また、感染が相次いでいたことを把握していなかったのか、との問いについては、「2月までは月ごとの報告は1とか2、多くて3だったので」と答えるにとどまった。
都などへの報告も遅れた。板橋区保健所や都への報告は、発表前日の今月2日だった。感染した患者への説明も死亡した患者の遺族以外へは「きょうの会見が終わった後」という。
都医療安全課の田中敦子課長は「4月だけで約10人の感染が確認されており、その時点で報告があれば、速やかな対応ができた。7月30日に調査委員会を開いた時点では、明らかに集団感染を認識していたと考えられ、遅くとも、その時点で報告があるべきだった」と話した。
■階を超え感染、経路は不明
感染は15〜17階にある内科系の西病棟を中心に広がった。感染者46人のうち25人が集中する。16階の血液・総合内科と17階の腎臓・総合内科の2病棟で特に多かった。
アシネトバクターは人工呼吸器や点滴の管を介して感染する可能性がある。尿や痰(たん)、膿(うみ)などにも含まれ、トイレが感染原因になることもある。昨年の福岡大病院の例では、人工呼吸器の関連器具の消毒が不十分で菌が残ったのが主な感染源だったほか、血管に入れる細い管や包帯を載せた台車、ベッドなどからも菌が検出された。
帝京大病院の説明では、医師は複数の病棟の患者を受け持つ。こうした医療従事者が感染を媒介した可能性がある。手術の過程で感染した患者がいることや、人工呼吸器周辺から菌が検出されたことも明かした。
都の田中課長は3日の記者会見で、「病院スタッフによって菌が運ばれた可能性は否定できない」。中川原米俊医療政策部長は「感染ルート解明が第一。患者がいるので拡大防止が大事だ」と述べ、感染経路を突き止める姿勢を強調した。そもそも菌がどこから院内に持ち込まれたのかもわかっていない。