呉市が、バス運行の公営企業として広島県内で最後に残った市交通局を、民間へ移譲する方針を固めた。現行20路線のうち13路線は赤字で、市は年間12〜13億円の財政支援を続け、なんとか経営を維持してきた。民間への移譲は、将来的に市民の交通手段を確保するため、市の財政負担を大幅に圧縮する最も現実的な判断をした結果と言える。
市が6月、市議会へ示した経営改革シミュレーション。公営でこのまま存続させると、2011年度から15年度までの5年間で一般会計による負担額は約75億円に上ると試算した。一方、一括で民間移譲すれば、約43億円で済むとしている。
交通局のバスは昨年4月、児童2人を死傷させる重大事故を起こした。その後も引きずり事故などが相次ぎ、接客サービス面での市民の不満も根強い。7月には前副局長が土地貸し付けに絡み加重収賄などの容疑で逮捕される不祥事も起きた。民間移譲には、こうした体質を改善する意味もある。
ただ民間移譲には、公務員である職員や資産の取り扱いなど解決すべき問題が多い。市民生活に不可欠なバス路線を、将来にわたって民間事業者が守っていけるよう、市としてどう手だてを打つかも大きな課題となる。
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