対イラク開戦を前にして、出征兵士を湾岸地域に送り出した全米各地の基地では、家族が兵士の安否を気遣いながら、息をひそめてイラク情勢に注目しています。次にあげるのは、そういう基地の様子を報告した英文の一節です。
The kids at Fort Campbell, Kentucky,
home of the 101st Airborne Screaming Eagles, wait for news from Kuwait, and the
latest word from their mom or dad. Everyone ― children, wives, husbands, parents ― keeps cell phones on at all times and answers them without apology,
for fear of missing a call someone stood in line for five hours to make.
1.このapologyは誰が誰に対して行うものですか?
2.someone stood in line for five hours to makeはどういう意味で、前とどのようにつながりますか?
【解説1】
answers themのthemはcell phonesをさしています。そこで、Everyoneからapologyまでを直訳すると「子供も妻も夫も両親も、誰もが常に携帯電話を持ち歩いていて、謝罪なしで電話に出る」となります。「謝罪なしで」とはどういうことでしょう?これは、この後を読むと分かります。for fear of missing a call(電話を逃すことを恐れて)は「携帯電話に電話がかかってきたとき、すぐに出ないでぐずぐずしているうちに、着信が切れてしまうことを恐れて」ということです。
これから推測するとanswers them without apologyは「すぐに電話に出る」という内容になるはずです。つまり、without apologyは、直訳は「謝罪なしで」ですが、事柄としては「ぐずぐずせずに、すぐに」ということなのです。この直訳(=謝罪なしで)がこの事柄(=ぐずぐずせずに、すぐに)になる論理をじっと考えれば、「謝罪」が何を意味しているかは明らかです。このapologyは携帯電話に着信したとき、電話を持っている人が、ちょうどそのとき話していた相手に対して言う謝罪の言葉なのです。たとえば「あっ!電話がかかってきちゃった。ちょっと失礼」というような言葉です。
本文は「こういう断りを言わずに、相手を無視して、いきなり携帯電話の着信ボタンを押す」といっているのです。こんな非礼なことをEveryoneがするのは、この電話がよほど大事な電話だからです。それは、この後を読むとわかります。
【解説2】
この部分はS+Vという構成の「文」です。ところで、Everyone … callもS+V1 and V2という構成の「文」です。英文構成上、1つの英文(=大文字で始まりピリオドで終る語のつながり)において文と文を、間に何も置かず(=and,but,orはおろかコンマすら置かずに)、対等に並べることは許されません。このようなケースでは「2つの文は対等ではない(=2つの文は主節と従属節の関係である)」と考えるのが筋です。このルールを、本文にあてはめると、a callとsomeoneの間に何もないのでsomeone … makeは従属節に感じられるのです。こういう目で英文をじっと眺めると、だんだんわかってきます。makeは普通は他動詞で使うのに、本文ではmakeの後に目的語がありません。これはa callとsomeoneの間に関係代名詞が省略されていて、その省略されたwhichがmakeの目的語になっているからです。
つまり、someone … makeは形容詞節でa
callを修飾しているのです。この形容詞節を普通の文に戻すとsomeone stood in line for
five hours to make a call(誰かが電話をかけるために5時間並んだ)となります。この文は「戦地に行っている家族や友人が5時間も並んでやっとかけてきた電話を取るために、話し相手に断りも言わず、いきなり携帯電話にかじりつく」といっているのです。
【全訳】
第101空挺師団の根拠地であるケンタッキー州フォート・キャムベルの子供たちはクゥエートからのニュースと母親や父親からの最新の連絡を待っている。子供も妻も夫も両親も、誰もが常に携帯電話を持ち歩いていて、誰かが5時間も並んでやっとかけてきた電話をのがさないように、着信すると「ちょっと失礼」も言わずに即座に電話にかじりつく。
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