大統領府の執務室の机の引き出しから、鉱山が落盤した地下700メートルから届いた「33人は避難所で無事」と書かれた紙を取り出すピニェラ大統領=サンティアゴ、平山写す
南米チリのピニェラ大統領は2日までに、朝日新聞との単独会見に応じた。日本メディアとの会見は、大統領就任後初めて。チリ北部の鉱山で起きた落盤事故で地下に残る作業員を救出するための掘削技術や、地震による津波の早期警報システムの改良などで日本の協力を要請した。
ピニェラ氏は、チリ北部のサンホセ鉱山で8月5日に起きた落盤事故直後から、オーストラリアやカナダ、米国など鉱山のある国々に、地下に残る作業員33人の救出のための技術協力を求めてきたことを明らかにした。
救助用の縦穴の掘削が始まったのに加え、すでにある換気口の穴を広げて救出用にする「プランB」計画も並行して進め、さらに「石油会社の掘削技術を採り入れた第三の方法」も検討しているという。「地下700メートルからの救出作戦には正確さと速さが要求される。作業員を危険にさらさないよう、安全にも細心の注意が必要だ」として、日本にも技術協力を求めた。
一方で、安全を軽視した結果、今回の事故が起きたとの批判が高まっていることを受け、チリ国内の鉱山の安全対策を今後60日以内に抜本的に見直す方針も明らかにした。
また、地下の作業員が家族にあてて送った手紙に目を通したというピニェラ氏は「家族への愛や約束、感謝の気持ちがつづられ、心を動かされた」と明言。そのなかには、長年一緒に住んでいた女性に「教会で結婚式を挙げよう」と提案したものや、過去の過ちを家族に謝罪する手紙などもあったという。
一方、2月27日にチリを襲った大地震後に日本から多くの援助が寄せられたことに言及し、「日本はチリに寛大に対応してくれた。日本国民に感謝している」と謝意を表明。大地震後に「津波の心配がない」とチリ当局が伝えた情報を信じた人々が大勢亡くなっているが、11月に予定する訪日では「津波の早期警報システムや、被災者救済の有効策を日本から学びたい。地震の危険を共有する日本とチリは協力できる」と述べた。
大地震から半年が経過して再建は急ピッチで進んでいるという。「雇用が増え、投資も回復、輸出も増えている」といい、日本との貿易について「チリからはワイン、魚、木材、銅などを輸出しているが、日本市場がさらに開放され、我々の農作物をもっと受け入れてほしい」と期待を表明した。(サンティアゴ=平山亜理)
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