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[1292] とあるVRMMOのはなし(短編)
Name: 猫F
Date: 2005/08/13 14:54


まあ、なんというか。

大変なことに巻き込まれたかな、と。




  とあるVRMMOのはなし




とりあえず状況を説明してみましょう。

ボクは数ヶ月前知り合いに誘われ、とあるオンラインゲームを始めました。

ベータ版、ということでタダだったのが理由として大きいと思います。

最近の技術は凄いもので、このゲームは『現実並みのリアリズム』がウリだそうです。

脳やら神経接続やらがどうたら、とマニュアルに書いてあったような気がしますが、

そんな小難しいものは当然の如く読んではいません。

実際やってみると確かに大したもので、ボクはそのゲームにすぐにハマッてしまいました。

そんなボクが、正式スタート後も継続してプレイすることを望むのも自明の理というもので。

こうしてオープンセレモニーに出席している次第です。



まあそのセレモニーなんですが。

一万人を超えるプレイヤーの視線を集める中、お偉いさんのような一人がこう言い出しました。

『これは、デスゲームです』、と。

今も長々と説明していますが、

要約すると、どうやら普通に痛かったりリアルに死んだり、

当然の如くPK(プレイヤーによるプレイヤーの殺害)アリだったり、

ログアウトはできない、などと、

今となっては使い古されたMMOモノの小説の設定そのもののようです。



しかしボクの注意は、その内容とは別のところへと向けられていました。

それは、ヒゲでした。

今お話されている方の顎にそれはもう立派に、

これでもかと言わんばかりの存在感を主張するお髭です。

艶やかな黒、豊かな毛量。

何より、その先に結わえられたピンクのリボン。

ボクはそのヒゲに、らしくも無く強い嫉妬を覚えました。

ああ、プレイヤーの外観設定にアレがあったのなら、迷わず選んでいたのに。

初めて、GM(ゲームマスター)特権というものに憎しみを覚えました。



あまりに憎らしいので、ボクはおもむろに、

ベータから引き継いだ装備である愛弓に矢を番えました。


ちぇすとー。


放たれた矢はスコココン、といい音を立ててGMさんの額、胸、金的に狙い違わず的中しました。


GMさんは「はうっ」と一言だけ漏らしたものの、そのまま説明を続けます。

HPバーが僅かにも減少していないのは、やはりGM特権なのでしょうか。

しかしそこはそれ、このゲームのこと。

痛み自体はあったのか、少し顔色が悪いようです。



その反応を見たプレイヤーの皆さんは、一斉に暴動を始めました。

GMさんに向かっていく矢、石ころ、ナイフなど。

中にはNPC(ノンプレイヤーキャラ)を投げつけるツワモノも。

「ワシの若い頃はのぅ……」と言いつつ空を飛ぶお爺さんなどは、

思わず失笑を誘いました。



しかし、それでもGMさんはめげません。

体中に矢やナイフを突き立てられ、石を投げられ、NPCにぶつかられ。

少し涙目になりながら、必死に説明を続けます。

頑張れGMさん、頑張れヒゲ。

そう心の中で応援しながら、ボクは弓に新たな矢を番えました。




セレモニーが終わりました。

皆さんがこれからの事を相談される中、

ボクはこの世界での生活を盤石とするため、狩りに出ることにしました。

とにもかくにも生きていくのにお金が要ります。

そう思い、早速街の外に出ようとすると。


「セ、セージさ~ん!!」

と、少年に抱きとめられました。

線の細い、華奢な体つきの、美少年です。

リアルでも顔見知りの、表面上親友で通っている同い年の少年です。

そういえば、すっかり自己紹介するのを忘れていました。

セージ、というのがボクのプレイヤーネームです。


「ああ、ツバメ君ですか」

彼の名はツバメ君。

本名でもあり、プレイヤーネームでもあります。

彼が件の、ボクをこのゲームへ誘った知り合いです。

どういった知り合いかと言うと、名は体を表すというか。

彼は我が母上殿のツバメ君なのです。

我が母上は一年に2人のペースで若い男性を拾っては捨て、拾っては捨て。

中々に剛毅な人だと思いますが、そんな彼女が拾ってきた一人が、彼です。



「セセセ、セージさん、大変なことになっちゃいましたよぅ、どうしましょう~」

気の弱いことです。

先が思いやられます。

くっついて来られると足手まといなので、やんわりと切り捨てることにします。



口先三寸で丸め込み、互いに強くなったらまた会おう、

というあやふやな約束を残し、別れました。







それから数日経ちました。

順調に狩りをこなし、懐具合もホクホクになりました。

元々ベータから引き継いだパラメータは平均よりかなり高いものだったので、

適正な強さの敵を倒した時の稼ぎもいい感じなのです。

何度かツバメ君から近況を尋ねる連絡を貰いましたが、

まだ会えない、と返事をしています。

もちろん会う気は全くありません。




ボクのジョブは魔弓士です。

この世界のジョブを大別すると、剣士、騎士、弓士、魔道士になります。

その弓士の中で、魔法も扱うものを魔弓士と言います。

まあぶっちゃけ、スキルを使うことで矢に様々な効果を与えることが出来るということです。

いきなりなぜこんな取ってつけたような説明をするかというと。

今の状況を判り易くするためですね。



ボクがいつも通り狩りをしていると、既にボクが攻撃しているのにも関わらず、

見知らぬ剣士さんが横から敵を掻っ攫っていきました。

敵が残したアイテムも当然の如く彼のポッケの中へ。

そのまま何も言わず、彼は颯爽と去っていきました。

いわゆる、『横殴り』と言うマナーのなっていない行為です。

多少腸煮えくり返る思いだったものの、クールに流すのがスマートというものでしょう。

そのまま狩りを続けます。



数分後に、大声で「Help!」と叫ぶ声が聞こえました。

厄介ごとかな、と思いつつそちらへ向かうと、

そこには先程の剣士さんが。

むしゃむしゃ、とそれはそれは大きな芋虫さんに足から貪られていました。

かの有名な、オレサマオマエマルカジリ、です。


「Help! Help me!!」

英語を使っているところを見ると、外国の方でしょうか。

ともあれ、とても痛々しい悲鳴です。

ボクは迷わず取得している最大威力のスキル、『紅蓮爆矢』を展開し、放ちました。

赤いエフェクトを纏った矢は吸い込まれるように芋虫さんに突き刺さり、

轟音と閃光を撒き散らしました。

後に残ったのは芋虫さんの下半分と肉片、ドロップしたアイテム。

それと。

下半身を失って死んでいる剣士さんでした。


ふと、今しがた使ったスキルの効果を思い出しました。

確か、範囲内の敵全てにダメージを与える矢、だったかと。



「………不幸な事故でした」

南無、と呟きつつ十字を切り、左右を見渡して人目の無いことを確認。

剣士さんのご遺体を漁り、目ぼしい物をゲットしました。



結構な額を溜め込んでいたので、今日はご馳走にしようと思います。






そんなこんなで、ボクの冒険は幕を挙げたのでした。マル。




[1292] Re:とあるVRMMOのはなし(短編)
Name: 猫F
Date: 2005/08/11 21:18


あれから数ヶ月、何事もなく平々凡々と暮らしていました。

とりあえず後半年は遊んで暮らせる程度の蓄えも出来ました。



そんなある日の午後。

今晩はなに食べようかな、と思いつつ近場の定食屋へ向かっていると、

肩のぶつかった3人のチンピラさんに絡まれました。

少し聞き取りづらい独特のイントネーションで因縁をつけられ、

人気の無い所へ連行されようとしています。

周りを見ると、心配そうにこちらを見ている人も何人か。

しかし、見ているだけです。

世の中、世知辛いものです。



人気の少ない薄暗い路地を、

前に2人、後ろに1人で囲まれて歩いています。

このチンピラさんは、すごく甘い人のようです。

敵に後ろを見せるなんて。

何気なく懐から矢を取り出します。

すごく無防備な前の2人の背中に、手で持ったまま突き刺します。

そのまま振り返り、あっけに取られている後ろの人にも刺します。


「て、てめぇ! ふざけやがってぇ……」

チンピラさんが怒号を上げます。

しかし、その言葉尻には力が宿っていませんでした。

即効性の麻痺毒矢のお陰です。

こんなこともあろうかと、持ち歩いていて正解でした。

ボクは何も言わず、動けない彼らの懐を漁りはじめました。


……しけてました。

やるせない気分なので、倒れた彼らを引きずり、一箇所に集めます。

数歩離れて、弓を構えます。



ちぇすとー。



赤色に輝く矢が、彼らの中心に突き刺さります。

爆音が響き、彼らは悲鳴を上げました。



ちぇすとー。



赤色に輝く矢が、彼らの中心に突き刺さります。

爆音が響き、彼らは悲鳴を上げました。



ちぇすとー。



赤色に輝く矢が、彼らの中心に突き刺さります。

爆音が響き、彼らの悲鳴は聞こえなくなりました。



少しだけ、気が晴れました。




  とあるVRMMOのはなし・完結編




半年が経ちました。

その間、黙々と狩りを続けていたので、

かなりパラメータが上がりました。



そんな折、街でぶらついていると、

「セージさ~ん!! お久しぶりです!」

ツバメ君とばったり会ってしまいました。

彼のことだからもって数ヶ月かな、と思っていたのですが。

生きていたのなら仕方ないか、と諦めて会話を開始します。



久しぶりに会った彼はなんというかこう。

勇者様でした。

青春街道まっしぐらな熱血風味オーラをあたり構わず撒き散らしています。

脳裏に厨やら芳ばしいやらと言う専門用語が掠めます。

彼は押しが強く、自分と一緒に冒険しよう、

セージさんは俺が守って見せますよ、などと鳥肌が立つことを言い放ち、

人の話をまったく聞かず強引に誘ってきます。

余りにしつこいのでしぶしぶ折れてしばらく付いていく事になりました。

まったくいい迷惑です。



彼のパーティには男騎士さん1人、女白魔道士さん1人がいました。

彼自身は剣士さんでした。

ここ何日か、彼らと行動を共にして判ったのですが、

彼らはどうやらゲームのクリアを目指す攻略組のようです。

非常に面倒です。

他の人に任せて、ボクはダラダラしていたいです。







更に半年経ちました。

いつの間にか、ボクたちのパーティーは攻略組でもトップをはるようになっていました。

そして今。

こうして、ラスボスと交戦しています。

既に騎士さん、白魔道士さんは戦死なされました。

ツバメ君は、おどろおどろしい外観の敵と必死でとっ組み合っています。


「こうなったら……セージさん! オレごと、撃ってください!!」

敵の動きを押さえ込んで、ツバメ君が叫びました。

その素晴らしい自己犠牲の精神に、心を打たれました。



ちぇすとー。



赤い矢がツバメ君に刺さりました。

轟音と共に彼の体は木っ端微塵に。

ついでに、敵も粉々に。




やっと終わったか、と思った瞬間。

「ふははは、よくぞここまでやってきたな冒険者たち!

 最後の敵は、この私だ!

 見事討ち果たして……」

台詞と共に、1人の男が現れました。

例の、ヒゲです。

彼の台詞が終わる前に、ボクは矢を射ました。

見事眉間に突き刺さりましたが、HPゲージはほとんど減っていません。

もう一発。

「最後まで話を……」

今度は喉に刺さりました。

しかし、やはり平気なようです。


「ウ、ウワァァァン!!」

半泣きになりながら襲い掛かってきました。

逃げます。

追ってきます。

こちらの方が足が速いようで、見る見るうちに引き離せました。

ある程度距離が離れたので、再度矢を射ます。

いわゆるひとつの、逃げ撃ちというテクニックです。

そしてまた逃げます。

射ます。




それを延々と繰り返すこと1時間、ついに彼のHPゲージは後僅かになっていました。

もちろんこちらはノーダメージです。

「うう、良くぞここまで私を追い詰めたな」

彼は立ち止まり、半泣きのままそうのたまいました。

「恐らく私はここで死ぬだろう。

 冒険者よ、冥土の土産に君の本名を教えてくれまいか?」

「お断りします」

「冒険者よ、冥土の土産に君の本名を教えてくれまいか?」

「お断りします」

「冒険者よ、冥土の土産に君の本名を教えてくれまいか?」

「…………田中、誠司と申します」

某RPGのワンシーンが思い浮かんだので、仕方なしに答えました。


「そうか、田中誠司か……。いい名だ。

 私は地獄に落ちるだろうが、君の名はきっと忘れまい。

 ふふ、しかし因果なものだ。

 この私が、かつてD計画に加担し、アトランティスに封じられた……」



ちぇすとー。



話が長くなりそうなので、強制的に割愛させていただきました。

赤い矢は真っ直ぐ彼の額に突き刺さり。

爆音と共に脳漿をぶちまけました。



同時に、ボクの視界が白く染まっていきます。

薄らぐ意識の中で、『ゲームはクリアーされました。おめでとうございます』

と機械的な音声を聞いた気がしました。








まぶたを開くと、白い部屋の中で仰向けになっていました。

視界に、すぱすぱとそれはもう旨そうに葉巻を吸っている女性が映りました。

彼女も、目を覚ましたボクに気が付いたようで、こちらに近づいてきます。


「よぅ、我が娘」

「やぁ、我が母上」

手を挙げ、ニタリ、と厭らしい笑みを浮かべる母上殿。

なんとまあ、起き抜けの心臓にはきつい笑顔です。


「母上、ただいま帰りました」

「おう。オツカレー」

ひらひらと手を振る母上。

「んで、どうよ? セシル」

主語がありません、母上。

「まぁまぁです」

よく分かりませんが。





そんなこんなで、ボクことセージ、

本名綾崎セシル(16歳 ♀)の冒険は幕を閉じたのでした。マル。



[1292] Re[2]:とあるVRMMOのはなし(短編)
Name: 猫F
Date: 2005/08/11 20:42


あれから数ヶ月、病院でのリハビリも終わり、

家から徒歩38秒の所にある女子高に入学しました。




  とあるVRMMOのはなし・番外編




そんなある日のお昼休み。

お昼ご飯はなに食べようかな、と思いつつ学生食堂へ向かっていると、

肩のぶつかった3人のヤンキーお姉さんに絡まれました。

少し聞き取りづらい独特のイントネーションで因縁をつけられ、

人気の無い所へ連行されようとしています。

周りを見ると、心配そうにこちらを見ている人も何人か。

しかし、見ているだけです。

やはり世の中、世知辛いものです。



人気の少ない薄暗い校舎裏を、

前に2人、後ろに1人で囲まれて歩いています。

このヤンキーお姉さんは、すごく甘い人のようです。

敵に後ろを見せるなんて。

何気なくポケットからダーツを取り出します。

すごく無防備な前の2人の背中に、手で持ったまま突き刺します。

そのまま振り返り、あっけに取られている後ろの人に投げつけます。


「て、てめぇ! ふざけやがってぇ……」

ヤンキーお姉さんが怒号を上げます。

しかし、その言葉尻には力が宿っていませんでした。

即効性の麻痺毒矢(ダーツ仕様)のお陰です。

こんなこともあろうかと、持ち歩いていて正解でした。

ボクは何も言わず、動けない彼女らの懐を漁りはじめました。


……しけてました。

とてもやるせない気分なので、倒れた彼女らを引きずり、一箇所に集めます。



ここで気が付きました。

弓、持っていません。

スキル、使えません。



仕方が無いので、入学祝いに母上殿から頂いたメリケンサックを取り出しました。



ちぇすとー。



銀色に輝くメリケンサックが、右の娘の顔に突き刺さります。

ぐちゃりという音と共に、彼女が悲鳴を上げました。



ちぇすとー。



銀色に輝くメリケンサックが、左の娘の顔に突き刺さります。

ぐちゃりという音と共に、彼女が悲鳴を上げました。



ちぇすとー。



銀色に輝くメリケンサックが、真ん中の娘の顔に突き刺さります。

ぐちゃりという音と共に、彼女が悲鳴を上げました。



しかし、いまいち爽快感がありません。



ちぇすとちぇすとちぇすとー。



トラウマになって告げ口も出来なくなるほどに殴り続けました。

気が付いたら、悲鳴は聞こえなくなっていました。



少しだけ、気が晴れました。






そんなこんなで、ボクの学校生活は続いていくのでありました。マル。



[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:df3a5d16
Date: 2010/08/25 02:10


 そこはある種の楽園だった。
 剣を振るい魔法の飛び交う、
 空を駆け風と踊り、炎を吐いて天を焦がす。

 なんというファンタジー。

 そんなファンタジー世界にログインして早1年、今日も僕は割と元気です。




  とあるVRMMOのはなし2




 VRMMOというジャンルのゲームをご存知だろうか。
 このヴァーチャルなリアリティでマルチなメンバーのオンラインゲームというジャンルは、世に広まり既に10年は経過していた。

 栄枯盛衰の理に従い、現れては消えていく仮想世界の数々。

 そんな中、正式スタートから8年以上は経つというのに今なお生き残っている
老舗ゲーム、『風前の灯火オンライン』。

 命名した奴とか超死ね、と思ったが多分既に死んでいる。

 というのも、このゲーム。

 なんと終末期医療の一環なのである。

 金とか地位とか有り余っているが身寄りのないご老人たちが大量の資金人材を注ぎ込んだ結果がこれだよ! とばかりに
豪勢な仕様なのである。じじい超スゲー。

 なんせアカウント取得こそ自由に出来ないものの、
プレイするにあたり必要な機材一式無料配布、クライアント使用料も無料、
全てタダ。商売っ気ナシである。

 リアルで手足欠けていようが目が見えなかろうが風前の灯火(笑)だろうが関係なしに
ゲーム内では(特殊な設定をしない限り)五体超満足。

 おまけに体感時間10倍速というちょっと余命が気になるお年頃の方にも安心な設計。
 あんなにボロボロだった現実の1年がすっきりと頑丈な仮想の10年に! なんということでしょう!

 正に至れり尽くせりである。


 リアルでは管に繋がれジェルベッドでプカプカ浮かぶ枯れ果てた肉体を介護士が必死こいて世話してる気もするけど、
そんな事からは全力で目を背けて僕らはぬるっとファンタジー世界を満喫してます。







 「満喫してます、まる。っと」
 「坊主なにしよるん?」
 「今回実装された奴。中からネットにブログ上げられるんで始めてみたり」
 「日記みたいな奴やったっけ。よう解らんしええわ」
 「ブログが解らないのにゲームシステムは使いこなすこのジジイ、只者ではない、まる」
 はたかれた。




[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:df3a5d16
Date: 2010/08/25 02:11


 今日は愉快な僕と僕の愉快な仲間達を紹介したいと思います。
 何分メンツの入れ替わりがよくあるので、その度に更新することになると思います。




  とあるVRMMOのはなし2




 1人目。『ラスト・サムライ』サブロウ

 前回の記事で僕と掛け合いをしていたジジイ。只者ではない。
 最初に外見設定できるのに、あえてリアルの外見のままジジイ。関西弁。
 『』の中の厨二臭い称号(勝手に贈られてくる)の通り、どこぞの武家の末裔らしい。
 家伝の剣術で刀をブンブン振り回すうちのパーティの頼れる前衛である。一言どうぞ。

 「ブンブンは振り回しとらん。うまいこと近づいて斬る、それで十分やと何べんいわせsdf」

 長くなりそうなのでキーボード奪い取りました。
 渡して数秒、ブログ解らんとかいう割にこのジジイ、ブラインドタッチである。只者ではない。



 2人目。『竹槍マスター』チヨ

 竹槍+99の人。黒髪ストレートの見目麗しい女の子。見た目は。見た目だけは可愛いよチヨ。
 でもモンペ。可愛いけど。可愛いモンペ。
 怒ると般若だけど基本的に気立てのいいヤマトナデシコ。
 よく僕を流し目というか猛禽の目で見つめてる。
 そこの所どうなのか一言どうぞ。
 
 「愛」

 ホントに一言ですね。
 でも年の差とか考えようね。
 前に冗談でババァ! 俺だ! 結婚してくれ!って言ったのがマズかったか・・・・・・



 3人目。『これはひどい』セシル
 
 なんかいろいろひどい人。お姉さん担当。弓使い。
 容姿端麗頭脳明晰、紆余曲折爆裂無残。
 なに言ってるのかわからねーと思うが俺にもわからん。でも美人なので許す。
 腹黒いとかエログロいとかストレートにひどいとか。でも美人なので許す。
  
 「そんなチャチなもんじゃあ断じてないです。もっと恐ろしいものの片鱗を味わせます」

 軽く振ったネタにも返してくれるので好きです。
 


 4人目。『ゆんゆん』ユウコ

 不思議系少女? よくぽへーっと受信してる。よだれ垂れとる。
 回復・補助の僧侶系キャラ。生臭い触手な召喚獣とかも持ってる。
 よくふわふわあっち行ったりこっち行ったりするので集団行動中は首輪に繋いでます。
 会話が成立することはあんまりないけど、僕は友達だって信じてるッッッ!!

 「くぁwせdrftgふじこlp;@:「」

 狙ってやってるんだろうか。



 ラスト僕。『死に損ない』ユウキ☆ミ

 ☆ミが余分だったと言わざるを得ない。ユウキって名前もう取られてたから仕方ないけど・・・・・・
 職業・魔法使い。どどど童貞とちゃうわ!
 ゲーム内の登場キャラクターは全員18歳以上です!(主観的な意味で)
 元はごく普通の家庭で育ったリアル16歳。バーチャル含めてもう25になるかな。
 余命一ヶ月あたりでオンライン初めて、リアル半年過ぎた辺りからもうはっちゃけて生きることにしました。
 心停止も何回かあったらしいけど(ずっとインしっぱなしだから後でゲーム内にメールが来る)
 リアル1年後、そこには元気に走り回る僕の姿が!(但しゲーム内に限る)
 
 「それでは皆様、良き終末を」


 このブログで笑わせられる人がいたら、それはとても素敵な事ですぅ。




[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:df3a5d16
Date: 2010/08/25 02:12


 今日はサブロウのじいちゃんと狩りに行ったのでその時のアレコレを書こうと思います。
 あのジジイ僕よりLV低いくせにメチャ強いでやんの。



 
  とあるVRMMOのはなし2




 まぁ狩りに行ったのです。
 じいちゃんのLVだとギリギリ死ぬランクの敵を狩りに。
 それを見ながらニヨニヨしようと思ってたはずなんですが。

 「ほいほいほいっと」
 「・・・・・・あっるぇー?」

 なんというジジイ無双。
 ゆらっと動いて敵と交差したかと思ったらガリガリ敵HPが削れていき、

 「よっこらしょーい」

 複数の敵に囲まれているはずがその攻撃を掠らせもせずにぬるぬるかわし。
 気が付けばラス1に止めを刺してるじいちゃんの姿。

 「ぬるいのぅ」
 「いやいやいやいや」
 
 使いまわしだけど超スピードとかそんな物ではなかった。
 むしろ緩やかなくらいの速度でしかない。

 なんなのこのジジイ。詐欺かしら。
 
 「やからうまいこと近づいて斬っただけやと言うとろうに」
 「いや、・・・・・・あっるぇー?」

 確かに傍から見てもその通りでした。
 でも納得は出来ません。
 
 「チートジジイ。只者ではない」
 「やかまし。ほれ今度はお前行ってこい」
 
 尻を蹴飛ばされて新しく沸いた敵に向かわされました。
 それじゃ今度は僕の華麗な回避を見せてやるぜ! と張り切ったところ見事返り討ち食らいそうになったので、
 涙目で逃げてから魔法で燃やしました。

 「へたれやのぅ」
 「もっと華麗に、そう、チキンとお呼び下さい」

 こうして上下関係は更新されました。

 
 その後も参考にすべくお爺様のお話を伺った所、
 お爺様のご実家の剣術流派はひたすら「自然」である事をお題目にしていると言う事でした。
 型とか漫画技とかもなく、ただ自然に動き自然に近づき、自然に剣を振り自然に斬り殺す。
 
 「剣は手の延長、痒い背中掻くのも敵斬るのも同じ感じで」
 「命、軽っ」
 「剣士なんてそんなもんや」

 実質教え教わるというのは無理なので、家ぐるみでその曖昧な感覚を子供の頃から仕込まれていたそうで。
 とはいえ現代社会で自然に帯刀なんぞ出来るわけもなく、あえなく流派廃絶となり。
 それでも剣を捨てられないお爺様はこうして風前の灯火オンラインにやってきたそうです。

 「全く参考になりません」
 「やわなぁ」

 お爺様はそう苦笑して、また沸いてきた敵に向かって自然に歩いていきました。
 その後姿を見て僕は思うのです。
 
 「ダメだこのジジイ早く何とかしないと」





[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:df3a5d16
Date: 2010/08/25 21:32

 
リアルの皆様こんばんは、今日も生きてたユウキ☆ミです。
 生きてりゃやるせない事はいっぱいある、それに当たってしまった日のこと。




  とあるVRMMOのはなし2




 今日はパーティーの人が所用で数人抜けてるので、町で借りてるパーティ用の大部屋でのんびり過ごしています。
 
 「今日面会行ってるのサブロウじいちゃんとチヨさんだけ?」
 「はい」

 ギャグ4コマ漫画をソファに寝そべり真剣に読んでいたセシル姉ぇが生返事で答えてくれます。
 基本的にログインしっぱなしの僕達にも、外には家族やら友人やらがいるのです。
 とは言え、僕らはログアウトすると寿命がストレスなしでもマッハなので面会者はわざわざゲーム内にやって来てくれるのです。 

 「んでユウコはいつもの如く」
 「朝飯前の軽い消息不明」
 
 目を離すとふらっといなくなる困ったちゃんです。首輪するの忘れてました。
 ご飯食べてないのでお腹空いたら帰ってくるのもいつものことです。

 「セシル姉ぇ。二人きりなので愛を確かめ合いましょう」
 「部首は心、総画13画です」
 「可愛がる事。慈しむ事。男女が互いに恋し、思い合う事」

 愛の確認作業終了。


 暇なのでチヨさんの私物の昆布茶を淹れます。
 熱いそれを啜り一息付いた頃、メールが届いたのに気付き確認。

 「あー、サクラさん引退したってさ」
 「惜しい人を亡くしました」

 町で駄菓子屋を営んでいた方です。
 よく可愛がってもらいお世話になった、綺麗な格好いいおばちゃんでした。

 「んじゃ狩りにいってきまーす」
 「いってらっしゃい」

 一度も顔を上げない辺りとてもセシル姉ぇだな、と思います。





 

 人気のない森の中。
 敵はそこそこ強くソロではとても突破できない場所なのですが。
 
 「あああああああああああああああああ!」

 泣きながら叫びながら魔法を放ちながら走り回り。

 「あああああああアッー」

 MP尽きた所で殴りかかっては返り討ちにされ、あっさり死んで町に強制送還されました。



 とぼとぼ部屋に戻る途中、暮れた空に一番星を見つけてため息を一つ。

 「明日はいい日でありますように。南無南無」 





[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:df3a5d16
Date: 2010/08/26 14:15


 ぼくは、チヨさんをとても可愛らしい人だと思ってます。いつも悪戯して叱られるのですが、謝ると  
 すぐに笑って許してくれます。菩薩のような方です。
 けれど、何の因果か僕は彼女に慕われているようで。 と
 ても光栄なの事なのですが、リアル年齢差を考えると悩んでしまいます。
 
 今も、彼女はブログを書き込む僕の後ろでニコニコ笑っています。




  とあるVRMMOのはなし2




 今日はまったりの日。


 自室で電子化された週間少年誌を読みながら優雅にコーヒーを啜っていると、ドアからノックの音。
 扉を開けるとそこにはモンペ美少女の姿が。

 「おや、おチヨさんいらっしゃい。なんか用?」
 「はいこんにちは。たまにはユウちゃんに美味しいものでも食べさせようと思ってねぇ」

 まさかの押しかけ手料理イベントであった。


 
 チヨさんに纏わる話は色々ある。

 強化竹槍+99の使い手、元ギルド『竹槍部隊』副隊長にして最後の生き残り。モンペ。
 仲間達から受け継いだ竹槍、その総数実に324本を10秒で投げつける絶技《竹槍ファランクス》に
窮地を救われた事も一度や二度ではない。さらさら黒髪ロング。
 悪戯やらセクハラやらの果てにお仕置きとしてやられた事も一度や二度ではない。美少女。
 しかし戦闘中や叱られる時以外は、基本的にとても優しいお婆ちゃんもといロリババァなのである。萌える。



 「ユウちゃんはいつもお部屋綺麗にしてて偉いねぇ」
 「いつでも女性を連れ込めるよう気を付けている次第であります」
 「偉い偉い。男の子はやんちゃなくらいで丁度いいものねぇ」
 「えへー」

 この僕様が少女に子供扱いされ頭を撫でられる屈辱を与えられ、
 あまつさえちょっと嬉しくなっちゃうとは恐るべき包容力である。
 稀代のナデポの使い手であると言えよう。

 「それじゃお台所借りるねぇ」
 「はーい」



 週刊誌も読み終えやる事も無くのんびりとした昼下がり。
 まどろみの中響く音は、トントントンとリズミカルに。
 香る味噌の芳しさにどこか郷愁の念を覚え。

 なにこの超癒し空間。

 


 テーブルに並ぶ肉じゃが味噌汁玉子焼き漬物白米。
 なんとも定番のメニューである。独り暮らしキラー御用達の。
 このような物で僕様を堕とそうなど片腹痛い。

 「うまうまうまうまうまうま」
 「はいはいもっと落ち着いて食べなさいな。はいお茶」

 口内を焼く出汁の染みたイモをぬるめのほうじ茶で流し込み、
 舌先で広がり脳髄を蕩かせるようななふんわり出し巻き卵をなんとか嚥下。
 味噌汁の鰹と昆布の合わせ技に苦戦しつつも、
 残す敵は後一つ。

 胡瓜のぬか漬け。大好物である。

 潔く口中に放り込み、噛み締め、飲み込む。
 歯切れ良く響いていた音はいつしか消え去り・・・…


 「ご馳走様でした。チヨさん愛してる」
 「はいお粗末さまでした。私もですよぅ」





 僕たち結婚する事になりました。なんでだろう。






[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:1a54c9dc
Date: 2010/09/02 08:22
このブログは一身上の都合により閉鎖させて頂く事になりました。
短い間でしたが、ご愛読頂きました皆様に心よりの感謝を贈りたいと思います。

それではまた、電子の海のどこかでまた会う日まで。
Fuck off.



[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:1a54c9dc
Date: 2010/09/02 08:22


 「これはひどい」
 これはひどい。
 
 あ、どうもこんにちは、ユウキ☆ミです。ここしばらくブログ機能のバグで更新出来ませんでした。403とかなんとか。
 今、別の端末からUPしてます。
 久々に来て見覚えない更新されてると思ったら、なんかえらい事になってました。
 ネタになるので前回更新分は残しておこうと思います。
 とりあえず閉鎖は誤報ですのでまだまだ続きます。

  
 それじゃちょっとセシル姉ぇとっちめてきますね。




  とあるVRMMOのはなし2




 「止むに止まれぬ事情があったんです」
 「聞きましょう」

 「暇だったんです」
 「ほう」

 「4月1日だったんです」
 「8月31日です」

 「4時1分だったんです」
 「毎日あるよねそれ」

 「それはかつて、ボクが異世界に召喚され勇者達と戦っていた頃の事です」
 「関係ないよねそれ」

 「魔王として勇者と人間と世界を滅ぼした後、気付いたんです」
 「そっち側ですか」

 「滅ぼすよりおちょくった方がいい暇潰しになった、と」
 「これはひどい」

 「暇だったんです」
 「ほう」

 「特に悪気しかない可愛い悪戯なので許します」
 「・・・・・・あれ? 文脈おかしくね?」


 この割と洒落にならないレベルでひどい人こそセシル姉ぇです。
 いつも飄々とナチュラルに悪行を重ねているのですが、何故かお縄を頂戴することのない不思議で残念なお姉さんです。

 「つーかよく管理パス分ったね」
 「ハッ」

 鼻で笑われました。

 「胸に手を当ててよく考えてみなさい」
 
 言われた通り胸に手を当ててみます。
 とても柔らかくて素敵だと思います。
 
 「とても柔らかくて素敵だと思います」
 「エターナルフォースバスト。相手は死ぬ」

 そのまま頭を掴まれ、たわわな胸に抱き締められました。
 窒息判定が発生し、酸欠で死亡しました。



   
 なんか話がズレたような気はしますが終わり良ければ全てよし。
 今日も僕は元気です。続きます。




[1292] とあるVRMMOのはなし2
Name: 猫F◆9dc73d1b ID:1a54c9dc
Date: 2010/09/02 08:23


 今日は我らがマスコット、ゆんゆんユウコちゃんの話をしようと思います。
 ではダイジェストでどうぞ。



 「あーうー?」

 ある日空から落ちてきた、無垢な少女。
 物語は始まり、僕達の平凡な日々は壊れ始める。



 「坊主! ここはワシが食い止める! ・・・・・・帰ったら一杯奢りや」

 迫りくる不死の黒服軍団、

 「蘇れ同胞、『竹槍ファランクス』」

 決死の特攻をかける仲間たち、

 「ちぇすとー」

 やっぱりいつも通りのセシル姉ぇ。




 「それでも!・・・・・・それでも、僕達は友達なんだッッ!!」

 それは魂からの咆哮。





 「うざ・いえい! うざ・いえい! いかあ はあ ぶほう-いい らあん=てごす くとぅるう ふたぐん
 らあん=てごす らあん=てごす らあん=てごす!」

 そして敵も味方も纏めてでっかい触手に蹂躙された。グチャッと。完。




  とあるVRMMOのはなし2





 「お手」
 「ういむしゅー」

 「おかわり」
 「まずーいもういっぱーい」

 「ちんちん」
 「このげーむのとうじょうじんぶつはじゅうはちさいいじょうです」

 「3回回って豚のような悲鳴をあげろ」
 「ひぎぃ」

 「『約束された―」
 「《えくす―」

 「―勝利の剣!』」
 「―かりばー!》」

 「おーい磯野ー」
 「やきゅうしようぜー」



 「・・・・・・何やってんの?」
 「ご覧の通り教育中です。はいビーフジャーキー」

 狩りから帰りパーティ部屋に戻ってきたところ、首輪に繋がれたユウコがセシル姉ぇに餌付けされていました。
とても幸せそうに干し肉を頬張っています。

 「最近語彙増えてきたと思ったらそんなことやってたんだ。他にはなんか出来るん?」
 「接待麻雀とかカードすり替えとか」
 「普通に覚えさせようよ」





 後で普通にやったら賭け金全部巻き上げられました。
 ユウコ、それストレートやない。ロイヤルストレートフラッシュや。



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