人にとって大きな
障害となるのであるが、デフレが始まる前に多額の借金を作っていたい
家計や企業にとっては更に深刻な負担を投げかけるのである。何故なら
ば、仮に、債務者が低い金利で既存の債務を借り換えることをしても、物
価が低下するなかで彼らは実質価値が急激に上昇しているドルで返済す
る必要があるからだ。ウィリアム・ジェニングス・ブライアンが、1896年、
大統領選挙で有名な金の十字架スピーチを彼が行ったとき、彼は多額の
借金に苦しむ農家の立場に立ってスピーチを行ったのである。農家の人
たちは、南北戦争後に金本位に戻ったことから起きたデフレのために借
金の実質負担が急増していたのである。債務者の窮状は、今度は、国の
金融システムを脆弱なものにしてしまう。例えば、銀行の融資に占める債
務不履行や倒産の割合が急増することによってそうなるのである。最近
の日本は、確かに債務のデフレ、つまり、デフレによって引き起こされる
債務の実質価値の上昇という問題に直面している。国内では、デフォル
ト、倒産、そして銀行の破綻を含む金融上の問題は、1930年から1933
年にかけてのデフレに固有の問題であった。その当時、米国の物価は年
率約10%低下したのである」

Beyond its adverse effects in financial markets and on
borrowers, the zero bound on the nominal interest rate
raises another concern--the limitation that it places
on conventional monetary policy. Under normal conditions,
the Fed and most other central banks implement policy
by setting a target for a short-term interest rate--
the overnight federal funds rate in the United States--
and enforcing that target by buying and selling securities
in open capital markets. When the short-term interest
rate hits zero, the central bank can no longer ease policy
by lowering its usual interest-rate target.

「金融市場と借り手に対する悪影響の他に、名目金利のゼロ境界は別の
懸念も引き起こすのである。即ち、伝統的な金融政策に対する制約であ
る。正常な状況の下では、連銀や多くの中央銀行は、短期金利の目標値
を設定することによって政策を実行する。その場合、短期金利というのは
米国のオーバーナイトのフェデラルファンズ・レートのことである。公開市
場での債券の売り買いを通じてその目標値を実現するのである。しかし、
短期金利がゼロにぶつかると、中央銀行としては当該金利目標値を下げ
ることによって金融を緩和することがもはやできなくなるのである」


 私が何を言いたいか、お分かりになったでしょうか?

 それは、バーナンキ議長がデフレを恐れる理由に関係していま
す。

 何故、バーナンキ議長はデフレを恐れるか?

 その最大の理由は、名目金利がゼロよりも低下することができ
ないなかで物価が大きく下がり続けると、借金の実質負担はどん
どん大きくなるからであるのです。

 つまり、実質金利が急増すると、多額の借金を抱えている人
は、返済が不可能になってしまう、と。もちろん、そんな状況では
銀行からお金を借りて設備投資をしようとする企業もいないでしょ
う。

 それが、デフレが怖い最大の理由だ、と。


 では、今の日本はどうなっているのか?

 借金の実質金利負担は増大しているのか?
 
 そんなことはありません。そんな状況であれば、長期の社債に
切り替えようなどという動きが出る筈がないのです。

 つまり、デフレデフレと騒いでいても、今日本の企業は、借金の
実質負担が急増して大変だと思っているようなところはないとい
うことなのです、多分。

 

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columnistseiji at 14:02|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)デフレ 

2010年08月22日

円高とデフレ

 円高のせいで景気対策を求める声が強くなってきています。

 テレビには政治家が顔をそろえ、もっともらしいことを言っていま
す。中小企業のために、輸出メーカーのために、そして日本国民
のために円高に断固立ち向かいます、と言いたいかのような‥

 でも、そもそも本当に円高なのか?

 海外旅行もしたことのない人々にとっては、この20年間ほどで
円高になっているとか円安になっているという実感は殆どないの
ではないでしょうか。つまり、テレビや新聞で円高、円高というか
ら、ああ今は円高で、輸出企業の経営が大変になっているのだ
ろう、と想像するだけの話であるのです。

 
 私が、本当に円高なのでしょうかなどというと、何を呑気なこと
を言っているのだ、とお叱りを受けそうな雰囲気であることは承
知しています。

 なにせ、1ドル=84円台を記録したりしているからです。これま
での円の最高値は、1ドル=79円75銭ですが、まあ、その水準
は一時的なものであったと思えば、今の水準でもほぼ円の最高
値と言っていいことはそのとおりでしょう。

 しかし‥

 ドルの価値は、戦後、どのように推移してきているのか?

 これはもう、長い目でみれば、ずーっとドルの価値が下がり続
けているわけです。強いドル政策を採用した時期などを除けば、
ドルの価値は、少しずつ少しずつ下がり続けているのだと。だと
すれば、円が本当に高くなっているかどうかは、対ドルの関係だ
けで判断するのは適当でないということになるのですが‥

 他にも、円高なのか、と思う理由があります。

 この10年間ほどの間に、日本の場合では数パーセント物価が
低下しているのに対し、アメリカでは30%弱ほど物価が上昇して
いるではないか、と。だとすれば、名目の円ドルレートが、30%
ほど円高に振れたとしても、円の実質的価値は少しも上昇してい
ることにならないではないか、と。

 こうしたことに対して、政治家は目を向けることはありません。

 何故か?

 そんなことを言っても、多くの国民は理解できないだけではな
く、何も対策を打たないことの言い訳をしているように聞こえてし
まうからでしょう。

 反対に言えば、国民の支持を勝ち取るためには、円高で困って
いる人のために何でもやるのだという姿勢を見せた方が得策
だ、ということに過ぎないのです。

 で、国民の知的レベルがその程度で留まっているので、愚かで
詐欺師のような政治家が横行しているということなのです。

 まあ、私がこんなことを言っても、大きな流れは変わることはな
いでしょう。相変わらず円高対策やデフレ対策を求める声が大き
くなるでしょう。

 では、何を彼らは求めるのか?

 最近、米国のFRBは積極的なのに日本銀行は手を拱いている
というようなことが言われます。また、みんなの党などは、デフレ
が起きたのは日本銀行の政策が間違ったためと言いだす始末。

 本当に、日本銀行が何もしなかったというか、ゼロ金利政策の
解除などが早過ぎたから、日本の名目GDPが横ばいのままで推
移している原因なのでしょうか?

 私は、そうは思いません。

 何故、名目GDPが再び500兆円を切るような事態に陥ったの
か? 

 その理由の一つは、リーマンショック後に世界同時不況が起き
たからですが、長期的にみれば、新興国経済の追い上げのため
に、製品価格の引き上げが難しかったこともあります。しかし、最
大の理由は、我が国は、少子高齢化のために需要が伸び悩む
なか労働力人口が低下基調にあることです。

 例えば、かつて6800万人ほどいた日本の労働力人口も、今は
6560万人ほどにまで減少しているわけです。一方、アメリカはど
うかといえば、この10年間ほどで1億4200万人ほどのレベルか
ら1億5400万人ほどのレベルに増加しているわけです。

 日本だけがデフレに陥っているなどと言って日本銀行を責める
者もいるわけですが、日本の場合にはこれだけ少子高齢化が進
んでいるということが大きく効いているのです。

 デフレ対策のために、もっと金融を緩和すべきだという者のいま
す。

 でも、何が有効な手段として残っているというのでしょう?

 日銀券ルールをとっぱらって、もっともっと日本銀行が国債を購
入すればいいという意見もあるわけですが‥

 でも、これ以上日本銀行が国債の購入額を増やしたからといっ
て、どんなメリットがあるのでしょうか? 長期金利がさらに低下
する?

 確かに、長期金利には下押し圧力がかかるわけですが、長期
金利は既に0.9%台のレベルにまで下がってきているわけです
から、仮に理屈の上でゼロ近辺まで下がることがあり得るとして
も、もうその余地は極めて限られていると考えるべきものなので
す。

 しかし、日本銀行が政治的な声に押されて、それでもなお国債
を買い増し続けたら‥、つまり、政治家が、マイルドなインフレが
起きるまで国債を買い増し続けろと圧力をかけたらどうなるので
しょうか?

 例えば、思惑どおり3〜4%のインフレが起きるようになったとし
ましょう。そうなれば、デフレから脱却できたということができるわ
けですが、それでみなハッピーになったのでしょうか?

 例えば、銀行に対してはどのような影響を与えるのでしょうか?

 仮に物価が3〜4%も上がることが定着するようになれば、もは
や長期金利が0.9%とか1%台で留まるようなことはあり得ない
わけです。何故ならば、そんなことを認めれば、お金を貸す側
はインフレによって損をしてしまうからです。そうなれば当然のこ
とながら、長期金利の方も4〜5%のレベルにまで上がってしまう
ことになると考えられらます。

 しかし、そうなると国債を発行している利払い負担が急増して、
予算の編成が大変困難になることが懸念されるのです。

 つまり、財政当局は、物価はマイルドに上がって欲しいが、金
利は上がって欲しくないという気持ちなのですが、そんなことあり
えないのです。

 長期金利が上がると、銀行の運用収益は増加して、それは銀
行にとってはいいことだと言って喜ぶべきなのでしょうか? で
も、大量に保有している国債は大暴落することになって、銀行に
は大きな損失が発生してしまい、金融危機にまで発展する恐れ
さえあるのです。

 ということで、マイルドなインフレが起きたからといって、良いこ
とばかりではないどころか、悪い影響もあるのです。

 いずれにしても、急激に金利が変動したり、或いは、急激に物
価が変動することになれば実体経済に深刻な影響を与えること
になるので、慎重な対応が中央銀行には求められているので
す。



 
 政治家は、その場しのぎで発言していることが多過ぎる、と思う
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columnistseiji at 12:00|この記事のURLComments(5)TrackBack(0)為替 

2010年08月21日

理系出身の経済学者

 突然ですが‥

 私、思うのですが、改めて考えたら理系出身の経済学者って、
結構多いですよね。それでもって、かなり変わった方が多い、と。

 誰のことを言っているかといえば、先ずは、先日ご紹介した、デ
フレスパイラル論を邪教だ、と仰る野口悠紀雄教授。

<野口悠紀雄教授>
 1940年12月20日生まれ、1963年東京大学工学部卒、1964
 年大蔵省入省
 2005年から早稲田大学大学院教授


 私も、徒にデフレ脱却を叫ぶのは如何かと思います。何故なら
ば、お金だけをいじくっても、景気が良くなるように考えられない
からです。

 ということで、基本的には野口教授を支持したいところですが、
この人の流動性の罠についての理解の仕方が気に入りません。

 だって、この人は、現在日本は、流動性トラップに引っ掛かって
いると主張するからです。人々の貨幣需要が無限大になってい
て、そのため金利はこれ以上下がらないのだとか。

 私は、そんなことはないと思います。

 人々の貨幣需要が無限大になっているなどとは、とても思えま
せん。だって、多くの人は必要以上のお金を預金したり、国債な
どに投資したりしているわけですから。

 我が国で、短期金利がこれ以上下がることがないのは、それは
単に短期金利の水準が異常に低いレベルに達しているに過ぎな
いからです。それ以上下がると、マイナス金利になってしまうの
で、基本的にそういうことは起こり得ない、と。

 この人、ひょっとしたらクルーグマン教授の言うことを真に受け
過ぎているだけなのかもしれません。クルーグマン教授は、10年
以上前に、日本は流動性の罠に陥っていると言ったので、我が
国でも、そのようにいう専門家がいるようです。

 
 で、次に思い浮かんだというか、この人こそ真っ先に思い浮か
ぶべき人だったかもしれませんが、それは政府埋蔵金と政府紙
幣で有名になった高橋洋一教授。

<高橋洋一教授>
 1955年9月12日生まれ、東京大学理学部(数学科)卒業後、 
 東京大学経済学部卒、1980年大蔵省入省
 東洋大学教授を免職後、嘉悦大学教授

 
 この人、役人時代には、リチャード・クー氏と誌上で激論を交わ
していたことを憶えていますが、でもって、昔から目立ちたがり屋
の性癖があったようで、好きになれません。でも、どう言う訳か、
TV局の受けはよさそうです。

 それから、知名度はそれほどでもないですが、マイナス金利を
主張する深尾教授がいます。

<深尾光洋教授>
 1951年生まれ、京都大学工学部卒、1974年日本銀行入行
 1997年から慶応義塾大学教授、2005年から日本経済研究セ
 ンター理事長兼任

 
 深尾教授は、何故マイナス金利を主張するのか?

 それは、デフレを脱却するため。つまり、預金金利がマイナスに
なったり、或いは紙幣の価値が時の経過とともに低下する仕組
みにして、人々にお金をもっと使わせようという考えのようです。
時間が経てば経つほど価値が下がるのであれば、人々は、価値
が下がらない間にお金を使おうとするであろう、と。

 でも、どうやってそんなことが可能なのか?

 お札のデザインはそのままにして、インクの色だけを変えて、製
造した時期が分かるようにすればいいのだ、と。

 何か、とんでもない科学者が考えそうなことです。

 まあ、こういう人たちが、野口教授に言わせたら、邪教の信者と
いうことになるのでしょうか。

 他に理系出身はいないのかなと思ったら、いましたね、最近有
名になった人。そう小野善康教授。

<小野善康教授>
 1951年生まれ、1973年東京工業大学工学部卒業後、1979
 年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了
 1999年大阪大学教授、2009年大阪大学社会経済研究所所
 長、2010年内閣府参与

 
 この人も変わったことを言う人で、増税をしても景気を良くするこ
とができると主張します。

 

 いずれにしても、皆さん、ユニークですよね。

 この人たち、皆、それぞれ言い分が大きく食い違うわけです
が、貴方は誰を支持しますか?


 
 経済学者は、それぞれ言うことが違うのだな、と思った方、クリ
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columnistseiji at 12:43|この記事のURLComments(6)TrackBack(0)デフレ 

2010年08月19日

円高なのか?

 円高だ、円高だ、という声が聞こえてきます。

 確かに、1ドル84円台に達するレベルになれば、これはとんで
もないほど円高だ、と言いたくなるのも分からないではありませ
ん。


 しかし‥、それでも敢えて言いたい! 
本当に円高なのか、と。

 「過去の最高値は、1995年につけた79円75銭だから‥」

 確かにそういう議論もあるのですが‥

 「どういうこと?」

 だから、79円75銭をつけた1995年当時を別にするかどうかに
かかわらず、本当に今が一番円高になっているのかという疑問
があるのです。

 「じゃあ、2000年以降の円・ドルレートを挙げてみるわよ」

 

<円・ドルレート>

       1ドル
2000年末  114.90円
2001年末  131.47円
2002年末  119.37円
2003年末  106.97円
2004年末  103.78円
2005年末  117.48円
2006年末  118.92円
2007年末  113.12円
2008年末   90.28円 
2009年末   92.13円


 「ねえ、1ドルが84円ということは、これまでで最も円高よ」

 確かに、新聞なども15年ぶりの高値だと言っています。

 でも、そうした数字から、どうして今が一番の円高になっている
ということができるのでしょうか。

 「だって、1ドル=84円ということは、1ドル=90円台とか100円
台に比べれば当然に円高じゃないのさ」

 でもね‥

 「何を言いたいの?」

 私が言いたいのは、名目レートではなく、実質レートで見るべき
ではないかということなのです。確かに、名目で比べれば、1ドル
=90円のときは、1ドル=100円よりも円高であるのは事実です。
しかし、それはあくまでも名目の話‥。

 例えば、昨年1ドル=90円だったのが1年後の今、1ドル=90
円だとしたら?

 「円高にも円安にもなっていないわ」

 それは名目レートでの話ですね。

 もし、この1年間に仮に、米国では10%物価が上がり、その一
方で、日本の物価上昇率がゼロだとしたら‥

 ということは、1年前に1ドルした商品は、今は1.1ドルになって
いるということになるので、
今の90円ではかつて1ドルであったも
のを買うことはできないのです。
 
 つまり、1年前に比べ円の価値はドルに対して実質的には低下
しているということになるのです。換言すれば、1年前に比べ円の
実質為替レートは低下している、と。

 では、この10年間ほどの間に、日本と米国の物価はどのように
変化しているでしょうか。


 実は、米国の消費者物価指数は、この10年間で28%ほど上
昇しているのに対し、デフレが続いているというこの日本の消費
者物価指数は、同じくこの10年間ほどで2.8%ほど低下している
のです。

 つまり、日米の物価上昇率の差は、概ね3割ほどあるということ
ですから、名目為替レートが3割ほど円高になっていても、実質
為替レートの変動率はゼロだということになるのです。

 さらに、円の真の実力を知るためには、対ドルの関係だけで判
断するのではなく、他の主要通貨との関係でも判断することが必
要であることを忘れてはいけません。つまり、対ユーロではどうな
ったかとか、対ポンドではどうなったかということも考慮に入れる
必要があるのです。

 で、そうしてドル以外の通貨を含んだ主要通貨との関係での円
レートを表したものを実効為替レートと呼んでいるのですが、日
本銀行によれば、その実質ベースでの実効為替レートは、こうし
て超円高になっていると言われても、それでも15年前に比べれ
ば、なお3割強も低い水準にあるというのです。


<実質実効為替レートの推移、2005年=100)>
     
1990年末  99.35
1991年末  105.89
1992年末  109.15
1993年末  128.31
1994年末  134.15
1995年末  135.42
1996年末  113.44
1997年末  106.82
1998年末  106.61
1999年末  119.67
2000年末  126.29
2001年末  112.53
2002年末  105.25
2003年末  105.64
2004年末  106.55
2005年末  100.00 
2006年末   90.40
2007年末  82.84
2008年末  89.20
2009年末  100.32



  確かに、2年ほど前に比べれば、実質実効為替レートは2割弱
ほど円高になっているのですが、でも、この10年間を通してみれ
ば、それほど高いレベルではないことも事実であるのです。


 

 為替レートも実質でみることがあるのか、と思った方、クリックを
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columnistseiji at 15:12|この記事のURLComments(2)TrackBack(1)為替 

日本を破滅から救うための経済学

 夏休みを如何お過ごしになられましたでしょうか?

 ええっ、まだ夏休み中ですか?

 私は、本日からブログを再開したいと思います。

 で、休みから帰ってくると、いつも休み中の新聞の整理から始
めるわけですが、今回は、円高が進んだ程度でそれほど大きな
経済ニュースは起きていないようです‥が、ある本の広告が印
象に残りました。

 俗説を次々とくつがえす! 野口教授の最新二音経済論

 「日本を破滅から救うための経済学」とあります。

 「デフレスパイラル論はまったくの間違い」

 そうだ、そのとおりだ、と私も言いたい。

 「インフレこそが最も過酷な税である」

 そのとおりかもしれないが、そんなことを今言っても、リフレ論者
からは恐らく何を寝ぼけたことを言っているのだ、と言われそう‥

 しかし、もっと刺激的な文句が並びます。

 「『デフレスパイラル論』は、これまでのビジネスモデルや産業構
造を維持したい企業が、怠慢を正当化するための邪教に他なら
ない。これこそが、日本経済を15年間停滞させた基本的な原因
である。日本は、今こそ邪教から目覚める必要がある」

 ねえ、大変に刺激的で挑発的でしょ?

 デフレスパイラル論は邪教なのですって。

 私、思うのですが、これは多分野口悠紀雄教授自身の言葉で
はなくて、出版社が考えた、読者をひきつけるためのキャッチフレ
ーズだと思うのです‥、想像ですが。

 本を売るには、中身よりも、キャッチフレーズが肝心です。

 とにかく今は猫も杓子もデフレを何とかすることが先決だとばか
りに、日銀に圧力をかけることばかり考えている、と。そういう風
潮に対して、敢えて異論を唱えて‥、そうして出版社としてはベ
ストセラーを目指す。

 はっきり言って、まだ私はこの本を読んでいません。

 ですから、これ以上、この本のコメントをする資格はないのです
が‥、ネット上で検索していると、石原ひろたか氏が、自分のブ
ログでこの本を読むことを奨めています。

 ご存知ですか、石原ひろたかさん?

 そう、あの石原ファミリーの一員で、かつて松原仁氏に選挙で
負けたことのある石原ひろたか議員のことなのです。

 血筋や外見などからすれば、どうしても庶民は、松原仁の応援
をしたいと思ってしまう。私もそうでした。しかし、今松原議員は、
デフレ脱却議連の会長に就任しており、その反対に、石原ひろた
か議員は、デフレを脱却を叫ぶ人々を邪教だという野口教授の
側に付いているのです。

 事実は小説より奇なり、というべきでしょうか。

 他にもデフレスパイラル論を批判する人が出てくるのでしょうか?

 

 野口悠紀雄教授の考えをもっとテレビなどを通じて知りたいと
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columnistseiji at 11:40|この記事のURLComments(2)TrackBack(0)デフレ 

2010年08月09日

99er

 夏休みに入っていらっしゃる方も多いとは思うのですが、本日も
このブログに訪れて頂き、ありがとうございます。thanks!


  さて、突然ですが、皆さまにクイズを出します。

 最近、99er という言葉を聞くようになりましたが、これは何を意
味するのでしょうか?

(1)ナインティナインのファンの人たちのこと

(2)白寿を迎えた人々のこと

(3)99週間の雇用保険の受給期間が切れた人のこと


 さあ、如何でしょうか?

 ナインティナインといえば、あの岡村さんが入院しているとか。
この季節は、岡村さんの昆虫採集が恒例なのに‥、ということ
で、ナインティナインのファンの人たちのこと。

 白寿というのは、99歳のお祝いです。何故99歳が白寿かとい
えば、百から一を引くと、白になるからんです。ご存知ですよね。
でもって、白寿を迎えた人々のこと。

 最後は、99週間の雇用保険が切れる人のこと。

 99週間といえば693日であり、ということは、1年と11カ月間ほ
どの期間になるわけですが‥、そんなに長い間、雇用保険は支
給されるの?

 実は、これアメリカの話なのですね。アメリカでも本来は、そんな
に長い間給付することはないらしいのですが、今回の金融危機を
きっかけとした例外措置なのだとか。

 さあ、如何でしょうか?

 ここまで言ったら、答えが分かったかもしれませんね。

 答えは(3)。99週間の雇用保険の受給期間が切れる人のこと
です。

 そうした言い方がなされるということは、それだけ米国では長期
間失業状態にある人が増えているということです。

 そうした99ersに対して、政府はどう接するべきなのか?

 さらに、給付期間を延長して、そうした失業者を支援すべきなの
か?

 或いは、そうした人々がもっと努力すべきなのか?

 アメリカでは、どれだけ求職のために履歴書を送っても職を探
すのが大変に困難なのだとか。特にティーンエージャーの場合に
は、4人に1人が失業している、と。

 まあ、国民の総意として、そうした人々にもっと救いの手を差し
伸べるべきだというのであれば、お金持ちに増税するなどして財
源をねん出するしかないでしょうし、そうすべきではないというの
であれば、そうして多くの失業者が存在していても仕方がないと
いうことになります。

 なかなか難しい判断です。


 ところで、皆さまにお知らせがあります。

 それは、暫くこのブログも夏休みに入るということです。

 そしてもう一つ。夏休み明け後は、コメントの表示に関して、承
認制にしたいと思いますので、ご了承ください。


 では、楽しい夏休みをお送り下さい。


 
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columnistseiji at 13:01|この記事のURLComments(33)TrackBack(0)雇用問題