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きょうの社説 2010年9月3日
◎石川・福井広域観光 北陸圏浮上させる牽引役に
谷本正憲、西川一誠両知事が合意した広域観光推進協議会の設立は、石川、福井県境を
越えた本格的な観光圏づくりの一歩となる。それは両県にとってプラスになるばかりか、北陸の一体感を強める大きな意味をもつ。北陸では、金沢市と富山県西部6市が「加賀藩」をテーマにした広域観光圏づくりを進 めている。それに比べて福井との関係は「白山」「恐竜」など個別テーマの連携はあっても、総合的な取り組みは十分とは言えなかった。北陸新幹線延伸を視野に入れれば、福井との間でも、まとまりを持った圏域づくりに乗り出す必要がある。3県の真ん中に位置する石川県の役割はとりわけ重い。 今年12月の東北新幹線、来春の九州新幹線全線開業が、東北、九州ブロックの連携を 促す弾みになっているように、2014年度の北陸新幹線金沢開業も「北陸圏」を強固にする節目であり、石川、福井県の観光圏形成は来たるべき福井延伸への備えにもなる。 観光誘客、とりわけ海外誘客では県を超えたブロック単位の取り組みが不可欠である。 九州、東北、北海道など他の地域と競い合うには、北陸3県のスクラムの強さが問われている。新たな県境連携を「北陸圏」浮上という大きな視点でとらえ、具体的な成果を着実に積み上げていきたい。 石川、福井県の広域観光推進協は10月にも発足し、両県と小松、加賀、白山、あわら 、坂井、大野、勝山、永平寺の計8市町が参加する。加賀、芦原温泉はいずれ新幹線で駅が隣り合うだけに連携の主軸になりうる。 白山や恐竜化石に加え、伝統工芸、冬のズワイガニなど協力できる素材はいくつもある 。一体感のある観光戦略を展開するうえで、小松空港を共通の空の玄関口とする認識も一層重要である。金沢、福井両市を巻き込んだ、より大きなエリアで広域観光を位置づける視点も必要になろう。 両県は全国屈指の「真宗王国」であるほか、永平寺、大乘寺、永光寺、總持寺祖院と「 禅の道」も県境をまたいで続いており、精神土壌でも共通点は多い。県境自治体の協力体制を軸に両県全体を視野に入れた取り組みも広げたい。
◎中央アジア諸国 重要性を増す資源外交
岡田克也外相が先ごろ、中央アジアのウズベキスタンやモンゴルなどを訪問し、資源エ
ネルギー分野での協力関係拡大などで各国首脳らと一致した。中央アジアの国々は原油やウラン、レアメタル(希少金属)などが豊富なことから、資源外交の重要性がかねて指摘されているが、このところは停滞気味である。国際的な資源獲得競争が激しさを増すなか、中国は最近、世界生産の9割を占めるレア アース(希土類)の輸出規制を強化し、日本のハイテク産業を脅かしている。レアアースはハイブリッド車のモーターなどに欠かせない鉱物で、輸入を中国だけに頼る状況を改めていかなければならない。その意味でも、中央アジアでの資源外交は一段と重要になっており、テコ入れを図る必要がある。 中央アジアの国々は、日本国民にまだなじみは薄いが、親日的な国が多く、日本独自の 外交が可能な地域として重視されてきた。橋本政権時代は中国、ロシアだけでなく中央アジ諸国と連携する「ユーラシア外交」が説かれ、2004年には「中央アジア+日本」という対話の枠組みが創設され、外相会合の隔年開催が定例化された。外相会合には現在、中央アジア5カ国が参加している。 しかし、近年は短命内閣が続いたこともあって対中央アジア外交は滞り、岡田外相が参 加したウズベキスタンでの外相会合は4年ぶりの開催、日本の外相の中央アジア訪問は6年ぶりという。 この間に、中央アジアへの経済進出を積極的に進めてきたのは中国と韓国である。中国 は上海協力機構にカザフスタンなど4カ国を取り込んで安全保障面の関係も強化しているが、韓国企業も自動車や金融、流通などの部門で数多くが進出している。日本は政府開発援助(ODA)でそれなりの実績を積んできたものの、民間投資や貿易では遅れをとっている。 日本は06年に中央アジア4カ国との間で、テロ・麻薬対策や対人地雷除去、保健医療 などで協力する行動計画を採択している。まずこの計画を着実に実行し、成果を挙げることが肝要である。
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