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[15751] バカとテストと成金娘(バカとテストと召喚獣 オリ主・転生・TS)
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/09/01 10:35
バカテス二次
・転生性転換もの
・原作外チートあり
・ノリが最重要視されています。そのため、原作弄られポジは過度に弄られる場合があります。
・この物語は皆さんの誤字修正によって支えらr(ry
これらの要素が嫌いは方は避けてください。



□その他履歴
2010/9/1 小話の細部で色々間違ってた部分を修正
2010/6/5 しゅ(ry
2010/5/16 修正ッ…! 修正ッ…!(カイジ風に)
2010/5/4 誤字修正
2010/4/18 誤字修正
2010/2/27 注意書きを何点か追加
平成22年2月22日 赤ペン先生が現れた! このSSの誤字が大幅に改善された!
2010/2/17 誤字修正
2010/2/13 誤字修正
2010/2/10 振り分け試験の一部文章を修正
2010/1/31 誤字誤文しゅうせい。
2010/1/28 小問と第6問の誤字誤文しゅうせい。
2010/1/26 夏休み前編で何をトチ狂ったのか例の犬と例の猫を入れ違えてたので修正
…原作でも出てたからわざわざ入れてたのを間違えるとか私バカスorz
2010/1/23 第5問の最後に申し訳程度に観察者イベントを追加。
2010/1/23 第6話追加に当たって注意を追加。
2010/1/23 第5問で指摘されたわかりづらい部分を修正しました。
2010/1/22 プロローグ#1 #2 をまとめました。#3は第0問としました。


□そのた2
明久を活躍させたいけどことごとく彩の立ち位置と性格がそれをぶっつぶすんです。
なんか活躍できそうなシチュないですか?



[15751] プロローグ 今際の際と注射のようなもの
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/01/22 00:54
拝啓

お母さんお父さん
突然ですがあなたの息子は余命半年だそうです。
定期健康診断で引っかかって精密検査したら末期がんだそうです。
タバコは一日半箱に抑えていたのにあんまりです。
勉強しまくりの灰色青春と引き換えにいい大学に入っていい会社に入って即効で出世コース入りしてそれなりのサクセスストーリーが今始まろうとしていたのにあんまりです。
あんまりです。


…ちくしょう!
なんで!?
どうして!
まだ童貞なのに!!
何で俺なんだ!!
やっと金持ちルートに入って失われた青春を満喫しようとしてたのに畜生!
畜生…




そんなことを考えていたのも半年前のこと。
会社をやめ延命も断り、実家に戻ってからはただのんびりとすごしていた。
両親には申し訳ないが、入社直後に買ったマンションのローンが保険でチャラになったので、それでもとはとったと思ってほしい。
たぶん4000万くらいにはなったと思う。
そして、全部終わらせた今、つい1ヶ月前に全て処分した黒歴史データのことを思い出している。
黒歴史といっても邪気眼やらではなく、厨二病を潜伏させた患者がひっそりとデータに残してた妄想だ。
もし過去に戻れたらどうするか?
そういう類のものだ。
株価、円相場、シリコンバレーの新興企業の詳細等々…。
ここでこの株を売って買ってこうしたらこれだけ稼げてうっはウメエ。
とか言うのを無趣味な俺は休日にそれをぽつぽつと書きながら、悦に浸っていたというわけだ。
…こういう無駄知識に限ってなかなか忘れないなあ。
心地よい風が頬をなでる。昼下がりなので家族もいない。
もう目も開けられない。
身体も動かない。
全身がしびれたかのように感覚を失っていく。
いよいよ今際の際ということか。
でもその今際の際で走馬灯じゃなくて黒歴史ノート回想ってのはどうなんだろう?
そんなことを考えながら、俺の意識は落ちた。








子供のころ、注射というものが嫌いだった。
というか、最後の最後まで嫌いだった。
お母さんに病院に連れられ、注射をするのだとわかった途端に心臓が跳ね上がる。
バクバクと暴走する心臓とともにすごーく嫌な気分で診察室で待つ。
そして、順番待ちの時間でようやく落ち着いてきたころに自分の番が来て呼ばれるのだ。
そこでは落ち着いた気分とこれから待つ痛さを拒否する身体とで妙な気分になる。
しかし、いざ注射をした瞬間、それらはただの痛みとして身体が感じるだけで、怖さやら不快感やらは抜け落ちてしまうのだ。
昔の人も同じ事を思ったんだろう。喉元すぎればなんとやら、ということわざがあるくらいに。


まあなんというか、何を言いたいかというと。








死んだ後、転生しました。





…オンナノコニ
今、四歳です。超絶美幼女!







「おりべあや、よんしゃい!」
…黒歴史を大人になってから思い出したような不快感が襲ってきました。
女に転生しました。織部彩四歳です。
死んだと思ったら赤ん坊になってました。
幸い現代に生まれ変わったようです。
戦国とか異世界とかじゃなくてよかったです。
赤ん坊のときって風景とかが変だからすごく不快でした。
ようやく物心(?)がつくころに両親を見たら超美人。
パツキン美形のお母さん。アメリカ人だそうです。
やっぱりイケメンのお父さん。将来渋いオジサマになるでしょう。
スペック高すぎです。
前世だったら妬みで心が狂いそうになるんですが、身内だととても誇らしく思えるから不思議です。
抱きついたときに有名な商社のバッチが見えました。すごいエリート。
この高スペックの両親の娘として生まれて、転生して知識がそのまま、しかも知識は大卒社会人クラスの私。
えぇ、神童扱いされてます。大学レベルの知識を維持するために少し勉強もしてます。
子供だから覚えやすいのか、それともこの身体が両親に似てハイスペッグなのか、どんどん知識が入ってきます。
超覚えやすい。
前世の受験のころに苦労したのはなんだったのだろうかと思えて少し複雑なのです。
数学とかガリガリとける。
頭の回転超早い。
お母さんがアメリカ人のせいで英語とか超ペラペラ!
バイリンガル!バイリンガル!
前世では3年間血の滲むような思いでやっと偏差値60レベルだったのに…。
お父さんのほうのお爺ちゃんがたびたび飛び級でアメリカの大学に入れようとしますが
「この子は普通に育ってほしい」
とかいってお父さんが止めてくれます。
すごい頼もしいです。

まあそんなこんなで今日は四歳の誕生日なのです。
そして前世の今際の際に思ってたことをちょうど思い出したのです。







―あぁ、もし過去に戻れたら…―



思い出したが吉日、新聞の株式欄を見てみたら前世と同じ企業がわんさか。
そして改めて思い出そうとしてみると、意外にほとんど覚えてました。
無駄知識、すごい。
まさか死んだ後にあのろくでもない妄想が役に立つ日が来るなんて…。
これで私のサクセスストーリーは始まるのです!
いやいや落ち着け、今の私だと両親からねだるしかありません。
しかし、いきなり株とかをやりたいとかいってお金をくれるでしょうか?
…えぇい!こういうのは度胸なのです。今までわがままらしいわがままを言ったことがないからもしかしたら!

「ねえ彩。お誕生日にはなにがほしいかな?また本かな?」
そんなことを考えているとタイミングよくお父さんが私に誕生日プレゼントについて聞いてきました。
「えっと…ちょっと高いものなの」
「おやめずらしい。彩ちゃんが高いものをほしがるなんて」
私の誕生日で家に来ていたお爺ちゃんお婆ちゃんたちが話しに入ってきます。
「私、株をやってみたいの」
「株?」
「勉強も面白けど、さいきん株に興味が出てきたのです」
きょとんとした表情のお父さん。
そりゃあ4歳の女の子が株をやりたいといえばそうなるでしょう。
誰だってそうなる。私だってそうなる。
やっぱりだめかなー…。
「いいよ。いくらほしいんだい?」
「やっぱりだめ――え?」
「いい、の?」
思わず私がきょとんとします。
その表情がつぼに入ったのか後ろでお爺ちゃんお婆ちゃん’sが破顔してます。
「珍しく彩がほしいって言ってきたものだからね」
「じゃあ、10万円くらい」
「わかった。じゃあ口座とかは用意するから、彩のやりたいようにやってごらん」
「ありがとうお父さん!」
思わず抱きつく私。
破顔するお父さん。駆け寄ってくるお母さん&お爺ちゃんお婆ちゃん’s
「彩、じゃあお母さんも10万円だしてあげる」
「20万円!」
「300,000!!」
何故かオークション状態になりました。
「ありがとう!きっとたくさんふやすのです!」
思ったより初期資金が集まったのです。
とりあえずお母さんには頬ずりをして、お爺ちゃんお婆ちゃん’sにはキスをしておきました。



[15751] 第0問 チートとその代償
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:39
六歳になりました。今アメリカにいるのです。
といってもアメリカの大学とかにいったわけではなく、シリコンバレー旅行なのですが。
親族ズから70万円近いお金をもらった私は、前世の妄想知識をフル活用して株を買ったり等々…
まさに、
売ったり売らないやつは訓練された投資家だ!
買うやつはよく訓練された投資家だ!
ヒャッハーほーんと株式市場は地獄だぜー!フゥハハハーハァー!!
とかをやりました。
幸い、前世と同じように株価は推移し、あがる銘柄をピンポイントで狙い撃ちし続けた結果…。













六歳の誕生日には総資産40億円になってました。





















すごいのです。
何このチート。
いえ、確実にチートですが。
前世の記憶で一番役に立ったのです。あの無駄極まりない妄想が。
あれだけ死に物狂いで勉強したことがいまだ役に立たないのに、休日に適当にしてた妄想がこれだけの効果…。
正直、ちょっと思うところもあるのです。
ですが、これで私のサクセスストーリーは磐石なものになったのです。
「そう!この今から!!」

そう、その第一歩が今このシリコンバレー。
多数の集積回路革新者及び工場が集まった…つまりはシリコンが原料になる工業製品を主力製品にする企業があつまったことに名称の起源がある、世界のITの先端地域です。
そしてこのシリコンバレーはまさに今、大創業期時代。前世で使っていたあんなサービスやこんなサービスを生み出したバケモノが駆けずり回って妖精さん(エンジェル)を探していた時代なのです。





さて、私はそこで何をしているのでしょうか?




正解:G○□□□eやら□m□z□nやらYa□□□やらを青田買いしてるのです。



幼女が数億の金をばら撒いてるとちょっとした評判になってるのです。
シリコンバレーの妖精とか言われています。
ありえない存在という意味では間違ってはいないのです。
エンジェルとピクシーって似てますよね。
まあ、実際にはお父さんが付き添ってるのですが。

「彩、これで出資するという企業は全部かい?」
「うん。そうだよお父さん」
「しかし、彩はお父さんの予想のはるかに上を行くね」
「ごめんなさい…」
「い、いや!いい意味でだよ!だからそんな顔をしないで」
「うん!」
「じゃあ、お父さんはこれから仕事で日本に戻らないといけないから」
「うん。お母さんとおじいちゃんたちの家に行くね」
仕事を休んでまでついてきてくれたお父さんには感謝してもしきれないのです。
まあ、娘が数億単位でお金をばら撒くとなれば当然かもしれませんが。
「そうか、じゃあまた後でな」

その後、お母さんとともにサンフランシスコのおばあちゃんの家に着いた私は、久々に会うおばあちゃんたちと友達の話などをしながらすごし、お婆ちゃんお手製のパンプキンパイを堪能して、眠りにつきました。
明日からは出資した人たちに未来知識でアイデアとかをあげてみようとか、もっとお金を増やしてやろうとかそんなことを考えながら。
私のサクセスストーリーは今始まったのです!









































人生における幸福量は一定である。
ある学者が言ったその言葉は、そのときの私にとって真実になりました。










































「…――未明、ロサンゼルス発成田行きのサウスアメリカン611便が太平洋上で消息を絶ち…」
ニュースでは飛行機事故がながれていました。
私の記憶では90年代にこの航路で墜落事故はおこってないのですが…。
「そんな…うそ…」
「お母さん?」
お母さんの顔面が蒼白になっているのです。
「レベッカ、気を確かに持って」
いやな予感がする。
なんでニュースでお母さんが泣き崩れるの?
なんでお婆ちゃんそんな顔をするの
なんで









……





Akimoto Tanaka
Claudia Johnson
Nancy Davis
Yuichi Oribe




………
……
















「―――――な、んで…―――」
画面から行方不明者のリストが流れる。
なんでオトウサンノナマエガアルノ?
「お婆ちゃん…」
アリエナイ
「あ、彩、どうしたのかしら?」
ドウシテコンナ
「お父さん、どの便で帰ったの?」
ウソダ
「大丈夫よ彩。お父さんは…」
乗っていたのは父の名前だ。母の動揺からして確実だろう。
「さっき、テレビにお父さんの名前流れてたよ?」
「気を確かに持つのよ彩。まだ決まったわけじゃないわ」
そうだ、まだ飛行機に乗り遅れた可能性だってある。
まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ大丈夫、まだ大丈夫、マダダイジョウブマダダイジョウブマダダイジョウブマダダイジョウブマダダイジョウブマダダイジョウブマダダイジョウブ。
「オトウサ――」
何かが切れて、私は目の前が真っ暗になった。



[15751] 第1問 実は異世界のようなものでした
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/05/25 23:39
問:
人生、宇宙、すべての答えを答えなさい。

織部彩の答え:

……
………
(中略)
………
……

よって、42である。
なお、元々の出典は銀河ヒッチハイク・ガイドである。

試験官のコメント:
過程は私には理解できませんが、答えは正解です。
趣味で出題したのですが、まさか本当に哲学と数式で証明しようとするとは思いませんでした。





結果から言うとお父さんは助かりませんでした。
飛行機は上空で空中爆発して乗員乗客全員が死亡したそうです。

私の、私のせいなのでしょうか。
私が、あの日青田買い旅行に行かなければ。
私が、あの時無理にでも引き止めていれば。
私が、私が、あ、あのとき、おねだりなんてしていなければ。

頭ではそんなものは偶然でしかないと私は言う。
でも心はそんな理性的な私を拒絶していた。


一番嫌なのは、こんなにも後悔と悲しみに包まれて、引き裂かれそうなのに、涙すらでず、冷静にこれからのことを考える自分。
私のお金があるから生活には困らないとか。
おじいちゃんたちのおかげで、出資関係は滞りなく終わってよかったとか。


精神は身体に影響されると言う。
この年の女の子がお父さんが死んで涙ひとつでないわけがないじゃないか。
ふざけるな。
心の中の幼い私は泣き叫ぶ。
前世の記憶を持つ私は冷静だ。
二つのどちらも本当の私だ。
ちぐはぐすぎで気持ち悪い。

………
……


その後、泣き崩れていた母はそれよりも酷い私を見て、このままではいけないと思ったのか立ち直っていた。
私はというと、あの時のまま、何故か表情が出せなくなっていた。
そして、お父さんのお爺ちゃんお婆ちゃんの家に引っ越したのがつい昨日。
お母さんの実家に行くと思ったのだけれど、この状態の私が環境の違うアメリカに
行った余計悪化すると思ったのだろうか。

私自身でもよくわからなくて、"俺"だった自分で無理やりに何とかしようと、公園でぼーっとする日が続いていた。
そんな時、彼とであった。






















突然ですが、日記を書こうと思います。
何で唐突にと思うかもしれませんが、そうしないと頭の整理がつかないのです。
といっても、パパのことではありません。
悲しさが全く霧散したわけではありません。むしろ今のほうが悲しいです。
だけど、それをちゃんと"悲しい"と思うことができるようになりました。

その日も、私は無理やりに身体を動かして公園のブランコでボーっとしていました。
何時間そうしていたのかも覚えていません。
そして、そんな私に一人の少年が声をかけてきました。
元気という存在を体現したような明るい少年で、かすかに公園の子供たちの中心になっていたような気がします。
お姉さんが来るまでということで彼といろいろとお話をします。
そのときの私は"私"を"俺"が無理やり連れ出している状態だったのでかなりちぐはぐな会話になっていたと思いますが、もしかしたら彼の理解力が足りなかっただけかもしれません。
しかし、久々に同年代の男の子と話をしていた私はぽつりとパパが死んだことを話してしまいます。
そして、それに対してあのバカが何かを言ったのですが、正直あまり覚えていません。
ただ確かなのは、その言葉はひどく不思議に私の心の中まで入り込んできて。





急にパパの最後の顔が浮かんだとき、私の涙腺は崩壊しまったのです。
その言葉はまるで知恵の輪をはずすようにちぐはぐになっていた私を自然な状態にしてくれました。
"俺"はその陳腐な言葉に何も思いませんでしたが、私の心はつよく揺さぶられました。





「な、んで……」と思わず無意識に声を上げてしまうほどに。
わけがわからない。
今のどこに涙腺崩壊要素があったの?
陳腐な言葉じゃない。
わからない。わからないが、私の目からは涙が止まらない。
幼女の心的につぼったのだろうか。わけがわからない。
わけがわからないけど、涙は止まらない。
まるで逆再生をしているかのように壊れたものが戻っていく。いや、治っていく。
しかし、衝撃はさらにその後だったのです。


「う…ぐすっ…ひっく…」
「ね、ね? な、泣かないでよ」
男の子が困り顔で覗き込んできます。
覗くな…なの…です。
「…ぐすっ…ずっ……」
嗚咽が収まってきた私はその男の子に視線の移します。
と、その男の子への視線の先に中学生くらいの少女がこちらに向かってくるのが見えました。
「アキ君、そろそろ帰るじか……どうしたんですか? この子」
その少女は男の子の知り合いらしく、男の子に駆け寄ると私にも気づいたのか、男の子に聞いてきました。
そのとき、
「い、いや、それがね」
「…お医者さんごっこをしようっていって…私の服を…ぐすっ…ショーツに手を入れてきて…うぅ…」
「え!? なにそれ!? なんで僕がいじめたようなかんじになってるの!?」
羞恥心と何か良くわからない感情で急にこの男の子を弄りたくなってみた私はちょっと問題発言をしてみたのです。
まあカウンセリングみたいなものな気もするし、間違ってはいません。
一瞬で般若を背後に背負う少女。
「アキ君、お話があります」
「ちょ、ちょっと姉ちゃん!? なんで手をグーにしてこっちくるの!?」
「大丈夫ですアキ君。いまなら全殺しですみますから」
満面の笑みで言う少女。
「なんでぼくコロされるの!? ねえ! ウソって言ってよ! お医者さんごっことかしてないよね!? ね!?」
「…そんなっ…! わたし…はじめてだったのに…ひどい!」
「あーきーくーんー!?」
「ま、まってお姉ちゃん!!」
オネエサンその手に持ってる彫刻刀はなんですか?
あ、なんかちょっとやばい状況に。とめないとやばいかも。
あわてて、私は弁明します。
「じょ、冗談なのです。悲しいことがあって泣いちゃったから、慰めてもらったのです」
「あーそうなの」
ようやく誤解(?)が解けて凶器をしまうお姉さん。
しかし、死ぬ間際に読んでいたライトノベルの人物にそっくりなのです。
あれ?そういえば容姿もそれとなく似てるような…。
お姉さんは中学生っぽいのに胸がありますし、男の子は結構バカっぽいですし。
「あ、あのー」
「え? なにかな? えーと…」
「彩、織部彩なのです」
「そう、彩ちゃん」
「私、まだ名前を聞いていないのです」
「あ、そういえば言ってなかったね」
「まったく。アキ君はほんとに…」
「私は玲。吉井玲よ」
「吉井明久っていうんだ! よろしく!」
吉井…玲、明久…。
もしかして、いや、、でも…。
「もしかして…アキ君て」
「?」
「バカですか」
「そうなんです。私もほんとうにアキ君の馬鹿さには困ってて」
う、名前も同じだし、バカって…。
もしかして、この世界って…。
バカテスの世界?



[15751] 第2問 文月学園入学
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/01/22 00:10
問 以下の問いに答えなさい
調理の為に火にかける鍋を制作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。
この時の問題点とマグネシウムの代わりに用いられるべき金属合金の例を一つ上げなさい。



姫路瑞希の答え
『問題点… マグネシウムは火にかけると激しく反応する為危険であるという点
合金の例… ジュラルミン』

教師のコメント
正解です。合金なので『鉄』では駄目という引っ掛け問題なのですが、姫路さんは引っかかりませんでしたね。




土屋康太の答え
『問題点・・・ガス代を払ってなかったこと』

教師のコメント
そこは問題じゃありません。




吉井明久の答え
『合金の例・・・未来合金(←すごく強い)』

教師のコメント
すごく強いといわれても。




織部彩の答え
『問題点… その調理する施設がある建物が燃える。消防隊のせいで災害が拡大する。
合金の例… ステンレス
補足… マグネシウムとの反応のための問題でしょうが、想定した以外の正答が多数得られる問題はあまり望ましい問題とはいえません。イギリスをグレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国というのとは違うんです。
まあそれは許容するとしても、まさか二つ目の答えが合金なら何でもいいって訳ではないですよね? たとえば水、中でも海水に対する耐食性が低いことで有名なジュラルミンとか。わざわざ"用いられるべき"といっているのですから。』

教師のコメント
あまり先生をいじめないでください。棘がありますがなにかあったのですか?




明日で高校生になります。
紆余曲折あった結果、私の総資産は7800億円です。
現金は400億円ほどです。
ロス旅行で青田買いした時点でほぼ確定していたとはいえ、ちょっと増やしすぎたかもしれません。
「まあ、いまさらいってもしかたないわね」
いよいよ文月学園です。そう、あの文月学園なのです。
どうやら本当にバカテスの世界のようです。
文月学園ができたときには、そして召還システムを知ったときにはそれは確信に変わりました。

「まあ、現代は現代だから言いのです」
原作と違って私の息のかかった企業が協賛しまくってるけど。

「さて、原作の人物とうまくやれるかしら」
「どうしたの?彩」
「ん?あぁ、アキ君。明日から文月学園かとおもうと、ちょっとわくわくしちゃって」
「へー、彩でもそんな気持ちになるんだね」
「……」
「……?」
「どーいういみかしら?」
「い、いや、彩っていつもニコニコしていて、めったなことじゃあ動じないというか、残虐なことを躊躇なくする冷徹に頭から血の気がああああああああ!?」
言葉の途中で窓を超えて明久の部屋に乱入する。
そしてそのまま頚動脈を締める。
我ながら見事な身体力。
「ぎ、ギブ!お、落ちる落ち…!?」
「私はアキ君以外にはそんなに残虐じゃないわよ」
言って明久を締め落とす。
かれこれ十年来の中になれば慣れたものです。
明久はなれたくないでしょうけど。



明久を始めてあって泣かされたあの日、帰ったら家が隣同士でした。





驚いた。





それ以来、エロゲなら幼馴染ルート一直線な立場で今日までこのバカと付き合ってきました。
もちろんまだ前世の感覚が残ってるので男はノーサンキューだけど。
それはさておき、逢ったときからバカの片鱗を見せていた明久は見事なパーフェクトバカに成長し、一方の私は、あの両親の遺伝子をコンスタントに受け継いだ整った顔立ち、絹のようにしなやかな黒髪に真っ黒な瞳、同年代と比べると高い身長やたわわに育った胸と、そこらのアイドルよりも断然良い容姿の外見は見事な大和撫子に育ちました。
あ、一見ママとは似ていないと思える容姿だけど、目元とかはそっくり。
成長した部分で一番うれしいところなのです。
美少女に育ったことは素直にうれしい。
誰だって綺麗なほうがいいのです。
ただ、そんな完璧に見える容姿にも欠点はある。
そう、胸。魅惑のバストです。
「Dになってからようやく成長が止まってくれてよかった」
結構胸は重いのだ。Cくらいがちょうど良い。美波とかに言ったら殺されそうだけど。
男子のえろい視線は若干うざいが。
それに…あぁそういえば…。
……。
…。
疲れたので自分の部屋に戻って寝るのです。。








……









ちゅん



ちゅん ちゅん



「んぅ~~~…くふぁ…」
心地よい日差しがカーテンのスキマから差し込んでくる。
「ふぅぉぁ…ん~~~っ」
布団を蹴飛ばしてからうつむけになり、胸で肺が若干圧迫されながらも、猫が伸びをするような体勢で背伸びをする。
「くぅ……ふぅ……」
肩のコリをほぐしながら伸びをするのは胸に重りがついてる私としては一番気持ちがいいのです。
「うん。いい朝♪」
一階に下りてシャワーを浴びた後、ドライヤーで髪を乾かして制服に着替え、キッチンに入る。
「おはようママ」
「はい、おはよう彩」
先に起きてご飯を作っていたママに混じって朝食のお手伝い。
どうでもいいことだが、あの日以来少し性格が変わった。具体的に言うと少女分が割りとナチュラルにブレンドされた。そのせいか、呼び方もお母さんからママに変わってました。
前世の記憶も思考も変わってはいないとはいえ、だんだん精神が身体に影響されてきているのかもしれない。
ちなみにグランパ&グランマは私がたびたびプレゼントする世界旅行のためにほとんど家にいない。
ここまではいつも通り。
「さて、と!」
そしてこれからが今日からの習慣。
「じゃあ、アキ君をおこしてくるね。後今日はご飯はアキ君の家で食べてくる」
「はぁい。ご飯はこれね。いってらっしゃい」
作ったご飯を持って、家を出た。







突然ですが、明久はバカである。
何度も繰り返すがバカである。
日常はもとより、時々しゃれにならない事をしでかすレベルのバカである。
入学の前日から諸般の事情によって海外に行かなければならなくなった吉井ファミリーは
このバカの扱いに困ってしまった。
「仕送り何日で使い果たすと思う?」
「一週間」
「私は3日」
「それよりもお姉さんはただでさえバカなアキ君が、取り返しのつかないバカにならないか心配です」
そんな会話が繰り広げられていた。ウチのお茶の間で。
まあほうっておいても大丈夫そうだが、仮にも長い付き合いなのだからと、食事は私とママが、その他生活費の管理は私が買って出たわけなのです。
いっそのことウチに来てもらっても良かったのだが、明久のお姉さんがそんなことなら海外に無理やりでも連れて行くと言い出したのでなしになった。
別に私は明久をとったりしませんよ?
付き合い長いからわかってると思うんだけどなあ。
そんなこんなで明久を起こすのと飯の面倒を見るのが今日からの日課になったわけです。




さて、ここで眠りこけている明久。
「アキ君ー朝だよー、起きてー」
揺すりながら耳元で声をかける。



起きない。




額をぺしぺしとたたいてみる。
「んー…」



…起きない。



耳を引っ張り、
「おきろー!」



「んー…後半日」








よし、いい度胸ね。



私が毎日使ってる電流マッサージ器を首の動脈付近に貼り付ける。
「死になさい」
一気に電流をマックスにする。
「ふおあああああああああああああああ!!?」
肩をびくんと震わせて明久が飛び起きた。
「いたいいたいちょ、あたた首が首が首がああああああ!!」
電源OFF
「おはよう、アキ君」
「あ、お、おはよう彩」
「朝ごはんを持ってきてるから早く降りてきてね」
「う、うん」
「ねえ彩」
「なーにー?」
「一瞬、死になさいとか聞こえたんだけど」
「明日はスタンガンを使うわ」
「目覚ましを買います」
「よろしい」



[15751] 第3問 私と恋愛と秀吉 あ、あと入学初日
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:41
問 以下の()に当てはまる語句を入れなさい。
  楽市楽座や関所の撤廃を行い、商工業や経済の発展を促したのは()である。

姫路瑞希の答え
『織田信長』

教師のコメント
正解です。



織部彩の答え
六角定頼 織田信長』

教師のコメント
だからボールペンはやめておきなさいとあれほど。



吉井明久の答え
『ハゲ』

教師のコメント
ハゲを馬鹿にするな!





入学式も終わって自分のクラスにはいる。
机に座ってようやくひと段落。さて。
さて、木下秀吉である。
そう、木下秀吉である。
何がどうしたかというと、惚れてしまったわけです。
当然、私も女に生まれたからには男の子とあんなことやこんなことをしてみたいのです。
でも、前世の記憶がそれを妨げます。
男とそんなことになると思うと吐き気がします。
ためしに明久のベットにもぐりこんでみたらすこし寒気がしました。
明久のような女装できるレベルの男子でもだめなのです。
このままではどこぞの迷い神のようになってしまうのです。
少し我慢すれば慣れるかもしれませんが、ちょっと明久とそんなことになるのもいいかもと思ったけど、実際ぎりぎりOKな感じもあったけど、あの倍率高いのは難しいのでなしなのです。
そう悩んでいたところに今秀吉を見つけたのです。そう秀吉です。
しなやかな身体、キュートな顔、すべすべでみずみずしい肌。
少し見ただけでもキュンと来る愛くるしい仕草。
そしてそれに反するじじい言葉。
そしてその中にある確固たる芯。
…たまりません。
彼は男を感じさせませんが、というかちょっと疑いそうになりますが、れっきとした男。
まさに私の理想の男の子なのです。
そう気づいたとたん、秀吉が好きでたまらなくなってしまいました。
斜め前の席にいる横顔を見るだけで心が和みます。
「ぽー…」
「ん?どうしたのじゃ?」
そういって首を傾げてこちらを見る秀吉。
萌え殺す気ですか。
「ふぇっ!?う、ううんなんでもないわよ」
パシャパシャッ
「そうかの?ちょっと顔が赤かったようじゃが」
貴方のせいよ。
「だ、大丈夫。えーと…私は織部彩。貴方は」
「うむ。木下秀吉じゃ。これから一年間、よろしく頼むぞい」
「あぅー」
秀吉が首を少し曲げながら微笑みかけてくれます。
パシャパシャパシャッ
幸せなのです。幸せついでに、
「ところで私たちを盗撮してるその男子」
ほかのキャラとも仲良くなりましょう。
「………!?(フルフル)」
いや、そんなカメラ片手に全力で否定されても。
「利益の半分を私に、それで手をうつわ」
「……のった」
実利こそ人を信用させる最大の要素なのです。
「…土屋康太」
「そう。じゃあこれからムッツリーニってよぶわ」
「……!?」
「冗談よ」
「……人が悪い」
まあどっちにしてもいずれそう呼ばれますけど。
「なんかこっちはにぎやかだね」
「あら、明久。と、そっちは」
「坂本雄二だ。よろしくな」
「あー、あの…」
「ん?なんだよその含みのある言葉は」
「来年に向けて身体を鍛えたほうがいいわよ。何回も死線をさまようわ」
「なんだそのあたるとしか思えない予言は!?」
雄二の顔が青ざめる。すでにこのころから心当たりがあったのですね。
「そんなあなたにいい言葉を上げるわ」
「教えてくれ!俺はまだ死にたくないんだ!!」
「何事も諦めが肝心」
「何の解決にもなってねえぞそれ!?」
しかしさすが明久。腐れ縁と早速意気投合してるとわ。
「で、こっちが木下秀吉とムッツリーニ」
「……!?」
「ムッツリーニ?」
「ムッツリスケベだから」
「そんなことは、ない」
「ならさっきの撮ってた写真はなによ」
「クラス写真」
それは無理があるのです。

「おい、お前ら席につけー」
「あのゴリラ、どこかで見た気が…」
「彩って時々容赦ないよね」

教室にゴリラ…じゃなく堅物そうな短髪の男性が入ってくる。
日焼けした小麦色の肌にがっしりとした体格。
おそらく体育教師なのでしょう。
「…へぇ」
顔を見て脳筋かと一瞬思ったが、入学式だからか着ているスーツはピシッと決まっており、私は先ほどの印象を訂正しました。
常人とは筋肉のつくりが違うスポーツマンは本来スーツを着こなすのは結構難しいのですが、この男性の着こなしは見事に決まっていて頼もしさを感じさせます。
 私が脳内で男性の株を上げたり下げたりしているうちに、彼は教卓に立つと良く響く低い声で自己紹介を始めた。
「これから一年間このクラスを担当する西村宗一だ。教育指導全般を担当する。」
西村…あー
「鉄人先生ね」
「おい、そこ。…織部か。鉄人と聞こえたが」
「前のトライアスロン大会。私もスポンサーだったので。もう一歩でしたね」
「前の大会?………」
「1ヶ月前のです」
「!…あぁ、あのときの…!! どこかで見たと思ったら織部だったのか!」
「はい♪」
「世話になってるな」
「いえいえ」
「だが、学校ではひいきはしないぞ」
「それはもちろん。…次回も期待してますよ」
「最善を尽くす」
言って二カっと笑う鉄人。いい男なのです。
ダース単位で明久の家にほしいのです。
「ねえ彩、なんでお前のほうが上から目線なの?」
一流のスポーツマンたるもの、スポンサーへの礼節をわきまえてるのです。
もっとも、スポーツマンである前に教師なので、私への扱いは本当にほとんどかわらないでしょうけど。
私も公私は区別するのです。
区別した上で良好にまわすのです。
時々、乱用したりもしますが気にしたら負けなのです。

その後、HRは淡々と進んでいき、各自の自己紹介も無事に終わり、授業となった。




そして昼休み。
親睦会をかねて屋上でムッツリーニ、雄二、明久、秀吉、私で昼飯をとることにした。
美波や瑞希とはまだ話していない。まあすぐに仲良くなるでしょう。

「ところで、さっき鉄…西村が言ってたスポンサーってなんだ?」
開口一番に雄二が聞いてくる。
「あぁ、あれね。ちょっと興味があったから」
正確には、子飼いの企業をそそのかしただけですが。
「いいなあ…彩は、自由にできるお金が多くて」
「いや、多いってレベルではないのじゃが」
「ねー彩ー、やっぱ僕にも株教えてよ」
「明久がやったら半月で資産が半分になるわよ」
「そ、そんなこと」
「素人が、しかもバカの明久が株なんて、宝くじでも買ったほうが安いしマシよ」
「ぐ…」
「そもそも、私ですら今は短期トレードはやってないの。勝ち続けることなんて無理。株の世界をなめないで」
あそこには悪魔がいるのです。
「というか、あなた元手がないじゃなぁい」
「……(かちゃかちゃっ)」
「だ、だって彩は」
「私が元手を確保できたのは、早いうちに失敗させようとしたパパとママが気前よく元手をくれたからよぅ?」
 グランパグランマは初孫で脳みそがトリップしてたせいだろうけど。
 そして私がアホみたいに増やしちゃったからとめる事ができなくなっただけというわけですよー。
「……(こと、ジリジリ)」
「とにかく、ふぅ…私でさえ今の額から株で増やせるなんて思わないんだからやめといたほうがいいわよぅ」
パシャパシャパシャ
「うぅーできると思うんだけどなー」
まだいうか。
ってなんかうるさいですね。
「ところで、織部の」
「ん?どうしたの秀吉」
パシャパシャパシャ!!
「なんでわしに負ぶさってくるのじゃ?」
「はぅ~~かぁぃぃなぁ…って、ふぇ?」
こまった顔の秀吉にキュン死しかけたところではたと気づく。
「……!(グッ)」
奥ではムッツリーニが親指を立てながらまあ激写していた。
えーと…
「抱き心地がよくて…」
無意識のうちに抱きつかせるとは…秀吉、恐ろしい子っ!
「そ、それにじゃな、あたっているのじゃが」
あ、耳が真っ赤になってる。
「あててるのよ?」
「何で疑問系なのじゃ?」
「…いや、だった? ごめん、ちょっと馴れ馴れしすぎた…」
さすがにやりすぎたと思った私はシュンとなる。
いきなりベタベタして嫌われてしまっては
「い、いやじゃないのじゃが、むしろ心地よいというか」
「ぁあもうかぁいいなあ!!」
秀吉の言葉に理性が吹っ飛び胸を押し付ける。
むにゅむにゅと押しつぶされる胸。
赤くなる秀吉。
かわいいのです。至福の時間なのです。
「これは…」
「ム、ムッツリーニ!その写真僕にも」
「……一枚千円」
すごい価値がついてるのです。
「み、見てないで何とかふぁっ」
「秀吉の耳やーらかいー」


















「さて、十分堪能したのです」
「よ、ようやく開放されたのじゃ」
予想をはるかに超える心地よさで正気を取り戻すのに5分もかかってしまいました。
横では男3人が前かがみになってた。男って大変ですね。

「さて、じゃあお弁当にしましょうか」
突っ込むのもかわいそうなので強引に食事に進む。


雄二とムッツリーニは購買のパン。
明久はスタンダートな和洋系弁当。
秀吉は和食。
そして私は中華です。
聞くと、秀吉は自分で作ったといいます。
そのときの私たち脳裏に浮かんだのはおそらく共通の姿でしょう。
「秀吉は言いお嫁さんになるよ」
「わしは男じゃ…」
あ、秀吉がすすけてる。明久、明日はスタンガンね。
まあ気持ちはわからないでもないけど。
「「「またまたご冗談を」」」
男3人の声がハモる。
あ、秀吉がなんか白くなりかけてる。
はっ! これは攻め時では!
きっとこれは秀吉ルートの第一歩なのです!
「知ってるわよ。あなたが男なのも、実はとても頼もしい人なのも」
「そ、それは本当かの!?」
「これでも人を見る目はあるわよ」
「そんな彩。秀吉はどうみたって」
「黙りなさい。アメリカに郵送するわよ」
「がくがくぶるぶるがくがくブル」
一瞬でがたがた震えながら隅っこに移動する明久。
「おい、どういうトラウマがあるんだこいつ」
「霧島さんて綺麗よね。誰と結婚するのかしら」
「がくがくぶるぶるがくがくブル」
端っこに一命一名追加。
「さあ秀吉、悪は滅ん…」
「わしは…わしは…」
何か秀吉が目を潤わせてこちらを見つめている。
ひ、秀吉…そんなに私の理性を奪うのが好きなので――
「わしを男と初めから見抜いてくれたのはおぬしだけじゃ!」
秀吉が私に抱きついてきた。
「きゃっ」
その拍子で私は体制を崩して倒れてしまう。
結果、私が秀吉に押し倒されたような形になっている。
可愛い腕が私の顔の両側に伸びてます。
目の前には、秀吉の顔が至近距離で
「だ、だめだよ秀吉!女同士だなんグボア!?」
「秀吉は男の子だっていってるでしょうが!私に同性愛の趣味はないわ」
靴を明久にクリーンヒットさせて沈黙させる。
秀吉はうれしさと混乱の中で思考停止してしまったのか目を見開いた状態でとまっています。
そして目は潤んでいます。

ぷちっ



私の中で何かが切れました。
私は秀吉を胸に抱き寄せます。
それで再起動した秀吉はあわてて顔を上げました。
そしてその瞬間に私は――


(この文章は省略されました。続きをみるにはワッフルワッフルと入力してください)




[15751] 第4問 義姉と私とついでにカヲルちゃん
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:45
Q ワッフルワッフルの先にあるめくるめく魅惑の一時を百五十文字以内で答えなさい。

A そんな事実はなかった。現実は非情である。

















「あぅ…秀吉の…ぉっきぃ……―――んぅ?」
目くるめく魅惑の世界が霧散し、ぼんやりと白い天井が見えてくる。
寝起きでぼけている頭で辺りを見回すと白いカーテンで私が寝ていたベットの周りが囲まれています。
「…?」
えーと何故に私は保健室に?
「卑猥な寝言ね」
「に゙ゃっ!」
まだ現状をつかめていない私に後ろから秀吉の声と思しき声が
「…えーと?」
「大丈夫かしら? 幸せそうな表情の割には顔色はすごく悪かったけど」
秀よ…いや、…んーと?
「…秀吉のお姉さん?」
「へっ!?そうだけど、よくわかったわね」
振り向いた先にいたのは秀吉ではなく秀吉のお姉さんだった。
私が一発で見抜いたことがそんなに衝撃だったのか、一瞬目を見開いていました。
「まあ服が女子のだし、ここも違うしね」
言って胸を指す。
実際かすかに見える程度で、ほかは瓜二つなのです。
が。しかし、秀吉に関しては今の私は警察犬並の観察力を持っています。
まあそれに、いくらいたずらとはいえ女に間違われるのを嫌う秀吉がわざわざ自ら女装して私を騙そうとするとは思えないですし。
心なしか若干満足そうな顔をしていますね秀吉(姉)。
それよりも
「ところで、私はいったい…」
「秀吉に聞いた話だと、昼休みにいきなり倒れたそうよ」
「そうなの?」
…。あー…なるほど。
おそらく、二回目に理性が吹っ飛んだときに意識ごともってかれたのでしょう。
ということはあの後の目くるめく快楽の一時は夢ですか。
「残念なのです」
「?」
「こっちのことよ。あ、私は織部彩」
「私は木下優子。よろしくね。今日はちょっとアレがおもくて」
「あー…わかります」
「さっきまで死んでたわ」
「私も重いときは本当に死にそうに…」
初潮以来、何度救命救急を呼びそうになったことか。
アレは本当につらい。おなかを握りつぶされる感じなのです。
私は比較的軽いことが多いのですが、重いときは本当に死にそうになります。
「よく効く薬を知ってますから、処方してもらったら? 新薬だからあまり知られてないと思う」
「ホント?ありがとう、助かるわー」
「今度もって来るね」
「お願い。ところで、あなたこそ今は大丈夫なの?」
「うん、なんとか」
「それにしても、あなたを吉井君たちがが運んできたとき、秀吉のやつなんか焦点が定まってなかったけど、なにかあったの?」
何か、といわれましても。
「一度で男と見抜いた後にちょっとスキンシップをとったくらいよ?」
「あー…」
「?」
「多分それのせいね」
「やっぱり?」
「あいつ、女の子から男の子扱いされたのが初めてだから嬉しいけど混乱してるとかそんなんじゃないかしら」
「それは好都合ね」
「なに? 秀吉に気があるの?」
ニヤニヤとこっちを見てくる。
「うん。生涯の伴侶にしたいレベルで」
「へぇ…」
「お姐さん、と呼んだほうがいいかしら?」
「字が違うとおもうんだけど」
お義姉さんはいいのですか。
「私が義妹になるといい事ありますよー」
「たとえばどんな?」
「具体的には、私と一緒にテ○フ○ニーやジラソーレに行くと商品が9割OFFに」
「ウソッ!?」
「本当よー? ためしに今週末とかどうかしら?」
「全力で応援するわ。あ、家の鍵とかいる? 買い物の後に渡すわ」
「是非♪ あ、できれば秀吉のパパやママも味方にほしいなあ?ほしいなー」
「2週間で落とすわ」
「優子大好き! もう秀吉落ちた後は優子のためになんでも買っちゃうっ」
「がんばるわ!! 私の欲望のために! だから彩、すぐに陥落させなさい!」
「あせりは禁物よ、ゆっくりゆっくりといつの間にか夫婦になってやるわ! 具体的には半年以内に」
ガッシ!
力強く握手する私と優子。

優子を完全に味方につけたところで、時計を見ると、時計は一時半をさしていた。
さて、これからどうするか。
秀吉との目くるめく魅惑の一時が夢だったのは残念ですが、いい雰囲気だったのであそこで一気に秀吉を陥落させられなかったのはひっじょーーーーーーーーーーーに残念ですが、ここは秀吉とのスキンシップタイムと秀吉の中に私という女の子が確実に入り込んだという成果で我慢することにします。
それに、得てして燃え上がるような恋は短いうちに冷めやすいともいいます。
私としては秀吉とは生涯の伴侶を前提としてお付き合いをしていきたいので、いったんクールダウンできたのはむしろ僥倖だったかもしれません。
それに秀吉のお姉さんの優子とも仲良くなれましたし、好意をむき出しにしてじわじわ攻めていけば陥落は時間の問題でしょう。
明久が余計なことをしなければ、ですが。
まあそれはそうとして。
それよりも、せっかく時間に空きが出来たのだからメンドクサイ用事を先に終わらせるのです。
「あー、そうだ。ちょっと私は学園長に用事があるから」
「あらそう?じゃあ。また週末にね」
「えぇ。優子義姉さん♪」
そういって保健室を出ると、私は学園長室に向かった。










さて、文月学園は半官半民の試験校です。
法人区分としては私立大学になるが、数々の財団法人が関わっている上に若干ではあるが政府資本も入っています。
そして、その中でも特にIT系、しかも米国資本が数多くスポンサーになっているのも特徴なのです。
はい、私がやりました。
あの時青田買いした企業群をそそのかして割とすごい出資させました。
米国のスポンサーが増えたことにより危機感をもった政府系財団法人はノコノコと出資を増やしてきたわけです。
そのおかげで学園の資金は原作の数倍潤沢です。
その原因を作った私は、
「やほーカヲルちゃん元気ー?」
「授業中だろうが不良成金娘」
ババア長…学園長こと藤堂カヲルに巻き込まれて面倒ごとを押し付けられているのです。
特に弱みがあるわけではないのですが、いつの間にか巻き込まれてました。
「私の放課後はピンク色の青春時間なのです。細けぇことはいいのです」
「で、何の用だい」
「もうボケたんですかカヲルちゃん。子飼いの姥捨て…養護老人ホームを紹介しましょうか?」
「口の減らない娘だねぇ」
「孫だと思って許容するのです。まあ冗談はさておき」
「いいニュースとすごくいいニュースどちらから聞きたいですか?」
「じゃあいいニュースから聞こうかね」
「国立旧一期校の指定校推薦が軒並み取れたわ」
「ほう。それはいいニュースだね」
「とりあえず東京・京都・北海道はそれぞれ5名確保したから卒業進路では有利になるわね」
「で、もっといいニュースはなんだい?」
「小中学校の開校認可が下りたわ」
「よっし!」
「その代わり条件が一点」
「なんだい?」
「このリストにある財団法人を評議会に参加させること」
言って、かばんからリストが記載された紙を渡す。
「なんだい、半分があんたの子飼いじゃないか」
「毎回毎回私に面倒ごとの処理をたかってるのだから、これ位はあってしかるべきなのです」
 本当は面倒だから必要以上に手を出したくないのです。
「まあ、この程度で済むなら問題ないさ」
「それはよかったのです」
言いながら出された緑茶に口をつける。さすがはカヲル。いい葉を使っているのです。
「ところで彩」
「ん?何なのですか?」
「秀吉はいつごろ落とせるんだい?」
ブーーーーーーーーーーーーーッ
「な、何で知っているのですか!?」
「あんたが入ってから露骨に予算が増えたからね。余った予算で人気のない教室に監視カメラを仕掛けたんだよ」
「予算はもっと有効な部分に使えなのです」
「サボってる不良生徒の弱みも握れるじゃないか」
こ…このクソババア…。
「まさか、トイレや更衣室にまでつけてるとかいいませんよね?」
つけてたら速攻でこのババア長の解任決議を出すのです。
「まさか!そんな足がついて問題になるようなところにはつけてないさね」
「なら、まあ許容しましょう」
「そうかい」
「ただし、私には全部教えるのです。さもないと、解任決議を出すのです」
「やれやれ、困った子だねえ」
お前だけには言われたくないのです。
しかし、この学園長と話しているととても疲れるのです。
もしもグランマたちがこのババアカヲル並に飄々としていたら、わたしは常にこんな疲れた気持ちになるのでしょうか?
そう思うと、かなりぞっとしたのです。







[15751] 第5問 秀吉分は私の必須栄養素です
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:46
問 以下の問いに答えなさい。
 人が生きていく上で必要となる五大栄養素を全て書きなさい

姫路瑞希の答え
『①脂質 ②炭水化物 ③タンパク質 ④ビタミン ⑤ミネラル』

教師のコメント
流石は姫路さん。優秀ですね。


吉井明久の答え
『①食欲 ②性欲 ③睡眠欲 ④物欲 ⑤名誉欲』

教師のコメント
それは五大栄養素ではありません。


織部彩の答え
『①糖質 ②脂質 ③タンパク質 ④ビタミン ⑤秀吉』

教師のコメント
最後のはなんですか。気持ちはわかりますが。



入学から1ヶ月ほどが過ぎ、美波や瑞希、それに翔子とも仲良くなりました。
これで原作の主要女性陣は大体私の友人なのです。
特に瑞希と翔子とは親友と呼べる仲にまでなっています。
特に翔子は雄二の弱みを握るとの仲を進展させる準備に協力しているおかげで全幅の信頼を寄せられています。
着々と雄二の死亡フラグが蓄積されていきますが、どっちにしても時間の問題なのでまあ大丈夫でしょう。
そして、特典付の優子などとは完全に姉妹のような関係になっているのです。
まあ遠からず義姉妹になるのですが。
週末に明久や秀吉を荷物持ちに買い物に繰り出すのはもはや日常になってますし、その後木下家にお邪魔して夕食をいただくのも日課になっています。
そのせいで明久の食生活の面倒を見ることが減ってきているのですが、明久の両親との約束があるので、生活費は私が管理して、冷蔵庫に数日分の食材を常に補給することで対処しているのです。
あのバカは金銭管理能力は0ですが、意外に家事は得意なのです。
掃除洗濯などに関してもおろそかにしたら私が三途の川を半分くらい見せてあげてるのでそっちも大丈夫でしょう。
さて、話がそれましたが、そうやってほぼ日常になっている木下家訪問の翌日月曜。
「すぅ…すぅ…」
「はぅー秀吉かぁいいよぅ…良いにおいー…」
お泊りして翌朝に秀吉のベットにもぐりこんで至福の時を過ごすのがお約束となっています。
時計を見るともうすぐ6時をさすところです。
とりあえず時計を止めます。
「ひでよしー…あさよぅー…」
小さな声で秀吉の耳元でささやきながらほっぺをぷにぷにします。
「んーぅ…ふゅ…」
色っぽい声が漏れますがまどろみの中からは上がってこないようです。
さて、私は起こそうとしました。
でも秀吉は起きません。だからもう少し刺激的な起こし方をするのです。
そう、これは起きない秀吉が悪いのです。
だから私はそうする権利があるのです。
私は布団にもぐりこみます。ゆっくりとズボンを下げるのを忘れません。
そして秀吉の股の間に頭を突っ込んで。
「はむっ♪」

……
………


「に゙ゃっ!?!?!?」

うん。今日もいい朝なのです。


「あ、ああああああああ彩!?ななな、なにをしておるんじゃ!?」
「おはよう秀吉…今日もいい朝ね」
硬直して動けない秀吉に股の間から挨拶。
「おはよう彩。って、そうではなくてじゃな!?」
「なにって、秀吉と添い寝」
「布団にもぐりこむのはやめてほしいと何度も言っておろうに…」
「いやよ、2週間に一度はこうやって秀吉分を採らないと私は死んじゃうのよ」
「初耳なのじゃが!? それに彩がもぐりこむ度にわしは何か削られてる気がするのじゃが!?」
削られているんじゃなくて搾り取られてるのですけどね。
「そ、それに下半身がむずむずするのじゃ…」
「気のせいよ」
「じゃが」
「気のせいよ」
「なら、なぜわしの股間は濡れておるのじゃ?」
「…えっち」
「なぜわしが悪いような言い草なのじゃ!?」
「ひでよしにならわたし……なにをされても…」
言いながらパジャマの肩をするり。
「~~っ!?じゃからそういうのは冗談でも駄目じゃとっ!?」
「本気なのにー…」
「じゃがのぅ…嫁入り前の女子がはしたないのじゃ」
言葉と同じように貞操概念も秀吉は古いのです。
それにどっちにしても近い将来そういう仲になるからいいと思うのです。
「男の子ならこんな可愛い女の子が添い寝してたら、喜ぶと思うんだけど」
「そ、それは確かにそうなのじゃが…それにしても順序がじゃな…最近は何か貞操の危機を感じる気がするしのう」
「気にしない気にしない」
「わしの貞操を何じゃとおもっとる」
「私のものよ」
当たり前じゃない。
「主に聞いたわしがバカじゃった……」
「じゃあ、納得したところで一緒にシャワーを」
「…も…なんじゃぞ」
「ん?何か言った」
「何もゆうておらん!…全く、嫁入り前の女子がこんな…」
ぶつぶついいながら秀吉がそのままベットから飛び起きてトタトタと階段を下りていく。
それに私もついていく。
そんなこんなで私たちの一日は始まるのでした。

そういえば、そろそろ美波の誕生日…ということは持ち物検査とかがあったっけ?





そして時は流れてHR。
「全員動くな! 鞄を机の上において見えるように開け!」
鉄人が大声を出しながら勢いよく入ってきました。
まさか思い出した当日に持ち物検査イベントが発生するとは思いませんでした。
明久が動揺しまくっています。
あのバカはいつも学校にゲームやら何やらを持ってきてますから当然没収でしょうね。
秀吉や雄二もあまり面白くない顔をしてますからなにやら持ってきているのでしょう。
ムッツリーニは言うまでもありません。
「さて、じゃあ始めに織部」
「あ、ちょっと良いですか西村先生」
「なんだ? 織部といえど、特別扱いはしないぞ」
「没収対象ですが、学園長に許可をもらってるものが2つほどあるのですが」
「出してみろ」
鉄人に促されて鞄の中からミニノートPCとケータイを出します。
「ノートパソコンとケータイか。何故学園長は許可を」
「両方学園長との打ち合わせに使うので」
「そうか」
「あと、私がケータイを持ってないとたぶん1日で100人くらいが死にます」
「なんだそれは!?」
まあ実際に死人がでるわけじゃあありませんが。
「乙女には秘密がたくさんあるんですよ? 先生」
「少なくとも普通の乙女は秘密で3桁の死者は出さない」
「気にしたら負けなのです」
「まあいい。お前は大丈夫だろう、次」
そういって鉄人は次の生徒の検査へと移っていってしまう。
私の番は終わったのでほかの人(主に秀吉とか明久)を観察します。
さて、持ち物検査とひとくちに言いますが、そのセキュリティレベルは千差万別です。
たとえば私のような優等生は軽く鞄の中を覗かれるくらいです。
が、問題生徒、たとえば雄二などでは、
「お前はポケットの中も見せろ」
「くそっ」
このようにセキュリティレベルが上がります。
あ、ムッツリーニがカメラを没収されそうになってる。
「あ、先生」
「なんだ織部」
「そのデジカメは私が修理を依頼していたものなので私に返してください」
「ん?そうなのか?」
「…間違いない」
こちらの意図を察したのか、肯定するムッツリーニ。
「しかしだなあ…」
「私の責によらないところで私の私物が没収されるのはおかしくありませんか?」
「む…たしかに…しかたがない。土屋、今後は他人の私物を学校に持ってくるなよ?ほら織部、返却だ」
「ありがとうございます」
お礼を言ってカメラを受け取り席に戻る。
しかし男子生徒は本当にいろいろと余計なものを学校に持ってきていますね。気持ちはわからないでもないのです。
女子生徒も運が悪い子は小物類を没収されてます。
あ、明久はジャージに着替えるよう促されてます。
まあそりゃああのバカなら警戒しすぎてしすぎということはないでしょうし。
うわあ、いろいろ持ってきてるのです。
というか明久君? 君の鞄は9割くらい遊び道具が入ってるんじゃないの?
「ゲーム、漫画、DVD挙句にエロ本…お前は学校を何だと思ってるんだ?」
遊び場でしょうね。
「さて、持ち物検査で時間が過ぎてしまったのでHRは省略だ。一時限目はいよいよ『試験召喚実習』だ。速やかに着替えて体育館に移動するように」
良かったですね明久。着替える手間が省けましたよ。
「あ、ムッツリーニ、カメラを返しておくわね」
着替えに行く前にムッツリーニにカメラを返しておきます
「恩に着る」
「なあ彩、お前は盗撮を容認してるようだけど、いいのか?女子として」
「私も秀吉の艶姿の写真はほしいからね。R指定がつかなければOKよ。いわゆる必要悪よ」
「結構彩って欲望に忠実だよね」
人間いつ死ぬかわからないから、常に欲望の赴くままに生きるべきなのです。
「じゃあまた後でね」





試獣召喚サモン!」
体育館を4つに分けて、それぞれのフィールドで生徒が試験召喚獣を召喚しています。

ふと秀吉たちがいるところを見るとムッツリーニが絶賛盗撮中でした。
明久たちは何か話し込んでいます。どうせ没収されたものの奪還作戦でも立てているのでしょう。
「次、織部彩。前に出なさい」
興味を失った私が視線をフィールドに戻したとたん、私の名前が呼ばれる。
「はーい」
私の番が来たみたいなのでフィールドへと出る。
学園長に巻き込まれたせいで結構試験召喚獣は見ていますが、自分の召喚獣を召喚するのはこれが初めてなのです。
えぇ、割とどきどきします。
さて、私の相手は誰かなー…って。
「え、瑞希?」
「あ、彩ちゃんが相手なんですか。がんばります」
「こちらこそよろしく。じゃあ、瑞希からいってよ」
「は、はい!えーと、試獣召喚サモン
瑞希がつぶやくと、幾何学模様の魔方陣が浮かび上がるとともにホログラムが組みあがるかのように試験召喚獣が現れる。

「「「おおっ!」」」
周りから声が上がる。
瑞希をデフォルメしたような外見の召喚獣は真っ白な鎧に身を包んでいました。
とても可愛い。元が可愛いのもあるが、デフォルメされて更にキュートになってます。
そして、それとは不釣合いなくらいに大きな剣を軽々と持っています。
心なしか瑞希の本性が垣間見えたような気がします。

「すごいねー。じゃあ私も、試獣召喚サモン!」
勢いよく宣言すると姫路と同じように魔方陣と召喚獣が現れた。

「「おおっ!?」」
そしてまた周りから上がる声。
私の召喚獣は真っ黒な振袖にきらびやかな花々の刺繍をあしらった和服を着た姿をしていました。
そして得物は日本刀。
たしか学年主席クラスの点数だったと思うんですが意外に地味なのです。
その刀があからさまにおかしいってレベルじゃないほどの禍々しい雰囲気を放っていなければ、なのですが。
何ですかアレは、刀の周りにオーロラみたいなのが漂ってるんですが、
私自身あんまりこの召喚獣に近づきたくないんですが、何これ? 妖刀?


『Cクラス   姫路瑞希    VS   Cクラス   織部彩
 総合科目   3934点   VS   4109点       』


参考用の点数が表示されます。直近の点数だから中間試験ですね。
目立ちたくないからあの点数にしてたのに、全力でやったらこの刀どうなるのでしょう?
…触れるだけで相手の召喚獣が消えるとか?

「彩、やっぱり彩の召喚獣はボクのイメージ通りの武器だね!」
「わしも彩はやっぱりそういう得物が似合うと思うぞい!」
「先生、今からでも良いので対戦相手を明久と秀吉に変更してください」
「なんじゃと!?」
「えぇ!?ちょ、ちょっとまってよ!」
「織部。これは授業だ。個々人のわがままは基本的には聞けない」
「ですよね先生!」
「そうじゃ先生! 対戦相手の変更なぞ…わしらの命が危ないのじゃ!」
「ですが先生」
「ですが、じゃない」
「…はい。わかりました」
「そうか、わかってくれたか。じゃあ――」
「今回は特別だぞ?木下秀吉、吉井明久、前に出なさい」
先生ナイス笑顔。
「え?なにそれ!?その会話おかしいよ!?」
「そ、そうじゃ!なにか綺麗にまとめられた気がするのじゃ!」
「さーて、二人とも。神様にお祈りは?遺言は残したかしら?体育館の隅でガタガタ震えながら命乞いをする心の準備はOK?」
「えぇい、やられるわけにはいかんのじゃ!試獣召喚サモン!」
「ぼ、僕も!試獣召喚サモン!」
「いくらなんでも、初めての試験召喚で二人を相手にするなんてできると首がありえない方向に回りかけていたいいいいいいいいい!?」
「ま、まつのじゃ彩。わ、わしはそういう意味で言ったのでは待つのじゃ彩人間の腕はそっちには曲がらな…!?」
両腕でで明久の首を決めて、足で秀吉の腕の関節を決めます。
召喚獣?二人が召喚した瞬間に消し去りましたが何か?
触れただけで消し飛んだのです。さすが妖刀。村正とでも名づけましょうか。
瑞希は何かうらやましそうな顔をしていた。たぶん明久を折檻したことが原因なのでしょう。
そんなぐだぐだな状態で二人の悲鳴をBGMに始めての試験召喚は終わったのでした。


◇そしてもうひとつのイベントは


「彩!!一生のお願い!!お金貸して」
「貴方の一生のお願いは聞き飽きたわ」
久しぶりに明久の家で夕食をとろうと明久の家を訪ねたら、玄関で明久が土下座していました。
ちなみに、このバカは一生のお願いと称して宿題をうつさせてくれだの、DVDを貸してくれだの、姉さんたちにエロ本の所在を教えないでくれだの枚挙に暇がないほど多用しています。おかげでこのバカが言う一生のお願いの価値は暴落しているのです。
「そこを何とか!今回はちゃんと理由があるんだ!」
「黙りなさい。そういう火急の入り用のために貯金をしておきなさいと私が何度言いましたか?そんなに入り用なら自分の持っているゲームやマンガでも売ったらどうですか?」
懇願する明久を一蹴します。さりげなく明久を誘導するのも忘れません。
ここで私を頼ってきたということはまずゲームを売る、ではなくまず私を頼るになっているはずですから。
たぶん美波(妹)関連のイベント進行中なのでしょうし、特に介入する必要のない(興味を持てない)ところは原作どおりに済ませるのが私のセオリーなのです。
「そうか!その手があったか!どうせも戻ってこないと思ってたものだし、うまくいけば…」
どうやらそっち方面に思考がいったようです。
「どうしたの?」
「え!?な、何でもないよ!?」
「ならいいけど」
「それよりも、早く夕食にしようよ」
「そうね。今日は何にするのかしら?」
「えーと、今日は…」
さて、このバカはこのまま観察処分者へ一直線でしょう。
それよりも、せっかくの美波の誕生日なのですから、私もなにかプレゼントしましょうか。
そう思った私は、翌日にいつものように優子と秀吉を誘って放課後に街に繰り出し、美波へのプレゼントを買いました。
そしてその翌日、誕生日の美波にプレゼントを渡したらとても喜んでもらえました。
ちなみに、その日、明久はめでたく"観察処分者"の名前を拝命したのです。



[15751] 夏休み 南国バカンス前編
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/07/04 23:51
人間、いつ死ぬかわからないのです。
だから、思うが侭に生きたほうがいいのです。




心地よい日差しが頬を撫でる。
青々とした庭が見えるが、その景色はゆっくりとかすんでいく。
頭の中に砂嵐が流れているような感覚が襲ってくる。
意識が一つ一つ消えていく。
電球が次々に消えるように私が消えていく。
そして電球はついに――
「…っ!!!!!!!」
電流が走るような感覚と共にびくんと身体が跳ねる。
明るく暖かい日差しに目を細めながら見回すと、いつも来ている和室だ。
「そういえば…昨日は秀吉の家に泊まってたんだっけ…」
起動しだした頭で思い出す。
それにしても、最近見ていなかったのにな。最期の時の夢なんて…。
バクバクと心臓が激しく鼓動している。
怖い悲しい寂しい。不快な感情が身体を這いずり回っている。
「秀吉…」
それを埋める何かを欲して、いつもよりも早足で秀吉の部屋に向かった。。





「はーいちゅうもーく」
終業式も終わったHR前の教室で、私は教壇に立って手をパンパンと叩いた。
クラス中の視線が私に集まる。
「一学期も終わって明日から夏休みだけど、みんな予定とかあるー? …特になさそうね。じゃあ私からひとつ提案。ちょっとした理由でコテージ付のプライベートアイランドを使えることになったから、みんなでバカンスに行かない?」
私の発言にクラスがざわめく。
「それっていくらくらいかかるんだ?」
「もちろん旅費はぜーんぶ無料よ」
「いいの!?」
クラスメイトから驚愕の声が上がります。
まあいきなりバカンスをタダで招待とかいったので当然の反応でしょう。
「マイレージやら優待やらでこのクラスの人数分くらいならあるのよ」
「あ、じゃあ僕行きたい」
「明久は駄目よ」
「何でさ!?」
「アメリカから召還命令が来てるわ」
「のおおおおおおおおおおおおお!!!」
明久の悲鳴が教室に響いた。
「冗談よ。『もし、明久の生活態度に問題があったらアメリカに召還するけどどう?』ってきかれたから、ぎりぎり大丈夫ってこたえておいたわ」
「彩! 僕は今君が女神に見える!」
「成績表は郵送したから、期末テストの結果も合わせて」
「何でまだ配られていない成績表を君が持ってるのさ!?」
「学園長から直接コピーをもらったわ」
散々働かされてるので、これくらいはぜんぜん許されるのです。
「悪魔! この悪魔!!」
「じゃあ、豪華3泊4日のトロピカルバカンスに参加する人は、明日までに私のケータイにメールしてね」
明久の罵倒はすぐにクラスメイトの喧騒で消え去ります。
それを心地よく聞きながら自分の席へと戻ります。
「彩、よかったのかの?」
秀吉が私に聞いてきます。
「ん? 何が?」
「以前、主はあまり目立ちたくない。などと言うておったと思うのじゃが」
「あぁ、あれは成績で目立たなければOKよ。…もうカヲルちゃんのせいで目立たないほうがおかしいから」
たびたび学園長室で何かをカヲルちゃんと話している光景は、すでに全校生徒に知れ渡ってしまっている。
学校の理事会だのスポンサーだのは一般生徒は興味がないでしょうけど、学園長室と親しいとなると、まあ目立つのです。親しくはないですが。
現実は、狐と狸の化かしあいのような状態ですが。
「主がそれで良いというならいいがの。それにしてもよくこの夏休みにそんなところを貸しきれたのう」
「買ったからね」
「…もう一度いってほしいのじゃが」
「買ったからよ。これで秀吉と毎年バカンスにいけるわね」
「バカンスにいくだけなら買う必要はないと思うのじゃが」
「なーんてね。本当はれっきとした商売よ。来年からはこの学園もかかわってくるわ」
いくら私でも、秀吉のためだけに島ひとつ買ったりなんてしません。
秀吉の誕生日に映画会社とかは買おうと思っていますが。
じゃあ何故買ったのかというと。実は最近ちょっとした会社を建てたのです
名前はシリコンバレーバカンスLLC。
加盟企業専用のバカンスを提供する会社というわけです。
知ってのとおり、シリコンバレーにある新興企業は福利厚生がバカみたいに豪華な企業が多いのです。
そんな企業は当然バカンスなどでも自社が独占できる施設…有体に言えば保養施設も持ちたいのですが、一社ではどうしても数と質を揃えられません。そこで私は子飼いの企業をそそのかしてシリコンバレーの会社専用の保養施設群を確保する会社を作ったというわけです。結構儲かります。
まあ、そんな裏事情はどうでもいいのです。
重要なのはそれによって今回私たちがプライベートアイランドを独占できるということと、文月学園も来年から加盟するので、原作開始後の海イベントが豪華になるということなのです。
「主は本当に抜け目ないのう」
「伊達に成金やってないわよ」
「…主は…」
「秀吉はもちろん行くわよね?」
「行きたいのは山々なのじゃが。海外なのじゃろう? パスポートとかが、のう?」
「今からとりに行けば大丈夫よ。それにもうあるし」
「初耳なのじゃが!?」
初耳って、すでに貴方の家族は全員抱き込んでるのにいまさらねえ。
「あ、貴方の両親も8月は世界一周行くみたいよ?」





さて、やってきました南のバカンス。
結局、パスポートなどの関係もあり、全員は参加しませんでしたが、それでもクラスの三分の一は参加することになりました。
それに加えて、個人的に親交のある優子も着ています。
翔子は残念ながら、家族旅行があるからとこれなかったです。残念なのです。
まあここで雄二とくっつかれても困るのでよしとしますか。
あれ? 夫婦漫才が早まるだけでそんなに困らない? …まあどちらでもいいのです。
「うわー、暑いなあー」
小型飛行機を下りた途端に明久が言います。
太平洋のど真ん中のだけあって南国独特の日差しが心地よい。
これは…
「これは早く日焼け止め塗らないと真っ黒になっちゃうわね」
「あ、アレが私たちが私たちが泊まるコテージ? すごーい海の上にあるよ!」
「豪華ー!」
クラスメイトたちが口々に色めき立ちます。
小さな島なので空港から宿泊施設が直結しているのです。
目の前には海に続く橋と、その周りにぶどうのようにくっつくコテージが見えます。
「はーいみんな聞いてー! とりあえずこのままあの目の前の建物に入ったらチェックインできるから、各自自由に部屋を決めていいわよ。あ、秀吉、明久、雄二、ムッツリーニ、瑞希、美波、優子は近いほうがいいからすでに部屋は指定してるから、特等室を用意したわ」
みんなに向かって言うと、歓声と共にクラスメイトたちは建物に走っていく。
島に着くまで結構時間がかかったのでそのテンションは最高潮なのです。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「そうじゃの、ところで彩。わしらの部屋はどこかの?」
「コテージの一番奥の部屋よ。詳しいことはフロントに聞いてね」
「む? 主はどこにあるかしっとるんじゃろ?」
「ちょっと私は用事があるから、先に行っててくれる?」
「ふむ、わかったのじゃ。じゃあ彩の荷物もついでにはこんでおこう」
「ありがと」
「礼には及ばん」
言って、私のキャリーバックを秀吉に渡す。
「あ、そうそう。一応部屋割りだけど明久と雄二とムッツリーニ、瑞希と美波と優子、私と秀吉って感じにしてるからよろしくね♪」
「な、なんじゃそれは! 聞いておらんぞ!?」
「じゃあ、またねー」
「ま、待つのじゃ彩! お主らも黙っておらんで何とか言うのじゃ! 彩! 待つのじゃ彩ー!」
秀吉の声を無視して私は脇にある小道のほうへと向かいます。
ここにきたのは秀吉とバカンスを楽しんで、あわよくば一線を越えようというのもありますが、それよりも、もっと重要な理由があるのです。


しばらく細い道を歩いていき、南国らしい林をしばらく進みます。
そうして5分くらい一本道を進むと、綺麗な石畳によって整備された、小さい広場が姿を見せました。
そして、その先、海を見渡せる位置に私の背丈ほどの高さの幅数メートルほどの大きな四角い石碑があります。
私は、その石碑の前で座ると、ゆっくりと石碑に額を当てました。
ヤシの葉などで陰になっているせいか、暑くはなくむしろ少しひんやりとした感覚が額に広がります。
ふわっと、懐かしい気分が湧き上がってきます。
「パパ…久しぶり…」
十年前。この島の近くで、パパの乗った飛行機は墜落したのです。
ほとんどの乗客の遺体は見つかりませんでしたが、飛行機の残骸の一部がこの近辺の諸島にたくさん落ちていたのです。
その中でも一番残骸が多くあったこの島に、私たち遺族は石碑を建てて、亡き人を偲ぶことにしたのです。
以来、私は年に一度は、ここにきています。
ここに来ると安心します。パパの姿を鮮明に思い出せます。
ここに来ると安心します。パパの声がまるで聞こえたかのような気分になります。
十年たっても、父離れできない私は、もしかしたらファザコンなのかもしれません。
「今年、高校生になったのです。学校は楽しくて、今日はみんなでこの島に来たのです」
そして、ここに来るたびに思うことがあります。
「本当に、今、私はたのしいのです」
今を思うがままに生きようと。
「……」
とと、いけない。ちょっとセンチな気分になってしまったのです。
そうそう、パパに報告があるんのです。
「あっ、あと、好きな人ができたの。とっても可愛い男の子。でも芯の部分はしっかりしていて、とっても魅力的な男の子。生涯を共にしたいと思うくらい」
もしパパが生きていたら、大切な人ができたことに喜ぶでしょうか。
それとも、娘が離れていくことに悲しむでしょうか。
「……」
答えは返ってきません。
「じゃあ、みんなのところに戻ります。またね、パパ」
額から頭を離すと、私はコテージへに戻ることにしました。





コテージに戻ったところ、結局秀吉が駄々をこねて明久と雄二とムッツリーニ、瑞希と美波と私、優子と秀吉という部屋割りになっていました。
「まったくもう」
「ま、まあまあ彩ちゃん。気持ちはわかりますが機嫌を直して」
「そうよ彩。なんなら夜こっそり交換しちゃえばいいじゃない」
そういって優子が私を慰めます。
私たち女性陣は落ち着いたところで私の部屋に集合していました。
一番いい部屋を選んだので、広いリビングでは全員がそれぞれソファーや南国チェアに寝転がれるくらいのスペースはあります。
ちなみに男性人の部屋もこれくらいの広さですし、私と秀吉が使うはずだった部屋もこれの3分の2ほどの広さはあります。
「まあ、そうね。じゃあ優子。夜はよろしく」
「任されたわ!」
「あの、じゃあそろそろ海に行きませんかっ?」
「そうね瑞希。ウチも早く海に入りたくてうずうずしてたの。男子たちはもういろいろフロントから借りて遊んでるわよ。ほかの女子ももうすぐ海に行くみたいだし」
言われて、外を見ると水着姿で砂浜へかけていくもの、コテージから直接海に飛び込むものがちらほら。
まああのテンションなら下手に荷物を置く⇒即効で海に突っ込むのコンボは当然でしょうね。
「じゃあ、水着に着替えて海に行きましょうか」

さて、そんなわけで水着に着替え始めたのですが。
「……っくっ」
「…むぅー…」
「あ、あの…そんなに見られると…恥ずかしいのです」
「えーと美波に優子?」
美波と優子の視線が私と瑞希に刺さります。
視線の先は胸。
いや、美波? 貴方は体育のたびに見ていると思うのだけど…。
あと優子? 目が怖いのです。
「しかし、まじまじと見ると本当に大きいわね。サイズは?」
「え、えと…一応Dで止まってくれ――」
「止まってくれたですってえ!?」
「ひぃ!?」
優子が鬼の形相になっています。み、瑞希助け…。
「全く、不公平よ。大きすぎじゃない」
「お、大きくてもあまりいいことはないですよ? 肩とかこりますし」
「…注射器で吸い取ったりとかできないかしら」
「み、美波ちゃん!? 冗談ですよね!? 顔が怖いですよ!? 何でこっちににじり寄ってくるんですか!?」
残念。向こうは向こうで必死です。
「うらやましいわ! ちょっとはこっちによこしなさいよ! 不公平よ」
「ちょ、ちょっと優子!? ま、まってそんなに揉まなひゃんっ!?」
ま、ちょっ!?
水着の中に手を入れて揉まないでええええええ!?
「そんなことしても優子の胸はぺったんこのま――ひゃあああああああ」
揉む力が強くなったのです。
…私と瑞希が解放されたのはそれから5分後のことでした。

「……!(ブシャア!!)」
「ちょっとムッツリーニ!? なんかすごい勢いで流血してるんだけど!?」
水着姿で現れた私たちに、ムッツリーニが首の頚動脈をかききったかのように鼻血を出して倒る。
駆け寄る明久に一言。
「来世は…鳥になりたい…」
「ムッツリーニ!? しっかりして!ムッツリーニ!?」
「そして、思う存分空から女子更衣室の中を目に焼き付ける…がくっ」
「あ、ちょっと明久。ムッツリーニを見せて」
「え? 彩、診れるの」
「…ムッツリーニ? おーい」
「……」
「…むにゅり」
「…!?!?!?(ブシャアアアアアアアアアアア!!)」
「何やってるの彩!?」
面白かったので駆け寄って胸を押し付けてみたらさらに出血していた。
「まだ出血できるから大丈夫みたいね」
「僕にはそうは見えないんだけど!?」
「…彩」
「ん? どうしたの秀吉。眉をひそめて」
「ちょっと戯れが過ぎるぞい」
ちょっと不機嫌そうに秀吉が言う。嫉妬でしょうか。だとうれしいんですけど。
しかしその顔、
「んもぅ! 可愛いなあ秀吉はっ!」
「可愛いといわれてもわしはうれしくないのじゃ」
「ところで、どう? 私の水着」
言って、秀吉に向かってポーズをとってみる。
ジラソーレ新作のピンクのハイビスカスをあしらったビキニです。
「う、うむ、似合ってお「ほーらほーら」じゃから主はくっつきすぎじゃと!?」
「秀吉にならいーじゃなーい」
秀吉の反応が男の子してるせいで私のテンションはさらにハイなのです。
「さて、じゃあ俺たちは遊びに行くか」
「着替えに続きこの場でもわしを見捨てるのか雄二! 明久!」
「まあ秀吉には気に入ってもらったようだし、私たちも遊び生きましょうか」
一通り秀吉を楽しんだので、秀吉から離れる。
腰にちょっと硬いものが当たってたので私は有頂天です。
割と大胆に決めたので少々恥ずかしいのですが、それ以上の成果は得られました。
「うぅ…主はほんとに…」
「じゃあ何で遊びま「早速私たちと一緒に遊ぶわよ!」」
「へ?」
私たちが何で遊ぼうかを思案しようとした途端、どこからかクラスメイト現れます。いつの間に?
「さあ来るのよ! ハリー! ハリー!」
「え? え?」
そして、
「ヘイ隊長! 織部班確保しました!」
「でかした! これでCクラス+全員集合よ!」
あれよあれよというまに私たちのグループはクラスメイトの大集団に併合され、
「さて、じゃあみんな何をする!?」
「スキューバダイビングがいいわ!」
「いや、ここはバナナボートをだな!」
「ビーチバレーでしょう! 揺れる胸! ポロリもあるよ!!」
「スイカ割りとかどうよ!」
「全部やればいいんじゃない!」
「「「「それだ!!」」」」
日が暮れるまでサマースポーツを満喫することになりました。





「つ、疲れたわ…」
シャワーを浴びてパジャマに着替え終わった途端。どっと疲れが襲ってきてソファーに倒れこみます。
「彩は本当に体力ないわねー」
「そうよ、ウチなんかまだまだいけるわ」
「わ、私もちょっと疲れました…」
「優子、美波…あんたたちの体力が、心底うらやましいわ」
くたくたになっている私と瑞希。まだ元気そうな優子と美波。
…やっぱり胸の差なのかしら。
「それにしても、海外は初めてだけど、南の島って本当に楽しいわねー」
「そうね、海で遊ぶだけで軽く1日過ぎちゃったしね」
「明日は何をしましょうか。楽しみです」
「楽しんでもらえてうれしいわ。おなかもすいたし、ルームサービスでも頼む?」
「でも、夕食もありますし…」
言いながらおなかのあたりを気にする瑞希。そういえばこの子、太りやすいとか言ってたかしら。
「レストランもあるけど、同じメニューをルームサービスでも取り寄せられるの。せっかくだし、部屋でゆっくりと食べたいじゃない?」
そういって3人に提案して、了承を得る。
机の引き出しからメニューを引っ張り出してわいわいとメニューを選び、電話で注文してから数十分…。
「わぁーすごい!」
「とてもおいしそうです」
「あ、それウチが頼んだやつね。彩とってー」
「はい。あ、飲み物ひとつとってください」
「これですか?」
「そうそうそれ」
目の前の南国料理を前にすっかり和やかムードで食事が進んでいます。
やっぱりこういうのは少ない量でいろいろと食べるのがいいのです。
「あれ? そろそろ飲み物がなくなりそうね」
「あ、私が飲み物頼んでおいたわ」
さすが優子。手際がいいのです。
ヴーーー。
「ルームサービスでス」
「あ、はーい」
「ところで瑞希、その赤いのって?」
「あ、はい。メニューにあったので頼んでみたんですが、辛くておいしいですよ?」
「へーどれどれ…って辛…、ちょっと私には辛すぎるみたい」
「えーと…南国風ロブスター炒め(ハバネロ入)って書いてるわね。ちょっと辛いけど、結構ウチも好きな味ね」
「と、とにかく飲み物飲み物」
「あら彩、どうしたの?」
「あ、それちょうだい」
「え、彩! ちょっと!?」
こくこくこくこく。
オレンジ色のジュースを一気に飲み干して口をすすぎます。
押し流される辛味と、その代わりに入ってくる口の中に広がる苦味と。
あれ? 頭がぽーっとするのです?
「ふにゃ?」
「あ、あれ彩の様子がおかしいわよ? 優子、その飲み物って」
「男どもの部屋に行って、秀吉にでも飲ませようと、ちょっと強いアルコールを…だけど結構彩もアルコール弱いのね」
「ちょ、そんなこと言ってる場合は」
外でそんな声が聞こえますが。あるこーる? おさけえしたかう。
「きゅうっ」
何とか考えようとしましたが私の身体は強制的に意識を落としたのでした。





懐かしい笑顔が見えます。きらびやかなホテルの玄関。
私にはまだ大きすぎるイスの前でパパが笑っています。
「じゃあ、お父さんはこれから仕事で日本に戻らないといけないから」
「うん。お母さんとおじいちゃんたちの家に行くね」
私が笑うと、パパの目元が緩みます。
そしてそのまま席を立ちホテルの出口に歩いて行くお父さん。












人はいつ死ぬかわからないのです。だから――










「…………!!!」
まどろみから現にもどされたはずなのに頭がふわふわする。
「――ったな…上!! あ……のじゃ!」
またあの夢を見た。
人はいつにでも簡単に死んでしまう。
寂しい…。
「秀吉…」
「あ、彩!? おきたのかの?」
あれ。私なんで秀吉の部屋に…?
「ど、どうしたのじゃ彩まだ酔いが醒めておらんのか」
なんだっけ。
目の前に秀吉がいる。
でもひでよしもいつ死ぬかわからない。私もいつ死ぬかわからない。
じゃあ…秀吉ほしいなあ…。
あーそろそろ一線超えるぞーって
「彩? 聞いておるのか? おーい?」
「ひでよしぃ…!」
「な、むぎゅっ!」
覗き込んでいた秀吉に首を回しベットに引き込む。
倒れこんだひでよしのマウントを取るとそのままのしかかる。
「あ、彩!? ちょっとこれはまずいのじゃ! 流石にまずいと思うのじゃ!」
ひでよしの息が首にかかる。
バクバクと心臓が跳ね返るのがわかる秀吉の心臓の音も聞こえる。かなり早い。
秀吉がほしい。歯止めが利かない。
前世で飲み潰される寸前に、こんな感覚を味わったことがある気がする。まあいいや。
ガンガンとなる頭に促されるように秀吉の首筋を舐める。
「ひぁっ! 彩!、だから、ちょ、、ひぅっ」
色っぽい秀吉の声が聞こえる。
よして舌と共に、そのまま手をヒデヨシのズボンの下に…。
「いい加減にするのじゃ!!」
ドンッ!
「きゃあ!?」
いきなり秀吉に突き飛ばされて私は体制を崩してベットから落ちてしまう。
あれ? なんで…あれ…なんで……?
「いつもいつも強引に…わしの気持ちも考えるのじゃ!」
秀吉の声に思わず肩がすくんでしまう。
それと同時に急激によいが醒めていきます。
眉を吊り上げる秀吉の顔は拒絶に見えます。
今まで、こんなことはなかったのです。
嫌と言いながらもあまり拒むような仕草はありませんでしたし、だから、大丈夫と思っていたのです。
だけど、今回は明確に拒絶されました。
――秀吉に拒絶された。
…秀吉に嫌われた?
ヤダ
「大体主はいつも……」
「ご、ごめんなさい。ごめんさい」
「彩?」
秀吉に拒絶された。
「い、いや、ごめんなさい秀吉ごめんなさい」
身体ががくがくと震える。
抑えようとするが目からはぽろぽろと涙が流れ落ちて止まらない。
秀吉に嫌われた。
ヤダ。
「…あ、彩ちょ、ちょっと落ち着くのじゃ!」
ヤダ。ヤダ。嫌われたくない。
「嫌いになっちゃやだぁ…」
感情の高まりが抑えられない。
「彩、じゃから落ち着けと」
秀吉の手が伸びる。
拒絶をした秀吉が、何をするのかわからなくて。
さらに拒絶される恐怖が一気に高まって
「…っ!!」
私は跳ねるように部屋を飛び出した。





月明かりだけが石碑を照らす。遠くにはコテージの明かりが波で揺らめいていました。
「パパ。…また来たのです」
昼と同じように額を石碑につけてパパと話す。
こつんと額を当てた石碑は、昼よりもひんやりしていて混乱の中にあった頭をクールダウンしてくれます。
「…やっちゃったのですよ」
いくらアルコールによって理性を失っていたとしてもちょっと度が過ぎました。
あんなに明確に拒絶されるとは、思ってもみなかったのです。
「昼にはなした男の子に、振られちゃったのです。お酒で酔った勢いでちょっと襲っちゃって…はしたないとかって怒らないでくださいね。そこまでお熱なんです…そして、拒絶されちゃったのです…急ぎすぎたのかな…?」
ここ最近は、特に何かの脅迫概念にとらわれてる気がします。
でも…。
「人間、いつ死ぬかわからないのです」
そして、死ぬときはいともあっさりと死んでしまうのです。
パパも、そうでした…急に私の前からいなくなってしまいました。
「私も…」
私も、そうでした。これからというときに未来を奪われました。
やり残したことはたくさんありました。
後悔なんてしても仕切れません。
そして、あの時と同じように人間なんて、いつ死ぬかわからないのです。
「パパ…私、間違ってたの?」
幸福の量は一定しかないのです。
最近は特に、幸福に過ぎました。
ゆり戻しが着ているのでしょうか。
神様という存在がいるのであればよほど性悪なのでしょう。
会うことがあれば全力で右ストレートをお見舞いするしかありません。
「……秀吉」
嫌われたでしょうか。
「やだなあ…」
人生において、今の私にとって秀吉はいなくても生きてはいけます。
ただ、それは織部彩という存在自体がというだけであってなんでもない"私"という存在に限ってはそうではありません。
燃えるような恋ではないけれども、依存度が高くなってしまいすぎています。
僅か数ヶ月、人生の割合で言えば3%に満たない期間しかかかわっていないのに、存在が大きくなりすぎています。
始めは、所詮小説の中の人間ということで、キャラクターとしか見ていませんでした。
ですが、時間を重ねるごとに細かい仕草から考えにいたるまでどんどん秀吉という目の前にいる存在として入り込んで来ました。
大いなる傍観者でいれればよっぽど楽だったのでしょうに。
あくまでキャラクターとして見て、キャラクターとして恋をして、ゆっくり事を運んでいれば、こんなことにならなかったのでしょう。
その場合は、あれほどの幸福感もなかったでしょうが。
…どうやら私はまだ混乱しているようです。
こんな『もしでも』を繰り返さなければ恐怖が減りません。
「…やっぱり…やだよ…」
恐怖がもれて涙になる。
秀吉に嫌われたくない。
どうすればいい?
どうすればいい?
どうすれば…?
「彩!」
後ろから秀吉の声が聞こえて、心臓が跳ねた。






「彩!」
「っ! …ひ、ひでよし…」
振り返ると、秀吉が息を切らしながらも、こちらを見据えていた。
怖い。
私の身体はまた震えだす。
自分の意思に関係なく後ずさってしまう。
「待つのじゃ彩! 話を、聞いてほしいのじゃ…」
「話?」
なんだろうか…。
「嫌い…になったんなら…もう、何も話さなくてもいいじゃない」
ちかちかと麻痺する頭で何とか声を発する。
「じゃから! 違うと言うに!」
……違う?
ドウイウコト?
「私の事、嫌いになってない?」
「なっておらん、なっておらんから…」
「ホント?」
「本当じゃ」
「なら、ぎゅってして」
「こ、こうかの?」
何故かあっさりと、秀吉は私を抱きしめてくる。
「んっ」
「す、すまぬ。強かったかの」
「ううん。秀吉を感じられるから、心地いい」
秀吉の腕の中で小さくなった私は、はたから見ればまるで借りてきた猫のように見えるほどにおとなしくなっている。
秀吉、私のこと嫌いになってない?
なってないと秀吉は言った。
こういうところで即断で嘘をつく人ではない。
「じゃあ、なんで?」
「じゃから…なぜ主はいつも手順を数段飛ばすのじゃ…今回はアルコールのせいもあったようじゃが」
つまり、私が押し倒す⇒秀吉の倫理観がブレーカーになって過剰な行動を起こす⇒それを拒否と受け取って私が絶望して部屋を飛び足した、ってことでしょうか。
つまり、秀吉は別に私の事は嫌っていない。と。
「よかったぁ…」
ぽろぽろと涙が流れ落ちる。
「な、何ゆえ泣く!?」
「だっでぇ…ひでよし…私嫌いになったと…おもっでぇ…」
「…最近彩、お主なにか危ういぞい。まるでその…何かにあせっているような…余裕がない態度じゃ。わしの印象じゃと、始めはもっと飄々としておったのじゃが…」
おそらく、夢のせいなのです。どうも春から自分が死んだときの夢やパパの最後の姿の夢を見ることが多くなったのです。
「それに、何度も言うておるが、こういうのは手順があるじゃろうに…」
「つまり、手順があればいいと?」
「なっ」
…なるほど。
つまり、ここは人生の転機か何かのなのでしょう。
……拒絶されるのはいまだに怖いけどそれ以上にここで言わなくてはと私は思います。
やらずに後悔するよりも、やって後悔したほうがいい。
――人間、いつ死ぬかわからないのですから。
ゆっくりと秀吉から離れる。
そして、私は呼吸を整え秀吉に向き直りました。

しかし、その前に伝えなければならないことがあります。
私の思いを吐き出して、彼に判断を委ねるのです。
「…人間ってね、いつ死ぬか、わからないのよ」
「なんじゃって?」
秀吉が理解できないという顔をします。しかし私はそのまま続けます。
「この石碑ね、パパの名前が書いてあるの」
「彩の、お父さんの名前?」
「サウスアメリカン611便墜落事故。邦人が多数乗っていたから、今でも時々TVで流れる事故よ」
「あ、あの事故か…。待つのじゃ、もしかしてその飛行機に?」
「私のパパは乗っていたわ。秀吉、私が何でこんなにお金を持っているか知ってる? …パパの遺産じゃないわよ。グランパはそこそこの資産家だけど、こんなに桁外れのお金はもってない。十年前にパパからもらったお金で株をやって、増やして、その後に十年前、シリコンバレーで今は電脳企業の雄といわれる企業を軒並み青田買い…当時無名だった彼らを片っ端から買いあさったからよ。パパを代理人に立ててね。そのおかげで私はこんなお金持ち。たかが中流階級の小娘が。まさに成金よね。笑っちゃうわ、パパの命を代償にここまで上ってきたのよ? あの後ね、パパは会社に呼び出されてロスに行った後に、あの飛行機に乗ったのよ?」
「それで、事故に…」
「そう! 飛行機事故に巻き込まれた! 私がいなければ…私はあんなことをしなければ巻き込まれなかった事故にね! それはいいの。…あの事故の責任が私にあるとは言わないわ。もしかしたらあの事故を避けても、パパは別の事故にあって死んでいたかもしれない。そういう運命だったのかもしれない。私のせいか、パパの運命か。そんなものはどうでもいいの。追求するならシュレディンガーの猫のようになるわ。いい? ここで重要なのはね。人間…いえ、どんな動物でもいつ死ぬかわからないってことなの。自分がどんなに健康だと思っていても、ある日突然余命半年を宣告されるかもしれない。いくら自分が何の病気がなくても、ある日突然事故で死ぬかもしれない。…そうでしょう?」
「そうじゃな…」
「そう、人生とはあんまりにも儚いものなの。いつ終わるかもしれない。しかし終わらないかもしれない。全てを知るのはそれこそ神様のみよ。でも私は神様じゃあない。でも、私は人間があんまりにもあっけなく終わってしまうのを知ってしまった。身内の…大切な人の死で見せ付けられてしまった。だから、そのとき私は思ったの。やらずに後悔はしたくない、って。ある日、余命半年だと宣告されて、子供がほしいと思ったらどうする? ある日、昨日から子供が作れない身体になってしまったらどうする? そういう後悔はしたくないのだから、思うように生きようと思った。思うように生きた」
「……」
秀吉は何も言わない。返す言葉が見つからないのか。
私の言いたいことは秀吉に言った。
「見もふたもなく言ってしまえば、パパが死んだことで私はやりたいことはどんな手段を用いてでもやりたいようにやるっていう、壊れた倫理観になってしまったのよ」
もちろん手順はありますが。
「彩…」
「何?」
「主の考えは難しすぎてわしにはわからん。じゃが…主が後悔しないように生きていることはわかるつもりじゃ…」
そこまで理解できたら上出来よ、秀吉。
理解してもらえたことに喜びを感じつつも、一番伝えたい思いを口にするために深呼吸をします。
どんな大物にあうよりも緊張します。
命の危険がある場面は何度も経験しました。
ですが…これ以上の緊張はなかったと思います。
バケモノと揶揄される資本家に会ったときも、考えがわからない狂信者に会ったときもこれ以上の緊張はしなかったと思います。…おそらく、それが現実に感じられたかの差でしょう。
もともとイレギュラーな私は、ここに現実を感じることができなかったのです。
幼少のころ、資産が億単位に増えたときもそうだったのでしょう。
どんな命の危険にあっても、そうだったのでしょう。
いくばくかの時をかけないと、私はそれを現実とは実感できなかったのです。
要するに、私はこの世界において、"バカ"だったのです。
しかし、こっちに想いが残った今。それはなくなるでしょう。
…一呼吸置いて、私は、
「秀吉」
「な、なんじゃ」
まっすぐに、ただ秀吉の瞳だけをみて私は、
「私は、貴方が好き。生涯の伴侶として貴方といたい。貴方の子供を産みたい。貴方と一緒に、生涯を全うして一緒に死にたい」
まっすぐに小手先も手段もなく秀吉に告白しました。
「そう改まって正面から言われると、こう、なんか変な気分になるのう」
「貴方が手順をって言ったんじゃないの。だから私は正面から、正々堂々とプロポーズしたわ」
「プロ!?」
あ、秀吉が動揺してる。可愛いのです。
…って今はそういう場合じゃないのです。
「秀吉は、私の事どう思ってる」
「わしは……」
秀吉が言いよどむ。
目をぎゅっと閉じて思慮をめぐらせている姿は女の子である私でよりも女の子らしくて、少し嫉妬した。
そうして、長い長い沈黙の数瞬。
「…一人の異性として意識しておる」
「そう」
「じゃが、わしはやはりこういうものはきちんと順序を踏むべきと思うのじゃ」
予想以上に秀吉の貞操概念は固いらしい。
つまり、高校卒業まで子供はお預けかしら。
せっかく名前ももう考えてあるのに。
でも、贅沢は言えない。
しかし、その前に確認しなければならないことがある。
すごく、重要なことだ。
「そうね、じゃあ秀吉。ひとつお願い」
「何じゃ?」
「答えを行動で示してちょうだい。生涯の伴侶を前提に付き合ってくれるなら、キスして」
言って、私は目をつぶる。
私にとって、すでに秀吉は生涯の伴侶足りえるのです。
と、いうよりも秀吉以外には考えられません。
ここまできたのですから、一時のなあなあの関係で済ませたくはないのです。
それほどまでに私は彼に惚れ込んでいるのです。
秀吉の気配は動かない。
時間にしたら十数秒ほどなのでしょうが、私には無限にも思える時間が過ぎます。






















そして、






















「んっ」
唇へのやわらかい感触と共に背中にしなやかな手が回されました。
「んむっ…んんっ」
震える手で抱きしめ返し、少しの間だけでも不安にさせた仕返しに秀吉の口に舌を入れます。
たれきった目をゆっくり開けると、秀吉も同じくとろんとした瞳でこちらを見ていました。
舌と舌が触れあい絡み合う。そのたびに私は幸福感で満たされていきます。
秀吉が強く抱きしめてくるたびに心の不安はすすぎ流され、安心感が変わりに流れ込んできます。
時間にすると数十秒でしょうか。
先ほどの不快な十数秒よりも異様に短く感じる時間の後、私は秀吉から唇を離しました。
名残惜しくはありますが唇と口の中にはまだ秀吉の感覚が残っています。
秀吉も同じなのでしょう、頬を染めながらこちらを見つめています。
互いに抱きしめあったままなので顔は驚くほど近くに見えるのです。


そうして互いに互いを抱きしめあいながら長い時間が過ぎたような気がします。
…時間にしたら、数分でした。神様、ありがとう。





「……」
秀吉が石碑に向かって手を合わせています。
そういうところは本当に生真面目なのです。
「パパの前でキスしちゃった」
「ぬ、主はまたそういう…」
「大丈夫よ、パパならきっと祝ってくれるわ」
「そ、そうかの?」
「それでひでよし…」
「なんじゃ…」
「よかったら…なんだけど」
「なんじゃ?」
「私を…抱いてくれない?」
「ぶっ…な、何を言うのじゃ彩!? 父上の墓前で、そ、それに」
「…ふふふ、ちゃんとピルは飲んでいるし、大丈夫よ」
「じゃ、じゃが…」
「ちゃんと、卒業までは子供は我慢するわ。だけど」
「それくらい、いいじゃない」
上目遣いに彼を見る。
それに折れたのか、秀吉はわたしの肩を抱き寄せてくれたのでした。


























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やっぱりシリアルはだめですね、なんかうまくかけません。
あんまりにも『作者自重しろ』コメントが少なかったので、秀吉陥落イベントをやってしまいました。
あぁっ!石とか投げないで!




[15751] 夏休み 南国バカンス後編 というよりは翌朝編
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:51
「んぅ…んー…」
陽気な日差しがベットに差し込み、私の意識をゆっくりと引き上げていきます。
いつもよりずっと遅くに寝たせいか、頭はまだ睡眠を欲しています。
「んーーーーーぅ。ねむ…ん?」
眠気眼でシーツの中で伸びをすると、何かやわらかいものに当たりました。
「むぅ…ん…」
ちょっとシーツを下げると、秀吉が寝ていました。全裸で。
かく言う私も全裸です。
急に昨夜の記憶がどぱっと私に入ってきます。
結局あの後結ばれたわけでして、その後にどっと疲れが出たせいか二人ともぐっすり就寝したわけでして、なんというかシーツにちょっと紅いシミがついてるわけでして、前世の記憶のせいでいざとなったら嫌悪感が出るかなと思ったらそうでもなかったわけでして、結構秀吉のはたくましかったりしたのでして、痛かったけどなんというかごにょごにょというかまだ下腹部にへんな感覚がというかなんかもー幸福感がフィーバーで有頂天でなんといいますかあうー。別に初めてというわけではないのに、いえ、この体では初めてですがなんでこんなに幸福感とかがくるのでしょうよくわからないのです。あれですかやっぱり精神は肉体に影響されるわけですからこう完全にこういうときの冷静さはリセットされてしまってるのでしょうかあーもー。
…落ち着くのです、こういうときはあえて幸福感に身を任せてみるのです。

………。

……。

…。

「ふにゃあ…」
なんということでしょう。この幸福感。まさに至福。
さて、胸の辺りが幸福感で満たされて多少頭が回るようになったので、とりあえずアイスコーヒーでも淹れますか。
寝たのが朝方だからとても眠いのです。
そう思って秀吉を起こさないように私は上体をようやく起こして背伸びを――
「おはよう彩!昨日は大丈……夫…だっ……た?」
して胸をそらしたところで勢いよく優子がドアを開け放ってきました。
「……」
「……」
遊ぶ気満々なのか水着姿に下はホットパンツという姿で勢いよくドアを開け放った優子は、全裸の私をみて左手を上げた状態で硬直しています。
「……」
「あー…えっと」
どう答えようかと迷う私。
「むぅ…もうあさなのかのぅ彩…まだ眠いのじゃ…」
そしてタイミング悪く起き上がる秀吉。
「お、お邪魔しましたー…」
ゆっくりドアを閉めて行く優子。
「どうしたのじゃ彩…」
秀吉は寝起きで頭が動いていないのか、事態を理解できていないようです。
「え、と」
さて、秀吉は言うまでもなく全裸なわけです。
しなやかな腰とか、綺麗なうなじとか、鎖骨とかがまるみえなのです。
思わずぎゅっと抱きしめたくなります。
「ぁ…その…じゃの…昨日は…その…」
少しほどして焦点が定まってき秀吉も同じなのか、急に頬を朱に染めます。
おそらく私が少し前にやった思考混乱が今秀吉に襲い掛かってるのでしょう。
「その、じゃ…えと…うぅぅ」
すでに昨日の記憶が幸福感への変換ができるようになっている私は、そんな秀吉を見てますます胸の中が満たされます。
「秀吉、おはよ」
「ぅ…うむ、よ、よいあしゃじゃの彩」
「まだ寝ぼけてるのかしら?」
「だ、大丈夫なのじゃ!もう目が覚めて、さめて…」
駄目っぽいですね。
「目覚めにアイスコーヒーでも飲む?」
「そ、そうじゃの!わ、わしが用意するゆえ、彩はシャワーでも浴びてくるがよい!!」
「あ、じゃあそうさせてもらうわ」
秀吉の行為に甘えて、私はシャワーを浴びてすっきりすることにしました。





「ふぅ…すっきりしたわー…」
シャワーを済ませた私はブラをもってきていないことを思い出し、ショーツ一枚のみという格好でベットに取りに向かいます。秀吉が見たらまた赤面しそうです。昨日はもっとすごいことしたのに。毎回こうでは困りますね…まあ、なれるものでしょうし、大丈夫でしょう。
あぁしかし、なんという幸福感。
今の私は菩薩のような寛大な心を持っていると思います。
それこそ多少のことをあのバカとかがやっても許せるほ――
「秀吉!今日はなんかスカイダイビングとかが……でき、るら……しい……」

ダッ(明久がきびすを返す音)

ガシッドスンッ(私が明久を押し倒すところ)

ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ(ひたすらそばにあった灰皿で明久を殴打する音)

ゲシッザパーン(入り口から海へけり落とす音)



…なるほど、スカイダイビングですか。
記憶を失ってなければ、こいつは後でパラシュートなしスカイダイビングをさせてあげるのです。
「どうしたのじゃ彩」
ミニキッチンから秀吉の声が聞こえます。
「ん?ちょっと虫がいたから動揺しちゃっただけよ」
「そうかの…ほれ、アイスコーってなんで下着一枚しかつけていないのじゃ!?」
「…昨日はもっとすごいこともしたじゃない」
「な、ななななななな」
結局、秀吉が何とか落ち着きを取り戻したのは十数分後でした。
その後は二人とも眠気が醒めなかったので、昼まで一緒に寝ることにしたのです。
さて、その後はというと…

「なあ彩。さっき僕が秀吉たちの部屋の方向から流れてきたって雄二に聞いたんだけど、何か知らない?」
「どうせ寝ぼけて廊下から海に落ちたんでしょ」
「だけど、体中が何かで殴打されたみたいに痛いんだけど」
「あんなところから落ちればそうなるんじゃないの」
「そうなのかなあ」
「死ななかっただけ運がいいと思いなさいよ」
覚えてたらパラシュートなしスカイダイビングだったんだから。

などと明久の記憶抹消を確認したり、

「で、さっきのってやっぱり」
「子供は10人くらいほしいわ」
「前から思ってたけど、あんたって結構思考ぶっ飛んでるわよね」
「…雨降って地固まるってやつかしらね」
「まあ、うまくいったならいいけど」
「これで私のめくるめく秀吉とのラブラブライフがスタートするわ」
「聞けよ」
優子が後ろで何か言うのを聞き流し、そのまま前にいた秀吉の腕に抱きつきます。
「ちょ、彩、人前でそういう…」
「いーじゃなーい…ねえ?」
「むぅ」
秀吉も完全に身を任すようになっている。
幸福なのです。
「あてられて頭痛くなりそうだわ」
「余韻みたいなものなので、明日くらいにはいつもどおりにソフトになっているので我慢して」
「はいはい…」

余韻でべたべたモード全快になってることで優子に呆れられたり等々、
秀吉といちゃついたり、秀吉と一緒にレジャーしたり近くの島に買い物に行ったりなどしてトロピカルバカンスを過ごしたのでした。



[15751] 小問 振り分け試験
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/10 23:32
問 以下の()に当てはまる人物名をフルネームで語句を入れなさい。
西暦1492年、アメリカ大陸を発見したのは()である。

姫路瑞希の答え
『クリストファー・コロンブス』

教師のコメント
正解です。卵の逸話でも有名な人物ですね。フルネームは知られていませんね。意地悪問題だったのですが、さすがです。



織部彩の答え
『Christophorus Columbus
あと、1492年の時点で、このイタ公はアメリカ「大陸」は発見してない』

教師のコメント
意地悪問題で意地悪しないでください。




文月学園に入学してから2回目の春がやってきました。
1年目の夏にうきうき秀吉陥落イベントが起きて、晴れて正式に付き合うことになりました。秀吉の両親が即効で結納の準備を進めていたのを秀吉だけが必死に止めてました。
秀吉は『これでわしが女扱いされることはなくなるじゃろう』とか言ってましたが、そうは問屋が卸ろしませんでした。
逆になぜか"秀吉は女の子"説が急激に広まっています。
私と付き合ったことで"恋する女の子は綺麗"理論でよけい女の子らしくなったのが原因でしょう。
そこまではいいのです。どうせ秀吉は性別:秀吉になると思ってましたから。
問題なのはそれに引きずられるように秀吉と付き合っている私=レズという認識が広まっていることです。
翔子の家に雄二撃墜準備のために結構頻繁に泊り込んでいたのもその噂に拍車をかけているみたいなのです。
実際のところ別に私がレズという噂が流れてもどーでもいいのですが、どこから聞きつけたのか子飼いのカトリック役員がわいてきてうざいのです。
お前ら正月に門松飾ってお寺に初詣してバレンタインとヤリスマス性夜(クリスマス)を祝う宗教観は何も言わないのに、何で同性愛はうるさいのですか。
え?筆頭株主が同性愛者なのはちょっと…?だから私は同性愛者では…って、悔い改めなさい?黙れって感じです。貴方たちの教義じゃ天国か地獄に行くはずが私はもう一度人生やってるのです。信用なんかでできるわきゃないのです。言わないですが。
『そもそも私はちゃんと男の子と付き合ってるわ』と言って写真を渡すと余計うるさくなります。うざいのです。
まあそんな感じで秀吉の性別があやふやになったり、雄二の寿命が縮まった以外は、小中学校を他の私立から併合する形で作ったので美波(妹)が入ってきたり、その影響で今年度から小学校高学年から召還戦争が始まったり、施設全体的に豪華になったり(D~Fクラス除く)、スポンサーの半分が米国(私)資本になったり、私の資産が倍に増えたり、姫路さんの料理(1種類のみ)が安全になったりとか言うどーでもいい差異があったりはするけど大体原作どおりに開始時期が来たわけです。
まあそして原作通り進んだということは。

ガタンッ
例のイベントが始まるわけなのです。
「試験途中での退席は『無得点』扱いとなりますが、それでいいですか?」
「そんな先生、具合が悪くなって退席するだけでそれは酷いじゃないですか!!」





「体調を管理するのも、試験のうちです」
「だけど!」
表情を崩さずに言う高橋女史に明久は食ってかかる。
さて、
「禅問答をして暇があったら瑞希を保健室に運ぶべきでしょう」
介入しますか。
「彩!」
「織部さん。試験中には立ち歩かないでください」
「クラスメイトが倒れたんですから許容してください。ところで、それはルールなんですね?」
高橋女史に確認する。
「はい、そうです。途中退席は無得点となります」
「ということよ明久。ルールはルールなんだから、先生の一存でそれを曲げることはできないわ」
「流石は織部さん、物分りがいいですね」
「でも」
「瑞希の容態が第一でしょう。それ以外は後」
「…っ」
「なので私は試験をボイコットして瑞希を保健室に運んできますね」
「なっ!?」
高橋女史の顔色が変わりました。
「ちょっ、彩!?」
「明久はちゃんと残りの問題を解く。異論は認めないわ」
「でも…」
「戻りなさい。早く私は瑞希を保健室で休ませたいの」
その一言で明久は黙る。
「…わかったよ、姫路さんをよろしく」
「はいはい」
「じゃあ先生、瑞希を保健室に連れて行きます」
「ま、待ちなさい織部さん!」
珍しく高橋女史の声が少し上ずっています。
一刻も早く保健室で瑞希を休ませる事を優先していた私は、それを一切無視して、教室を出て行きました。





瑞希が大丈夫というので、何かあったら私のケータイに連絡するように伝え、私は保健室を後にします。
そしてその足で学園長室に向かいました。
「こーんにちわーお茶たかりに来たわよー」
「ちょっと成金娘。今は振り分け試験中だよ」
「あ、ボイコットしてきたのです」
「なにやってんだいアンタは!」
カヲルちゃんお顔が結構ゆがむ。
「怒鳴ることないじゃないー」
「学園のメインスポンサーがFクラス配属だと都合が悪いのはあんただってわかってるだろう」
「まあねーでも瑞希を保健室にはこばなきゃならなかったのですよ。今日まで知らなかったけど途中退室は理由にかかわらず失格なんですね。あれはないのですよー」
「要は制度に不満があったからボイコットしたってわけかい」
「そゆこと」
「それなら後で言ってくれたらいいじゃないかい」
「ついカッとなってやった。反省はしていない」
「しろよ!まったくアンタはいつもいつもテストのたびに好き勝手してまったく」
「とにかく、大学センターとかでも場合により体調不良等の追試は受け付けてるし、ちょっと一切途中退席は認めないってのを今後も続けると、平等主義者どものいい的なのです。まあ今回は本人が納得すればいいから、次からは途中退席者への追試も盛り込んでくださいね」
「わかったよ。まったく、彩にはかなわないねえ」
「シリコンバレーの妖精の名は伊達じゃないわよ」
「お前ならいまここの教師にもなれたろうに」
「天才はごめんなのです。青春は大いにバカをやり、大いに暴れ、大いに遊ぶものなのです」
「この学園の方針に真っ向から抵抗してるねえ」
「そんなことはないわ。バカをやるには最高な環境よ」
「時々、お前を巻き込んだことを後悔するよ」
「それは百数十億に値する価値かしら?」
「まったく、忌々しい娘さね」
「年で人を判断していると足元をすくわれますよ?さーてこれで今年も秀吉と同じクラスー♪どうせあの子勉強さっぱりだし」
「アンタはじめからそれが目的だね!?」
「気づくのが遅いのです。私に途中退席の大義名分を与える隙を制度に残してたカヲルちゃんがわるいのですよー」
「こ、この成金娘が!」
「ほめ言葉と受け取っておくのですー」
全く。かかわりすぎたせいで面倒な手順を踏む羽目になったのです。












=======
かなり短めですが原作開始前プロローグということで。




[15751] 第6問 ピクシー
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:52
1学期初日の朝、いつもなら秀吉のベットでやわらかい秀吉の体を抱き枕に堪能しているはずなのに、私はリムジンタクシーの中でうつらうつらと舟を漕いでいます。
時差ぼけで眠気が晴れない頭を放置して、わずかな仮眠をとっているというわけです。
何故時差ぼけになってるかといいますと、所用で1週間ほど前から2日ほどの予定で渡米してたからでして、用が終わって帰国しようとしたところで向日葵女どもの騒動に巻き込まれた挙句に連れまわされてひどい目にあってついさっきまで帰国が遅れていたからなのです。
まったく、映画館系ならそうとあらかじめ言ってくれれば、秀吉を連れて行ったというのに…。
滞在は期間にしてみれば一週間ほどでしたが、その間秀吉に会えなかったせいで私の秀吉分はとうの昔に枯渇しており、精神的に限界に達しています。
「あぁ…早く秀吉に会いたいのです」
「そろそろ着きますよ」
運転手のおじさんが声をかけてくれます。
「んー…ようやく…」
意識をゆっくり引き上げながら、私は今日は思い切り秀吉に甘えようと決めたのでした。
そういえば、ほかにもイベントがあった気がしますが…まあいいでしょう。





「織部!遅刻だぞ!」
「時差ぼけの頭に大声を出さないでください…一応学園の用事でもあったんですから」
ついでに小中学校の新制服デザインを依頼してきたので嘘ではありません。
「む、そうだったのか。ならしかたがないな」
この一年で鉄人も私という人間がわかってきたのか、学園にかかわる仕事で遅れた場合はすぐに矛を収めてくれるようになりました。
それ以外ではあんまり対応変わりませんが。
初めての召喚の時といい割と融通は聞く先生のようです。バカと不良には厳しいだけで。
「ほら、もうHRがはじめってるからさっさといけ。一応これがクラスわけの紙だ」
「わかりました。さて…Fクラスですね」
鉄人から封筒を受け取って中の紙を見ると、達筆な字でFと一文字書いてありました。
裏にカヲルちゃん直筆と見られる愚痴っぽいものが書いてありましたが見なかったことにします。
どうせ学園長室に行けば同じように愚痴られるんですから。
「姫路を保健室に運んだのについて文句を言うつもりはない。だがお前、はじめからFクラスに行くつもりだったそうじゃないか」
「えぇ、秀吉もFクラスになるでしょうし」
「その木下の成績をもう少し上げようとは思わなかったのか」
「思わないですね。それに、無理です」
まあ本当ならば秀吉をAないしBクラスレベルに上げておきたかったのですが、あの芝居バカは演劇に脳みそのウエイトが傾きすぎていて無駄でした。
…秀吉は演劇の才能が飛びぬけてるので、そちらを伸ばしたほうがいいのです。
人には得手不得手があるのです。
「お前というやつは…」
「基本的には優等生なのですから細かいことは言わないでください」
「それがなければ非の打ちどころがないんだがなおまえは」
「ほめ言葉と受け取っておきます」
鉄人はとても苦い顔をしていたのですが、私はそれに対して満面の笑みで答えてあげました。
秀吉がいればどこでも天国なのですよ。それにあそこは実は一番…まあいいのです。
ノリノリな気分でFクラスへと足取りを進めます。
その途中で、あんまりにも眠かったので今年度の予算報告書を確認します。
…あのババアちょっとやりすぎなのです。そういえば終業式の帰りにちょーっと周りが更地になってるなーと思ったら、今の敷地の5倍強を買い占めてやがったのです。小中学校を移転するにしても余りすぎです。面倒なので予算まわりの事を無視している間に何をやらかしてるんですかあのババア。
というか、校舎からして設備が豪華になってます。下手したらそれなりの私立大よりも豪華じゃないですか。
あのババアはこの学園をプチ学習院にでもするつもりですか?
「…やっぱり研究者に無制限に金をあげてはいけませんね。来年からはもうちょっと予算を締め上げましょう」
それ以前にこんなものをホイホイ通して評議会機能してないじゃないですか。
ウチから派遣してるのを総とっかえしましょうか。
そうしましょう。
さて、そんなことを考えているうちにFクラス前まで来たのです。
「ぼろいですねー」
ありのままの感想を述べてそのまま
「おはよーみんなよろしくー」
「早く座れ、この蛆虫野郎」
元気よく挨拶して入った途端、雄二の罵声が返ってきました。
「って、彩」
雄二?それはあと10分ほど後に言う言葉ですよ?
私を蛆虫呼ばわりとはいい度胸なのです。
「今日はいい天気ですね」
「あ、あぁ…そそそそうだなななな」
笑みを崩さず言う私に対して雄二はすでに真っ青になっています。
「蛆虫にとっていい日差しは干からびてしまうので毒なの。蛆虫な私は、干からびてよろめいてしまったので、何故か持っている坂本雄二の実印を押した婚姻届をAクラスに向かって飛ばしてしまいそう」
「俺が悪かった!このとおりだからそれを渡してくれ!頼む!後生だ!」
満面の笑みを浮かべる私に畳に頭をこすり付けて土下座をする雄二。
何で持っているんだとか愚かなことを聞かない分、成長していますね。
「わかればよろしい」
「恩に着るっ!」
「まあ寿命があと2~3週延びただけだけどね」
「何だそれは!?俺は2~3週後にどうなるんだ!?」
「ご祝儀は奮発するわ」
「奮発しなくていいから助けてくれげふう!!」
身から出た錆と思ってあきらめるのです。
そして足に縋ってくる雄二をケータイカメラで写真に収めた後、教室に入り、
「ぬ、おぉ彩遅かっ「秀吉ー!!!」に゙ゃっ!?」
秀吉が視界に入った瞬間に秀吉に向かってダイブします。
「!?!?!?」
途端に教室がざわめきます。
「秀吉ーおはー」
「なぜ速攻で抱きついてくるのじゃ!?!」
「1週間も秀吉分を摂取してなかったのよ?もうすぐで死んじゃうところだったわ」
「また主はそのような戯言を…」
それにしても予定通り秀吉がFクラスでよかったのです。
「はぁーやっぱり朝には秀吉分を補給しないときついわー」
「お、おぬしは全く…なるべく人のいないところでというておろうに…」
「ひでよしぃーなでてーだきしめてー」
呆れ顔で言う秀吉ですが、絶賛秀吉分補給中の私の耳には届きません。
今の私は、まてをされた後にご主人に3時間ほど放置された後によしといわれたワンコ状態なのです。
しっぽがあったらものすごい勢いで振られている事でしょう。
「おい、あれって織部…だよな」
「なんでFクラスなんかにいるんだ?」
「ばっかお前聞くまでもないだろ?"あの"織部だぞ?」
「彩たんに足蹴にされたい」
「まさか本当に秀吉を追いかけてFクラスに来るとは」
「俺、今日ほどバカでよかったと思ったことは無い」
「奇遇だな、俺もだ…これから毎日木下と織部の百合を見られるんだぜ…」
私がここにいる疑問を浮かべたかと思うと勝手な解釈でクラスメイトたちは納得していきます。
さすがキングオブバカのFクラス。
違うベクトルでレベルが高いのです。
まあそんなことはどうでもいいのです。
今は秀吉分を補給するのです。うにー。
「じゃから主はいつまでわしに抱きついているんじゃ」
「…今回はハリウッドの俳優とかといろいろ仕事してきたからその話をしようと思ってたのに」
「詳しく話すのじゃ」
そうこうしているうちに最近は食料を補給するくらいで半ば放置しているせいで自堕落になっているために遅刻ぎりぎりになっていた明久が雄二に八つ当たりされて喧嘩になったりしましたが、主要のFクラス陣は全員原作どおりにFクラスになり、2年生としての生活が始まったのでした。





「―――背骨の関節に激しい痛みがああああああ!?」
HRの後、バカの明久が余計なことを言って美波にしばかれています。
「美波、だめじゃない」
「止めないで彩。こいつをいたぶることが私の生きがいなの」
「なにその歪んだ生きがい!?もっと別のを生きがいにしてよ!」
「そんなことをするならこれを使うといいのです」
そういって、ごとりとちゃぶ台に鉄製のL字型の道具をおきます
「ねえ彩?僕の見間違いじゃなければ拳銃に見えるんだけど」
「違いますよ。あ、ちょっと美波は離れてくださいね」
「あ、わかったわ」
何かを感じ取ったのか素直に関節固めを解く美波。

ダッ(明久がダッシュで出口に駆ける音)

カチッタンッ(拳銃っぽいものから何かが発射される音)

ベチッ(拳銃に電線でつながれた弾のようなものが明久の服にくっつく音)

ビリビリビリビリビリ(電流音)

「こう使うのよ」
「便利!」
「彩、それは何なのじゃ?」
「ロス市警で使われてる非殺傷スタンガン(遠距離型)」
「便利そうだな、それ」
「雄二!お前絶対僕の不幸を楽しんでるだろ」
「当たり前だろ」
「この外道!」
「でも私はやっぱり物理攻撃のほうがしっくりくるわ」
「そう?なら予定通りAクラスのある人にあげとこうかな」
「この外道!!」
さて、時間的にはそろそろ瑞希が、
「あ、あの遅れてすいません」
来るころと思ったときに来るとはタイミングがいいわね。
「ひ、姫路さん?」
「よ、吉井君!」
姫路さんの顔がぱっと輝いて明久のほうへと駆け寄ってきます。
そして明久の前できょとんと一言。
「それ、なんなんですか?」
「あ、これはね」
「スタンガンよ」
「あががががががががががががががががががががが」
「どう?」
「どうじゃないよ!今の僕全然悪くないよね!?」
「あ、木下君に彩ちゃん、それに雄二君に美波ちゃんも」
「ごめんね瑞希。学園長に文句言ってみたけどだめだったわ」
「いえ、私のせいで彩ちゃんまで巻き込んでしまって…」
「私は秀吉といる時間が減らなくて幸せよー」
「ぬ、ぬぅー…」
「そうですか、それはよか…こほっこほっ」
「大丈夫瑞希?」
「まだ体調よくないの?」
「えぇ、少し…」
「隙間風の入る教室、きのこさえ生えてるような畳、病み上がりにはいい環境じゃないよな」
「……」
あ、吉井が何かを考え始めました。





「さて、私と雄二をこんなところに呼んで、なんのつもりかしら?」
掃除後、私と雄二が明久に廊下に呼ばれる。
「僕は思うんだよ、学校っていうのは社会の縮図だろ?こんな差別のようなクラス格差が――」
「もしかして私に喧嘩売ってる?グラム単位で買うわよ」
「彩は学園長側の人間だぞ?有名だろうが」
このバカ私が学校側ってことを完全に忘れてますね?
「え?いやその…」
「それに、社会の縮図っていうならば成果で生活が変わるのは当たり前でしょう?明久が遊んでいる時に、Aクラスの人たちは勉強してたのよ?」
まあ、効率やスペッグとかの問題もありますけどね。
「まあ、学力が全てではないのは同意しますが」
言って、雄二ににやりと笑いかけます。
「彩の意見に賛成だな」
雄二は雄二で思うところがあったようで、それに答えてくれました。
「じゃあ決まりね」
「えっと、その?」
明久は、理解できないようで、きょとんとしてます。
「つまりだな」
「「瑞希(姫路)のために教室の設備を改善したいならそういいなさい(いえ)」」
「恥ずかしいから遠まわしに言ったのに何で直球に言い直すんだよ!」
「うるさいバカ。私は早く秀吉とのまったりタイムを楽しみたいのです。明久が回りくどく言うとややこしくなるだけなのです」
いらいらしているためか、口調が地に近くなってしまいます。
「まあ、私もストレスがマッハで解消先を探してたので、ちょうどよかったのです」
「俺も、世の中学力が全てじゃないと証明したかったしな」
「えっと、つまり?」
「仕掛けてみようじゃない?ねえ雄二?」
「あぁ、そうだな」
「――試験召喚戦争を」





「はーいちゅうもーく。クラス代表の坂本雄二と私から通達があるわよー」
「…FクラスはAクラスを打倒すべく『試験召喚戦争』を起こそうと思う」
雄二が言ったと単にクラスがざわめきだす。
「ちょ、ちょっと待てよ!FクラスがAクラスに勝てるわけがないじゃないか」
「そ、そうだそうだ!須川の言うとおりだ!」
「俺たちは、わざわざ負ける戦争なんかしたくねえぞ」
だれかの声を皮切りに次々にクラスメイトから反対の意見が出る。
だけど、
「残念だけど、これは提案じゃなくて通達よ。決定事項」
「「「「なっ」」」」
私はここで民主主義ごっことかをする気はないのです。
民主主義ちからこそせいぎを実行する気はありますが。
バカは蹴り飛ばしながら使うのが一番効率がいいし、本人も幸せなのです。
「この中で、今すぐシベリア送りになりたいやつは前に出なさい」
「横暴だぞ!」
「クラス代表でもないのに何でそんな権限が」
「彩たんにならば足蹴にさてもいい!」
バカは一度教育しなおしたほうがいいですね。
そう思った私は、ケータイを手に取ります。
「……あーもしもし、えぇ私よ。ちょっと20人ほどそっちに送りたいんだけど、えぇ、えぇ教官はあの新入りのマッチョ黒人でいいわよ。え?送り込むのは男か女かって?全員男だけど…貞操?大丈夫よ。どうせ1ヵ月後には立派なゲイになってるんでしょ?浣腸くらいは持たせていくから安心して。うん、うん。そうそう、じゃあとりあえずは…」
「「「「勘弁してください彩様」」」」
文句を言った男子全員が土下座をしました。
「わかればよろしい」
「彩、とばしすぎだ」
「ごめんなさいね、まだ秀吉分が不足しててカリカリしてるの」
「じゃあ後は俺に任せろ」
…せっかく赤軍式で行こうと思ったのに。
「りょーかい」
「さて、お前ら。お前らはこの設備に文句はないのか?」
「大有りじゃああああああ!!」
クラス中からけたたましい魂の声が上がります。
「だが、試召戦争に勝利さえすればAクラスの豪華な設備を手に入れる事だってできる!」
「!」
「それに俺たちは学園の最下層だ!つまりこれ以上失うものはないということだ!」
「!!!」
「その上、勝算だってある」
「あの姫路が、このクラスにはいる!」
「おぉ!?」
「それにこのクラスの中で織部彩という名前を聞いたことがないやつはいないだろう?さっき驚いてたくらいだからな。それにだ!明久」
「へ?何?」
「去年の学年主席は誰だと思う?」
「え?そりゃ…霧島さんでしょ?」
テストのたびに張り出される順位表ではそうなっているのです。
「違う」
「え?でも…」
「ところでお前らの中でピクシーを知らないやつはいるか?」
いや、いないでしょう。
「えっと、なにそれ?」
…明久。
「お前は…1年のころ、総合科目の学年順位で何回も見ただろう」
そう。ピクシーという名前は"何故か"たびたび去年の学年順位に出ていたのです。
「そして、そのピクシーだが、正体はこいつ、織部彩だ」
「何で知ってるのよ雄二」
「以前お前のテストを回収するときに見た」
そういえば雄二は去年私の目の前の席でした。
振り向くと、何故かクラスメイトは4人くらいのグループに分かれてこちらを向いています。
そして、
「な、なんだってー!!」
一斉にあの表情で驚愕した。
…うん、ちょっとこのクラスに入ったの後悔したのです。
「つまり、こいつは本来、今の学年主席にダブルスコア差がつくくらいの学力…つまり点数を持っているということだ!」
「まあ極端に得て不得手がありますけどね」
「もちろん俺も全力を尽くす!そして、このクラスには、"あの"吉井明久もいる!」
「あの、"観察処分者"の吉井明久よ」
私が雄二の言葉を補足します。
クラスメイトは4人くらいのグループに分かれ
「それはもういいから」
「せっかくの僕の見せ場が!」
「私は早く帰って秀吉分の補給をしたいと何回言えばわかるのですか」
「後で補給するなら今抱きつかんでも良いと思うのじゃが」
「抱き心地がいいんだもん」
「と、とにかく!これだけの戦力がいれば、俺たちは十分勝利することが可能だ」
「ここまで条件がそろってるんだ!どうだ!やるきになったか!?」


『やってやろうじゃねえかーーーーーっ!』


雄二は結構人を扇動する能力がありそうですね。
「とはいっても、はじめからAクラスは確かにきついだろう、ということでまずは姫路と彩の点数補給のために、Eクラスとの戦争から始めようと思う」
「まあそんなわけで明久、宣戦布告よろしくね」
「え?僕が行くの!?でも、上位クラスへの宣戦布告の使者ってひどい目にあうよね?」
「大丈夫。私を信じなさい」
「でも」
「信用できないならば、明久が持っているエロ本全てを玲姉に送るわ」
「今すぐ行ってくる!」
さて、そんな感じで、試験召喚戦争への賽は投げられたのでした。







[15751] 第7問 前哨戦
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/06 14:56
「騙されたあああああ!!!」
遠くで聞こえる明久の悲鳴を軽く流して私は秀吉と廊下を歩く。
「ぬ、今明久の悲痛な声が聞こえた気がするのじゃが…」
「どうせ、Eクラスにボコられたんでしょ。予定の内よ」
「主、結構明久には厳しいのう」
「しかし、彩よ。ハリウッドに行くというなら何故わしを連れていかなんだ」
秀吉が頬を膨らませて私を睨みます。
何ですか?萌殺す気ですか?
「向日葵女たちに言ってよ」
「じゃか…」
「私だって映画会社に結構関わると分かってたら秀吉と一緒に行ってたわよ。今回は2日だけと思ってたから秀吉と一緒に行かなかったのに」
「ぬう…」
「どうせあいつ達はクランクアップまであそこでどたばたコメディやってるだろうから、また夏休みにでも行きましょ?」
「そうじゃの」
「ね?」
「では、わしは部活に行くゆえ、また後での」
「今回はいっぱいお土産話があるから、楽しみにしててね」
週末ではありませんが、今日の夜は存分に秀吉分を補充できるのです。
「わかったのじゃ」
そう言って、秀吉は部室の方向へと歩いていきました。





そして私は、
「今年の2年は1学期早々に試召戦争をおっぱじめようってのかい」
学園長室で楽しくもないいつものミーティングです。
だるいです。
「元気がいいですねえ」
「あんたのクラスだろうが成金娘が」
「確かに賛成はしましたが、私の発案じゃないのですよ?」
「どうだかねえ。私は嬉々として扇動してるあんたが目に浮かぶんだけどねえ」
私をどんな人間と思ってるのですか。
「残念ですが、私は扇動者には向かないんですよ」
もっと適した人物がいましたしね。
「で?今年度の運動部系予算の削減ってのはどういう了見だい?」
そういってカヲルちゃんが私の渡した資料を机に放り投げます。
「予算があるからって土地買いあさって拡張しまくろうとしたり、やりすぎなのです。うちの一部役員がうるさくなってきてます」
うるさくしたのは私ですが。
「うへ、そうなのかい?」
「そろそろ文科省の役人から目をつけられそうなのですよ?なので、まず運動部系予算を削ることでやつらの目先を逸らすのです。どうせ体育館ブール運動場テニスコート新部室錬等々を作るときにまとめて買うんですから必要ないでしょう?」
「うーん…たしかにねえ」
「とりあえずこれがこちらで作った節約リストです。額にしたらたいした額じゃないですが、一応無駄は省いてるという姿勢はみせれます」
「…わかったよ。とりあえず顧問教師から通達させとくよ」
「あぁ、あと運動部施設建設の件は評議会通るまで公表は控えておいてくださいね。両方同時公表だと私側が何かと面倒なので」
「了解だよ。ったく、忌々しい」
「予算があるからって調子に乗りすぎたのが悪いのです」
そういい捨てて私は学園長室を後にします。
とりえずこれで少しは自重するでしょう。まあ元々は調子に乗って出資増やしまくったうちのバカどものせいですが。
…そしてこれで大体材料はそろったのです。


さて、明日からの試召戦争。
私と雄二は両方ともこの試召戦争に"勝つ"つもりで戦争開始を決断したのですが、私と雄二が同じ戦略で戦おうとしているのかと聞かれれば答えはNoです。
雄二には雄二のやり方があり、詰めさえ間違わなければ勝てる可能性はうんと高いでしょう。
しかし、戦争というのは一回では終わりません。
戦略家というものは次の戦争、次の次の戦争まで見越して計画を立てるべきなのです。
その上で道化が踊り狂ってくれればいうことはありません。
「もしもし、私だけど…えぇ初回だし、派手にやりましょう?」





カリカリカリカリカリカリカリカリ…
「………」
「………」
試召戦争が始まってから数十分。
私と瑞希はひたすらに数学の問題を解きまくっていた。
今回の戦いはひとつ上のクラスであるEクラス。
Eクラスはいわゆる体育会系クラス。
Fクラスとの学力の差はそんなにはありません。
まああんまり差はないといっても向こうさんの合計点数が上である以上、その上人数的にも私と瑞希の二人分がかけている分厳しいはず。
まあ多分後数分で防衛線が突破されるとか、そういうレベルでしょう。
「先生!回復試験!受けます」
…防衛線は突破されたみたいね。
「この試験の点数が、次に召還獣を召還したときの点数になります。今より低い点数をとった場合、召還獣が弱くなる可能性もあります。それでもいいですか?」
「あ、美波。受けなくても大丈夫よ?」
「へ、どういうこと」
「織部さん。試験中の私語は…」
ピピピッピピピッピピピッ
高橋女史の声をさえぎるように私たちの試験時間の終了アラームが鳴る。
「ね?」
「えーと、つまり?」
「――主戦力が参戦するわよ」
そういうと私はボールペンを机に放り投げた。


……

瑞希の足は結構速いのですね。
全速力で走る瑞希を必死に追いかける。
この体の欠点のひとつに、絶望的に体力がないというのがあります。
頭脳特化型なのでしょう。
あと…
「遅いわよ彩!早く行かないと間に合わなくなるわ!」
息をまったく乱さずに美波が言ってきます。
あなたと違って私は胸に重りがついてるせいで走りにくいのですよ。
怖いから言いませんが。
瑞希はあの胸の重りを上下に暴れさせながら全速力ですが、多分あれは愛の力なのです。
そんなことを思いながら息を切らせているうちにFクラスが見えてきました。
ちょうど瑞希がクラスに入って、
「Eクラス代表中林宏美、坂本雄二に――」
「待ってください!」
ぎりぎり間に合ったというところでしょうか。
「姫路瑞希、いきます!」
宣言して瑞希が自分の召喚獣を出す。
デフォルメされた瑞希の召喚獣の頭上には412点という点数。
結構いきましたねー。
「うへー…」
そして大きな剣を一振りしたかと思うと、Eクラスの召喚獣たちが一気になぎ倒されていった。
「何だあの点数は!?」
「何であんな生徒がFクラスに!?」
あ、これ前に明久の家のゲームとかで見ました。
ロボになった本多とか股から大砲出す濃姫とかが暴れるやつです。
すごいチートですねえ。私が言えた事ではないですけど。
「あー、一応私もいますよー」
「なっ!?あ、あなたは織部彩!!」
出番はなさそうですけどね。
「Fクラスにそんな人がいるなんて聞いてないわよ!?」
言ってませんしね。
「そ、そんな、そんな…」
「じゃあ…ごめんなさい!!」
驚愕する中林さんに瑞希の召還獣が遅いかかる。



『Fクラス   姫路瑞希    VS   Eクラス   中林宏美
 数学     412点    VS          89点』



まさに圧倒的。
瑞希の召喚獣の攻撃の前に、Eクラス代表の召還獣はあっけなく倒されました。
「まあ、順当に勝利できたみたいね」
「やったあ!これでEクラスの設備と交換できるんだね!ちょっとだけど、設備がよくなるよ!」
単純に喜ぶ明久
「いや、Eクラスとの設備は交換しない」
「まあ、当然ですね。どう?Eクラス代表さん?」
「そんな…どうして?」
「えぇ!?どうしてだよ雄二」
明久が食って掛かります。…だからアンタはバカなのですよ明久。
「言い?明久。私たちの狙いはAクラスの設備。ここでEクラスと交換しても意味がないでしょう?ぶっちゃけた話、Eクラスとの戦闘は私と瑞希が点を回復できただけでもおつりが来るのよ」
「それに、ここでEクラスと設備を交換すると、これ以上設備の質を落としたくないってやつらが出てくるだろ」
「そ、そういうことなんだ」
「まあ、そのほかにもひとつ聞いてほしいことがあるけどな」
「設備のランクが落ちないならば何でもいいわ」
点の補充のためだけに使われたEクラスの代表さんはすでにどうにでもなれといった表情だ。
「じゃあ――」
「あ、雄二。別に提案しなくていいと思うわよ?」
「…?どういうことだ彩」
「私は私で、いろいろとやってたからね」
そういって雄二に笑う。少し雄二が苦い顔をしました。多分彼の計画は途中まで台無しになるでしょう。
「大変だ!BクラスがDクラスに宣戦布告して、その直後にCクラスがDクラスと同盟を結んでBクラスに宣戦布告した!!」
「おい彩、お前何をした」
…さて、ここで私がやったことを羅列してみようと思います。


今朝の段階で、私は以下のようなことをしてみました。




1.Cクラス代表小山にBクラス代表根本がバレー部の予算を削減したという情報をリークする。


2.根本にDクラスがFクラスと組んでBクラスに宣戦布告をしようとしているという情報をリークする。


3.Dクラス代表に美波が根本に関節技をかけている写真(合成)をムッツリ商会経由でリークする。某G□o□l□社に頼んだら一晩でやってくれました。流石世界の頭脳が集まる会社。


4.霧島翔子に雄二が女子生徒の足にすがり付いている画像を渡す。



その結果、Dクラス代表は昼休みに根本を暗殺しようとし、それで噂を事実と確信した根本がDクラスに宣戦布告をし、それに反発したCクラスがDクラスと同盟を結んでBクラスに宣戦布告をしたというわけです。まあ全部8割くらい事実なので当事者たちは完全に引っかかってしまったわけなのですよ。
ただしここでそれを言うわけにもいかないので、
「乙女には秘密がいっぱいなのです」
言葉は濁しますが。
「お前は…いや、言っても仕方がないな…」
「だけど、雄二の計画は特に変更の必要はありませんよ」
なぜならば…。
「そんなわけ――」
「決着はついた?」
雄二の抗議をふすまの開く音がさえぎる。
「どうしたの秀吉?女子生徒の格好なんかして…そうか!やっと本当の自分に目覚めたんだね?」
「わしはこっちなのじゃが…」
「あれ?秀吉が二人?」
「そっちは秀吉と私の姉の優子よ。明久だって去年面識あるでしょう?」
「え?え?そうだっけ?」
「で、優子。用件は」
「私は、Aクラスから来た大使、木下優子。我々はFクラスに対して宣戦布告をします」
何故ならば、私は単にAクラスとの対戦のためにショートカットをしただけなのだから。





さて、Aクラスに予定通り(主に私が扇動したことで)宣戦布告された翌日。
私たちFクラスの面々は、交渉のためにAクラスの教室へとやってきています。
「しかし、ほんとにお金かけてますねー」
「あ、やっぱり彩でもそうおもうのかの?」
「まあねー、ざっと装飾関係で数千万円はかかってるんじゃないかしら」
「す、すごいわね…あ、見て吉井!フリードリンクにお菓子が食べ放題よ!」
「ふっ、そんなのに驚いていたら足元を見られるよ?」
「ことごとく発言と行動が伴わぬのう」
「まったくね」
とりあえず、さもしいのでそのポケットいっぱいに詰め込んだお菓子を何とかしなさい。
私がちょっと目を離した隙にあんたの食生活はどうなっているのですか。
「しかし、本当によいものを使っておるのう…」
「私が選んだのだから当然じゃなーい。うにー」
「じゃから人前で抱きつくなというておろうに!!」
どうせ今は向こうさんは交渉中なのだからいいではないですかー。
あ、秀吉分をとても補給したい気分になってきたのです。
「あら、Aクラスの教室に何の用かしら?もう降伏しに来たの?」
「もうすぐ俺たちの施設になるんだからな、下見にな」
「ずいぶんと強気じゃない」
「交渉しに来た」
ほら、私がいなくても勝手に交渉は進んでいくのですよー。
私の予想通り雄二は優子を手玉に取りながら、途中で入ってきた翔子との交渉の末、負けたほうが何でも1つ言うことを聞くという条件で、5対5の一騎打ち・科目選択権はこちらという対戦条件ひきだしたのでした。



[15751] 第8問 詰んだ?(主に雄二が)
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:55
そして昼休み。
いつものごとくお昼ご飯を食べ終わった私たちは、まったりとお菓子を食べながらすごしています。
「どうすんだよ雄二。あんな約束して」
「俺たちが勝つんだから問題ない。向こうが言いなりになる特典がついただけだ」
「本当に良いのか?あの霧島翔子という代表には妙なうわさがあるようじゃが」
「うわさって?」
「成績優秀才色兼備。あれだけの美人なのに周りには男子がおらんという話じゃ」
「へぇ、でもそれって、秀吉や彩と同じじゃない?」
そう言って私たちに同意を求める明久。
「わしは男じゃ!」
「私は秀吉と付き合ってるでしょう」
「いやー、二人だとなんかレズっぽいというか何というか」
「失礼なことをいう奴じゃの」
「そうよ!秀吉はベットの上ではすごいんだから!」
「何を言うんじゃ彩!?」
健全な男女の付き合いになんと言うことを。
「……!!(ぶしゃあ!!!!)」
「あぁムッツリーニ!しっかりしろ、ムッツリーニ!ムッツリーニ!!!」
ムッツリーニがまた大量出血しています。
どうせ夜のあんなことやこんなことを想像したのでしょう。
実際はムッツリーニの妄想よりすごいことをしてる自信がありますが。
「こほん!と、とにかく。噂では男子に興味がないらしい」
「男子に興味がない?…まさか!霧島さんの目的って!」
「「いやいやねーよ」」
私と雄二の声がはもる。
「…ある。そんな子、身近にいる」
そしてそれを即効で否定する美波。
あ、そういえば美波って、
「お姉さまあ!」
「きゃあ!?」
レズの子に好かれてたんだっけ。
あ、明久たち呆然としてる。
あ、秀吉ちょっと頬が朱色になってて可愛い。
「な、何故にじり寄ってくるのじゃ彩!?」
「いやねえ私と貴方の仲じゃない」
「いや、ほ、ほら!わしとの間にはいろいろと、性別とか!」
「男と女じゃだめなのかしら!?やっぱりあなた…」
前から思ってましたが、秀吉は答えに窮するとたまに錯乱することがあるのです。
「男の子同士のほうが、やっぱりいいのかしら?」
「いや!まったく問題ない!わしは彩一筋じゃ!!…なの、じゃが…そのー…今抱きつくのはやめてほしいのじゃ…」
「付き合ってるんだしいいじゃない♪」
「じゃからいつも人前ではそんなにくっつくなといっておろ!?あ、明久、助け――」
言いながら秀吉は明久に助けを求める。
「あ、あの子は?」
「2年D組、清水美春」
…そういえば原作では確か平賀君とか言う男子がクラス代表だったと思うのですが…なぜか清水さんが今はクラス代表になっているのです。
まあ、あんまり影響がない…というより、扱いやすくていいので私としては無問題なのですが。
「へーDクラス代表の」
「あ、明久!見捨ておったな!?」
哀れ秀吉は見捨てられた。
清水さんの話をしているものの明久は完全に私たちに釘付けだし、ムッツリーニは交互に私たちと美波たちを撮るのに忙しいようです。
どうせ眼福とでも思ってるのでしょう。
まあ私は一向に構いませんが。
「ちょ、ちょっとた、助けてー!」
「まあ冗談はこれくらいにして」
「た、助かったのじゃ…」
とりあえず一通り昼の秀吉分補給はできたので離れます。
それにしても、ふぅ…久々にお昼に秀吉分が満腹なのです。
少し物足りない気もしますが…
「まあお楽しみは晩までとっておいたほうがいいしね」
「わしは晩にどうなるのじゃ!?」
「スイート」
今日はちょっと大いに燃えたい気分なのです。
「ま、待つのじゃ、それ以上は出ない。出ないのじゃ!!」
「おい、お前ら普段どんな夜をすごしてるんだ?」
なにかトラウマみたいなものを思い出したのか、発狂する秀吉を見て雄二が言います。
どうといわれましても…。
「数ヵ月後に雄二が経験する程度の夜としか」
場合によっては明日ですが。
「俺は数ヵ月後に『スイート』と言われただけで発狂するような夜を過ごす事になるのか!?」
えぇ、まあ確実に。
私もそのために最大限の協力をしましたし。
「な、何だその顔は!?その『何でそんな当たり前のことを聞き返すの』って顔はやめてくれ!!」
「そこまで分かってるなら復唱しなくてもいいと思うんだけど?」
「…あの、翔子ちゃんがFクラスに宣戦布告したのって…」
「あ、瑞希はやっぱり分かるわよね」
私と同じく、翔子と仲がよい瑞希は気づいているようです。
「無理じゃ無理じゃ勘弁してほしいのじゃそれ以上は……」
「俺はまだ人生を終わりたくない死にたくない俺はまだ人生を終わりたくない死にたくない俺はまだ人生を終わりたくない死にたくない俺はまだ人生を終わりたくない死にたくない…」
そんなことを思いながら隅っこでガタガタ震えている何かを無視して美波たちがどうなったのかを見ます。


「ウチの事愛してるって言いなさい!!!」
「い、いいま…「させませんわ」うぼあああ!?」
「い・い・な・さ・い」
「アッーーー!!」
愉快なことになってました。
まあ多少意味は違いますが、両手に花でよかったんじゃないかしら明久。
その花に腕と足の関節を決められてますけど。





さて、Aクラスの対決ですが、私にとっては本戦ではないので勝っても負けてもどちらでもいいのですが、どうしましょうか。
5対5ということなので、私、瑞希、ムッツリーニで確実に3勝できるのです。
瑞希に久保君あたりをぶつけられると若干厳しいかもしれませんが。
そんなことを考えていた私ですが、実際のところ予定とは外部のイレギュラーによって狂うものなのです。
そしてつい数日前に、私はそれによって大いに予定を狂わされたことを忘れていました。



Aクラスとの対決の日。
「…あ、あの向日葵どもめ…次あったらシバくわ…絶対…」
はい、また向日葵どもに巻き込まれました。
今度は下校途中に。
まだ昨日に回復試験を受けていたからよかったものの、受けれていなかったらブチ切れるところでした。いくら女性ばかりの会社で親交がそこそこあるといっても、時と場合を考えてほしいのです。
あなたたちなんで日本にいるんですか。映画撮影中でしょうが。
え?何?提携結んでるブランドの総帥が失踪した?そんなもんしらんのです。
あと、叔父さん。どうせあなたも巻き込まれてるんでしょうけど、ムカつくので後で殺しますから覚悟しておいてください。
具体的には叔父さんに惚れてるっぽいパリの向日葵女に叔父さんが昨日一緒にいた女性…ジュリア?でしたっけ…と仲良くしてるっぽく見える写真をメールしました。
大いにラブコメりやがれです。まあこれからもそんなトラブルがあの叔父さんには起こる気がしますが。
ついでに子飼いの役員全員に向日葵の本店に注文を投げさせたのです。
「過労死するが良いのです」
まあ、そんな感じで昨日の下校からまたあの向日葵どもに巻き込まれた私は、適当に奴らが必要にしてた人への紹介をして何とか開放され、学校に戻ってきたわけですが、


『日本史限定テスト
 Aクラス   霧島翔子   97点
         VS
 Fクラス   坂本雄二   53点』


なんとかたどり着いたときには全部終わってました。
…やっぱりあいつら殺す。秀吉の生ラウンドガール姿を見逃した!!!
「一枚500円…」
ムッツリーニが入り口でうなだれている私に提案してきました。
「…全部よこすのです」
「毎度ありー」
うぅ…せっかくの秀吉ラウンドガールが…あぅー…。


…あ、着せれば良いじゃない。





「ごめんなさいねー…またあの向日葵女どもに巻き込まれて…」
「まあ、彩はいろいろと仕方がないと思うし、気にせんでもよいとおもうのじゃ」
うなだれる私を秀吉が慰めてくれます。
「そうだよ彩。確かに美波みたいに自分の学力も分からないほどに頭蓋が絞られるううううううううううううう!!」
「アンタが一番役に立たなかったでしょうがっ!」
「割れる割れる割れる割れる割れるーー!?」
このバカには学習能力というものがないのでしょうか?
「し、死ぬかと思った…と、とにかくっ!雄二!何なんだよあの点数は!!」
「いかにも、俺の実力だ」
「お前が勝たないと何の意味もないじゃないかよっ!」
「いやぁ…あんな伏兵がいるとは思わなかった」
「まあまあ…」
「せっかくあと少しでAクラスの豪華な設備が出に入るところだったのに」
明久が地団太を踏んでいます。
「でも、AクラスとFクラスだとFクラスのほうがお金がかかってるのよ?」
なので、衝撃情報で怒りを和らげてあげましょう。私って優しいですね。
「んなわけないだろ!」
明久が突っ込んでくる。
「いや、本当よ?」
「そもそも設立からそれほど経ってないのにこんなに破損するわけないでしょう?」
「あの使用可能なギリギリレベルで破損した設備や無害なカビやきのこの作成等々並みの予算じゃ作れないのよ?」
「え!?あのカビとかきのことかってわざとなの?」
「産学連携で作ってるわ。医療関係でニュースにもなったわよ?ちなみにAクラスの
設備はせいぜい数億ほどだけど、このFクラスは」
「Fクラスは?」
「軽く250億くらいかかってるわ」
「マジで!?」
「ちなみに文科省のバイオ関連予算の1%を占めてたわ」
「んな馬鹿な!?」
「半分私が出してるけどね」
「お前のせいかああああああああ」
「この研究の成果で10年後には10万人の人々の命が救われる見込みよ」
「くっ!罵倒したいのにっなのにできない!!」
「大体不衛生な設備で生徒に健康被害が出たら大問題だし、小躍りしながら平等主義者どもが沸いてくるわよ。小額ながら政府資本も入ってるのよ?この学園。それと、さっきのは初期費用で、維持費はAクラスは年間千数百万ほど、Fクラスは――大体5億ほど」
「その予算を別の方面に使えよ!!」
「地方自治体のバイオ関連合計予算の1割くらいの規模かしら」
「この環境の維持は難しいのよ?」
ちなみにこの実験の成果物で国や企業から十数億の収入があるのは内緒です。
実はFクラスは学園によって(予算的に)超優良クラスなのです。
特許関連で私の子飼いもずいぶんとおいしい思いをしました。


まあ今はそんなことはどーでもいいのです。
「それにしても雄二、負けたってのに落ち着いてるわね?」
私はてっきり教室に戻った途端に取り乱しながら部屋の隅で死刑宣告を待ちながらガタガタ震えてると思ってましたが。
「あ?それはどういうことだ」
「あの後ちょっと翔子に頼まれてね。2つほど」
「さらばだ!」

ダッ(雄二がダッシュで出口に駆ける音)

カチッタンッ(スタンガンの発射音)

ベチッ(弾が雄二の服にくっつく音)

ビリビリビリビリビリ(電流音)

「それは死亡フラグよ雄二」
本能的にそうなるのは分かりますが。
「あ、彩…そのスタンガンは」
プスプスと頭から煙を上げて雄二が息も絶え絶えに聞いてくる。
「まだ渡してなかったからね。で、もうひとつが」

ガラッ

「雄二…」
「あ、翔子ちょうど良いところに」
もうひとつの翔子への贈り物を出そうとしたところで翔子が教室に入ってきました。
「雄二…約束…」
「すまないが…もう…少し…待ってくれないか」
「って言ってるけどどうする?」
「だめ、約束」
「い、いけないよ霧島さん!女どおしだなんあばばばばばばばばば」
明久、うっさいのです。
もうひとつのスタンガンで明久を沈黙させます。
「で、望みはなんだ」
「雄二、私と付き合って」
「…拒否権は?」
往生際が悪いですね雄二。
「ない。それと彩。約束のもの、もってきた?」
「もちろんよ。ほかならぬ翔子のたのみだしね。ひとつは雄二にくっついてるわ。で、もうひとつの」
「あ、彩!な、何だそれは!!」
「何って、如月ホテルのスイートルームのカードキーだけど?」
「今からホテルに行く」
「待て!いきなり手順をすっとばしあばばばばばばばばばばば!?」
言葉の途中で雄二が沈黙します。
そしてそのまま教室の外へと連れて行かれます。
「えーと、あれって?」
「去年から雄二を嵌めと翔子がうまいこと交際できるように外堀と内堀を全部埋めるのを協力してたからね」
雄二の両親から婚姻書類やら式場まですべて準備は完了しているのです。
ここで既成事実ができたら雄二の人生はもう決定という段階まできているのです。
「とにかく、雄二が不幸になったようで……僕は胸がすっとしたよ!」
「まあ明久ももうすぐ後を追いますよ」
「それはどういう…」
「じゃあアキ。クレープ食べに行こっか♪」
「へ!?それは週末って約束じゃ…」
主に金銭的に、ですが。
「週末は週末、今日は今日」
「そ、そんな!二度も奢らされたら今月の僕の食費が!?」
何故自分でやりくりしだした途端に食費レベルで困窮してるのですかあなたは。
「いえ、吉井君は私と映画に行くんです」
「それこそ初耳なんだけど!?」
「はい!今決めたんです」
とはいえ、ちょっとこれはかわいそうね。
「おーい明久」
「彩までなんだよ!?」
諭吉さんを明久を投げつける。
「うぇ!?こ、これは」
「私からの祝福よ。わかりやすく言うと私のポケットマネー」
「彩…」
明久が感極まったのか潤んだ目でこっちを見てきます。そんなに困窮していたのですか。
「二人とも、思いっきり明久に甘えてきなさい。お金に糸目はつけないわ」
まあ私があげたお小遣いよりも出費は増えるんですけどね。
「え、彩がそういうなら」
「はいっ!そうします!」
「ちょ、彩!?どういうこと?」
「がんばれ少年」
手を振りながら三人を見送ります。さてさて、どうなりますかね。





「…俺は知らない…何も知らない…」
「食費が…ぼくの…カロリーが…」
みかん箱に変わった机に雄二と明久が突っ伏しています。
二人とも完全に魂が抜けている感じです。
「昨日は楽しかったわねー」
「そうですね。とても素敵な時間でした」
そしてそれに反比例するかのように瑞希と美波は幸福度MAXといった感じになっています。
まあこれを放って見ているのもまあ楽しいので良いのですが、今はそういうわけにも行きません。
「ほら2人とも!そんなところで死んでないで!…Bクラスに宣戦布告されたんだから」
そう、Aクラスとの対戦の翌日である今日。登校したと思ったら、Bクラスから宣戦布告をされたのです。
「う…うぅ…そうだね、これ以上設備がぼろくなるのは…なんとしても避けないとね」
「まあ、そうだな…」
ぼろぼろな状態ながらも、何とか話に復帰する二人。
「しかも開始はHR後すぐじゃ。主力の学力が弱ってる状態ではかなり厳しいぞい」
「確かにな。でも…彩。全部お前の予定通りだろう?」
「まあAクラスの勝敗はともかく。Bクラスの宣戦までは予定通りよ」
「じゃあ、ここはお前が説明しろ」
「OK♪はーいみんなちゅうもーく」
言って、私は教壇にあがります。
「みんなも知ってのとおり、私たちFクラスはBクラスに宣戦布告されたわ。これについて、何か質問がある人はいるかしら?」
「はい」
「はい須川君」
「なんでBクラスは俺達に宣戦布告したんだ?BクラスだってCクラスとDクラスとの戦争で疲弊してるはずなのに」
「それを補ってなお勝てると踏んだんでしょう?昨日の対決でFクラスの主力は私を除いてほぼ壊滅状態なんだから」
「でも、BクラスはFクラスに勝ったって何も得るものなんか」
「…Bクラスの代表は根本って奴よ」
「あぁ、あのよくない噂をよく聞く奴か」
「目的のために手段は選ばないと言われておるの。『試合に勝つために一服盛る』じゃとか、『喧嘩で刃物を標準装備』じゃとか」
まあ、手段を選ばないってのは私も同じですが。彼はやり方が卑怯なのですよね。
「彼はFクラスを敗北寸前のところまで追い詰めたところで、私に対して何かを要求してくるとか、大体そんなところでしょうね。金銭を要求したら学校的に問題になるから、学校生活にかかわる物品の要求だとかそんなところかしらね」
「設備を人質にとって彩に要求するとは、なんと卑怯なんじゃ…」
秀吉が憤ってます。
嬉しいですね。
『でも、それなら別に俺達は戦わなくて良いんじゃないのか?彩が目的なんだし』
それと相反するようにクラスの誰かからそんな声が上がります。
いい根性してますね。
「クラスメイトを見捨てるとはいい度胸ね。…まあ私としてもウザイだけであんまり痛くないからいいけど」
『じゃあ――』
「ただ、やっぱりムカつくので今回本気を出さずに負けたら男子は全員ゴールデンウィークに『ドキッ!シベリアでガチムチマッチョメンと保健体育授業♪アッー!実技もあるよ♪』に放り込むわ。本気で」
『本気で戦います!マム!』
よろしい。
「正直な話、ここまでの各クラスの動きはすべて私の予想の範囲内よ!まさにここが正念場!必ず私が勝利に導いて見せるわ!そしてここで勝ったら――」
『勝ったら?』
「ゴールデンウィークにクラス全員で『常夏ほぼ貸切南国リゾート3泊4日』に招待するわ!あ、ちなみに同じ時期にジラソーレってイタリアのブランド会社の20代前半な若い女性社員のお姉さんたちも同じ時期に泊まる予定よ」


『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!』


"20代前半な若い女性社員のお姉さんたち"という単語を言った瞬間クラス中から雄たけびが上がりました。大事なことなので同じ時期を2回言った効果も抜群です。

『お前ら!ヴァルハラはすぐそこだ!Bクラスの連中なんざ嬲り殺しにしてやるぞ!!』
『俺はやるぜええええええ!この戦争に勝って南国リゾートで外人のお姉さんと甘いロマンスをすごすんじゃああああああああああ!!!!』
『織部が勝てるって言うなら間違いはねえええ!!南国じゃあああああああリゾートじゃあああああ!!!』
こいつらは本当に扱いやすくて便利なのです。
「それじゃあみんな!今作戦の最後の戦い!いくわよ!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
そして、最後の詰めであるBクラス戦が始まったのでした。




[15751] 第9問 卑怯と外道
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:55
「姫路は後発部隊として男子主力と待機、美波と明久は回復試験を受けてきて、それから男子10人と雄二と秀吉は私と渡り廊下でBクラス主力と激突するわ!」
「「「了解!」」」
私の指示で各自が走っていきます。
さて、いきますか。
「じゃあいくわよ!」
勢いよく宣言して教室を出ます。





「なあ、いいのか彩。教室を空にして」
「そうじゃな、相手はあの根本じゃ。何をしてくるか…」
「今回は短期決戦で済ませる気だから平気よ。それに部屋の施設を破損したら新しいものを私が買う大義名分ができるから良いじゃない。それに、相手もそれは承知のはずよ。たぶん私を主力で狙ってくる」
今のFクラスは実質私たちだけが主戦力といっても差し支えないから当然です。
「…つまり、お前の召喚獣に仕掛けがあるってわけだな?」
流石雄二。察しが良いですね。

「いたぞ!Fクラスだ!」

そうこういっている間にBクラスの主力がこちらへと突っ込んできました。
飛んで火にいる何とやらですね。
「そういうこと。学園長に頼んでそのままにした私の召還獣の実力。見せてあげるわ」
そういって、私はにやりと笑いました。
Bクラスは高橋女史を連れてきているようですね。好都合です。
「みんなは後ろで待機!高橋先生!Fクラス織部彩、政治経済での召喚を申し込みます!」
召喚可能範囲の広い高橋女史を連れてきたことで我々の壊滅科目をつく作戦だったのでしょうが、こちらが先に宣言してしまえばいいのです。
「くっ!代表から織部は警戒するように言われている!4人がかりでかかれ!」
「彩!」
「大丈夫よ!試獣召喚サモン
Fクラス相手に4人がかりとはいい度胸なのです。



『Fクラス 織部彩  VS Bクラス 金田一裕子&岩下律子&菊入真由美&野中長男
 政治経済 1558点 VS     175点&149点&155点&153点』



「なっ」
私を倒したいなら10人は連れてくるのです。
「何だその点数は!?桁が違うじゃないか!!」
「勝てるわけないじゃない!!」
「それにあのまがまがしいものを漂わせてる刀は何だよ!?」
いやー、自分でもこの刀の禍々しさには慣れません。
「流石彩じゃのう…」
Bクラスの驚愕と秀吉の感嘆の表情が心地いいのです。
「あのねー"成金"で有名な私にとって政治経済って科目は『あなたの名前をひらがなで書きなさい』とかいう問題を延々とやってるに等しいのよ?」
仮にも数千億単位の単位の資産規模を維持してるのです。嫌でもその分野には詳しくなりますよ。
消費性向と乗数効果の違いも分からないどこぞの無能大臣とは違うのです。
まあそんなことはどーでもいいのです。

「じゃあ、見せしめになってね♪」
そう言って私の召喚獣がBクラスに襲い掛かります。


ザシュッ――

……。


「ぎゃあああああああああああああああああああああ!?!?!?」

「いやああああああああああ!!!」

「い、痛い痛いよーーーーーー!!」

「何で!?腕が、腕が痛いよぅぅぅぅ!?」

そしてそれによって召還獣が消えるのと同時に召喚主のBクラス生徒から阿鼻叫喚の悲鳴が上がります。

「な、なあ…彩、もしかしてあれが…」
恐る恐る雄二が尋ねてきます。
「私の召還獣ってね。攻撃した相手の召喚獣のダメージが『その召喚獣の主』に返っていくみたいなのよ。しかも吉井よりも還元率は高いみたい」
「…絶対に彩の召喚獣は敵に回したくないのう」
「そうだな…」
後ろで雄二たちが震えています。便利だから良いではないですか。
それに秀吉は1年前の試召時に一回しばかれていながら何をいまさら…。

「な、何だあれは!?」
「次…誰が行くんだ?あの点数だと10人は行かないと…」
「わ、私は嫌よ!」
「そ、そうよ!女子をあんなのに突っ込ませる気!?男子が行きなさいよ!?」
「何でだよ!?試召戦争に男とか女とかは関係ないだろ!?」
「もう嫌だ!俺はこんなところにいられるか!俺は逃げるぞ!?」
ほら、Bクラスの"生き残り(攻撃を受けてない生徒)"も戦慄してるわけですし。
すごい勢いで後ろに前進しています。

「よ、よし!みんな、突撃だ!」
「お、おお!!」
何とか恐怖を振り払った雄二のFクラスのみんなが私を筆頭に突撃します。
そして、それに私の召喚獣もついていっています。






"私を無視して"。





あ、やば…。
「ちょっと雄二と秀吉!!」
「なんだ彩?」
「今すぐ私のほうに着なさい!全力で!!」
私の割と必死な私の声に雄二と秀吉は私のほうへと寄ってきます。
「早く私の召喚獣からなるべく離れて!!」
「え、なん―――」



「■■■■■■■■■ーーーーーーーーーーー!!!!!!」


雄二が私に問いかけてくるのと私の召喚獣が咆哮を上げるのは同時でした。


「な、なん…ちょ!?俺は味方だぞ!?」

「た、たすけーーアッーーーー!!!」

「い、いや!?こ、こないで!こな…くるなーーー!!いやああああああああああああああああ!?」

「いたいいいいいいいい!?痛い!?!?!?!?!?」

「俺の腕、俺の腕腕はどこだ!?」

「目が見えない!何がどうなってるんだ!?」

「聞こえない!何も聞こえない!?誰か何かいってくれよ!?」

「あー…やっぱり暴走した」
まるで本物の戦場のように阿鼻叫喚状態になる目の前では私の召還獣が敵味方関係なく妖刀で切り倒しています。
「彩!?あれは何じゃ!!何故、主の召還獣が味方を襲っておるのじゃ!?」
「いやー、私の召還獣ね。一気に何体も斬ると制御が利かなくなるのよー」
地球が滅亡しかける映画で、天才科学者が言っていた台詞があります。
『爆竹を手のひらで爆発させると手が少し火傷するだけだが、爆竹を握り締めて爆破させるとその手は二度とフォークを握れない』
懐に突っ込んで味方ごとふっとばす。非常に危険ですね。
たとえるならば、手榴弾みたいなものでしょうか。
「ど、どうするんじゃ!?このままだとこちらの主力も全滅じゃぞ!?」
「1分ほどほっとけば収まるわ」
「つまり1分くらいはそのまま、と言うわけだな」
「そうなるわね」
「火力はでかいが、えらく使い勝手が悪いのう」
「そうでもないわよ。『こっちくんな』とか何種類かの命令は受け付けてくれるし」
まあそれでも無差別に攻撃しまくるのは変わりませんが。
正直、得意科目以外ではあまり暴走させたくないですね。
「とにかく、向こうもダメージうけるので、味方が周りにいないところでは有効な武器よ」
雄二と秀吉は納得いかない顔ですが、利用できりゃいいのですよ。こういうものは。

そして1分後。

「さて、収まったみたいなので進みますか」
「なっ!?せ、先生!あれどう見てもおかしいじゃないですか!?いいんですかあれ!?」
「そうです!あの召還獣は危険です!」
Bクラス生徒(生き残り)が必死の抗議をします。
「観察処分者と効果は同じです。ルール上問題はありません」
ばっさりと言い捨てる高橋先生。流石です。
今度いい見合い相手を紹介してあげるのです。将来有望株ですよ?
「では、神様と私にお祈りを済ませた人から楽にしてあげるわ」
「に、逃げるぞ!!」
「あぁ!?」
蜘蛛の子を散らすようにBクラスの生徒が撤退していきます。
そりゃ自分に被害が返ってくると分かったらそうします。私だってそうします。
「わし、いつも彩が味方でよかったと思ってばかりじゃが、今日ほど強くそう思ったことはないぞい」
「奇遇だな、俺もだ」
「さあ、今が正念場よ!逃げるやつは適度に私が成敗するわ!逃げないやつも適度に私が成敗するわ!総員突撃!」
カリカリ進撃しますよ。





そうして、私は雄二たち主力を率いながらBクラスの教室へと乱入していきます。
後発部隊も合流し、私の召喚獣を虎にして狐たちがジリジリと進んでいきます。
非常にじれったくはありますが、私も虐殺という名の惨殺みたいな行為は避けたいのしかたがありません。
「彩!僕も参戦するよ!」
「明久!…あれ?美波は?」
「そういえば…まだ試験中なんじゃないかな?」
明久と一緒に受けてたはずですが…。
「まあ良いわ。このまま代表を殲滅するわよ!」
言いながら教室を進んでいきます。流石Bクラス。普通の高校の1錬1階分くらいの広さがあるのです。Aクラスには劣りますが。
そう思いながらBクラス生徒を(雄二たちが)なぎ倒しながら突破していきます。
「ふん、よくここここここまででで来たな」
戸棚の向こうから根本君らしき声が聞こえてきます。
「声が震えてるわよー。私の召喚獣の能力は予想外だったらしいわねー。今なら降伏を認めるわよ?」
「ふっ…。それはどうかな…?」
そう言って根本君が影から出てきます。
「…っ!?」
近衛部隊らしき数人を連れた彼の手にはなにやら手紙。
「あ、アキ…」
「美波…」
そして、彼の召還獣は美波の召還獣に刃先を突きつけた状態で出てきました。
「こいつとこの手紙がどうなってもいいのかな?」
「…っ」
瑞希の表情が曇ります。

「くっ!卑怯だぞ偽者の美波さんはともかく!その手紙を人質にするなんあががががががががががが」
スタンガンで明久を制裁します。
明久、美波がちょっとかわいそうなのですよ?
「どうせ『吉井が瑞希のパンツを見て鼻血をだした』とか何とか言っておびき出したんでしょ?」
「な、何故それが分かる!?」
「え!?あの美波本物なの!?」
「…そうよ。アンタのために捕まったんだから、少しは感謝しなさい」
「そ、そんな…美波…」
「な、なによ」
「そこまでして僕に止めを刺したいのか!?」
あぁめんどくさいなもう!
「少し黙りなさいこの朴念仁」
「うごあ!?腕が!?うでがああああああ!?」
明久の召喚獣を私の妖刀でちょっと傷つけて黙らせます。どうせ今回はもうそろそろ終わりそうなので多少明久の点数が減っても問題ありません。
「ところで根本君?あなたの望みは何かしら?」
「そうこなくちゃね。ゴールデンウィークにBクラス全員をグアムにでも招待してもらおうかな」
「ちなみに降伏するつもりは?」
「はっ、この状況でするわけがないだろう?」
「そうですか。それはよかったのです」
「何?」
「これで貴方の滑稽な姿が見られるのです。トロイ!」
相手の拒否を聞き届けた私は、"奥の手"である単語を発します。
そしてそれと同時に。
「根本、覚悟!!」
「なっ!?」


『Bクラス   吉田卓夫     VS   Bクラス   根本恭二
 数学     189点   VS          175点』


根本君の隣にいたBクラス生徒が根本君の召喚獣に襲い掛かりました。
まさか味方から攻撃を受けると思っていなかった根本君の召喚獣はそのまま倒されてしまいます。

「よ、吉田!?どういうことだこれは!?何故お前が攻撃する!?」
「それは、"トロイの木馬"だからよ」
「…俺は元Cクラスなんだ。で、召喚戦争が始まる前に織部に提案されてな。もし、負けそうになったときにお前が卑怯な手段を使った時、裏切れば次の学園祭の売り上げを渡す事を条件にクラス設備を交換することをしないってな」
「それであと少しで勝てるのをむざむざと捨てたのか!?」
「そういうわけでもないわよ?彼が裏切らなければ、私はこういってたと思うわ。『今すぐ根本君を斬らないと全員なぎ倒すわ、全力で』ってね」
「っ!!」
その言葉に根本君の周りにいたBクラス生徒が震え上がる。
そりゃ目の前であんな惨劇を見ていたら自分がその被害をこうむるのは御免でしょう。
脅しとしてどっちが強いかなど言うまでもないのです。
「つまり、どっちにしても貴方は詰んでたのよ」
「くっ」
ちなみに元々吉田君は後々私が子飼いにするために目をつけていた生徒なのです。
そしてA~Dクラスには各々そういう人がいたりします。
将来を約束する代わりにいろいろと教えてもらったり煽ったりとかをこっそりしてもらっているわけです。
ちなみに全員旧Cクラスです。旧Cクラスの人は結構(IQ的に)頭がいい人が多くて助かりました。
ただし、さすがに裏切り等は一回こっきりしか使えない手段です。
彼らとてクラスでの立場がありますし。
そして、何故私たちの勝利が確定してたBクラス戦にそれを使ったかというと…。

「貴方の策ははじめから全てお見通しだったと言うわけ。ねえ全て見透かされた上で私の手のひらで踊ったのってどんな気持ち?ねえどんな気持ち?」
「~~~~~!!!」

卑怯者を手のひらで躍らせて嵌められたと気づいたときの顔を見たかっただけだったりします。
そしてもうひとつ。
「あ、そうそう。慈悲深い私がBクラスのみんなに特別チャンス」
「?」
「Bクラス代表の根本君がこれを着てくれたら、Bクラス全員をゴールデンウィーク南国バカンスにご招待するわ」
もうひとつは、根本君の弱みを握っておくことです。
言いながら私はAクラス戦で秀吉が着ていたのと同じデザインの服を取り出します。
「ば、馬鹿言うな!何で俺がそんな服を」
『絶対着せるわ!』
『必ず!必ずやらせるわ!』
『それで南国バカンスを買えるなら安いものよ!』
根本君が抗議の声を上げますが、クラスメイトの即答にかき消されます。
…根本君、卑怯な手段ってのは信用を消費するから、自分の信用の範囲内でやるものなのですよ?
貴方はそれがちょっと足りなかったようですね。
「ねえ、彩。彩の目的って、はじめからこれだったの」
後ろで繰り広がられるドタバタをスルーして、明久が聞いてきます。
「そうよ。AクラスやBクラスの設備を実力が伴ってない段階のFクラスが手に入れても、すぐに奪還されちゃうでしょ?特に奇襲攻撃とかを受けたらひとたまりもないわ」
「じゃが、彩の召喚獣がおれば…」
「不得意科目で5人がかりくらいでこられたら私の召喚獣でもひとたまりもないわよ。さっきのは得意科目だからこそできたのよ」
「なるほどな。つまり、施設ではなくて金銭である必要があったと」
早くもほとんど分かったのか納得してくれる雄二。
頭の回転が速くて助かるのです。
「どういうこと?お金とか言うならそれこそ彩が…」
「あのね。私はこの学園では公的な立場でもあるの。そんなに好き勝手に学校施設にお金を出すことはできないのよ。それも競争理念を出すためにわざわざ差をつけてるところの設備を私が変えるなんてできるわけがないでしょう?」
「だが、試召戦争の上で引き出した和平条件ならば問題はない、と言うわけだ」
「そういうこと」
「よく分からないけど…とりあえず設備はよくなるって事?」
「学園祭の売り上げ如何ではね。ちゃんとBクラスにもやる気を出してもらえれば、E~Cクラス程度の設備レベルになると思うわよ?」
私は和室が好きなのでちゃぶ台&畳は維持しますが。
「主がやることはいちいちややこしいのう」
私の立場がそうさせるから仕方がないのです。
別に私が進んでこんなことをしてるわけじゃないのです。
謀略がやりたければ社会に出てたからいくらでもやれるのですから。

「じゃあ用も済んだし、帰りましょうか?」
こうして、一連の第一次2年全クラス試験召喚戦争は幕を閉じたのでした。







[15751] 放課後調教タイムあと生命の危機(明久が)
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:56
第一次2年全クラス試験召喚戦争も終わって週末。
「映画を見に行きましょう」
私は秀吉と映画に行くことにしました。
「別によいのじゃが…どうしたのじゃ?突然」
「せっかくの休日なんだし、秀吉といろいろと遊んで回りたいからね」
「…速攻でホテルに連れ込むのは無しじゃぞ?」
「じゃあトイレに連れ込むわ」
「何をする気じゃ!?」
冗談なのに何でそんなに必死になるのですか。
「そんなアブノーマルな事はしたことないじゃない」
「主ならやりかねんじゃろう」
秀吉は私を何だと思ってるのですか。
別にそんなに頻繁にはやってないではないですか。
それに秀吉が倒れてからそんなに激しいのはしてないのです。
そのかわりスキンシップは常時とってますが。
まあなんとなくむかつくので、
「秀吉が望むなら…どんな責めでも、耐え…られるわ」
「何故わしが強要したような感じになっておるのじゃ!?」
とりあえず弄ります。
「まあアブノーマルプレイはお預けとして」
「じゃから、わしは望んでおらぬからの!?」





さて、と言うわけで映画館に来たわけですが。
「あら、美波に瑞希?」
「あ、彩ちゃんに木下君」
「おぉ、お主らも映画かの?」
「はい♪そうなんです」
そういえば明久の『約束』のほうはまだでしたね。
瑞希を見た瞬間、何故か悪寒がしました。何故でしょう?
「で、明久はそこで何を固まってるの?」
「あ、彩…」
すごい煤けてますね明久。
「ちょうどいいから、二人とも彩たちと一緒に見てきなよ…僕はいいから」
両手に花でそのコメントはないと思います。
「あのねえ…明――」
「あきらめろ明久」
私の声を後ろから誰かが遮ります。
誰かと思ったら、鎖につながれた雄二でした。
「男とは、無力だ」
抵抗をあきらめたのか、力なくいう雄二。
「…雄二、どれがみたい?」
「早く自由になりたい」
「じゃあ、地獄の黙示録」
「おい待て!それ3時間23分もあるぞ!?」
「2回見る」
「1日の授業より長いじゃねえかそれ!」
「授業の間、雄二に会えない、う・め・あ・わ・せ」
そういう時間の共有のしかたはどうかと思うのですが。
「あー、だめよ翔子ちゃん」
「…彩」
「おぉ彩!今の俺にはお前が女神に見える」
なんか雄二が私を拝んでいます。
「ここに如月ホテルのスイートルームのカードキーがあるわ」
ですが残念、邪神のほうです。
「そんなあからさまなフラグに従えるか!俺は帰あがががががががががが」
雄二、その台詞のほうが死亡フラグですよ。
「彩、いつもありがとう」
「いえいえ、本当は秀吉と行くつもりだったんだけどね」
「…秀吉ーーーっ!!」
「雄二、強く生きるのじゃ…」
「とりあえず、せっかくだから一緒の映画を見ない?」
ちょっとあおるだけで延々と収拾がつかないので提案します。
「…どれを見るの?」
「これ」
そういって私は『28年後』という題名のゾンビ映画を指差す。
あの向日葵どもがどたばたやってる映画の監督の前作なのです。
とりあえず秀吉に見せておこうと思っていたのでした。
「あ、あの…パニック映画はちょっと」
「あー、ウチもちょっと…」
瑞希と美波が正反対の反応を見せる。
「怖くなったら、明久に抱きつけばいいじゃない」
なので二人に耳打ちをしてみます。
「い、いいですね!私、一度見てみたかったんです!」
「私も!ちょっと前から気になってたんだ!」
二人とも分かりやすいですね。
「翔子たちはどうする?」
「問題ない」
「じゃあ…僕はー―」
「とりあえずチケットもらってくるわ。株主優待でタダだし。学生7人」
「ハイ学生7人気絶した学生1人1回分ですね♪」
なぜ気絶した雄二だけ分けるのか疑問ですがまあいいのです。
「で、明久どうしたの?」
「なんでもないよ!?さあ美波に瑞希さん行こうか!」
現金なやつですね。





「こ、怖かったです」
「そうねー思い出すだけで失神しそう」
「ショッピングモールでの生活いいなあ…」
「映画館のロビーから記憶がないんだが…」
「なら、雄二、また見ましょう。ホテルで」


ダッ(雄二が駆け出す音)


ビリビリビリビリ(雄二が頚動脈にスタンガンを当てられた音)


ズルズルズル(雄二が引きずられていく音)



映画館から出てきたみんなは五者五様の感想を述べている。
翔子たちは早くもホテルに直行するらしい。
「秀吉、どうだった?」
「うむ、物語のメリハリといい、役者たちの演技といい、流石としか言いようがない。特にハンディカムで取った風の演出は臨場感が出ておった」
「演技は誰が一番よかったと思う?」
「やはり、あの銃砲店の店主じゃな」
「40点」
「手厳しいのう」
さて、映画を見たらおなかが減ったのです。
「そろそろお昼にしない?」
「あ、それなら私、お弁当を作ってきたんです」
「っ!」
瑞希のセリフに私の肩がびくりと跳ねます。
「む?どうしたのじゃ彩」
「い、いいいいいえななななななんでででもないわ。あ、ああ!そうだ!わたわたわたしもお弁当を作ってきたの」
こここここんなことももももあろろうかと、お弁当万一の備えを持ってきてよかったのです。
「あ、ウチも一応持ってきたわ」
どうやら、女性陣は全員お弁当を持ってきたようです。
…さっきの悪寒はこれのせいだったのですね。



そしてやって来ました公園。
コンビニで買った使い捨てランチマットを広げて私たちは自分たちが持ってきたお弁当を出します。
正直、ずっと前に招待されちゃ宮中晩餐会並みに緊張します。
命の危険がある分宮中晩餐会以上かもしれません。
感覚としてはサファリパークに檻なしの車で入った気分です。
と言うか、今までに経験したどんなものよりも上回る恐怖が私に駆け巡っています。
この平和な現代で実際に命の危険になんて早々遭遇しませんからね。
ちなみに美波には飲み物を買いに行ってもらいました。
「姫路さんのお弁当かあー楽しみだなあー」
「うむ、でもわしは食べなれた彩の弁当の方が」
それを知ってか知らずか、秀吉と明久はのんきな会話をしています。
目の前には私、美波、そして瑞希のお弁当。
それぞれ和食、サンドイッチ、洋食と言う感じになっています。
「わぁ瑞希のお弁当本当においしそう」
「そうじゃの、どれも色鮮やかじゃし外で食べるお昼というかんじじゃの」
「ね、ねえ早く食べようよ」
明久、貴方は何でそう死に急ぐことを!!
「…じゃあお先に」
そう思ってると何故かいつの間にか現れたムッツリーニがから揚げを口に放り込んでいた。
「な、なんでムッツリーニがいるんだよ!?」
「自主ト――」


ガタン ガクガクガクガク


なのよ?と突っ込むまもなくムッツリーニが真後ろに倒れて痙攣しています。
「なんだ?ムッツリーニが倒れているようだけど」
「あ、雄二。ホテルに行ったんじゃないの?」
「何とか逃げてきた…」
「とりあえず瑞希さんのお弁当とか食べてみない?」
「ほう、なかなかに美味そうだな。どれ(パク)」


ドタン ビクビクビク


雄二、私の警告を覚えていますか?
「…雄二。こんなところにいたの」
「あ、翔子ちゃん」
「捕まえてくれて、ありがとう」
あれは、あり地獄のようにあがいたらますます状況が悪化すると言う意味でもあったのですよ。
翔子に引きずられていく雄二を尻目に、私は心の中でそう雄二に言いました。
「あの、ムッツリーニ君どうしたんですか?」
「……(グッ)」
瑞希の言葉に反応するようにムッツリーニは起き上がり右手でグッと親指を立てる。
…ひじを必死に押さえて腕…というよりも全身の痙攣を抑えて、ですが。
このままでは殺されます。
そう判断した私は
「あ、ちょっとお箸忘れちゃったから、ちょっと買いに行ってくる」
「え?あ、はい。わかりました」
この場からたとうとし、
ポーチから予備のケータイを弄って自分のケータイに電話をかけ、

咎を背負う~罪人から~(着うた)

「Hello,   Speaking.  What!? …ごめん瑞希、私の代わりに買ってきてくれない」
突然かかってきた電話に対応するそぶりで瑞希に代わりに買いに行ってもらいってもらう。
そしてその瞬間、
「ごふっ…!!」
ムッツリーニがおびただしい量の血を流しながら真後ろに倒れた。
いつもとは異なり、口からの出血で。
「ムッツリーニーー!!!!」
「ねえ、秀吉…砒素ってニンニク臭がするのよ?…味付けにいいと思わない?」
「…彩、まさか」
「化学の『授業で習った内容』をそのまんま料理にも当てはめてるの、瑞希って」
絶望の表情で私は秀吉に答えます。
「と、言うことは…」
「あのお弁当は、正直『化学兵器』レベルよ…一回料理を教えようとしたことがあったんだけど…」
「だけど…?何なのじゃ!?」
「いろいろあって、出来上がった料理にはウランが多量に含まれていたわ」
「何故ウランが出てくるのじゃ!?」
私に聞かないでよ。
「まあ、そんなわけだから、明久」
「な、なに?」
「完食しなさい」
「僕に死ねって!?」
「…いい、明久。元々今日、私は貴方たちと合流する予定じゃなかったの。そして、瑞希はおそらく、美波もお弁当を作ってくると知っていた、その上でお弁当を作ってきた。これが意味すること、分かる?」
「えーと?」
「明久、貴方のために作ってきたのよ」
「ぼ、僕のために!?」
「そう、そして『愛は世界を救う』と言うわ。世界すら救えるんだから、この毒物がふんだんに使われたお弁当を食べても、きっと明久を瑞希の愛が救ってくれるわ。あとは…わかるわね?」
まじめな表情で、明久を見つめる。
「…うん。分かったよ」
何かに至ったようで、明久は瑞希のお弁当箱をつかんだと思うと、
「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」
すごい勢いで食べ始め、
「ゴファ!?」
次の瞬間吐血しました。
「あ、明久ーーっ!!」
秀吉が叫びます。
これで命の危険は去ったのです。
「愛は世界を救わない、と」
「彩、明久が!明久の瞳孔がすごい開いておるぞ!!」
「大丈夫よ。…たぶん」
「その根拠はどこから来るのじゃ!?」
「秀吉、長生きする魔法の言葉を教えてあげる」
「なんじゃ!?」
『私は何も見なかった。私は何も知らない』
「…」
「さ、私が作ってきたお弁当を食べましょう」
「………そうじゃの」
ようやく環境に適応してきたようで、私は嬉しいですよ秀吉。





「ふぅぁ…心地よいのぅ…」
あの修羅場も終わり、なんかいろいろとあきらめた秀吉は私の膝の上で舟をこいでいます。
ちなみに、明久はあの後なんか復帰して美波と瑞希とでなんか両手に花状態になっています。
しかし、なんと言う至福。秀吉のふやけた寝顔で私のMP萌えポイントはマッハで有頂天です。
今ならばどんな質問にも答えてしまいそうなので――ってメールです。
はいはい、返信、と。
そういえば何のメールですかね?

『from:お姉さましらないですか?』

『to:明久といちゃついてるよ』

―ー送信者:清水美春

…やっちゃったWA♪
「お姉さまっ!」
「み、美春!?」
次の瞬間にはどこから現れたのか、美春が美波に突っ込んでいました。
「ぶべら!?」
明久に膝蹴りを食らわせながら。
「ひどいですわお姉さまこんな心地のよい昼下がりにわたしと一緒にいないどころかこんな薄汚い豚野郎と一緒に白昼堂々情事だなんて!」
「何の話よ!?は、はなしなさいー!!」

…まあ、隣の喧騒を片目に和やかな昼を過ごすと言うのもいいかもしれません。
「ぬぅ…どうしたのじゃ彩…なにやら騒がしいが」
「明久がらみよ」
「なら仕方がないのぅ…ふにぁ…」
隣では、何とか見張るを引き離した美波が明久を盾に…あ、3人そろって逃げ出した。
美春も全力で追いかけていきますね。
美波…それは貴方にとって悪手よ。まあそれ以上の手があるとは思いませんけど。
そんなことを考えながら私は秀吉の艶やかな髪を撫でながら溜まったメールの対応をするのでした。




[15751] 第10問 性別:秀吉
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 22:57
問 ()の中に当てはまる語句を答えなさい。
古典自由経済学においてアダムスミスは個々人がそれぞれの利益を追求し続けるということが、ひいては社会全体の利益につながると考え、この社会の利益を生み出すメカニズムの一環として「()の見えざる手」と名づけた。

吉井明久の答え
『彩』

教師のコメント
違います。気持ちはわかりますが、違います。初歩なのでしっかり覚えてください。


姫路瑞希の答え
『彩ちゃん』

教師のコメント
姫路さんが間違えるなんて珍しいですね。たしかにそう思う気持ちは分かりますが。


霧島翔子の答え
『織部彩』
姫路さんに続いて霧島さんまでどうしたのですか。もしかして間違っているのは先生ですか?


織部彩の答え
『私』

教師のコメント
よく分かりませんが正解です。まさか市場を織部さんが動かしてるなんて初めて知りました。サインとかもらってもいいですか?あとできれば、先生が持ってる銘柄について相談が…。




アメ公どもバブルがはじけたよー♪

わーパフパフ。

その結果私の総資産は1000億程度目減りしました。
が、何故か現金資産は5倍くらいに増えてます。不思議ですね。
ドルユーロ円ポンド元もろもろ含めて何故か2000億円くらいになってます。
その上G社とかA社以外のやつを9割方売り払った上にGとAの新株予約権を行使した結果、前より影響力とかの実質資産は大幅増量されました。そもそもあの大イベントを私が忘れるわけがないのです。まあそのせいであの銀行とかその証券会社の寿命は半年ほど早まったっぽいですけど。え、そんなことしてGとかAが潰れたらどうするんだって?それ以前に捨てたところの子飼いが使えなくなる?甘いですね。その昔、世界恐慌時、体力のある大銀行や大企業は短期資金的にぼろぼろになった企業を吸収することで余計に元気になったのです。つまり、私の新株予約権行使とついでにやった増資で体力がついてる奴らは結果的に私が手放したところのほとんどを吸収してるのです。

…と、いけないいけない。またどーでもいいことを延々と考えるところでした。
そんなことはどーでもいいのです。
ある程度資産増えると1日の普通の値動きだけで数百億単位で資産が増減するのでぶっちゃけちょっとした誤差の範囲でしかないのです。
問題なのは、
『アヤーーーー!!たーすーけーてー!!!』
バブルがはじけたせいで向日葵どもがまた鬱陶しくなってる事なのです。
このままだとまたイタリアとかアメリカとかに拉致られかねません。
まあ拉致られるのは一向に構わないのですが長期間拉致られると私の秀吉分が枯渇してブチ切れた結果向日葵どもを潰してしまうかもしれません。あー、ベアトリーチェなら折を見て秀吉も拉致ってきそうだなあ。

…SPでも雇いますか。





そしていつもの黒い話。その後。
「という感じで外は相当ヤバイ状況ですが学園は大丈夫なのですか?」
私の絶好調具合からして学園ヤバイフラグの気がするのです。
「そこんところは教頭に全部まかせてるから知らないねえ」
そういえば大雑把な指示くらいでしたねこのババアが学園運営でやってることって。
その結果があの土地買収やら何やらなんですが。
「そんないい加減な運営だとそのうち潰れますよ」
「いざとなったらアンタみたいな金ヅルがうじゃうじゃいるじゃないか」
とうとう本人の前で金ヅルとか断言しやがりましたよこのババア。
「はぁ…実益があるから私もスポンサーを降りる気はないですけど、少しは自重してください」
「その言葉ノシつけて返してやるよこの不良成金」
「寄付減らしますよ」
「勘弁しておくれよ」
「…で、今日は何のようですかカヲルちゃん」
「これを見てどう思うかい?」
そう言ってカヲルちゃんが机の上においたのは黒っぽい腕輪と如月ランドのマスコットキャラクター『フィーちゃん』のストラップ。
「ストラップと腕輪ですね」
「これで何かイベントをやろうかと思ってね」
「で?」
「せっかくだから商品を豪華にしようと思うのさね」
「なんか出せと」
「そういうことだよ」
「うーん、じゃあ如月ハイランドの――」
「プレミアムチケットならもうあるよ」
「じゃあ―――とかはどうかしら」
「ふむ、まあそんなもんかね」





さて、そんなこんなで始まった宝探し大会。
はじめ私は大会そのものにはすこぶる低テンションだったわけです。
例のものを賞品に混ぜることができただけで満足ですし、そもそも賞品の半分(ゲームやらDVDやらその他)は私のポケットマネーです。
何が悲しくて自分で出したものを自分で回収しなければならないのですか。
そんなわけで即効でバカな場所を探しに行こうとしたチームメイトをなますにして試合放棄した私は、適当に襲われてる美波を煽ったりとか、翔子に賞品に如月ハイランドプレミアムチケット以上の賞品がまぎれてることを密告して屋上にいる雄二の反応を楽しんだりとかしながらのんびりと生暖かく問題人物たちをウォッチングしていたわけですが。

が、事情が変わりました。
よく考えたらFクラスの人間が馬鹿なのと明久が救いようのない馬鹿なのを忘れてました。
「秀吉ー好きだー!!」
明久性根の腐った豚野郎がトチ狂った言葉を発しながら秀吉の胸に突っ込もうとしています。
いやな予感がしたら案の定これですか。
よし殺そう。

パシュッ

パシュパシュ

ガッ

「こめかみに鈍器で殴打されたような痛みがああああああ」
やっぱり頻繁に練習しないと当たりませんねえ。
「なあ彩。それは銃に見えるだけど…」
「非殺傷性だから問題はないわ」
「銃刀ほ――」
「私が法よ」
雄二うるさいのです。
「今すぐ結婚すれば、少しおとなしくなるかな…」
「俺は何も見てないし、何も知らん!」
うん。さすが雄二、理解が早くて助かります。
さて、
「さーて、明久?どういう論理で私の秀吉に告白なんかしたのかしらー?場合によっては…」
「ち、違うんだ彩!これには深い理由が!そう、重大な意味が!」
「どういう理由かしら?」
釈明だけは聞いてあげるのです。
「彩や秀吉は知らないかもしれないけど、日本には伝説の木の下で告白すると幸せになれるという言い伝えがある!」
「言い伝えじゃないがな」
「この学園で伝説のキノシタと言えば伝説的な美少女木下秀吉のことを指す。つまり秀吉に告白すると幸せになれるということなんだよ!!」
「何をいうとるのじゃ明久よ」
全くですね。
『な、なんだってー!』
そして何でFクラスの面々がここにいるのですか、しかも異端審問会の格好で。
『好きだー!木下秀吉ー!!』
速攻で秀吉に突っ込もうとする馬鹿ども。
「ヨハネスブルクのゲイバーと東京湾の底どちらが希望!?」
『…っ!!』
さすがに学習…
『えぇい!俺たちはあきらめない!日本男児はあきらめない!!』


ガンッゴッガスッメキョ(正しくない使用法をされる体育用具と鈍い音)


ガッガッガッガッガッガッガ(正しくない使用法をされる体育用具と凄く鈍い音)


ゴッゴッゴッゴッゴ(正しくない使用法をされる体育用具ととても鈍い音)


パシュッ(発射音)


バンッ(命中音)


「股間があああああああああああああああ!!!!!!」
『ぎゃあああああああああああ』
警告を聞かない馬鹿とその元凶には即刻制裁あるのみです。

「で?」
『我々が間違ってました!マム!』
『彩×秀は眺めるものであります!マム!!』
「いろいろまだ突っ込みたいけど、まあいいわ」
『あざっす!』

で、
「言い残すことは?明久」
「ま、まって!?僕の完璧な説明――」
「そもそもわしは男なのじゃが…」
「いいや秀吉!この世の中には『シュレディンガーの秀吉』と言う言葉が――」
「黙りなさい」
「アッーーー!」
いい加減めんどくさくなってきたので股間を蹴り上げます。
「確かに明久の言いたいことはよく分かるわ。秀吉が男か女かを観測していない以上秀吉の性別は確定しないものね。まあ私は観測しているわけだけど、それでも秀吉が男か女かは確定しないのよ。少なくとも世間一般にはね」
「どういう理屈か全く理解できんのじゃが」
「たとえば秀吉が男か女かが分かる部分を私は観測したわ。この時点で観測が行われて秀吉の性別が確定したように思われるけど実際のところはそうではないわ。たとえば全くの第三者が観測をせずに私と正反対の観測結果を出した場合、明久たちには観測結果は測定されていないのと同じ事象になるのよ。私というものの一部の観測機器に不具合があるかもしれない。そういうことを確かめられない以上、観測者ではない第三者は秀吉が男か女かという事象を確定できないのよ」
「ならばわしが今ここで脱げばよかろう!?」
「やめろ!こんな体育用具室で半裸の秀吉と一緒にいるところを翔子にでも見つかったら俺は死んでしまう!」
そういえば私は何でこんな屁理屈を言っていたのでしたっけ?
あ、そうでした。
「まあそんなことはどうでもいいのよ」
「俺にとっては命がかかってるんだが!?」
「わしにとってもどうてもよくはないぞい!?」
「めんどくさいわね。そんなに世間一般として確定したいなら性別:秀吉とでもしなさいよ」
『それだ!』
まだいたのですかあなたたち。
『これはまさに天啓!さすが織部!天才だ!』
『なんというしっくり来る解決法なんだ』
『よく考えたら秀吉は男だとか女だとかそういうのを超越した存在じゃないか!』
『これはすぐに全学年、いや全校に告知し知らしめなければならない!』
『そうだな!善は急げだみんな急ぐぞ!』
『おおおーーー!!』
「ま、待つのじゃおぬしら!ちょ、まーつーのーじゃあああああああ!!」
…こりゃ明日には性別:秀吉説は事実扱いになりそうね。
「よかったじゃない。疑いが晴れて」
「わしにとって不幸以外のなにものでもないのじゃが!?」
「まあそんなどうでもいいことはともかく」
「じゃから!」
「秀吉は秀吉。私は外聞なんか関係なく秀吉を見てるのに、何か秀吉は不満があるの?」
「そ、そういう言い方は、卑怯じゃ…」
「それに遅かれ早かれこういう状態になってたわよ」
「やっぱり納得いかんのじゃー!!」

あ、そうでした。
「今重要なのは、この明久をいかに残虐に惨殺するかでしたね」
「あ、彩!待って!」
そう思い出して、私は明久を問い詰めるのでした。





「アッーーーーーーーーーーー!!!」



















=============
お米さんのバブルが予想より早く(主に彩のせいで)はじけました。
あんまり本編と関係ないようですが、実は海外にいるある人と関係してきます。
それはもう2学期には明久のストレスがマッハ状態になるレベルで。




[15751] 第11門 プールはいついもデンジャラス あとお風呂も
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/03/19 17:54
「ふっはっ…ほっはっ…はっ…」


日差しが段々高くなる朝、皇居の周りをいつものように走ります。
前世の経験から私は健康維持には結構な気を使っているのです。
食生活は魚と野菜が中心ですし、おやつもほとんどが果物系です。
そして、運動面での一環が、朝のジョグです。
…ジョグ始めたのはごく最近ではありますが。やってみると自分は低出力持続型の運動は意外に行けることがわかりました。まあそんなことはどうでもいいのです。
資産維持のストレスとかで結構暴飲暴食をしがちな私にとっては、ちょうどいいカロリー消費にもなっているのです。
なにより、こうやって早朝にジョグをして疲れきった身体で秀吉のベットに忍び込むと心地よさが増すのです。
そして一通りMPを補給したらまた秀吉と一緒にジョグをしてはぅぅー至福なのです…。


…っと、脱線しかけました。


まあそんな感じでいつものように朝ジョグをしているわけですが。

「はぁっ…はぁっ…あ、彩ちゃ…ん…ちょ、と待ってくだ…さい…」
早くも瑞希がバテてるのです。
…まだ2キロ走ってないですよ?
普段やってない人はそんなもんですか。

さて、普段ジョギングなんてやってない瑞希が私と一緒にジョギングをしているかと言うと、1週間前の出来事が関係してくるわけです。

1週間前、とうとうガスまで止められた明久がいつものごとく雄二とバカをやった結果、何をどうしたのか夜のプールでシャワーを浴びた挙句に鉄人に見つかり、罰としてプール掃除をさせられる羽目になったそうです。

…何をやってるんですかあのバカは…。

やっぱり、あいつ一人で暮らさせると金銭的な部分で駄目ですね。
まあそれはいいのです。

プール掃除のついでにプールで遊ぶ許可を得たバカ2名は私や秀吉、そして瑞希と美波をプール遊びに誘ったわけです。
温水プールだから今の時期でも全然使えますしね。
あのバカ…もとい学園長のやらかしたことのメリットのひとつですね。
…そういえばそれを伝えられたときに
「彩ちゃんと秀吉は卑怯よ!自分に自身があるからって!」
「そうです!彩ちゃんも秀吉君もずるいです!そんな、そんなほっそりとしたくびれた腰周りとか…うぅ~~…」
「じゃからわしはくびれなぞ無いと…」
とかなんとかすごい問い詰められたのです。
私は秀吉一筋だからあんま関係ないんじゃ…。
と言うか私は秀吉が起きる前と秀吉が起きた後で2回ジョグしてるからその分消費カロリーが増えてるだけなんですよ?

で、腰周りに若干の不安のある瑞希はダイエットのために私に泣きついてきた。
と、言うわけなのです。

ちなみに私は毎朝5キロ程度ジョグをしてます。まあ皇居1週程度ですね。
秀吉と一緒にやる分も含めればもうちょっとありますけど。
「瑞希ー?まだ2キロしか走ってないわよー?」
「ちょ、ちょっと、まて、くだ…さいぃぃ」
普段体育以外で運動をしていない瑞希にはちょっと厳しかったようです。
「ちょっと、きゅうけい、を…」
「瑞希ーこの1回のジョグで消費できるカロリーってたった270キロカロリー程度なのよー? 基礎代謝が1500キロカロリー弱なんだから」
「で、でも…」
「脂肪1キロ減らすのに9000キロカロリー必要なのよ?1週間で減らすならこれでも全然足りないのよ?」
「じょ、ジョギングを…甘く、みてました…」
2キロしか走っていないのに瑞希はすでに息も絶え絶えです。
まあ、普段あんまり運動しないとこんなものですよねー。
仕方がないので、ちょっと発破をかけますか。
「秀吉ってね、食べても太らない特殊な体質なのよね…」
生物学的には一応男なので私たちより消費カロリー多いですし。
その上ジョグでカロリー消費してますし。
「!!」
「私は食べた分以上に運動してるし…明久、秀吉のおなかに釘付けだろうなぁ…」
「彩ちゃん!早く走りましょう!むしろあと2週くらい!!」
やる気を出してくれてよかったのです。
元気を出した瑞希と一緒に、私はジョグを再開したのでした。





そして当日。
「バカのおにーちゃん!おはようです」
「っと、葉月ちゃん?」
「この子ったらついてくるって聞かなくって」
相変わらず葉月ちゃんは明久になついてますねー。
「みんなそろったな。じゃあ水着に着替えてプールサイドに集合だ」
「はーい」
そうして私たちはそれぞれの更衣室に…
「って、待ちなさい秀吉」
行こうとしたら美波から待ったがかかります。
「こらこら、こっちは男子更衣室だよ。葉月ちゃんと秀吉はむこう」
「えへへ、冗談です~♪」
「わしは冗談ではないのじゃが…」
「ほらほら、遊んでないで行くわよー?葉月ちゃんに秀吉」
「彩!お主まで!?」
あれ?なんかおかしい事言ってましたっけ?私。
「い、いやじゃ!わし一人女子更衣室に混ざるのは嫌じゃ!!」
あ、それ以上は…
「雄二の前で脱いだら…」
「どうしてそうなるのじゃ!?」
翔子を刺激するからって…あ。遅かった。
「あ、翔子。大丈夫よ。こんなこともあろうかと」


男子更衣室。


女子更衣室。


…秀吉更衣室。


「性別:秀吉って確定したんだ…」
「私が用意したわ」
Aクラス並に豪華にしてみたのです。
「彩!主はなんてことを!?」
「翔子に殺されるのと、おとなしく秀吉更衣室で着替えるのと、どっちがいい?」
「うぅ、わしは今、とても不幸じゃ…」
あなたの命を守るためなのよ。ちなみ秀吉卒業後は『男の娘更衣室』になるわ。秀吉は別格なのよー?
うなだれる秀吉を押しながら、私は更衣室に入っていったのでした。





「うぅ、どうしてこんな仕打ちを受けねばならぬのじゃ…」
「貴方の容姿を恨みなさい」
恨むどころか、他人に羨まれる容姿と思うのですけどね。
「しかしのぅ…って!何で彩がここにおるのじゃ!?」
「貴方放っておいたらそのまま男子更衣室に行きそうだったからね」
「じゃ、じゃが…」
「な~に?お互いカラダの隅々まで知ってるのに、いまさら恥ずかしがることないじゃない」
「それはそうなのじゃが…」
「そういえば…」
「最近、わしは性別に自身が無くのうてきてしまいかけておるわ…」
秀吉がうなだれます。
そういえば、素朴な疑問なのですが。
秀吉って、役者を目指しているのですよね。
「貴方も役者を目指してるのであれば、そろそろ認めたほうがいいと思うのだけれどねー」
何故わざわざ自分の容姿を台無しにするようなことをしてるのでしょうか。秀吉は。
「…どういうことじゃ、彩」
「女の子に間違われるような端麗でかわいらしい容姿。それを武器にしないで、貴方はどうするの?」
「言っておる意味が分からぬのじゃが…」
「…貴方って、役者になりたいのよね?」
「そうじゃ。そのために日々鍛錬を続けておる」
「そうね、特に声真似や役への没頭加減なんか一流だとおもうわ」
「そうじゃろう。そうなるよう日々努力を――」
「なら、何故その容姿を活用しないのかしら?」
「?」
「秀吉。正直なところ、貴方の才能と容姿があれば、今すぐにでも香港やパリ、ハリウッドでさえも主役クラスの役を張れるわ。それも一発屋ではなく、ちゃんとしたスタイルを確立すらできるレベルで。私は、そのために映画会社ごと買収してもいいと考えてるわよ? 個人的感情を抜きにして、ね」
「彩…」
「もちろん、貴方が自らの容姿を認めれば、の話だけど」
「わ、わしは男じゃ!初めて初対面でそれを見抜いてくれたのは、他ならぬ彩ではないか!!」
「私が見たのは根底の部分よ。ちゃんと男の子としての芯がある。だから根本では男らしい。だけど、それと生まれ持った容姿は別よ?」
「生まれ持った容姿…」
「ちょっと、話を変えましょう。これは叔父から聞いた話なのだけど、喜劇王チャップリンを知ってるかしら」
「もちろん知っておる、稀代の映画家ではないか」
「彼は俳優としては小柄な身長でありながら、端麗な容姿を持っていたわ。そしてそれを武器に、確かなスタイルを確立して喜劇王と呼ばれるほどの地位を築いた。彼がもし、自分の身長を卑下し、否定していたら、こうはならなかったでしょうね。自分も持つ優位性を最大限に活用し、それを引き出し、役に使ってこそ、一流だと私は思うわ」
「そうじゃの。そういわれれば、確かに彼は」
「で、貴方はどうかしら?」
「…わしが?」
「秀吉、貴方は並外れた女性としての魅力を持っている。しかしながら芯にはきちんとした男性らしいたくましさを持っていると私は思っているわ。女性でありながら男性。それがあのバカどもを持ってして『男の娘』ではなく『性別:秀吉』といわしめているものだと、私は思っている。男性でありながら女性であることこそ貴方の人に対する魅力なのよ。それに対して、役者を目指している貴方の態度はどうかしら?」
まあ、チラリズム的な観点で、開き直られると魅力半減でもあるかもしれないのですが。
「じゃ、じゃが…」
「あなたは、男ならざるところを頑なに認めずに、ただただ男性たることに固執しているわように見えるわ」
「そ、それはあたりまえじゃろう!」
「たしかに、男の子としては当たり前だと思うわ。だけど、役者としてはどうかしら?」
「役者、として…?」
「役者なら、たとえ落ちぶれた惨めな姿だとしても、その惨めな姿すら糧にして役を演じる。それが役者っていう人種だとおもうわ。たとえば映画ならば、たった2時間程度の映像のために何百日もかけて一つの作品として作り上げて、煌びやかな幻想にも思える赤いカーペットの上を歩いて、高々数十万円、制作費に比べればはした金程度のトロフィーを得るために悪魔にすら魂を売り、悪魔の魂を買い叩くような真似をしてまで役を得る。それが役者って言う人種よ」
「…」
「まあ私が何をいいたいかというと」
「いいたいかというと?」

「脱ぎかけの秀吉の姿で私のMPHPはマッハで満杯なのよーー!!」
「真面目に聞いてたわしが馬鹿じゃったーーーーーー!!!」
秀吉!秀吉!秀吉!秀吉ぃぃぃうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! かぁいいのです超かぁいいのです!映画会社買ったのは本当ですけどね!?全裸より脱ぎかけのほうが魅力的なのですよ。そんな格好で私をどうするつもりなのですかあぁぁぁあああかぁいいのでです!お持ち帰りぃいぃぃぃぃぃ!!最近アメ公のせいでストレス過多で毎日の秀吉分補給が必須なのですよああああああああああ!!





…。
……。
………。








で、着替えに手間取る秀吉を置いて一足早くにプールに来てみたのですが。
「だ、誰かシャッターを…」
「目が!めがああああぁぁあぁぁあ!?!?」
何この地獄絵図。
ムッツリーニが血まみれで倒れてて、雄二が目を抑えながら悶絶しています。
その横では美波がドイツ語でぶつぶつ言いながら、瑞希がぐったりした明久を抱きかかえてます。
…えーと。
「翔子。その対応は駄目だと思うわ」
まずは手のつけやすいところから行きましょう。
「でも…」
「翔子だって抜群に綺麗なんだから、ここは他者を排除じゃなくて、自分の魅力で引き止めるべきよ」
これ以上血まみれになっては掃除が面倒なので翔子を諭します。
「次に雄二が目移りしそうになったら、こう胸に抱き寄せてみたらいいと思うわよ」
「…やってみる」
「きっと一発でカクッと来ると思うわ」
納得してくれて私は嬉しいのです。
雄二も暴力ではなく色気で脅されたら悪い気はしないでしょう。
さて、後は…

「すまぬ、待たせたのう」
おっ、ようやく秀吉が着替え終えたようですね。
「もう、鼻血も出ない」
「打ち止め…」
もうちょっとましな感想はないのですか貴方たちは。
秀吉は、朝の予告どおりトランクスタイプの水着を着ています。
「みんな。そろったのかの?」
「ひ、秀吉…あんたってどこまで私たちの邪魔をすれば気が済むの…!?」
「最後の最後に裏切るなんて卑怯です!!」
ただし、女物の水着で。
「お姉ちゃん、とっても綺麗です」
「何を言っておるのじゃ?わしは見てのとおり男じゃ」
「…秀吉、その水着は女物よ」
「なっ!?まことか彩!?じゃ、じゃがわしは店員に"トランクスタイプの水着がほしい"と言ったのじゃぞ!?」
いや、普通にそういったらたぶん99%女物を薦めると思うわよ?
まあいつものことなので別にいいのです。
あ、そういえば雄二は…?

「な、なんだ?何が起きてるんだ?」
あ、そんなことをしているうちに雄二が回復しかけてるのです。
ちょうどいいですね。
「翔子、今なのです」
「わかった…」
「な、なにが…ってうぷっ?」
秀吉のほうを向こうとした雄二の頭をを翔子が自分の胸に抱き寄せます。
「しょ、翔子!?な、なにを!?」
今、雄二は普段あまり味わわないやわらかい翔子の胸の感覚で頭が混乱していることでしょう。
そうそう、そうやって優しく抱きとめればかなりガクッと…
「ぎゅっ、と?」


キュッ


「ぐっ!?がっ、しょ、翔子頚動脈が!けいどうみゃ――」
ガクッと決まって雄二(の意識)が落ちました。
「…彩、こう?」
翔子、それ違うのです。
確かに落ちてるけど、落とすのは意識じゃないのです。





まあ些細な悶着はありましたが、各々ボールで遊んだりプールサイドで寝転がったり、
「姫路さんがFで、美波がAみたいだよね」
「たくし上げればBくらいあるわよ」
「あべろば!?」
余計なことを言って明久が空を舞ったり、
「だっ!誰かっ、助けっ!?助けてくっもがごぼがばばばばば!?!?」
明久にそそのかされた翔子が水中鬼で雄二を溺死させかけたりと各々満喫しているようです。
「雄二、しぶとい…」
翔子?それ本来の目的…は逸れてないですね。

「あー、ちょっと私AED取ってくるわ」
「え?うん。わかったのじゃ…」
…えーとAEDってどこにありましたっけ?
さすがにあのままだとガチで心肺停止とかになりそうなので私はAEDを取りに保健室へと向かいます。


で。


「吉井君!?」
「アキ!?秀吉、早く胸を隠して!!」
「な、何故じゃ!わしは男なんじゃ!胸を隠す必要なぞないのじゃ!!」
「わがまま言わないでください!」
「そうよ!いいから早く隠し――」
「い、いやじゃー!わしは胸を隠す必要なんぞないのじゃー!!」
「雄二、見ちゃ駄目」
「だからしまっ!?頚動みゃ!?!?」
えーと…何この惨状。
AEDをもって帰ってきたら、プールがブラッドバスになってました。
「こりゃお掃除大変そうだね」
いつの間にかいたのか工藤さんが苦笑いしています。
結局、今日はプールだと言うのに対して秀吉とスキンシップを取るまもなく、血に縫えたプールを掃除する羽目になりました。







と、言うわけで銭湯に来ました。
プール掃除は以外に疲れるのです。一風呂浴びないとやってられないのです。

本番はこれからなのです!!


「ほら、ふざけてないで早く行くわよ。葉月、秀吉」
「またか!?またなのか!?わし一人女湯に混ざるのはいーやーじゃー」
そして、また秀吉が駄々をこねてます。
「しょうがないわねえ。わかたわよ」
まったく、仕方がないですねえ。
「あ、彩!何だかんだ言って最後に主は――」
「そういうと思ってちゃんと作っておいたわ」


男湯


女湯


秀吉湯


「止めを刺すのかーーー!!?」
大工さんが一晩でやってくれました。
「さあ行くわよ秀吉。じゃあまた後でねー」
「ちょっ!ま、待つのじゃ彩!わしは、わしは男湯にーーー!!」
「はいはい、銭湯を血まみれにするわけには行かないでしょー?おとなしく行くわよー」
プールで補充不足だった秀吉分を、ここで補充するのですよ、フフフフフ…。



※ここから先は、ほぼセリフのみでお楽しみください



[えっと、大きくても良い事ないですよ?肩もこりますし…]
[巨乳はみんなそういうのよ!!]
「なんか隣は騒がしいですねー…」
「そうじゃのう」
のんびりとした時間が心地いいのです。
「やっぱりお風呂は心の洗濯よねー」
ぐんぐんとヤサグレた心に潤いが与えられていくのです。
「そうじゃのう…こう、のんびりとできるのはいいのう」
[おーい、翔子シャンプー貸してくれ―――っと、サンキュー]
[…雄二、石鹸貸して]
「しかし、彩は本当に風呂ではおとなしいのう」
[ほらよ]
「お風呂で騒ぐような無粋な真似はしないわよ」
お風呂とはのんびりと精神と体を休める場所なのです。
「そんなものなのかのう」
[……]
「そうよー私の数少ないのんびりポイントなんだから
[なんだかお二人、もう夫婦みたいですね]
あれ?いつの間にか二人の仲が進展してますか?
[なっ]
「式場はどうするー?翔子」
[如月ハイランド…]
[お前それもしかしてあのチケッあぼべらごぼっ!?]
「貸し切っとくわー日にちが決まったら教えてねー」
「はぁー…やっぱりお風呂はいいですね」
「そうじゃのうー…」
いいこともおきますし。



[お姉さまっ!湯船にタオルをつけるなんてマナー違反です!そんなものこーです!!
「ふにゃー」
[何で弱者をいじめるのーー!?]
「極楽なのじゃー…」
[さあ湯船なら何があっても合法なので一緒に間違いを犯しましょう!犯しましょう!!]
「とろけるわねー」
[ま、ちょ!何よ合法って、ちょっ待ちなさい美春!まってーーーー!!!]
「とろけるのう」

[この防衛網が突破できるかしら!?]
[くっさすが学年屈指の学力を持つ防衛網!!]
[でも]
[…だけど]
[[ここを突破しないと、男が廃るんだあああああああああああ]]

ガッ

ごっ

メキョ


バキィ

[ぐおああああああああああ!?!?!?]
[0点になった戦死者は補習!!!!]
[どうしてここに鉄人がああああああああ!?]
[…ことごとく運のないやつだな]
「ちょっと浸かり過ぎたわねー…」
「のぼせたのじゃ…」
「ほら、仰いであげるからこっち向きなさい」
「ふぃー…心地よいのじゃー…」
いやーやっぱりお風呂はいいものですねえー…。
そういえば隣が騒がしいですね。
…まあどうせまた明久が0点になって鉄人に連れ去られてるのでしょう。
私にとってはどーでもいいことなのです。



[15751] ゴールデンウィーク バカンスおかわり
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/22 23:00
まあプールから今日までに秀吉と渡米したりとかいろいろゴールデンウィーク後の準備やらがありましたが、やってきました南のバカンス2回目!

「うおおおおおおおおおお!!!」
「パツキン美女が俺を呼んでいるうううううう!!」
「馬鹿野郎お前じゃねえよおれだよ!」
「お前ら!ここは危険だから俺に任せて早く日本に戻るんだ!」
「いやいやここは俺が行くぜ!」
「殺してでも俺が一番乗りだあああああああ」

空港に着くや否やFクラスの馬鹿どもの奇声でテンションがダダ下がりです。
プールもデンジャラスですが、バカンスもわりとデンジャラスなのです。
これでもまだ静かになったほうなのだから考えものです。

島のビーチにパラソルを確認してからFクラス野郎どものテンションはマッハで有頂天状態。
中には
「うお!マジもんじゃ!マジモンのパツキン美女があそこにいたぞおおおお!!」
とか飛んでる機内から確認したやつもいました。

何でそこから見えるですか。
あんたらはアフリカの部族かなんかですか?

「Fクラスは相変わらず馬鹿ばかりねえ…」
「薄汚い豚のせいでこの常夏バカンスが台無しです…早くお姉さま分を補給しないと死にそうです」
別の機に乗っていた優子と美春ちゃんがうんざりとした表情でバカどもを眺めています。
後半はともかく前半は全力同意です。
「機内で脱ぎ出す奴までいたわ…」
「ちょっと皆さん、元気がよすぎですね…」
「頭だけじゃなくて、人間としてもここまでバカとは思わなかったわ」
同じ機内に乗っていた私や瑞希や美波はもっとうんざりしてます。

「それはそうと美波」
「んー?何?彩」
「逃げなくていいの?」
「お姉さま!あの薄汚い豚で疲れた精神を私で癒してください!」
「きゃああ!?美春!?」
あまりの精神疲労で見えていなかったのですね。

「……っ!(パシャパシャパシャパシャ)」
すごい勢いでムッツリーにが例のごとく写真をとっています。
「まあ、この二人はいつものことだからほうっておくとして」
「見捨てないで助けてー!!」
「正直そっちの機に乗ったらよかったわー」
帰りはそっちの機にのりますか。

「ところで、今回の部屋割りとかはあるのかの?」
後ろの修羅場を無視して優子が私に聞いてきます。
「あ、うん。私たちは去年と同じくスイートに泊まれるようにしてるわ」
「やった!去年きたときあそこ本当に豪華だったもんねー♪」
「たしかに、バカンスを楽しむのには最高の部屋じゃったのう」
「部屋割りは私と秀吉、優子と美波と美春、翔子と雄二、ムッツリーニと愛子ちゃんって感じだから」
「彩、グッジョブ」
雄二、これは試練なのですよ。たぶん。
「了解ー♪ふふふ、ムッツリーニ君と一緒か、楽しみだなあ」
…ムッツリーニ一応貴方の血液型の輸血パックは用意したから安心して逝ってくるといいのです。
「じゃあ早速行きましょうか彩♪」
「あ、私はちょっとよるところがあるから…優子先にいってて」
「あ、そうか…。分かった。じゃあ先に行ってるわね」
「なら、わしも」
「今年はまだ親子水入らずにしてほしいかなー」
「ぬ、そうかの…」
残念そうに秀吉がうつむきますが、まだ一人で行きたいのです。







「ニッポンの男の子は元気だねえ」
パパへの挨拶も終わり、部屋に戻る途中でもう片方の招待客が私に声をかけてきました。
「あらフェデリカ。貴女が来たんだ?」
「あなたの相手できそうなのが私しかいなかったのさ。ちょうど空きができて手持ち無沙汰だったしね。あぁ、あとちゃんと若い女性社員連れてきたわよ。貴女のところの学生にちやほやされてまんざらでもなさそうね。何考えてるの?」
「へ?あぁ、男子生徒にちょっとした勝負で『勝ったらパツキン美女とバカンスに!』って煽って奴ら勝ったから」
「コンパニオン代わり、と?」
「ぶっちゃけるとそうなるわね」
「…」
「…」
「あんたにとっていつからうちの会社はコンパニオン派遣会社になったのかしら!?」
「あんたらだって私を散々ATM代わりやコンパニオンみたいな真似させたでしょうが!」
「アレをやったのは主に遊撃隊じゃないか!」
「うっせえバカ!うっせえバカ!あんたの会社はあんたの会社でしょうが!ごたごた言うならあんたの会社でフォルクスワーゲンと愉快なヘッジファンドたちのタップダンスを再現してもいいのよ!?そのついでに東欧の娼館にでもあんた売り飛ばそうか!?」



やんややんややんややんや。


……まあそんなこともありましたが。


さて、向日葵コンパニオンと仲良く挨拶をした後、私はもうひとつの目的のためにコテージの橋を歩いています。


え?
フェデリカ?


ハイテンションになった向日葵社員とFクラス男子達に途中で拉致られて行きましたが何か?
彼女達が持っていた水着すごくきわどいものでしたねー。
まあフェデリカなら楽しんでくれるに違いありません。
感性がアメリカ人ですから。
いやーあそこまで楽しんでくれると招待した甲斐があったと言うものです。

まあそれは今はどうでもいいのです。

今回の旅行で、私はFクラス、Bクラスに加え各クラスの"仲良くしたい人"もついでに誘ってきたのです。
理由は簡単。未来の子飼いを増やすためです。
そしてその一人。特に私が引き入れたい生徒に"小山友香"。
あの対Bクラス戦のときに根本にも勝らぬとも劣らぬえげつない手を使ったと言うことを聞いて、私は非常に興味をそそられたのです。
学園長経由でもらったIQテストでもかなり上位でしたしね彼女。
今のうちにこちらに引き込んでおいて損はないと思うのです。

「と、言うわけで今日の主目的のゆうかりん勧誘たー…」
「な!?なんだ!?」
「ちょ、織部彩!?」
「い、む?」

硬直する私。そしてむこうさんも。

…えーと。

あ…ありのままに今起こったことを話すのです。
友香ちゃんの部屋に突貫したら全裸の友香ちゃんと、根本がいたのです。
いやー去年と逆の立場だと確かにこれはカラダが凍りつくのですよー。

「…」
「…」

パシャ!

「なっ!?」
「えっ!?」
「えーと、ごゆっくりー?」
とりあえずケータイで写メったわたしは、私は何事もなかったのかのようにドアを閉めます。
それにしてもあの二人、いつの間にかそんな関係になってたんですねー。
そりゃあ原作では付き合ってましたが、私が引っかきまわしたのにもかかわらずくっつくなんて予想外なのですよー。
まあお互い似たもの同士ですし、何か惹かれるところでもあったんですかねー。
とりあえず、二人の弱みになりそうなものを握れたので、いいとしますか。





まあそんな策謀渦巻く南国ばかりじゃいやなので、私も水着に着替えてビーチに来て見ました。
着てみたのですが…。

「うおおおおおおおお!パツキン巨乳美女様の前に不可能はないいいいいいいいい」
海の『上』を疾走するやつ。

「俺らの男気世界一いいいいいいいいいいいい!!!」
海からどれだけ遠くまで泳いだのか、ジョーズに出てきたっぽいサメを打ち上げたところのやつ。

「フェデリカさんはおれのもんだー!!」
「いや俺のもんだーーーー!!!」
「何言ってんだこら殺すぞ!」
血まみれで取っ組み合いをしているやつら。


何この地獄絵図。
少なくともバカンスのビーチの風景じゃ絶対ないです。

『うわーニホンの男の子ってすごいねー』
『サムライだねー』
『さ、さすがに葉っぱの水着は…』
それを楽しげに見ている向日葵社員。若干一名項垂れてる奴がいますが気にしない。

「うおおおおおおおおお!あのお姉ちゃんが!俺に!おれにわらいかけうぼあ!」
「ばっかおれだよ見ろよこのマグロ!おまえなんかただはしってるだけじゃねえか!」
それはサメです。
「蛮人どもはだまってろや!俺のかっこよさに見ほれてんだよ!」
「あんだこら!ヤンのか!」
と言うか、どちらかと言うと動物園の珍獣扱いな気もしますね。

それ以前に、日本語とイタリア語で全く意思疎通できてないはずなのに、それなりにうまくやってますね。
ごく一部の珍妙な風景はともかく、まともなところはちゃんと異文化交流してますし。
男子生徒の目線は限りなく性的ですが。
まあ、遠くから眺める分には面白いので良しとしますか。
「さて、巻き込まれないうちに」
ってあら?向こうからなんか女性中心のグループ、が?
「織部彩確保おおおおお!!」
「へ?」
「さあ来るのよ!ハリー!ハリー!」
「え?え?」
え?なんか去年もこんな体験をした気がするのですが?
「ヘイ隊長!織部彩確保しました!」
「でかした!これで文月学園女子生徒集合よ!」
「じゃ、じゃから何故そこにわしが入っておるのじゃ!?」
あ、秀吉もいました。
「さて、じゃあみんな何をする!?」
「スキューバダイビングがいいわ!」
「いや、ここはバナナボートをだな!」
「スイカ割りとかどうよ!」
「むしろあのバカ男子どもを制裁したいわね」
いったい何があったのですか。
「あ、そうね。織部さん。なんかいいアイデアない?」
「えーと、先生がいれば召喚獣を召喚できるわよ?ここ」
「「「「それだ!!」」」」
その後、一応引率できてもらった高橋先生指導の下男子生徒粛清戦争が半日にわたって繰り広げられましたが、意外に面白いイベントになりました。
Bクラス含む男子生徒の8割が0点になってやっぱり引率できてもらった鉄人の補習を受けてましたけど。





「つ、疲れたわー…」
「…私も、クタクタ」
「でも、楽しかったです」
「さすがのウチもちょっときたわ…」
「疲れましたけどお姉さまの雄姿に美春のMPはマッハで満タンです!」
「みんな運動不足じゃない?でも僕もちょっと疲れたけどね」
ようやく部屋に戻った私達は、そのままソファーをベット代わりに寝転がります。
去年にも増して、怒涛のごとく1日が過ぎ去ったのです。
「僕ももうクタクタだよ…それと言うのも雄二が…」
「やめろ、今日はこれ以上体力を使いたくない…」
「…そうだね」
あ、雄二に明久は何とか生き残ったんですね。
「ところでムッツリーニは?」
「貧血で先に寝るってさ」
「夜の乙女キャッキャうふふタイムをみすみす逃してまでってことはそうとうきてるのね」
「お前が用意してくれた輸血パックがなければ死んでたかもな」
「今のムッツリーニは100%別人の血が流れてると思うよ」
そんなに出血してたのですか。
しかし…。
「こんなに全員クタクタなのに、愛子は元気ね…」
この娘の体は鋼か何かでできているのでしょうか。
「これからもっと体力使わなきゃいけないからね」
「…あ、そういうわけね」
「あ、ねえ彩輸血パックってどこにあるの?」
「医務室にあるわ。ムッツリーニ用って書いてある箱にあるから持ってくといいわよ」
「ありがとー♪じゃあ僕は先に自分の部屋に戻っておくねー」
…まあ何をするのか私は知りませんがムッツリーニにとって不幸なことではないので、いいでしょう。
いやー、夏は男女を積極的にさせますね。
「えーと、あれってほうっておいていいの?」
珍しく優子が引き気味に聞いてきます。
「翌朝ムッツリーニが生きていたら祝福してあげましょう」
「…まあいっか。ここの新料理も気になるし♪」
「ムッツリーニの命は新メニューより軽いんだ…。雄二もがんばってね」
「おい明久!何でここでそんな地雷に岩を投げつけるような発言をするんだ!?」
「べつにー?今日雄二が僕を生贄に一人だけ安全圏に逃げようとしたことなんて全然うらんでないよー?」
「お前だって同じような――」
「雄二…」
「ひっ!?」
「あ、霧島さん、新メニューにね、マムシの生き血ってのがあるよ」
「明久貴様!」
「もう頼んである」
「ちょっ!待てや翔子!」
「今日こそは、逃がさない」
「だから俺は来たくなかったんだああああああああ」


ダッ(雄二がコテージの窓へかける音)


バッシャーン(そのまま海に飛び込む音)


バッ(翔子が網を投げる音)


ガバゴボ「ちょ、翔kっ”!?それはまがぼがばばば」(断末魔)


「じゃあ、皆…お休み」
『おやすみー』
雄二…強く生きるのです。
香典…じゃなかったご祝儀は弾むのです。
私も卒業と同時に出産結婚コンボ仲間はほしいですからねー。
「っ!?な、なぜじゃか少し悪寒がしたのじゃが…」
「気のせいよ秀吉」
「そ、そうは思えぬのじゃが…」





まあその後、料理を注文したりその値段で明久が倒れたりそれの開放で美波と瑞希の愉快な取り合いが合ったりなどと愉快な時間をすごし、2日目も楽しいバカンスをすごくしました。
あぁそうそう、進展としてはムッツリー二が早朝に医療ヘリで運ばれたり、朝起きてコテージから出たら雄二が流れてきたり、真っ赤になった友香ちゃんが私に詰め寄ってきたりしましたが、あまり重要でもないので省略します。
そして2日目の朝に去年から全然学習していない明久がまた突っ込んできてそのまま私の裸を見た挙句に脱兎のごとく逃げ去っていきましたが…まあそれは今回は許してあげようと思います。
「あのバカにとって今回の旅行の後には地獄っぽいイベントが連続だしね」







[15751] 第12問目 死亡フラグ乱立週間のはじまり
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/02/17 09:52
いつものごとく学園長室です。
「と、いうわけで後はここにカヲルちゃんのはんこがあれば全部OKよ」
「はいはい…。今まで散々こき使ったし、あの条件さえ飲めばこれくらいは許可してあげるよ」
言葉とは反してうんざりとした表情でカヲルちゃんが私が出した書類にはんこを押します。
「そう言わないでくださいよぅ。何だかんだ言ってこれは学園にとっても召喚獣システムにとっても有益なのですよー?」
そう言いながらカヲルちゃんの小言が聞こえる前に私はさっさと学園長室を後にします。
さて、キャンバスの連中にプラットフォームを用意させなくちゃいけませんねー。





「…――以上のような組織形態があるわけですが、その企業の文化や気風によって最適な組織形態は決まってきます」
「……」
カリカリカリカリ
…えーと。
「つまり、たとえばFクラスなどの場合はトップダウン型機能別組織がもっとも適しており」
カリカリカリカリ
「…明久」
「え、何?彩…」
「たぶん間に合わないだろうけど保健室に行ってきなさい」
「僕がまじめに勉強してたらおかしいっての!?」
「まあそりゃあねえ?」
言いながら雄二に目線を移します。
「彩、俺は今から天変地異に備えて準備したいからかえっていいか?」
「わしもできれば非常食とかの準備をじゃの…」
「もうおしまいだ!」
「アキが真面目に授業を受けるなんて…地球は明日で終わりなの!?」
「明久君、辛い事があったなら、なんでも相談してくださいね」
「皆ひどいよ!それに、美波はともかく姫路さんまで!」
言葉の暴力でフルボッコにされた明久が叫びます。
ちなみに、何故私が教師をしてるかと言うと、さっきの学園長の条件に、Fクラスの政治経済を担当しろという条件がついていたからなのです。
私学生なのになんで教師やってるんですか。教員免許持ってないんですけど。
「それにしても、本当にどうしたのかしら?今日はいつもに増して変よ?」
「そうです!それに私はまだあのお弁当を誰が作ったのか聞いてません!」
「だ、だからなんでもないって!」
「明久?今は授業中だから逃げることは許されないわ、観念して吐きなさい。今から3秒あげるわ」
「ちょっ!?それって最後通例っていうんじゃ」
「最後『通牒』よ」
「ちなみに、答えないと、どうなるの?」
「貴方が近日中に超絶美女と一つ屋根の下で暮らす事や、その美女に『お嫁にいけなくなるチュウ』をされたりする関係であることをクラスのみんなにばらすわ」





『殺せぇえええええ!!!』





クラス中から勢いよく殺気と凶器が飛んできます。
「畳返し!!」

スパパパパ

「おー、見事」
明久は自らの四方を畳で覆い隠します。
でもそれって完全に上から攻撃されたらアウトですよね。
「上だ!上から殺せ!」
雄二は気づくの早いですねー。
「たわしもってこいたわし!」
「そういうと思って今持って来たわ!」
美波、準備がいいですね。
「後は針とかないか!?」
「家庭科室からあるだけもって来ました!」
「でかした姫路さん!よし!死ねや明久あああああああああ!」
須川君が勢いよくそれらを畳城の中に叩き込みます。



「ぎゃあああああああああああああああ!!」



発端が私とはいえ、大丈夫ですかね、明久。


「と言うか、あんたの今の悩みってせいぜい玲姉が帰ってきてるとかそれくらいだと思うんだけど」
「何で知ってるのおおおおおおおおおおおお!?」
「…え?」
「へ?」
Fクラスの明久弾劾班の動きが止まります。
「お姉さん?」
瑞希が聞き返してきます。
「うん。明久、もう玲姉帰ってきてるんだ?」
「そうだよ!そうだからこの攻撃やめ…て?」
明久が認めると共に攻撃が止んだ上に畳城が一瞬で取り外されます。

「へ?」
『明久!いや義弟よ!お姉さんを俺にくれ』
『いや俺に!』
『美女のお姉さまがお前にいたなんで!むしろ結婚してくれ!』
美女が明久の姉と分かった途端に手のひらを返したように間接求婚(一部直接)をするFクラス男子。

「誰がお前らに姉さんをやるか!!」
それにブチ切れる明久。
デジタルレコーダーって便利ですよね。いえ、何とは言いませんが。
それと明久、もう片方の対応を忘れてると思いますよ。

「ア~~キ~~~、まさかあんた…お姉さんとそんな関係なんじゃ…」
「ちょっ!?美波目が怖いんだけど!?ひ、姫路さん助け…」
「明久君…」
「姫路さん…」
「改心してください!じゃないと私っ!」
「なんで釘バットなんて持ってるの姫路さん!!」
あの子もなかなかFクラスに影響されてきましたねー。
「というか!何でそれを彩が知ってるんだよ!」
あ、こっちに振ってきましたか。
「呼んだの私だしね」
「何で突然姉さんが来たのかと思ったらやっぱり彩のせいだったのかよ!」
「いや、直接の原因は明久にあるんだけど」
「どういうことだよ?」
「食生活」
「うぐっ!?」
「生活態度」
「がっ!」
「成績」
「ぎぎぎぎ…!!」
「全部私が『もうそろそろ大丈夫でしょう』と思ってあなたに任せた途端にボロッボロになったじゃないの」
「そ、そんなこと…」
「じゃあ前に撮った128分の1カップめんのお弁当写真を玲姉に送っていいわね?」
「やめて!」
「お前、あれからさらに分割してたのかよ…」
すごく呆れた声で雄二が言います。
あれは食べ物じゃなくて食べかすって言うと思うのですよ。

「と、とにかく!これで誤解は解けたでしょ!?」
「まあ美女同棲疑惑は解けたけど、シスコン疑惑は晴れてないわよ?」
「そうです。明久君はちゃんと健全な不純異性交遊をしたほうがいいのです!」
「そうよ!秀吉や姉弟なんて絶対駄目なんだから!」
「そうです!秀吉君もお姉さんもNGです!」
「二人とも何を言ってるか分からないよ!?」
「そうじゃ!何故そこでわしが唐突に出てくるのじゃ!?」
じりじりと美波と瑞希が明久に詰め寄ってきます。

「明久、ひとつだけ二人の暴走を止める手立てがあるわ」
「なに!?早く教えてお願いだから!」
「『僕は姉さんよりも美波や瑞希たちと不純異性交遊をするほうが好きなんだ』っていうのよ」
「僕は姉さんよりも美波や瑞希たちと不純異性交遊をするほうが好きなんだ!!」
さて、これもレコーダーに…。
「アキ君、今の発言は、どういうことですか?」



…あれ?





[15751] 第13問目 パエリア
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/03/04 12:29
「ね、ねねねねねねね姉さん!?」
明久がものすごい勢いで動揺しています。
「アキ君」
あー…玲姉満面の笑みですが目が笑ってないのです。
正直すんごく怖いのですが。



「これは!これは海よりも高く山よりも深い訳があるんだよ姉さん!」
逆ですよバカ。
「お姉さんは悲しいです。まさかこの手でアキ君の短い生涯を強制終了させなければならないなんて…」
「え!殺されるレベルなの!?減点じゃなかったの!?」
「減点プラス制裁です。今追加しました」
「そんな!?」
「大丈夫です。留学先でジャパニーズニンジャに習ったという人に介錯の仕方は教えてもらいました」
私の知らない間にアメリカで何があったんですか玲姉。
「じゃあ…覚悟は、いいですかアキ君」
言いながら割と据わった目で日本刀を構える玲姉。
あ、これはちょっとやばいですね。
何がやばいって後の掃除が面倒です。
あと、よほどショックだったのか割と本気で殺しに掛かってます玲姉。
「あ、彩!?一生のお願いだから助けて!!!」
明久も必死の声で懇願してきます。
しょうがないですね。
正直すごく怖いのであんまり近づきたくない玲姉によっていきます。

「あら、彩ちゃん。彩ちゃんも介錯を手伝ってくれるのですか?」
「掃除が面倒だからそれはやめたいかなー」
「僕の命って掃除の手間以下なの!?」
うっさい明久。
助けてあげるから黙っててほしいのです。

「彩ちゃんにはいろいろお世話になっているので、あまり手にかけたくないのですが」
ひっ!
ちょ、怖いのですよ玲姉。
何で標的が私にウツッテルデスカ。
やめてくださいちょっとまだ私は死にたくないのです。
玲姉の日本刀が私に矛先を変更します。
ちょ、ヤバイのです私の死亡フラグと翌日の新聞一面が目に浮かんでくるのです。




『世界的投資家織部彩氏、惨殺される』





ちょ、いやあああああ!!




ポロリは好きですけど首がゴロリはいやなのです!!


何か!何か玲姉の暴走を止める手段は!?

…って、そうでした。

これを玲姉に聞かせれば!!

『お前らに姉さんをやるか!!』『僕は姉さん』『が好きなんだ!!』

『僕は姉さん』『が好きなんだ!!』

『僕は姉さん』『が好きなんだ!!』

私のこめかみ1センチくらいのところでピタリと刃先がとまります。
ちょこっとだけちびりました。
玲姉の耳元で延々と合成台詞をテープレコーダーで再生することでいつの間にか『病み目(ヤンデレの人がしている目)』になっていた玲姉の目に正気が戻ってきます。

…なんというか、マジで私も手にかけるつもりだったんですか玲姉。
あれですか?
私の秀吉欠乏症のごとく明久欠乏症でも発症したのですか?
まあ気持ちはわかりますが。
確かに秀吉欠乏症の状態で私が秀吉に同じ事を言われたら辺り一帯血の海にした挙句に関係者全員を社会的に破滅させたりする自信がありますが。
こっちに引き寄せる手紙で『明久に恋人ができそうです』とか書いたのがいけなかったのですか?
おそらくあの後こっちに急いで戻ってきてノリノリで明久と戯れた後に上機嫌で教室の前にきたらあの台詞が聞こえたのでしょう。

…どう考えても因果応報ですね。私の。
最近ちょっとやりすぎかなーとか思ってましたが、ちょっと自重しましょう。

「私の勘違いでアキ君を手にかけてしまいそうになるとは…お姉さんは今すごく反省しているのです」
「わ、分かってくれたらいいよ」
腰の完全に抜けた明久はとりあえず命の危機が去ったと思ったのか、ほっっとした表情で返しています。
「こんなにもお姉さんを思っていてくれたなんて…」
まあそれは一瞬で過ぎ去るんですけどね。
「何の話!?ねえ彩!さっき何を姉さんにしたの!?」
「さっき明久がFクラス男子に言った台詞『とか』をちょっと玲姉の耳元で何回か再生しただけよ」
『お前らに姉さんをやるか!!』『僕は姉さん』『が好きなんだ!!』
「こんなかんじに」
「この悪魔!」
失礼な、私だって必死だったのですよ。
本当はもっと面白いシーンで合成した上で使う予定だったのに。
「というか!なんで姉さんがここにいるのさ!?」
「あぁ、そうでした。このFクラスに用があるんです。彩ちゃん、まだ授業終わってないですけど自己紹介とかしてもいいですか?」
「へ?まあいいけど」
どうせもう授業にならないし。
「今日から1ヶ月間このFクラスにお世話になりますので」
「あれ?来週からじゃあなかったっけ?」
だからまだ私は玲姉が日本に着てないと思っていたのですが。
「どういうことなのさ?彩」
「えーとね、教育実習生として1ヶ月間このFクラスで研修をするのよ。明久のお姉さん」
「なるほどなるほどって…」
あ、明久が固まってる。


「今日から1ヶ月間ですが、よろしくお願いしますね、Fクラスのみなさん」
玲姉がFクラスの生徒に満面の笑みを浮かべます。
「ちょ、ええええ―――」
『いやっほおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!』
明久の悲鳴は、Fクラス男子の歓声によってかき消されたのでした。




「お名前は!?」
「スリーサイズを教えてください!」
「好物と趣味は何ですか!!」
「結婚してください!!!」
「名前は吉井玲です。よろしくお願いしますね。スリーサイズはアキ君と彩ちゃんだけに教えます。好物はアキ君、趣味はアキ君の写真を眺めることです。私はアキ君にお嫁にいけなくなるチューをするのでごめんなさい」
『よし、明久を殺そう』
「明久君、お姉さんと、そんな…」
「ア~キ~、実の姉弟は法律違反なの、知・っ・て・る・か・し・ら?」
「ちょ、みんななんでそんな怖いか――アッーーー!!」
着々と明久の死亡フラグがつみあがっていきますね。
さて、何故玲姉がここで教育実習生をすることになったかと言いますと、私が原因でアメ公のバブルが半年早くはじけちゃったことで、玲姉の就職先の会社とついでに吉井夫妻の会社が吹っ飛んでしまったことが原因です。
吉井夫妻はそのままシリコンバレーに送り込んだのですが、そのついでに伝えた明久の成績に呆れた一家は玲姉を派遣することになったと。
で、間接的に私のせいで就職先がなくなってしまった玲姉にとりあえず教育実習生として来てもらうことになったわけです。
そして、明久の点数が玲姉基準による生活評価採点分の向上(要するに振り分け試験から生活態度による減点分以上の成績上昇)じゃないと哀れ明久の独身貴族生活は終わりを告げる上に、玲姉は文月学園教師として就職し、このFクラスの副担任となるわけです。


まさに明久にとっては
『絶対に負けられない戦いが始まったっ!!』
と言うところでしょう。


もっとも、
「さて、不純異性交遊の現行犯、しかも二人と言うことで300点減点します」
「どういうことさ姉さん!これのどこが不純異性交遊なんだよ!」
まあ確かに、どっちかと言うと集団リンチと言う言葉が合いますね。
「まだそんな関係じゃないよ!!」
…でも本人の言動がこれだから救いようはないんですが…。




そんなこんなんで放課後。
結局明久は600点ほど減点されてました。
振り分け試験の総合科目が大体800点なので、1400点前後ですか。
その点数だと大体Cクラスレベルですねー。
詰みましたね明久。
まあそんなことを考えながらも明久の家にお邪魔した私達は晩御飯にご相伴することになったのですが。
「女の子は座ってて!!」
という男性陣の必死の懇願によって料理に参加せずに明久のアルバムを見ているわけですが。
「これがアキ君2歳のお風呂の写真です」
「か、かわいいですっ!」
「愛くるしい顔じゃのう」
「素直そうねー」
「それでこちらが4歳のころのお風呂の写真で」
「こっちが7歳のころの写真で」
「さらにこちらが10~12歳のときのお風呂の写真集です」
「ちょと姉さん!?何でお風呂の写真ばかりなの!?それと最後の写真集って何!?」
あ、たぶんそれ私が玲姉に頼まれて作った写真集ですね。
「そしてこれが、昨日のアキ君のお風呂の写真です」
『『!!?』』
「ほぅ…?」
あ、二人ともガン見してます。
それと秀吉、何で貴方まで興味津々なのですか?
「このバカ姉ーーー!!あ、そうだ彩に秀吉!お願いだからあの姉を止めて」
「仕方ないですね、玲姉、玲姉に頼まれてたここ1年の明久の寝顔とか着替えとかXXXとかのアルバムのほうを見ましょう?」
「バカ彩ーーーー!!!」
「おい明久。鍋から離れるな」
「それよりもあのバカ二人の頭をフライパンで叩き割ってやるんだ!!」
後ろで雑音が聞こえますがまあいいでしょう。
「それでこれが、今年の3月ごろの…」
「こ、これは…」
「わ、わー…」
「凄いです彩ちゃん。お願いしただけありました」
4人ともアルバムを凝視してます。
愛されてますねー明久。
秀吉は後で話があります。
「離せーっ!」
たぶんさっさと料理を作って話題を流すのが一番の方法だと思いますよ明久。





まあそんなんで料理ができたので
明久の作るパエリアは絶品なので私も楽しみです。
あのバカは料理に関しては結構な腕前で、たぶん料理人とかになるのが一番あのバカにとって幸せなのではないかと思います。シリコンバレーのキャンバスで雇うの…は英語が駄目だから無理なので、文月学園の新設するレストランとかへの就職なら十分斡旋できるのです。

あぁ、話がそれました。

それぞれの前には作りたてのパエリアと、何故か明久の前には深皿。
「みなさん、貝殻はこのお皿に入れてくださいね」
「なんで僕の夕飯だけ貝殻なの!?」
「さっきも無意味に怒ったり、アキ君にはカルシウムが不足していると思います」
「誰のせいだと思ってるのさ!!それにカルシウム不足だからって、これじゃただの虐めだよね!!」
「つまり貝殻以外のカルシウムと言うことですか……アキ君のえっち」
「何を想像したの姉さん!?というかさっきからこんな扱いで…もしかして僕のこと嫌いなの?」
「嫌いだったらわざわざ私に『私が海外にいる間もアルバム写真を撮ってくださいね』とかいうわけないでしょう?」
「そうです。私はアキ君が大好きなんですよ?」
「そ、そうなの?」
「えぇ、愛してます」
「そ、そうなんだ…」
「一人の男性として」
満面の笑みが少し怖いのです。
「最後の一言は冗談だよね!?」
「ねえ、そんなどーでもいいことは置いといて、早く食べましょうよ~」
熱々のパエリアを私は早く食べたいのですよー。
「そうじゃの、熱々がおいしそうじゃしの」
「ねえ!僕の人生をいろいろと左右しそうな一言はどうでもよくないよ!?」
「うるさいわね明久。よく言うでしょ『馬鹿な子ほど可愛い』って」
「明久、世界で一番、お前のお姉さんはお前を愛している」
「わ、わたしもアキは世界一のバカだと思うわ!」
「わたしもです!明久君は類を見ないバカだとおもいます!!」
「どーでもいいからはーやーくー。食べようよー」







その後、明久特性のパエリアを堪能した私は、ちょっと秀吉と話したいことがあったので先にお暇することにしました。
「さて秀吉ー?私は別にそこそこ他の人に目が行っても怒らないけど、興味津々で明久のはずかしアルバムを見てたのはどういうことかなー?」
「い、いや彩!アレは違うのじゃ!!ちょっ!?彩そこは関節ではないゆえ曲がら…!?」



[15751] 第14問目 ドキッ湯煙中のわくわく強化合宿①
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/03/06 22:24
いるかも分からない神様とりあえずこんにちは。
早速ですが私の命が(毒殺的な意味で)マッハでピンチです。
何でピンチかと言うと、化学兵器製造者が明日から二倍に増えるからなのです。
ちなみに、明久のテストはあんまり成績上がらなかったので玲姉はめでたく文月学園教師就任が決定しました。
アレクサンドロス大王君は結構な奮闘をしたんですけどね。

そんなことはどうでもいいのです。

とにかく致命的な状態になる前に二人の料理スキルを矯正しないといけません。
「それで、ここにシアン化カリウムを大さじ一杯」
「瑞希ちょっと待って! 風味付けに青酸カリを入れようとしないで!!」
「えーと、焼き色ってRGBで表すと…」
「完成したクッキーの色は別に絵の具でつけたものじゃないわよ玲姉!!!」
「あの、代わりのお鍋はありますか? ちょっと底が溶けちゃって…」
「だからなんでお鍋が溶けるような劇物が混入してるのかしら!?」
矯正とか無理ですね。私死ぬかも。
私はまだ神様の元には行きたくないので助けてください。










――翌日、お昼、電車内


私がんばりました。
なにせ自分にも被害がきそうな感じだったから超がんばったのです。
ついでに超疲れました。
玲姉がこっちに着てから少しずつ私にも被害がきそうになりかけてるのは気のせいでしょうか?

あぁそうそう、何故電車内かといいますと、これから強化合宿とやらに行くためです。
ちなみに、合宿先はシリコンバレーバカンス(SV)LLC管轄の現役旅館です。
SVLLC管轄なので施設も全部豪華です。その上ごり押しされたので召喚システム完備です。
それを貸しきっての合宿な訳ですよ。
それで我らFクラスは現地集合なのでこうしてみんなで集まっていくわけです。

まあそんなわけで、
「ちゃんと指示どおりに作ってきたかしら?瑞希」
「はい。彩ちゃんの言うとおりちゃんと『半分』は彩ちゃんにもらったレシピどおりに作りました!」
「玲姉は?」
「私もちゃんと『半分』はレシピどおりに作りました」
『半分』はちゃんとレシピどおりに作らせるという偉業を成し遂げました。

「味見は?」
「はい、ちゃんとしました!」
「もらったレシピどおりにやりました」
「よろしい」
二人の味覚が破壊されていると言う斜め上の展開がない限り少なくとも生物兵器にはなっていないでしょう。
そう確信して安堵したところに明久たちがこっそりと耳打ちしてきました。
(ね、ねえ彩)
(ん? どうしたの?)
(もしかして、姉さんが彩の家に行ってたのって…)
(料理を教えていたわ。あのお弁当はたぶん無害よ)
(さすが彩じゃ、わしらにできぬことを平然とやってのける!!)
いや、割と苦労しましたよ?
(よくやった彩! お前は俺達の命を救ってくれた命の恩人だ!)
(……こくこくこく)
(これで、やっと純粋に姫路さんの手料理を堪能できるよ…)
秀吉は私が全力で私の手料理を食べさせると言う大義名分で保護してるので感心する程度ですが、もろ命の危機が迫っていた明久、雄二、ムッツリーニはむせび泣きそうな勢いです。そもそもさっき互いに潰しあいしなければ各自自分のお弁当があったと思うのですが。

それと、『半分』は無害になったのですが……
なったのですが…
「ところで二人とも、もう半分のデザートは?」
「その分気合を入れてアレンジしました!」
「はい、私もですアキ君を驚愕させるために全力で」
もう半分の威力が倍になってます。

「第三回!」
「最強王者決定戦!!」
「ガチンコじゃんけん対決!!!」
そして即座に始まる生存競争。

いやー『定番メニューはレシピどおりに作って極めたと思ってからじゃないとアレンジ駄目絶対!!』とか『レシピどおりの堅実な味で防御を落とした後にメインで一気に落とすのよ!!』とか必死に力説して何とか半分はレシピどおりに作らせることに成功しましたが、あの二人はどういうわけかやたらと劇物を入れたがるのです。
どうしてそこまで劇物を入れようとするんですか。
なんで料理に限ってそんなに暴走するんですかあの二人は。
やっぱり天才故なのでしょうか?
どっかのねじが緩んでるんじゃないでしょうか。
特に玲姉は原作と違ってマサチューセッツのほうに行ったせいか、倫理関係とかのぶっ飛び具合が凄いことになっているのです。
私ですらドン引きするレベルといえばたぶん分かると思います。

……。

「じゃあ、私も作ってきたから秀吉はこっちを食べてねー?」
まあそこらへんはもう考えても解決しないから修羅場片目に秀吉とランチを楽しみますか。
「そ、そうじゃな! わしは恋人である彩の手料理を食べる故、主らはがんばって戦ってくれ!」
「秀吉貴様一人だけ安全圏に!!」
雄二が叫びます。
「そんな事いうなら雄二も翔子ちゃんにお弁当作ってもらえばいいじゃないー?」
何度か一緒に料理を作ったことがありますが、翔子は結構料理うまいですよ?
「そんなことしたら即詰みが見えるんだが!?」
「人生詰むよりはましでしょう?」
「……大丈夫、ちゃんと作ってきた」
離脱できてよかったですね雄二。
「畜生!なんて世界だ!」
絶望する雄二。
どうでもいいので私はランチタイム突入です。
「と、言うわけで秀吉ー。あーん」
「む?あーん、なのじゃ」
はうー秀吉かあいいよー。
おいしそうに食べてくれて至福なのですよー。


結局むなしい戦いは、そもそも始まる前に最後の対戦者だったムッツリーニが愛子との技術交流で弁当を恵んでもらうという形で離脱したことにより明久しか食べる人間がいなくなりました。
というか、そもそも危険物作った二人とも明久に食べさせようとしている以上、はじめから明久が食べることになるのは確定的に明らかなのです。
「いやー、しかしアレを二人分平らげるなんてすごいわねー」
「明久くん、食べてすぐ寝たら牛になりますよー」
「そうですよアキ君、私はアキ君をそんな自堕落に育てた覚えはありませんよ」
主にあなた方二人のせいなのですけどね。
思ってても言わないですが。
「明久よお主はいいやつじゃった…」
「お前のことは忘れない…」
「3日くらいはな」
「いやいや何で皆そんなに落ち着いてるの!?吉井くんの顔真っ青だよ!?」
「愛子、こいつらと付き合うには諦めが必要よ」
一人心配している愛子に優子が肩をたたいています。
愛子、この面子と一緒にドタバタやるにはある程度慣れが必要なのですよー。





「ねえ彩。お昼ごろからの記憶が完全に飛んでいるんだけど…」
「いやー、AEDって結構使いやすいわねー」
「まさか、駅にあるAEDを使ってるところを生で目撃するとは思わなかったよ」
ぐったりとした表情で弱弱しく愛子が突っ込んできます。
すぐ慣れるのですよ愛子。
「洗礼みたいなものなので深く考えないほうがいいわよー?」
「いやな洗礼だね」
自分が被害受けないだけましだと思うのですよ。
それにしても駅にAEDが常備されていて本当によかったです。
まさか本当に心肺停止状態になるとは…。
「ねえ秀吉、いったい何が…」
「よかったのう! よかったのう! 明久、主ともう逢えぬと思うとわしは…わしは…」
「……お前が部屋のエロ本やPCの処分をうわ言で頼もうとしたときは流石に肝が冷えた」
「まったくだ」
「ねえ僕の身に何があったの!? ねえ!」
明久、蘇生直後なのにうるさいのです。
「知らぬが仏って言葉知ってる? 明久」
「あと、アキ君のいかがわしい本は姉モノを除いて全て処分しますからね」
「何でばれたのおおおおおおおおおお!?」
いや、臨死体験中にうわ言のように洗いざらい白状してたのです。
「それにしても、豪華な旅館じゃのう…」
「室町時代から続く旅館らしいわ」
世界恐慌のせいで最近潰れそうになってたのですよねー。
まあ…ちょうどよかったし…ほら、結果的に豪華になったので、ね?
まあいいか。遅かれ早かれ潰れてましたし。
「20億かかったわ」
「相変わらず主は…」
「ところで、部屋割りはどうなの?」
「彩のことだからバカンスと同じように好き勝手に部屋割りしたんじゃないの?」
「残念ながら学校行事なのでそうはいかなかったのよ」
本当に、残念です。

秀吉とのどきどきわくわく旅館イベントが!
秀吉とのどきどきわくわく旅館イベントが!!!(重要なことなので二回言いました)

「彩、そんなに落ち込むことでも…」
「とりあえず、学園長と掛け合ってこのグループの男女で部屋は分けてもらったわ」
「そうなんだ。と言うことは、僕は秀吉と一緒の部屋だね」
「あ、そうだ明久」
「何?彩」
「秀吉になんかしたらどうなるか分かってるわね?」
「僕は何もしないよ!!」
「そうじゃ、心配しすぎじゃぞ彩」
「なら、いいわ」
なーんかイベントがあった気がするのですけどねー、この合宿。
そう思いながら、わたしたち女性陣は自分の部屋へと移動するのでした。






=============
年度末につきくそ忙しいのでちょっと更新文章量が短くなります




[15751] 第14問目 ドキッ湯煙中のわくわく強化合宿②
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/03/07 00:31
…たしか合宿にはなーにかイベントがあった気がするのですが、思い出せないのですよねー。
何故か最近、概要くらいしかバカテスのイベントを思い出せない私がいます。
それも結構所々欠けています。
少し多忙すぎたのが原因かもしれません。
「まあそんなことはどーでもいいのです」
どこぞのファンタジーと違って、忘れたからと言って命の危険があるわけじゃありませんしね。
…可能性はありますが。料理とか。

そんなことを一人考えながら、1日目の強化カリキュラムも終わり、部屋に戻った私たち。
女三人寄れば姦しいといいますが、その例に漏れずにすぐにそっち方面の話に移行するわけでして。
「…第3回」
「乙女の秘密大暴露大会!」
『いえー!』
学校行事というせいか南のバカンスとはまた違った妙なテンションです。
「じゃあ最初は誰からいこうか?ボクは吉井君ラバーズの二人の進展とか馴れ初めについて聞きたいなー」
「なっ、ウ、ウチは別に」
「進展とか、特に…」
「ボクは別に誰とは言ってないんだけど?」
その様子だとあまり進展ないみたいですね。
「まったく、あの朴念仁は…」
「じゃあ、馴れ初めのほうから」
「そ、それよりも工藤さんのどうなんですか!?」
「そ、そうね!ウチもそっちが気になるわ!」
「ふぅん?二人ともそんなにボクのHな話が気になるの?」
「どっちかと言うと、ムッツリーニとの関係が気になるわね」
「ふぇっ!?あ、彩!?」
「そうね、電車でも結構仲良かったみたいだし。ねえ翔子」
「…私も気になる」
「ななななな何を言ってるのさ三人とも!ボクとムッツリーニ君はそんな関係じゃ!」
「そうやって狼狽するところが余計怪しいわね。ねえ彩」
「そうねー、普段の愛子なら『ふふっ、それはどうかなー?ご想像にお任せるすよ』とか言いながら関係をほのめかすだろうからね」
「…そんな余裕もない、ということ」
「だから!ボクとムッツリーニくんがどうこうだなんて、そんな関係になるわけないじゃないか!」
「今この状況で重ねて否定とか、自爆にしか思えないわ」
「彩ちゃんの言うとおりです。必死に否定するところがますます怪しいです」
「そうね、ウチもそう思うわ」
先まで弄られかかってた瑞希と美波、とてもいい顔なのです。
「~~~~っ!」
「さあさあさあ、吐いて楽になっちゃいなさい」
楽しそうですね優子。一人確実に安全圏だからといって。
「違うってば!ボクもムッツリーニくんもそんな気は全然ないって!」
「あら?ムッツリーニに前に聞いたことあるけど、まんざらでもなかったわよー?」
聞いたのは嘘ですけど。
様子を見れば分かるのです。
元々属性似てますし、南国バカンスで陥落、止めを刺されたと。
で、愛子は愛子で南国バカンスで挑発しすぎて自分も意識するという自爆行為でもしたのでしょう。
「なっ!?」
『おおー!』
「ななな、にゃにお?」
耳まで真っ赤にして、愛子可愛いのです。
「さあ。話しちゃいなさいって」
「…全力で応援」
「何でくっつける方向に話がいってるの!?」
「だって、ねえ?」
「…うん」
できちゃった婚仲間とかほしいですし。
「何二人で分かり合った顔してるのさ!あんな頭でっかち僕の好みじゃないってば!」
『へぇー』
『ふぅ~ん?』
「…へー(棒読み)」
「~~~~~~~っ!!そんな事言う彩のほうこそどうなのさ!?」
「へ?私?」
「そう!秀吉くんとどこまで進展してるのさ!?」
「あ、それは私も気になります」
「ウ、ウチも」
「…私も」
「特に言うことはないのですよー?」
私が秀吉ラブなのは周知の事実ですし。
「隠すのは怪しいなー」
「だからー…」
私の色恋話は特に面白味もないのです。
「隠してるわけじゃなくて、卒業即結婚&子作りは決定してるしね彩は」
『な』
「卒業直後出産できるスケでも無問題よ」
「そういえば私の家に来たときに式場案内とかをお父さん達とよく見てるわね」
「双方の両親とも調整は万全よー?」
ママとかは『早く孫の顔が見たいわ』とか言う始末ですし。
「すごいです!」
「進みすぎよ、彩は…」
「あ、ちなみに意中の人攻略は外堀をガリガリ埋めるのが効果的よー」
「…参考になる」
「な、なら彩がどれくらい秀吉君を想ってるのか聞きたいなー!た、たとえば秀吉君が今この瞬間死ぬとしたらどうする?」
「ダークな話題ね。…うーんもしそんな事態になったら…」
「なったら?」
「息絶えた瞬間に睾丸を切り取って自分の膣にねじ込むわ。あとすぐに冷凍保存を手配して人工授精の準備ね」







~同時刻、男子部屋~
「……(ガタガタガタガタ)」
「おい!どうした秀吉!?」
「顔がすごく真っ青だよ!?」
「何故か知らぬが、今、ものすごい悪寒がしたのじゃ…」








『……』
「…過激」
わあい皆ドン引き。
「せめて二人の愛の結晶くらいは残したいからね。はい。じゃあ、私の話を続けてもつまらないから、愛子の話に戻りましょうか」
「なっ!?」







「うぅー…。何日かはムッツリーニくんと顔を合わせることができないよ…」
「人を呪わば穴二つと言うやつです。始めに弄る気満々で吉井ラバーズを標的にした愛子が悪いのよー」
「少しは自重するからもう言わないでよー」
「分かればいいわ」
「あ、皆。そろそろ入浴時間だから大浴場に行きましょう」
優子の声でケータイの時計を見ると、ちょうど入浴時間になったところでした。
「そうですね」
「ここのお風呂ってどんなのなのかしら?」
「CVLLCが買い取ったくらいだから期待していいわよ」
ここの浴場はでかいから学年女子全員一緒の時間に入れますしね。
「…楽しみ」
「バカンスのときも凄かったしね。じゃあ早く行きましょ」

で、また楽しくわくわく入浴時間が訪れるはずだったのですが。








なーんでこんなもん仕掛けますかねあのバカは。













「ここは包囲されているわ!全員両手を頭の上において跪きなさい!!」
「な、なんじゃ!何事じゃ!?」
今私達は明久たちのいる男子部屋に突入しています。

「秀吉君はこっちに!」
「後そこの窓から飛び降りようとしてるバカ三人。外も包囲済みよ、あきらめなさい」
「くそっ!」

優子の警告で雄二、明久、ムッツリーニが抵抗をやめます。
「なぜお主らはとっさの行動でそこまでできるのじゃ…」
雄二と明久は常にそういう危険と隣り合わせですからねー。
ムッツリーニは、まあ後ろめたいことがあるのでしょうし。

「で?いったい何の真似だ。ACDEクラス代表がそろい踏みで」
窓を閉めながらめんどくさげに雄二が聞いてきます。

面倒なのはこっちもなのです。
「You have not the right to remain silent.Anything you say can and will be used against you in a court of law.You have not the right to have an attorney present during questioning.If you cannot afford an attorney, kill you.」
面倒だからさっさと吐くのです。

「えーと、彩。何?」
「明久に英語は無理だから日本語で頼む」
「貴方たちには黙秘権も弁護士を立てる権利も無いから、大人しく死になさいってこと」
「理不尽だ!!」
「おい!俺らは何もやましいことなんかしてねえぞ!」

「じゃあこれは何なのかしら?」
言って、小山さんがブツを突き出す。
「盗聴器と…ペン」
「…ペン型CCDカメラ、しかも最新型」
「脱衣所のボールペンがこれに差し替えられてたわ。だよね織部さん」
「愛子が見つけてくれなかったら危なかったわ…愛子?」
「ム、ムッツリーニくん…見たいならそういってくれば…」
「…!?(ブシャア!!!!)」
「ムッツリーニイィィィ!!」
あ、駄目だこのポンコツ。今使えない状態なのです。

「いったい誰がこんなことを!」
「えーと、その出血?覗き?」
「出血はそこのポンコツのせい、覗きはあんたたちでしょう?」
なーんかイベントがあったと思ったら覗きイベントでしたか。
とりえず制裁なんですよ。

「ち、違う!わしらはそんなことはしておらん!」
「そうだよ!僕らはそんなことはしていない」
「じゃあ、そんな真似は?」
「…………………………否定できぬ」
「ちょっと秀吉僕らの信頼度薄くない!?ムッツリーニも死んでないで何か弁明してよ!」
「……見つかるようなヘマはしない」
「はーい皆やっちゃおっか。あ、翔子はこれね」
「織部ちょっと待てなんでそんな鞭を翔子に『ばちん!!!』ぎゃああああああいてええええええええええ」
「姫路さん!違うんだ!誤解だよ!僕らは本当にそんなこと」
「もう怒りました!よりにもよって食べ過ぎちゃったときになんて!」
「そうよ!私もいつもはもっと胸が大きいんだからね!」
「それはウソ」
「彩、私にもあの鞭ちょうだい」
「スタンガン(ロス市警仕様)ならどうぞー」
「ちょ!美波落ちつぎゃああああああああああああ」
「待て翔子!その木馬は何だ!どこから持ってきた!」
「…彩が」
「旅館の倉庫にねー」
「何故旅館にそんなものがちょっと待て待て待て待て待て待てええええええええ」
「…浮気は許さない」
さて、後ろが修羅場かつスプラッタなことになってきました。
面倒です。

はー、とりあえず気分転換に露天風呂にでも行きますかー。
「ちょ、待つのじゃ、何故風呂場へわしをつれてこうと」
「露天風呂は混浴だから大丈夫よ」
「そういう問題じゃ…!!」




[15751] 第14問目 ドキッ湯煙中のわくわく強化合宿③(sideB)
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/03/13 17:44
<side 愛子>




…どうしてこうなった。




今ボクの頭の中は大混乱状態。
顔の熱が取れない。たぶん耳まで赤いんじゃないかな。
心臓の鼓動が止まらない。
ラブコメ定番イベントがなんでボクの身に起こるのさ。
というか、普段だったらこんなに焦らないのに何で…――

モゾ…

「ひゃうっ!?」
「?どうしたの愛子」
「ななななんでもないよ彩!」
なんで、とっさに布団の中にムッツリーニ君を入れちゃったんだよボクは!!





「そう?でも顔赤いわよ?」
「ゆ、湯当たりがまだとれてないのかも」
「そういえば愛子、のぼせたとか言って先に上がってたもんね、大丈夫?」
「だ、大丈夫だから」
落ち着こう、そうだクールになるんだ工藤愛子。
ただでさえさっきムッツリーニ君関係でさっき弄られたばかりなのに布団の中にムッツリーニくんがいるってばれたら…。
ムッツリーニくんが布団の中に…。
ボクのふとももさわってって…。

…。

じゃなくて!
そ、そう!あの覗き魔容疑者制裁後にお風呂にみんなで入って、湯当たりしちゃったから先に帰ったらムッツリーニくんがいてその後すぐに彩が帰ってきて咄嗟に布団に隠しちゃったんだった。

うん、何でこんなことしちゃったんだろう。
「――ぃこ」
状況悪化してるじゃないか、ボクのバカ。
「愛子ー?」
大体、何でムッツリーニくんはこの部屋に…。
「ちょっと愛子聞いてる?」
「ふぇ!?え、えっとボクは別になんとも思って」
「まだショートしてるんですかこのポンコツは」
「彩って結構分け隔てなく容赦ないわよね」
「やるなら徹底的に。が座右の銘だからね」
「え、えと、で…何の話だったかな?」
「さっきの盗撮&盗聴の話」
「あ、あー…」
「実際のところ、明久たちが主犯かどうかがちょっと怪しいのよ」
「どういうこと?彩」
ボク以外にああいうことできるのはムッツリーニくんくらいじゃ…。
「んー…多分本人が言ったとおりああいうばれるような配置はしないと思うのよ。それに…」
「それに?」
「多分設置しようとした時点で出血多量になるとおもうのよね、旅館に着てから短時間で自分の血を片付けた上で誰にも気づかれずにカメラと盗聴器を設置するのは難しいんじゃないかなーって」
「あー。たしかに」
ムッツリーニくん、ボクがちょっときわどい角度で胸を見せただけでかなり出血してたし。
…あれ?
でも…。
普段ならそんなことやふとももに触れたくらいで大量出血するムッツリーニ君が今はなんか大人しいよ?
血とかも、見当たらないし…。

さすさす(布団を触る音)

ぺち(何かに手が当たる音)

…!?もぞ

ふにゃ(股間に何かが触れた感触)

「に゙ゃっ」
ちょ!ムッツリーニくん!?
ま、そこは!?
思わずももでムッツリーニ君の顔をはさんでしまう。
だから、ちょ、あばれなっ!?
「?愛子!?」
「な、なんでもない!ちょっと足がつっちゃって」
「あ、じゃあ私がマッサージでもしてあげようか?」
「待――」



「あ、織部さん!よかった部屋にいて!」
「あら友香。どうしたの?」
「Fクラスの男子が大浴場に正面から覗きをしようと!」
「…は?」
「あー…そういえばまだ女子の入浴時間だったわね」
「あのバカは…いいわ、いきましょ、皆。あ、そうだ愛子はどうする?」
「あ、ボクはまだちょっと休んでるよ」
「そう?」
「じゃあ小山さん案内してくれる?」
「えぇ!こっちよ」
そして彩たちが部屋から出て行く。



……危なかったあああああああ!!



「――ふぅ……ムッツリーニ君、もうでてきても大丈夫だよ」
「…っ!ぶはっ!」
ボクの声でムッツリーニ君は跳ねるように布団から出てきた。
窓の方向に向かって。
「ちょっと、ムッツリー――」
「……!!!?」
そしてボクの顔を見るなりそのまま窓からバックステップで飛び手出ていった。
その顔は耳まで真っ赤で…。
「えっと…」
しばらくボクは固まるしかなかった。



あと、ここ3階なんだけど…。



[15751] 第14問目 ドキッ湯煙中のわくわく強化合宿④
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/03/17 13:27
修学旅行的なテンションで私は友香の後をついていきます。
いいですねーこういうドタバタ。私こういうの大好きです。
楽しくて鼻歌だって歌っちゃいます。

「しゅ☆く☆せ☆い⇒しっましょ♪」
「怖いんだけど!?」


「なによー友香ちゃん人がせっかく上機嫌なのにー」
「上機嫌で出てくる歌詞じゃないと思うのだけど」
そんなことはないわよー?
「ちょうどいい鬱憤の発散先だなんて思ってないわよー」
秀吉と一緒の部屋に泊まれないからとか、一緒の部屋じゃないとかは全く鬱憤とは関係ないのですよー。
「ちょっとあの馬鹿たちに同情しそうになってきたわ」
こればっかりは譲れないのですよー。好き勝手バカやれるのは学生のうちだけですしねー。
「それに、今は私の召喚獣の武器はあの妖怪刀じゃないから本人にダメージは受けないわよー」
「…そうなの?」
「玲姉がもっとすごいのだしちゃってねー」
さすがに危険なので私も安全な(?)武器似直す事を条件に修正したのですよー。
「あーあの新任の先生ね。吉井のお姉さんの。あんたより点数高いとか、どんだけよ」
「点数云々なら高橋先生も高いんだけどねー。何で私と玲姉だけなんだろー? まあそんなことはどうでもいいのです」
「ま、まあ、そうね」
しかし、正面から突破とか…何を考えてるんですかねー。

「あ!いたわ!あそこよ織部さん」
友香の指差した先では女子生徒と退治するFクラス男子、と秀吉が。
「彩!」
「あら?何で秀吉まで」

あのバカに巻き込まれたんですかねー一瞬思考をめぐらせていると、

「えい、なのじゃ!」
「え?え??」

何故か秀吉が抱きついてきました?
え?
何?
何のごほうび?
今日の秀吉積極的ね。
よーし彩がんばっちゃうぞー。

「あれ?なんだっけ?」
何しに来たんでしたっけ私?
「彩よ!お願いなのじゃが、目の前の敵をなぎはらってほしいのじゃ!」
あー敵ね。
なるほど秀吉の敵ですか。
「おーけー」
「ちょっと織部さ――!!」




試獣召喚サモン!」
「くっ、試獣召喚サモン!!」



『Fクラス 織部彩       VS Bクラス 金田一裕子&岩下律子&小野寺優子&小山友香
 英語(リスニング) 829点 VS     158点&137点&125点&183点』





「「「きゃああああああああああ!!?」」」
「織部さんのアホーーーー!!!!」
そのまんま悲鳴を上げながら友香とその他の女子の召喚獣が吹き飛びます。
いやー、前と違って身体にフィードバックないからいいじゃないですかー。
「さすが彩なのじゃ!さあ明久よ!早く行くのじゃ!」
「ありがとう秀吉!」
「じゃあ後は頼んだぞ!!」
そういって明久と雄二を筆頭にFクラス男子が廊下の先に突っ込んで生きます。
「って、あれ?」
そういえば私ってアレをとめに来たんじゃ――
「彩よ!」
「ほへ?」

ガバッ

「ありゃ?どゆこと?」
なんか秀吉に抱きしめられました。
やーらかいのです。心地いいのです。
珍しく積極的な秀吉に私の幸福度がマッハで有頂天です。
いや、途中で攻めに変わられることはよくあるけど、はじめからはまた新鮮でこれはこれで…。
「これには深い訳があるのじゃ!じゃから見逃してほしいのじゃ!」
ほむほむ。秀吉がそういうのならばまあいいかあ。
「んー…まあ秀吉に免じてここは引くわー」
「ちょっと織部さん!?」
ほぼ不意打ちを食らう形で奇襲された友香が抗議の声を上げます。
「大丈夫。あっちの方向に行ったなら多分奴らに待ってるのは死亡フラグよー。だって――」

ブオン――!

「な、何じゃ!?召喚範囲がここまで!!」


「ぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ」

ドゴン!

メギャ!!

凄い鈍い音を立てながら雄二と明久の召喚獣が廊下の先から吹っ飛んできたのです。
そしてその先には、
「雄二…」
「アキ君…」
おっかない事になってる親友(翔子)とオッカナイ事になってるお隣のお姉さん(玲姉)がゆっくりこっちに向かってきていました。
「ほらね?」
私は確かに秀吉におねだりと貸されると激甘ほぼ無条件で飲んじゃいますが、別に秀吉の要望を聞く優先順位が元々格段に高いのがもっと高くなるだけで、ちゃんと頭は回ってるのですよー。
「つまり、わしの行動は」
「今回に限ってはほぼ無駄?」
「私が織部さんに倒される必要は?」
「全くなかったわね」
『そんな』
秀吉と友香たちが床に手をついてうなだれます。
まあとりあえず阻止できたからいいじゃないですか。
「アキ君、お姉さんは悲しいです。私が入っているに覗きに来ないばかりか、私が上がった後に、まるで私を避けるかのように覗きに入ろうとするなんて」
「ちょっと姉さん!?怒ってるところはそこなの!?」
「…雄二、そんなに、私以外の、女の、裸が、見たいの?」
「待て翔子!落ち着け!話せば分かる!」
「問答無用」
ほら、元凶も激しい制裁を受けてますし。
「じゃあ、私は珍しく積極的な秀吉といっしょにキャッきゃうふふしてくるわねー」
「なっ!?あ、彩!アレはじゃな!?」
「嬉しいわー秀吉からあんなに積極的ってのあんまりなかったしねー…」
「じゃから!」
「んー、どうせだから明日は玲姉あたりと離れで入ろうかしらねー。大浴場の露天風呂もいいけど、離れのヒノキもそれなりに風流なのよー?」








まあ何かしらの理由があっての覗きなんでしょうが、玲姉って言う化物じみた点数の防御がある時点で、向こうさんは詰んでるのですよ。

さて、大体事態は把握できたので、これからが本番なのですよ、
明久たちはどうあっても学年の男子を扇動して覗きをやらかそうとするでしょう。つまり男子VS女子の大試召戦争です。いいですね。ゾクゾクします。
そして、私は一応秀吉に"お願い"されたので、玲姉や高橋先生を離れのヒノキ露天に誘って地酒で酔い潰したりなどして協力したわけです。別に自分が参加しやすいように場を整えるのがもくで気じゃないですよ?
少なくとも主力教師二人が二日間程度戦力外になったのは大きいでしょう。
そしてそうやってバランスを崩してよい潰されたと言う名目で大暴れしようと思っていたわけです。






思っていたわけなんですが。







「言い訳は聞くわ。その上でベッツオーリに吸収されるかベガスでストリップショーに出るか選びなさい」
「ペッツオーリに下るのだけは嫌ーーーー!!」
「仲間をストリップに売る気かこのタコ社長ーー!!!」
まーた向日葵女に拉致られました。
ひと暴れした後に秀吉と温泉でキャッキャウフフする予定だったのに。
ここから面白く!ってところで拉致られるの何度目でしょうか?
隣に秀吉がいなかったら聞くまでもなく向日葵で愉快なマネーゲームしてるところですよ?
まあどっちにしても今回ばかりはぶちぎれる寸前なんですがね。
「アレですかね?もしかして私なめられてます?この向日葵どもにドラ○もん代わりにされてますかね?何?私に喧嘩売ってるの?買うわよ?いくら?」
「ちょ!?アヤがマジで切れかけてるわよ!?」
「オリベさん助けて!」
「姪でしょあんたの!?」
「何とかしてください!」
「嫌だよ!俺だってあいつがマジ切れしたら半径500メートルは近づきたくねえんだから」
もういいわ面倒だからこいつら全員○ーす!!!












=====
14話は次回更新で1つにまとめておきます。やっぱやめました



[15751] 第15問目① さとられみたいな
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/04/01 23:23
「さーて、ストリップか身売りか選択でき…」
「のう彩よ、わしに免じて許してやってはくれぬかの?」
「ユーリアいくらほしいのかしら?3億ドル程度ならすぐ出すわよ」
「相変わらず歪みねえなこの姪は…坊っちゃん、ありがとな」
「なに、わしを一目で男と見抜いてくれた礼じゃ」
「で、冗談はともかく。今度は何があったのよ?財政的な問題ならこの前に結構大規模な増資受けてあげたし、映画も会社ごと買収した上にあの監督さんが身銭切ったおかげで大成功だし、あの船長ならピクシーが全力バックアップしてるじゃない。おかげで一時期シリコンバレーとNRAがガチ喧嘩してたけど」
ペッツオーリの方だって私が半年早くバブルはじけさせちゃったせいで今は身動きできないはずだし…。
「あのね、アヤ。貴方のおかげでだいぶ楽にはなったんだけど…今回はその、ちょっと違う方面で」
「どういうことよ」

かくかくしかじか

まるまるうまうま

ふむふむ、なるほど。
なんか知らんけど例の伯爵がぶち切れ中と。
どうやれば今の良好な関係からそうなるのよ。
「ちょっとまってね、今全株手放すから」
「まって!今あなたにそれをやられたらわが社は終わりよ!!」
「うっさいこのオンバ日傘!厄介ごとに巻き込むにしても限度があるわよ!あの伯爵にただの成金の私がどうこうできるわけがないでしょうが!あんたもしかして私なら何とかできるとかそんな短絡的な考え方で拉致って来たんじゃないでしょうね!?」
「またまたー」
「ベアトリーチェ?その『お前ならできるだろ?』的な反応は何よ」
「できないの?」
「…帰るわ」
「アヤさん!」
わたしにどーしろっつーねん。
全力出せば何とかなるかもだけど、イタリアとシリコンバレーの全面戦争になるわよ。
「本気で潰す気なら私にも連絡くるだろうしまだだいじょうぶよ。じゃあね」
「――!――!」
後ろからなんか聞こえるけど無視です。

「彩よ、たまにいなくなるとこんなことに巻き込まれておったのかの?」
「大体そうねえ…」
「主もいろいろ大変じゃったんじゃのぅ」









まあそんなこんなのわりとどーでもいいことで拉致られた私達はどうにかやつらを放置して(一応手は打ってますよ?主にミラノに金融的な爆弾設置したりとか)帰ってきたわけですが。
ついでに寄ったシリコンバレーで一部外注してる知り合いに新しいプログラムをもらって学園長に渡した後に教室に来たわけですが。


「うわぁ…」
「な、何事じゃ!?」
明久と雄二とムッツリーニが簀巻きにされて教室に転がってました。
なんかツンとしたにおいが立ち込めてます。バカ三人にかかってますね。ガソリンでしょうか?

…あれ?ムッツリーニ?

「えーと、須川。これはどういう状況なのかしら?」
「はっ!この性根の腐った豚野郎3名が血の掟を破って女子とキスをしていたので処刑の準備中であります!」
「ちょっと待って!裁判じゃなくて処刑なの!?すぐ処刑なの!?」
「てめえら…やるなら明久だけをやれ!」
「男らしいじゃないか坂本!それなら望どおり明久をやってやる」
「須川君!それボクだけが被害者ってことだよ!?ムッツリーニも何か…」
「大丈夫?ムッツリーニ君。こっそり解いてあげようか?」
「…今はまずっ――」


『ムッツリーニを処刑しろー!!』


「……!?」
「あー、盛り上がってるところ悪いんだけどさ」
「なんだ織部。俺達は今忙し――」
「ガソリン臭いこの部屋を早く掃除しろ屑が。ソマリアで海賊と鬼ごっことかしたいのかしら?」
『『イエスマム!!お前ら!早く片付けろ!!』』
『この三人はどうする?』
『邪魔だ、窓から投げ捨てとけ』
『サー、イエス、サー!』
「ちょ、ちょっと待ってよ皆!」
「簀巻きにしたままかよ!」

ずるずる (教室の外に引きずり出される簀巻き)

ずるずる (教室の外(窓から)放り出されようとしている簀巻き×2)

「ま、待て!本気か!?」
「そうだよ!雄二はどうなってもいいから僕だけでも助けて―――」


「あ、美波」
ちょうど二人が窓から放り投げられようとしてるところに、渦中の人物である美波が登場。

『……』

教室が静まり返ります。

「はーい、みなさん授業を始、め…って何ですかこの風景」







まあそんなこんなで授業が始まったわけですが。
「明久を殺せえええええ!!」
「き、君達授業ち――」
「お姉さま!そんな豚野郎より私と愛を育みましょう!育みましょう!そして生まれてくる娘には美春とお姉さまから一文字ずつとって『美来』と名づけるのです!」
「清水さん!それじゃあ男が生まれたらどうするんだ!」
「男なんか波平で十分です!」
「ひどすぎるよ!」
「じゃあ『秀吉』が生まれたらどうするのかしら?」
「それなら秀頼と名づけます!」
「大阪には近づけないようにしてね」
「彩!ぬしさらりと今わしを性別として扱わなかったかかの!?」
「それ以前にウチと美春じゃ子供はできないって気づきなさいよ!」
「どっちかが卵子提供してもう片方が母体になれば一応できないことはないわね」
「それです!」
「彩!美春に余計な知識つけないで!」
それにしても、一見すると学級崩壊クラスもかくやという混沌ですねー。

「君達。今は授業中だから席に戻りなさい」
あ、先生がちょっと切れかけてます。
「ならDクラスはFクラスに対して宣戦同時攻撃を行います!召喚許可を!!」
「…試験召喚戦争なら仕方ありませんね。許可します」
あ、いいんだ。
「まてDクラス代表!いくらなんでもこのFクラスの中でお前一人だと瞬殺だぞ?」
「黙りなさいFクラス代表!女には譲れないときがあるんです!」
「まあ落ち着け。今は利害が一致してるだろう。とりあえず俺達はお前を攻撃しない。だから」
「だから?」
「とりあえずお前が明久をぶちのめした後に、俺達が物理的に全員で明久をぶちのめす。試験召喚戦争そのものは明日。どうだ?」
「乗ります!!試獣召喚サモン
「くっ!試獣召喚サモン

そして二人が召喚獣を召喚して互いに戦闘態勢に、
「あ、あれ?」
「ど、どうしたんだろう」
入ると思ったら、召喚獣はそのまま座り込んでしまいました。
どういうことでしょう。
「ちょっと私も召喚してみるわね。試獣召喚サモン!」
「わしもやってみるかの。試獣召喚サモン!」
[…試獣召喚サモン
秀吉と私とムッツリーニも召喚してみますが、やはり制御が利きません。

<<今のうちに、お姉さまの足に抱きつくのです>>

「ん?美春、何か言った?」
「いいえ、私は何も言ってませんわ」
「そ――ってひゃあ!?」
美波の悲鳴が上がった方向を向くと、美波の足に美春の召喚獣が抱きついています。
「ちょっと美春!離しなさいよ!」
「ちょっと私の召喚獣なんてうらやましいことを!!離れなさい!もしくは代わりなさい!!」
<<いやですーっ>>
美春の召喚獣は美波から離れまいとぎゅっと抱きついています。

<<しかし、どうしたものかのう>>
<<ベストアングル!ベストショット!>>

そしてその横ではほふく前進しながら美波達のほうにカメラを構えているムッツリーニの召喚獣と、頭を抱えてなんか悩んでいる秀吉の召喚獣。

これは…
「もしかして、自立化してる?」
そういえば、外注してた奴からなんか手紙を預かっていましたね。
えぇっと…
『むしゃくしゃしてやった。自立化できればなんでもよかった。今はピザ食いながらのんびりしている ps.初期状態では深層心理とかを読み取ってしゃべるから本音駄々漏れだけどそこは調整してね♪』

「あのバカーーーーーーーーーー!!!!!」
「うわっ!?ど、どうした織部!」
とにかく、一回学園長に相談ですね。
「ちょっと学園長室に行ってきます。先生はちょっと一時授業中断で。みんなは自習」

<<この視点なら、いつでもスカートを覗けるっ!>>
<<彩が学園長室に行っている間に男子にまた告白されたことを知られれば…わしは皆にますます女と思われてしまうし、彩にばれたら…想像するだけで恐ろしい>>

「秀吉、戻ったら話があるから」
「彩!!違っ、これは誤解なの<<今月に入ってからもう五人目なのじゃ>>じゃ!」
「あとでちょっとその男子生徒について教えてね?<<抹殺するから>>」
さて、とりあえずどうしますかねー。





「と、言うわけなのですが」
「あんたの知り合いは何をやってるんさね」
「その前に、こういうのは導入する前にテスト環境とかに入れるでしょう普通。何考えてるんですがババア長。ついにボケましたか?」
「まさかあんたの紹介先がこんなお茶目やるとは思ってなかったんだよ」
「で、どうするんですか?」
「そうさね。せっかくだから、自立行動のテストとしてFクラスには試験運転をしてもらおうかね」
「んー…そうですねえ」
あの状況だと本音駄々漏れだし…。
「面白そうですね。採用。一応ただだと反発するでしょうから、図書券くらい進呈してあげてくださいね」
「分かったよ。とりあえず適当に1時限ほど動かしておけばいいからさ。分析に教師を動員するから、ほかのクラスの生徒を多少巻き込んでもいいよ」
「そうそう、あのプログラムの付属品でこんなのがついていたから、試験中だけ使ってみるかい?」
ポイ
「ん?何ですかこのリモコンみたいなの」
「対象者に向けてボタンを押すと、強制的に召喚獣が召喚されるようだね」
「つまりは奴はこうなるのを見越してたと」
「そういうことになるねえ」
「ふむふむ、なら、せいぜい楽しむのです」



で。


学園長の許可も得たので教室に戻ってきたわけですが。

「どうしてくれんのよーっ!ウチのファーストキスー!!」
「ごごごめんなさい!?僕も悪気があったわけじゃ!?<<僕もファーストキスだったし>>」
「そ、そうなんだ<<アキのファーストキスファーストキスーもっとー>>ぎゃー!って言うか何アキの腕に抱きついてるのよ!?離れなさいー!!」
<<やーっ>>
『妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい』
うわー…混沌がさらに拡大してるわねー…。
どうしようかしらこれ。



[15751] 第15問目② さとりあい
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/05/16 22:09
<<うわーすごく面白げなことになってるのですー>>
本音代弁ありがとう、私の召喚獣。
いつの間にか雄二、美波、瑞希の召喚獣も召喚されてます。
「えーと、私がいない間に何があったの?」
「あ、あははー…」
唯一被害を免れているっぽい愛子が苦笑いしています。
「…見ればわかる」
いつの間にか翔子まで来てるし…。
「見ればわかるって…」
そして愛子の視線の先には…


「ムッツリーニ!貴様はめやがったな!?」
「…死なばもろとも」
「明久君ひどいです!」
「そうよ!好きな人の名前ではめるなんて卑怯よ!」
「これで五分五分だよ!さあ好きな人の話を続けようか!」


「大体わかったわ」

<<面白~面白~>>

「ははは…」
あ、そうそうそれと愛子?

<<愛子、召喚獣ないねー?>>

「え?あ、ボクは何とか被害を免れたよ」
「へー?」

「……」

「……」

「じゃ、じゃあもうすぐ次の授業だから――」

だっ(愛子、出口にダッシュ)

ピッ(リモコンPUSH)

ポンッ(愛子召喚獣召喚)

「なーーっ!?彩!?なにこれ!?」

<<リモコンー。イエー>>

<<イエー>>

「いえー!じゃなくて!」
「全クラスこれの復旧のために教師不在で自習よー?あなたも楽しみましょーよー?」

<<聞きたい事もたくさんあるしねー>>

「ムッツリーニのこととか、ね?」
「な、ななななな」
「なあ明久。なぜか彩だけやたら召喚獣と意気投合してる気がするんだが…」
「彩、特に隠して困りそうなことなさそうだしね」
なにか端で雄二と明久が失礼なことを言っています。
「いや、彩のほうが社会的にばらしてはまずいことが多い気がするのじゃが」
「そうよー?」
「げっ!彩!」
「人を関羽扱いしないでほしいなー。それはそうと、私だって知られたら困ることはあるわよ。たとえば…」
言いながら翔子の頬をなぞる。
「え?…彩?」
「翔子の肌ってばきれいよねー透き通る白で雪のよう…そう…まるで――」
「な、ななな!?ま、まさかお前!?」
「だめだよ彩!霧島さんには雄二が――「彩よ!主はわしと誓いを――」」

<<核の冬>>

「怖いわ!!」
「何を考えておるのじゃ!?」
「核の冬って何?」
三者三様の反応。
「と、言うくらいにね?」

<<ほかにもー、エリア51でねー>>

「おい、お前ら!早く彩の召喚獣を取り押さえろ!じゃないと俺らたぶん死ぬぞ!?」
『そ、そうだな!織部の召喚獣!そこまでだ』
雄二の叫びで神速の速さでFクラス男子たちが群がってきます。

<<な、なにするですかきさまらー>>




…。




「手間かけさせやがって…」

<<んーっ!んーうーんーっ!!>>

なーんで私の召喚獣がクラス全員がかりで簀巻きにされた上に口をふさがれなきゃいけないのですか。
「ちょっとしたお茶目じゃないのー」
「お前の茶目っ気は俺たちの生命を脅かすんだよ!!」
「わかったわよー。じゃあ…」
「さっきの続き…」
「好きな人が云々って言ってたわね。…あーあー、なーるほろ」
とりあえず納得したので翔子を助けるべく一瞬考える。
うん。
「翔子、雄二に優しーく抱きついてみて」
「わかった…えい」
私の提案に、翔子は雄二の頭を抱きしめる。
「んなっ!?」
「それは抱きつくじゃなくて…まあいっか。雄二、今どんな気持ちかしら?」
「ど、どんな気持ちもクソも悪寒しか<<イヤッフゥゥゥゥウ!>>」
「…」
「召喚獣は正直ね」
「んな訳あ<<キャッホオオウウウウ!!!>>るかあああああああ!!!」
「……」
「翔子の感触どう?」
「こんなのなんとも<<おっぱいの感触が気持ちいいな>>離せええええええええええええ!!」
「………はぅ」
うん。これはいいですね。雄二が墓穴掘るたびに翔子の顔が幸福に満ちてきます。
「じゃあ後は若い二人に…」
「おい織部おまえ煽るだけ煽って放置していくなああああああああああああ!!!」
いや、このまま陥落させるのもいいかなーと思ったんですけど、今日はもっと気になることがあるし。

「ねえ?愛子」
「な、なななななにさ彩!何でこっちにくるのさ!」
「実践派の愛子ちゃんのわくわく本音トークを聞きたいなー?って。キスとか」
ムッツリーニとこキス疑惑も気になりますしねー。
「ひぇ!?きききキスなんて身に覚えが!?」
「じゃあ召喚獣がムッツリーニ君にべっとりな件について、説明してもらおうかしらー?」
「へっ!?ななんあななななな何もないってば!僕はムッツリーニ君とは何にも!?って、え!?」
「ほら」
愛子がきょとんとするのでムッツリーニのほうを指差します。

<<ムッツリーニくぅん…ボク…今日…ブラもスパッツも穿いてないんだ>>

<<ルパンダイヴは何秒まで許可してる…!>>

「……!!」

<<なにをする>>


そこでは切なげな声を出してムッツリーニに擦り寄る愛子(召)とムッツリーニに押さえつけられているムッツリーニ(召)。

「アレ完全に誘惑してるよね。つまり愛子は本音では…」
「ちょ!?なにしてるの!?やめて~~~~!!」
「で、ムッツリーニはどうなの?っていうかキスしたの?」
「別に何も…<<やわらかかった>>」
「ななななにも<<事故とはいえキスはキスだよね>>ひぇ!?」
「…ほぉー?」
「あ、あれは事故…<<でもキス。あと、もう一回したい>>」
「に゙ゃっ<<なら次はちゃんと…>>」
「ふむふむ、つまりキスはした、と――」
『ムッツリーニ、お前をこの場で処刑する。生きていることを後悔する苦痛か、死にたいほど耐え難い苦痛のどっちを選択する?』
なんか煽っててたらFクラスの面々が仁王立ちしてます。
「…(ブンブンブン)!!!」
『罪状、羨ましいから殺す。被告人、おとなしく死――』
<<ムッツリーニくんに何をするーーー!!!>>
あ、愛子(召)が須川君たちをなぎ倒してる。
そういえば行動も自立化してるんでしたっけ。




…。



<<じゃあ秀吉を詰問するのです>>

私の召喚獣がいつの間にやら自力で簀巻きを抜け出しています。
「なっ!?」
あ、そうでした。
秀吉にさっきの告白疑惑を問い詰めてませんでした。
秀吉ワタシイガイスキ?
ワタシキライ?ドウナノ?
ちょっと狂気に侵されながら秀吉に向きなおります。
「…あ…その…じゃな…」

<<ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク>>

秀吉?
なんで最愛の人を前に絶望の表情なのですか?
ちょっと傷つきます。

「…(ニコッ)」
「ひっ」
まあ詰問はしますが。

「秀吉ー?さっきの『下級生の男子に告白された件』について詳しくきかせてもらえるかしらー?」
「あああああああ、彩」
「別にね?秀吉が告白されることはいいのよ?秀吉魅力的だしね」
「そ、そうかの?彩に言われるとうれしいのう」
「でもね?それを私に秘密にしてるって<<ドウイウコト?>>事と次第によっては…」
「わしは決して!決して主以外とはよしみを交わした覚えは<<全部保留しておるのじゃ>>ないのじゃ!!」
ほ、ほほぅ?保留?
お、落ち着けワタシ。くくくくくくクールになるのです。


…。
……。
………。



全部、保留、してる、ですっ、てぇ、ぇぇぇ!?

<<どういうこと?>>

なんか召喚獣が阿修羅のごとく激怒してます。
ワタシの怒りもマッハで突破なのです。
あれ?ちょっとやばくないですか?
だんだん召喚獣の感情に引っ張られている気が…
「ひ、ひひひひ、秀吉?そ、それはどういうことかしら?」
大丈夫秀吉は男大丈夫秀吉は男大丈夫秀吉は男大丈夫秀吉は男大丈夫秀吉は男大丈夫秀吉は男大丈夫秀吉は男大丈夫秀吉は男…。
「そ、それはの…<<わしとしては好意は嬉しいのじゃが…>>」
「ひーでーよーしー!?<<秀吉といれない世界なんて要らないのです!>>」
召喚獣が半泣きです。
「ひぃっ!<<怖いのじゃ!>>」

…。

い、いい事言いますね召喚獣。私もそう思います
「たしかに、秀吉が私を一番に愛してない世界とか要らないわよね」

<<そうなのです。そんな世界滅んじゃえばいいのです>>

「あー、確かにそうですねー。滅ぼしちゃったほうがいいかもー?」

<<でも、私の力じゃだめだから…まず>>

「あ、彩やめるのじゃ!落ち着くのじゃ!!」
「はーなーしーてー!秀吉はどうせ私のことそんなに好きじゃないんでしょー!?」
「何故そうなるのじゃーーー!?」

<<相手はわしが男といっても聞かぬし!断りにいっても明久らにばれるじゃろ!?じゃから保留にしかできなかったのじゃ!本当なのじゃ!>>

「そうなのじゃ!本当に無実なのじゃ!別に浮気とかそういうのではないのじゃ!そもそもわしは男じゃぞ!?男子から告白されてOKするわけがないじゃろ!?」
「ほんと?」
「わしは主にほとんどウソはつかぬ」
「……秀吉」
「…なんじゃ」
「私ね、今日、危険日なの」

ダッ

「何で逃げるのよー!!」
「おい彩!そっちで痴話げんかしてないで翔子を何とかしろ!」
「うっさい今忙しいのです!!<<後で図書券進呈するからおとなしく実験されてろなのです!>>」
「え?彩ちゃん実験って」
<<知り合いのプログラマーのバカがこれ作って面白いから試験データを取ることになったのですよ>>
召喚獣説明はしょりすぎ。って今それどころでは…。
『お前のせいかーーーーー!』
「やかましい今忙しいのです粛清するのですよーーー!?」






阿 鼻 叫 喚 。

















「学園長。一応報告書を出しますね」
「あ、あぁ、御苦労だったね」
「まったくね」
「…どうしたんだい?ちょっと顔が怖いよ?」
「とりあえず、あれはだんだん召喚主の感情も左右させるから実装はやめといたほうがいいわ」
「そ、そうかい?」
「そういえば、まだ全館召喚範囲なの?」
「あぁ、これからシャットダウンする予定差ね」
「そう。なら…」
「?」
「この際だから原因は私だけどこの怒りはあなたで発散するわ」
「な、なんだいいきなり!?召喚ちゅ――」
「死ね!」
「な、ちょいっ待っ――!!」

アッーーーーーーーーー!!!!!!




[15751] 夏休みと引越しと走馬灯
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/04/19 10:07
「とりあえず両家の荷物は庭に絶賛待機中だけど、部屋割りどうしましょうか?」
「私は角部屋がいいわ」
「じゃあ、二階の南向きの部屋は優子・秀吉・私で振り分けましょうか。」
「どうしてこうなったのじゃ…」
見取り図を見ながら私と優子で部屋割りを決めている中、秀吉は部屋の隅で手を床につけてうなだれています。
「どうしたの秀吉?秀吉も角部屋のほうがよかった?」
「いや、わしはどちらかと言うと和室のほうがよいのじゃが…」
「んー…じゃあどうせ私の部屋は二人住んでも全然広いから、私と秀吉のベットルームにして、真ん中はいっそのこと茶室にして私たちの部屋と――」


夏休み。
前半は肝試しやら海やらイベントが満載でした。
そういえば肝試しでは私がいるというのに秀吉に告白してきたソフトモヒカンを9割殺しにしました。むかついたのでそのまま逆モヒカンにしましたよ。
まあそれはどうでもいいのです。
重要なのはその告白ですっかり秀吉が怯えちゃったので私にべたべたしてくれて超ハッピーってことなのですよ。
まあここ数日はなんとか回復したのかいつもどおりに戻ってますが…残念。

そんなこんなで一通りトタバタしたのですが、半ばも過ぎてくると、だんだんとやることが少なくなってきます。


「と、言うわけで木下家と織部家で一緒の家に住むことになったのよ」
「最近、ぬしの『というわけで』が理解できぬ時が多いぞい」
せっかく引越し作業がほとんど終わったから現実突きつけるためにもう一度説明してあげたのにひどい言い草ですね。
ちなみに二階の部屋割りは優子部屋・茶室・秀吉&私ベットルーム、廊下挟んで私の書斎という形になりました。ちなみに優子の部屋もキングベット置いて余裕な状態なので優子が結婚しても無問題な状態です。
「大体、何故急に一緒に住むなぞと…」
「私はむしろ遅いくらいだと思うけど」
「姉上!?」
「お父さん達、いつ彩ちゃんはウチに来るんだい?ってしつこかったのよ」
「それにー、私も秀吉と一緒にいる時間は多い方がいいし」
夏休みに入ってからこそだいぶましになってきましたが期末テスト後は例によって向日葵のせいで忙しくなった私は早朝秀吉と一緒に学校とかがなかなかできなかったのです。
同じ家に住んでいれば多少忙しくても一緒に登校できます。
「…まあワシだってそうじゃが」
「それにね?」
「……な、なんじゃ?」
そう、絶対100%一緒に登校できるから…
「あなたに告白してくるゴミ虫を排除できるしねー」
私たちの仲を引き裂こうとする蛆虫は死んで当然なのですよ。
「ひっ!?」
あぁかわいそうな秀吉。あのトラウマを思い出しちゃったのですね。
抱きしめてあげましょう。
「あ、彩むぐっ」
「これからはずっと一緒に登校できるわよー」
「んーっ!」
特にあのソフトモヒカンは完膚なきまでに叩きのめさなければならないですよねー。
いっそ私の子飼いに引き込んでシベリア送りにでもしますか…。
まあ今はそんなことを考えている場合ではないのですね。
「ぷあっ!し、死ぬかと思ったのじゃ」
「どう?秀吉はうれしい?」
「ま、まあ…主と一緒にいられる時間が多いのは嬉しくはあるが」
「んもう秀吉可愛いなあ」
可愛いなあ!
「あー…そこでいちゃついてる弟と義妹。ちょっといいかしら?」
「何ですか優子。ちょっと空気読んでくださいよ。このKY」
「はいはい、日がな一日目の前でいちゃいちゃされてたらうんざりもするわよ」
「あ、姉上!ワシはそんなにいつもいちゃついてるわけでは」
「ここ一週間。あんたを見るとずっと彩に引っ付いてるのだけど?」
「そ、それは…」
「いいじゃない。なんなら優子にもそろそろ私の子飼い関係諸々で若いイケメン紹介するー?」
「なっ!」
「優子の要望に合った奴を探してくるわよー。卒業即結婚出産仲間ほしいしー」
「待つのじゃ彩!卒業すぐ結婚出産は確定なのかの!?」
「わ、私は大学卒業までは結婚するつもりはないわよ」
「じゃあ紹介もいらない?」
「…それは…ちょっとほしいかも」
「じゃあ適当に見繕って紹介するねー」
うーんいいですね。誰にしましょうか。あ、セルジュとかいいわね。意外と気が合いそうだし…。でもパリ向日葵に惚れてるんだっけ?…叔父さんとくっつけますか、あの向日葵。
「何故完全にスルーするのじゃ彩よ!」
「で、優子。なんか言いかけてたけど何かしら?」
「あぁ、そうだった。せっかくこんな良い家に引っ越してきたんだし、いつものメンバーでパーティでもしない?どうせ夏休みの間は私たちの親たちは帰ってこないんだし」
ほむ、パーティーですか…。
「それはおもしろそうね。じゃあとりあえず明久から聞いてみるわね。引越しとかの連絡全くしてなかったし」
まあ一昨日思いついて昨日家買って両親’sに了解取って今日引越しなので無理もありませんが。
そうと決まれば、えーとケータイケータイ…。
「あ、明久?ちょっと引っ越したから私んちでパーティでも」
「する!今行く!…―姉さん、…だから………でさ…――じゃあすぐ行くよ!ちょうど海鮮詰め合わせが手に入ってね。あ、雄二たちは僕から電話しとくね!」
「ほ、へ?え、えぇ。じゃあよろしくねー」
…なんか嫌な予感。ちょっとまずったかしら?もしかして。







<side 明久>


「どうしてこうなったのかしら…あは、あはははは、はははははは」
「あ、彩…わ、わしに何かできることはないかの?」
「ふ、ふふふふ…死ぬときは一緒よ、秀吉」
「頼むから諦めんでほしいのじゃ!主が何とかしてくれねばわしらは一網打尽じゃ!!」

部屋の向こうで秀吉の大きな声が聞こえる。
あれ?なんで彩あきらめモードなの?
ほら、彩なら何とかできるでしょ?
『おいヤバイ!早くここから全力で逃げるんだ!!』
『間に合わなくなっても知らないよ!!!』
あれ!?なんで僕の中の天使と悪魔が全力でここから逃げれといってるのかな?
もしかして予想外に先に行ってた姉さんの料理スキルがやばかったのかな?
「…」
「おい明久、何で玄関で固まってるんだ?」
「…後がつかえてる」
それでも彩なら…彩ららきっと…
「う、うん、そうだよね。じゃあ…」

ガチャ

「あ、明久君!ちょうどよかったです、今準備が終わっ」
奥のドアからまがまがしい煙を吐く鍋を持ったエプロン姿の姫路さんがでてくる。

ダッ!

「逃がないわよ!」

ダダダンッ

「がっ」ベチッ
「ぐっ」ベチッ
「…!?」ベチッ
咄嗟に外に逃げようとした僕らをガンマンもかくやという速度で彩が仕留める。

「逃がさないわよ…」

「あ、彩…てめぇ…」
「元凶は明久よ」
「……またお前かっ……!」
そんな!?僕はただ地獄の真ん中でワラをつかんで万一のために巻き添えを呼んだだけなのに!
「さー…よく来てくれたわね皆。…よくも明久死ね」
「え!?何で僕だけ罵声!?」
「あんたのせいで…あん……せ…で瑞希……姉が本気……て…」
ぶつぶつ言っている彩が凄く怖い。
「彩ちゃん、どうしたんですか?」
「な、なんでもないわよー?急いで入ろうとした男子がちょっと転んじゃって」
「ふふっ、そんなに急がなくても、料理は逃げませんよ」
むしろ僕らが逃げたい。
「さー…夕食会によ・う・こ・そ」
彩が満面の笑みで手招きをする。
どうしてこうなった。



「もうおしまいじゃ……。短い命じゃった……」
リビングに入ると、秀吉が隅っこでガタガタ震えていた。
その横では秀吉のお姉さんが白目をむいて倒れている。
「くそっ!何とかならねえのか!?」
「……生きたい」
その様子を見て悪友達が葬式ムードを出し始めた。
「あきらめちゃ駄目だっ!秀吉!ねえいったい何があったの!?」
「あ、明久!よかったのじゃ……主も一緒に逝ってくれるか」
「秀吉!?しっかりして秀吉!?希望を捨てちゃ駄目だ!!」
「っは!そ、そうじゃの……じゃが……」
「とにかく、何があったのさ!」
「電話で彩と姉上が霧島や姫路を呼んだのじゃが……その……姫路が『せっかくの引越しパーティーだし明久君も来るなら…腕によりをかけて料理を作ってきます!』といったそうでの」
もうおしまいだ。
「やっぱりお前のせいじゃねえか!!死ねこのバカ!」
「……地獄に落ちるべき!」
「ははは、何言ってるのさ雄二にムッツリーニ。僕たち友達じゃないか」
死ぬときは一緒さ。
「なんでお前の巻き添えで俺らまで死ななきゃならねえ!!」
「雄二はよいじゃろ…少なくとも主に命の危険はない」
なん……だと……!
「は!?それはどういうことさ秀吉!!」
「……理不尽」
「霧島が雄二のために料理を作ってくるといっておったからの…隣なのに遅れてるのは、そういうわけじゃ……」
「あいつの料理だけたべてれば命は助かる…だがそれだと人生が詰む…っ!」
雄二が生命の危機と人生の危機で葛藤してる。
くそっ!僕は生命の危機と彩からの危機で葛藤してるのに、こいつはなんてうらやましい葛藤をしてるんだ!


ボンッ!!


……なんか、キッチンから妙な爆発音と煙が……。


「あの…明久君」
「え、えーと…姫路さん、どうしたの?」
主に今の爆発音とか。
「明久君、ちょっと必要な道具があるんですけど、持っていませんか?」
「あれ?それなら彩や秀吉のほうが詳しいんじゃ」
「彩ちゃんに聞いたらちょっとないらしくて…もしかしたら明久君なら持っているかもと思って」
「あぁ、そうなんだ何かな?」
「えっと、瞬間接着剤なんですけど」
……は?
えーっと何で料理をしていたはずの姫路さんが瞬間接着剤を探しているんだろう?
それ以前に、なぜ姫路さんは僕なら瞬間接着剤を持ってると思ったんだろう?
「えっと、姫路さん。瞬間接着剤は、料理に使うものじゃないんだよ?」
「?当たり前じゃないですか。何を言ってるんですか明久君ったら」
「は、ははは、そうだよね。料理になんて使う分けないよね」
「はい。ちょっと圧力鍋が爆発しちゃったので修理しようと思って」


も う お し ま い だ !


僕の脳裏に小さいころからの思い出が巡ってくる。
泣いていた彩に合ったあの日。
姉さん達が海外に行くと思ったら監視役の彩が毎日起こしにに来てたあの日々。
そして目の前で僕にトドメを刺そうとしている姫路さんと始めてあった日…。
「明久?何やってるの?」
「あ、彩!」
「彩ちゃん。どうかしたんですか?」
「うん。圧力釜なら、ちょっと予備が合ったからこれを使お?」
ナンデワザワザジゴクヲアトオシスルノ!?
「ありがとうございます!じゃあ早速作り直し――」
「あ、あと、ちょっとこれ味見してくれない?ほかの人の感想が聞きたくて…」
彩が持っていたお皿に入った液体は鮮血のように赤かった。




[15751] 引越しパーティーとツイスター
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/04/25 13:59
「彩ちゃん、これとってもおいしいです」
「そう、よかったわ。まだたくさんあるから好きに飲んでね、ほら」
そう言いながら瑞希にワイン瓶とコップを渡します。
「ありがとうございます彩ちゃん」
「ついでにちょうどサラダができたからそれと一緒に運んでってくれる?」
「はい♪わかりました」
よし、これでとりあえず最悪の事態は避けられました。
「ねえ彩、今姫路さんに何を飲ませたの?」
「ワインよ」
「な!」
「咄嗟に義父のワインを出した私に抜かりはなかったわ」
まあ、最終手段なのであまり使いたくはありませんでしたが。
「なんてもん飲ませてるのさ!」
「あ、玲姉にも飲ませたからあそこで眠りこけてる玲姉ちょっとはこんどいて」
明久が抗議しますが、ほかにどーしろっちゅーんですか。
私だって命は惜しいんです。
メインディッシュははりきるって方向で前回妥協したせいで二人が劇物てんこ盛りの化学実験をはじめたんです。
「ま、なんとかなったからいいかー」
とりえず、秀吉といちゃついてー…。
「彩ちゃん」
「ん?どうしたの瑞希」
「彩ちゃんも一緒に飲みましょ」
…へ?






<side 愛子>



「うわぁ…」
真っ青な顔の秀吉くんに案内されてリビングに入ると、瑞希が彩の口にワイン瓶を突っ込んでいるところだった。
「えっと…なにこれ?」
「……」
「?秀吉くん?」
ボクの声が聞こえないかのようにフラフラと坂本くんのほうによって行く秀吉くん。
「雄二よ…もうおしまいじゃ…式はいつかのう…?」
「何だ秀吉!?不吉な事言うんじゃねえよ!!」
「…詳しく」
「翔子お前いつの間に!?」
「今さっき愛子たちと」
うん、なんか面白げなことになるのは分かったよ。
「あー愛子ー♪よく来たのですよ~」
「っと彩、お邪魔してるね」
「ムッツリーニは向こうですよー…楽しくなりそう♪」
…うん、なんかボクにとってもピンチな事は分かった。
彩、口調安定してないし。
「あ、ボクちょっと急用を思い出したから」
くるっと180度Uターンして玄関にダッシュしようと、
「どこに行こうってのかしら愛子」
したら優子にとめられた。
「ゆ、優子?どどうしたの?顔真っ青だけど」
「…聞かないで。それよりも、あなた一人だけ逃げるなんて、許さないわよ?」
「ふふ~楽しいパーティーになりそぅねぇ」





…どうしてこうなった。






食事中、秀吉くんが標的だったのか何とかこっちに被害は来なかったから何とかなるかなーとかおもってたけど甘かったみたいだね。

「ツイスターゲームをやりましょう♪」
小悪魔めいたいい笑顔で彩が用意したツイスターゲームをやる嵌めになった。
抵抗?
あの状態の彩にはむかえる人っているの?
拒否しようとしたムッツリーニ君彩に耳打ちされた後からずっとガタガタ怯えてるんだけど?
「っていうかムッツリーニ君近いよ!」
「…これ以上どうしろと」
ムッツリーニ君が無愛想に返してくる。
ちなみに今のボクらの状態は、ムッツリーニ君がしりもちをついたような状態で真ん中に陣取っているのに対してボクはムッツリーニ君の足に平行にまたぐような形で四つんばいになってる感じ。なんとかぎりぎり触れない程度の状態。
まったく、せっかく顔も合わせられない状態から何とか話せる状態まで落ち着いてきたのに、これじゃあまた逆戻りじゃないか!
ここはなんとか彩を説得して…。
「彩!やっぱりちょっと――」
「そういえばーこの前の強化合宿の…」
「早くルーレット回せばいいだろこの悪魔!」
そして楽しそうにルーレットを回す悪魔。
「緑で左手ねー」
「……!」
「なっ!もしかして彩ルーレットに細工してないかな!?」
「失礼ねーこういうのは自然に任せてくんずほぐれつになるのがいいんじゃない、隣みたいに」
そういう彩が指差す方向では必死にまだ2~3手目のはずなのにすでに接近しまくってる翔子と坂本くん。

「翔子待て落ち着け!その位置はヤバイ!次に俺が動けねえ!」
「大丈夫、私にのしかかれば問題ない」
「それが問題だっつってんだろーが!!」

うわー…。
「じゃあほら早く、緑で左手♪」
どうしよう?
ボクから見て一番奥にある緑の丸。
一番右側の丸に手を着けば離れられるけど、多分体勢を維持できない。
できれば早く終わらせたいゲームだけど、彩が「負けたほうは勝ったほうのいうことをなんでもひとつ聞く」とか言うルールを作ってくれたおかげで負けたくない。
…と、いうかムッツリーニ君があんまり動揺してなさそうなのがムカつく。
昔の君なら足にまたがった体勢になった時点で鼻血だしてるよね?ほら、谷間とか見えてるでしょ?
「…ねえ、ムッツリーニ君」
「…なに」
「ボクの谷間、どうかな?」
「…!!興味ない」

イラッ

「じゃあちょっと左手移動するから」
「……!?」
そういって、ボクはムッツリーニ君の首の間左にある緑丸に手を置く。
すると、完全にボクがムッツリーニ君を押し倒したような状態になった。
さすがにまっすぐ首を向けてるとムッツリーニ君の顔が近すぎるのでムッツリーニ君の左肩に顔を隠すように入れる体制にしたけど。

「おぉ~思い切ったわねえ愛子」
「……なんのつもりだ」
頭がぐるぐるしてきたせいで逆に楽しくなってきた。
ちょっと前のめりになって胸を押し付けてみる。
「……!!」
「どうかな?どきどきする?」
いたずらな声でムッツリーニ君の耳元でささやいてみる。
さすがにそろそろ鼻血でたおれるかな~?
「……!……興味ない」
倒れない。

イラッ

前は鼻血だしてたじゃん?何で出さないの?
ボクって君にとってそんなに魅力ないのかな?
なら…!

「あ、そうそう愛子」
「何さ彩」
「言い忘れたけど、その体勢であんまり動かないほうがいいわよー?」
…どういうこと?

「溶けるから」
「え?」
何を?と聞こうとしたのと急に胸元がスースーしだしたのはほぼ同時だった。
少しから身体をあげて覗き込んでみると、ムッツリーニ君と触れていた部分の服がぱらぱらとホコリっぽくなって溶けて(?)いた。
「……!?!?」
「彩!?ななななな何さこれ!?」

「おい彩!何だこれ!?俺と翔子の服が溶けてるんだが!?」
「雄二、積極的」
「どうみても1ミリも俺の意思じゃねえだろうが!!」
隣でも同じことになってるのか、坂本くんが叫んでいる。

「そのマットに仕込まれたNASAの新技術よ!マットの中にいるほかの人と服を介して触れると、触れた部分の衣服が溶けるわ!」
「なにやってんのさNASAーーーー!!!!」
「なにやってんだNASAーーーー!!!!」
叫びながら咄嗟に右腕で胸を隠す。
「って、きゃっ!!」
「……!?」
そしてそのせいで体勢が崩れたせいでそのまんまムッツリーニ君にかぶさるように倒れてしまった。


ドタン


「…ったたた…。えっと…ムッツリーニ君?大丈夫」
「……な!?……ななな!?」
あれ?なんか凄くムッツリーニ君が動揺してるよ?


ぽよん


ぽよん?
とりあえず視線を下げてみる。
完全にはだけたボクの胸。
そしてそのボクの胸の片方を鷲掴みにしてるムッツリーニ君の手。
顔が真っ赤のむっつりーに君。

「……ち、違!」
「……」

「!」

えっと!?
ムッツリーニ君がボクの胸を触ってて!?
っていうか鷲掴み!?
それ以前にボクの上半身前部ほぼ裸で全部ムッツリーニくんに見られて…。

「な、なななななななななな!?」
「……お、おちつっ!落!?」
「~~~~~~~~~~~!!!!!!」



ッポン!


頭の中でなんか変な音がなって、ボクは意識を手放すことになった。



[15751] 亥の刻 木下秀吉の独白
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/05/16 22:08
<side 秀吉>


「うんぅ…ひでよしぃ…」
「まったく、主は自重と言うものを知らぬのか」
女性陣が軒並み酒におぼれた乱恥騒ぎが終わり、男性陣もそれにも巻き込まれてほぼ泥酔状態になっておる。
そんな中、完全に熟睡している彩の呟きに、夢の中でもワシのことを呟いてくれている彩に、心が和む。

それと同時に…

「ワシの前以外でも、そういう安らかな顔をしてほしいものじゃ…」
ワシが見ている限りでは、ワシだけにしか見せぬその笑顔に不安を覚える。

酒に酔った故に回るワシの頭が疑問を呈す。

ワシになど想像もつかぬほどの富を持ち、つかもうとすれば名声すらたやすく得られ、ワシが望むならば、すぐにでもスターに引き上げると断言する少女。
ハッタリではないじゃろう。
実際にそれを易々と成せるだけの才と富が彼女にはある。
ゴールドバーク監督をはじめとした多くの…ワシにとっては雲の上のような銀幕のハリウッドスターにすら一目を置かれる。
謙られ迎えられる。
そんな人間が彩じゃ。
事実、重鎮俳優をはじめ、新鋭のミスタ・ロドリーゴすら手玉にとって翻弄しておる。
彩に出会った頃はてんで実感がなかったが、彩と親しくなるにつれて、彩の持つ富に圧倒されてった。
それと同時に、始めてワシに…あの南国の夜に心からの安らぎの顔を見せられてからと言うもの…。
ワシは、その顔が希少であることを理解するにつれて、に不安を覚えるようになった。

…この年の少女には不相応の、まさに巨万と言えるほどの富。

冗談ではなく数万人の人生の行き先を握り、数千人の人間の人生に責任を負っておる、
その重責はいかほどのものじゃろうか。
普通の女子校生に耐えられる責ではない。

仮にワシがそれほどの重責を負わされたら…耐える自信がない。

素人であるワシでも分かる…ゆえに、それ故にワシは、それほどの人物がなぜワシなぞに惚れたのかが解せない。

ワシの何が彩にとって魅力となったのかが解せぬ。




役?

役になりきることに自信はある。
しかし、演技というものは魑魅魍魎の中を生き残り、その上で財を成す彩にとって、容易に心を仮面に塗り固められるワシのような役者は煩わしいモノではないのじゃろうか。




では学?

それこそない。
演技の技にかまをかけるあまり、ワシの学力は本気のときの彩の足元にも及ばぬ。




ならば容姿?

確かにワシは、不本意ではあるが姉上と間違われるような、女性のような容姿をしておる。
端麗であるとの自覚はある。

…じゃが、彩ならばワシよりも見目麗しい御仁と誼を通じることも余裕じゃろう。





ならば…





いや、それはまだいい。
以前、ワシが疑問に思いそれを問いただしたところでは、彩の答えは、
『女が男に惚れるのは打算じゃない。気がついていたら貴方の才…人と成りに惚れて、見るうちに貴方のすべてを愛しく思うようになっていた。それじゃあ、だめかしら?』
と、いうことじゃった。

もちろん、納得はいかんかったが、しかし彩が嘘を言っているようにも思えんかった。
なにより、あそこで彩が嘘をついても何の徳もない。
考えうる限りにおいて、ワシの存在なぞ彩にとって無価値も同然なのじゃ。

故に、彩にとってのワシの価値はワシの思考の外にあるのじゃろう。

ゆえに、本当にワシのことを思っていてくれているのはワシにも分かる。
打算ではない。感情によるものじゃと。
解せぬが、理解はできるのじゃ。
ワシに解せぬ何かが、彩にとっての魅力になり、それによってワシを想ってくれておるのじゃろう。

ならば…。




ならば、ワシは男としてその想いに応えられているのじゃろうか?



「んぅう…」
「っと、もう少しでベットじゃから、堪えてほしいのじゃ…」
言いながら、彩の声を聞く。
あまりに軽い。
ワシと同じほどの体重じゃろうか。
彩の体重は、ワシですら抱えられる程度でしかない。
しかし、その重みが、質量以外の重みが重いのじゃ。


ワシのような若輩者に彩のような世界を渡り合う豪傑が寄りかかっておる。

思えば、彩が自らのことを事あるごとに『成金』と呼ぶのもうなずける。
こやつは自らをそれほど価値のないものだと必死に訴えておるのじゃ。
決して神のようではなく、タダのお前と同じ人間なのじゃと。
それはつまり、今の自分の立場に溺れそうになっている叫びではないのじゃろうか。

それと反比例するように奴の表情は凝り固まっておるように見える。
特に、ニュースでよくやっていた…サ、サー……――サプライズローン?(注:サブプライムローンです)などというものがおこってからは、益々ひどくなっているように思える。

向日葵組と彩が呼ぶ奴らに拉致られようとも、日々忙しく謀殺されようとも、彩は決して怒や哀の表情は見せない。
口上では怒っている。じゃがそれは怒りではない。
なんというか、漫才でのツッコミ役のようなそういうニュアンスなのじゃ。
故に、口ではなんと言おうとも結局は楽や喜の感情しか見せておらぬ。
不自然すぎるのじゃ。
それは生活全般でもいえよう。

生活において、そのほとんどで『喜』か『楽』の表情しか見せない彩。

役者を目指しているワシならば分かる。
彩は『仮面か素顔』の区別がつかなくなってきているのじゃ。
役に溺れているともいえる。自らに自覚があるかどうかは判らぬが。
いや、役から抜けれなくなっているのかもしれぬ。


「よっ…と」
「……ん」
背負った彩をベットに何とか寝かしつける。
彩はさほど大きいと言うわけでもないが、ワシの体格では彩を運ぶのですら一苦労じゃ。


…そうするのが最もよいから、最善手じゃから…故に常時その顔になる。


それは、とてもとても寂しいことじゃ、
人に、親友にすら本心を明かせず、ただ楽の感情に流され、それによってすさんだ心をごまかす。
ぎりぎりの綱渡りのようにしか、ワシには見えぬ。

それが持つものの、お前の言う『成金』の業なのじゃろうか?

しかし、それでも、業に侵されてなお、ワシの前ではこのような安らかな笑顔を見せてくれる。


そう、ワシの前でのみ。


おそらく…うぬぼれでなければ、ワシの前でしか見せぬであろう。
それほどの、世界でも有数の人物が寄せる信頼。

「……。」

何故、ワシだけにその表情をみせてくれるのじゃろうか。
何故、おぬしともあろうものがワシにこれほど執着するのであろうか。

「判らぬ…」
「ん…?」
「っ!」
ワシの言葉に彩がかすかに反応する。
ソレにワシは肩を振るわせる。が、それは杞憂で、すぐに彩は静かに寝息を立て始めた。

ほっと、ため息をついて


「…っ」
言い知れぬ不安に襲われる。



主はワシを護っておる。
主はワシを慕ってくれる。
主はワシの望みをかなえてくれる。
主は愛しい。
主はワシをワシたりえるように支えてくれる。




…では、ワシは?





今…いや、彩が逃げれぬようになったとき、ワシは彩の隣にいる資格があるのじゃろうか。
彩が窮地に陥ったときに、ワシは助けられるのじゃろうか?



「…解は出ぬ、か…の」
ワシには…いまだ、解らぬ。
無力じゃの…。








「さて、ワシも寝るかの」
言って、彩の手を掴みながら床に入る。
「おやすみなのじゃ…彩…」
――じゃが…。

主がワシには思いもよらぬ重責に耐えておる中、宿木としての役割くらい果たしたい、と思うワシは傲慢かの? のう…彩よ。










[15751] 清涼祭とミスコンと策謀と
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/05/23 14:12
夏休みも終盤に差し掛かり、明久たちが涙目でたまった課題の山に絶望している今日この頃。
私はというと…


「しっかし、いくら小中高合同でやることになったとはいえ、思い切った予算を組んでくれたのです」
「今回は生徒会主催だから私のせいじゃないさね。お前さんだって乗り気だったじゃないか」
いつものごとく、学園長と打ち合わせ。今回は清涼祭についてです。

「じゃあそれはいいとして、なんで自立化システム費用名目で予算の三分の一を占めてる項目があるのかしら?」
「…細かいやつさねえ、そんなにカリカリしてるとボーイフレンドに怖がられるよ?」
「はったおしますよこのクソババア」
ちなみに、なぜ本来1学期にやるはずの清涼祭を二学期始めにやるかと言いますと、目の前のウルトラバカ長が学校の施設拡張しまくったせいで建て替え等々で体育会系施設の大半が使用不能になってたせいなのです。
というか、今現在でも新校舎とかの工期かかる奴は工事中です。


まあそれはそうとして。

文月学園文化祭である清涼祭。
本来は清涼祭単体なら生徒会がこれらを決裁するはずなのですが、今回はクソバ学園長が「思いっきりやっちまいな」との通達で全校ハッチャケすぎて予算オーバーしまくりーの小中高一環会計のテストケースになりーの等々の鬱陶しい理由ため、各生徒会から挙がってきた予算案をこっちで一括で決裁する事になったわけなのです。

「…で、どさくさにまぎれて前に実験したアレの予算を入れたと」
「どさくさにまぎれてとはひどい言い様だあね」
「何も言わずにしれっと予算計上してる時点でどさくさ以外の何物でもないのです。第一アレはまだ調整中じゃなかったのですか?」
「いいや、前の実験データで問題点は大体把握できたからね。後はシステムを発注するだけさね」
「清涼祭は2学期始まってすぐなんだけど、間に合うのかしら?」
調整失敗に定評のあるババア長だけに心配ですね。
「そんな毎回調整失敗しているような言い方せんでおくれよ」
「二年になってから数ヶ月で2回も大規模な調整失敗が起こってるんだけど?」
「…まあ今回は大丈夫さね」
駄目だこいつ、早く何とかしないと。

…まあどっちに転んでも私には愉快ですし、まあいいですか。


「ところで、カヲルちゃん」
「…なんだい?」
「あんたんとこ、経営基盤は大丈夫なの?」
「またのそのはなしかい。それは聞き飽きたよ。金ならあんたが出す、学会への成果報告も順調、学園の評価をあのクソガキどもが下げてるが、それでも今年度で国公立の指定校が実れば何の問題もないさね」
「国立一期にスタンフォード、タフツ、プリンストン、マサチューセッツ、ケンブリッジ…。まさに錚々たる布陣だしねえ」
「なんか増えてないかい?」
「ちょっとつてでね」
「……まあ、こちらとしてはありがたいがね」
「入るのは顔パスでいけるでしょうけど、あっちの大学はちゃんと勉強しないとすぐ落伍するからちゃんと推薦生徒は選んでねー」
「わかってるさね」
やれやれといった表情でカヲルちゃんが首を振ります。
分かればいいんです。分かれば。

…ってそうじゃないんですよ。

「教頭ですよ。竹原先生」
「教頭? また近隣の私立校に出入りでもしてるのかい?」
「…またって、以前もしてたんですか…?」
「本人はばれてないと思ってるようだがね。ま、あんたが入学してからはぱったり無くなったからすっかり忘れてたよ」
「年ですね」
「やかましい。…で? その教頭がどうかしたのかい?」
「最近やたら私を食事に誘ってきてうっとうしいです」
もちろん断ってますが。
「援交は感心しないねえ」
「私は秀吉以外に身体を許すつもりはないわよ。はったおすわよ?」
「…で?」
「私のほうから出してる理事にも頻繁に接触してるみたいね。ご丁寧に渡米までしてね」
「最近海外出張が多くなったと思ったらそんなことをしてたのかいあいつは」
いや、その時点で気づくのです。
「ま、私はいまさらあんたを失脚させようなんて思わないけど、注意はするのですよ?」
「またなんかあったら教えておくれよ。」
「なーんで私が100%カヲルちゃんの味方前提なのかしらね」
「あんただって、私のほうが学園生活を楽しみやすいんじゃないのかい」
このババアは…。
「…わかったわよ。なんか合ったらまた言うわ。こっちからはうごかないけどね」
「あぁそこまでやってもらわんでもいいさね。身内の都合は身内で何とかするよ」

…原作ではなんとかできずに明久たちを頼る羽目になってたけどね。
ま、もうすでに原作とか全然当てにならないほど剥離してるけど。
そう心の中で呟きながら、学園長室を後にした私は、清涼祭同時開催の文月学園ミス・コンテストの概要案に目を通すことにしました。







そんでもって当日。

予定では女装コンテストはミスコンの直後に行われることになっています。
いやー楽しみですね。
本来はミスコンだけだったんですけど、ごり押ししました。
そんくらい役得がないと駄目ですねー。
あ、ちなみに秀吉はアンフェアとか実行委員の一部に言われましたがミスコンと両方に出すってことで通しました。
ほかにも…ふふふ、楽しみですねー今日は楽しいですねー。

「ねえ、なんか朝から彩のテンションが高すぎて怖いんだけど」
「あ、あぁ…翔子もなんか今朝は襲撃に来なかったし…」
「…不安」
「おい秀吉、お前なんか知らないか?」
「知らぬ…が、悪い予感しかせぬな」
そして、朝っぱらから有頂天な私に視線を向けながらヒソヒソ話す秀吉、明久、雄二、ムッツリーニの四人。
知らぬが仏とはよく言いますね。
あ、ちなみに参加する本人達には何も言ってません。だって逃げるし。


「彩よ。お主一体何を企んでおる?」
「なによー私がいつも策謀めぐらせてるような言い方でー」
「わしの経験上、主のそのテンションは主にわしがろくな目に合わぬ予兆故の」
「大したことじゃないわよー? 秀吉のチャイナウエイトレス姿が楽しみなだけよー?」
言いながら、カバンから秀吉用のチャイナを取り出します。
あ、ちなみに我がFクラスはチャイナ喫茶をやることになりました。
茶葉や点心など私のツテで一流の素材をムッツリーニ調理で提供です。
これの利益で最高級畳敷の和風教室に代えるのですよ。
人体実――…じゃなかった各種実験は他学年のFクラスでやればいいですしー。
「ほら! 秀吉専用に背中がカッポリとはだけた特別仕様!」
「おぉ!!」
「しかもミニよ!!」
「…流石彩。よく分かっている……っ!」
「な!? そんなものをいつの間に用意したのじゃ!?」
「ちょっとイタリアの知り合いでこういうの作るのが得意な職人さんがいてねー」
「…彩、連絡先を教えてほしい」
「いいけどムッツリーニってイタリア語話せるの?」
「…目的のためなら3日で覚える……っ」
エロにかける執念は凄まじいですねあなた。
「まあそんなわけで。ね♪」
「どんなわけじゃ!」
「いいからいいからー」
「い、嫌じゃ! わしは断固着ないのじゃ!」
んー…どうしたもんかしらね。

「あの? 皆さんどうしたんですか?」
「あ、瑞希。着替えは終わったんだ?」
「はい。彩ちゃんの用意してくれたチャイナドレス、ぴったりでした♪」
まあそりゃあの爺にかかれば写真見ただけで楽勝よね。
とりあえず全力で写真取り捲ってるムッツリーニに後で送付用のもらっとくかしら。
「それで、なんか揉めてたみたいですけど」
「それがねー秀吉が私と一緒じゃないとチャイナウエイトレスをやりたくないってー」
「そもそもわしはそのチャイナ服を着たくないといっておるのじゃが!?」
「じゃあ、代わりに私が厨房には入りま――」
「秀吉!? さあ早く着替えに行きましょう!? もうすぐ学際始まるし! 私もミスコン運営にそろそろ行かないといけないし!?」
「そそそそうじゃの! そういうわけで姫路よ! 主は先にテーブルとかのチェックをしてくれぬかの!?」
まくし立てるように言ってバックヤードに撤退します。
「やばかったー…危うくチャイナ喫茶が殺人喫茶になるところだったわ…」
「と言うか彩よ…どうしてもわしはこれを着なければならぬのかの?」
「まだ言うの? ミスコンには美波も瑞希も参加するのよ? 美波がいないときに瑞希が変なお茶を入れたらどうするのよ?」
「ぬう…それはそうじゃが」
「っと、そんな事いってる間にミスコンの一次選考じゃないの」
「ぬ? そうなのかの。なら、早く行くがよい」
「何言ってるの? あなたも行くのよ。私と同じグループなんだから」
「初耳なのじゃが!?」
「今言ったからね」
「おーい彩」
「あ、優子」
「姉上ちょうどよいところに! 姉上からも…」
「何してるのよ? こいつが抵抗するなら私が〆とく?」
「あ、お願いー」
さて、じゃあ行きますかねー。
「あ、彩!? 姉上!? ――待ってほしいのじゃ! 関節はそっちには曲がらなっ!?」



[15751] 清涼祭とミスコンと策謀と②
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/05/10 00:13
「いや、なんか分かってましたけど」
「な、何じゃ彩…目が据わっておらぬかの?」
いや、いいんですよ? 秀吉は可愛いし。
予選審査でぶっちぎり1位通過ってのはいいんですよ?
ちょっと思うところがあったりなかったりしますが私で2位通過でしたし。

…まあ瑞希や美波はほかのグループで一位通過なんでしょうけどねー。
死ねばいいのに。

まあそれに。

「ふ、ふふふふふ…」
このどうしようもない感情は優子のほうが強そうですしね。
まあ容姿は同じなのにトリプルスコア近く出ればそうなりますよねー。
「あ、姉上?」
でも参加させておいてなんですが、なんかこう…言い知れぬ敗北感。
「ねえ秀吉? 腕の関節2~3個増やしたいと思わない?」
「あ、姉上!? 思わぬ! 思わぬからその手を離し…!?」
まあいいか。可憐な姿の秀吉見れましたし。

「何で容姿はほとんど同じなのにあんたがぶっちぎりで予選通過なのよーー!!!」
「わしとて参加したくて参加したわけじゃないのじゃああああーーーーー!」
プッチン・THE・姉弟。

「うるさーい! このーーー!!!」
「ま、待つのじゃ! ホントに折れ――!? あ、彩ーっ! 助けてほしいのじゃ!!」
見るとなんか優子が全力で秀吉に関節技をしかけていました。

「え、何やってるの優子!?」
「止めないで彩! 私はこのバカを制裁しないといけないの!!」
「理不尽じゃーっ!!」
「えーと、優子。そのくらいにしておいたほうがいいわよ? 秀吉にあたっても結果は変わらないしね」
「…彩がそう言うなら…まあそうね」

「た、助かったのじゃ…ありがとうなのじゃ彩」
「今日は10ラウンドね?」
「冗談じゃ…ろ?」
「マジよ♪」

「…」
「…」

「わし、何か悪いことをしたのかのぅ…神様ぁ…」
秀吉、何故そこでレイプ目になるのですか。
まあいいや。

「ところで優子のクラスの出展は何をやってるの?」
「Aクラスはメイド喫茶よ」
「へーそうなんだ」
「あ、そういえば翔子に伝言頼まれてたんだった」
「はいはい。どうせ雄二関連じゃない?」
「当たり」
「了解~♪ じゃあ早速教室に戻ったら早速雄二を連れてくわね」
「よろしく。じゃあまた後でね」
「さ、秀吉行くわよ」







「ほぅ…」
「結構繁盛してるわねー」
秀吉と一緒に教室に戻ると、Fクラスの前には行列ができてました。

「あ、織部」
「雄二おつかれーそれにしても繁盛してるわね」
「あぁ、お前が頼んだ肉まんがなんか異様に売れててな」
「まあそうでしょうね」

「…で、秀吉はなんで何でもうメイド服なんだ?」
「こ、これには深いわけがあるのじゃ!!」
「『もう』じゃなくて『まだ』よ。ミスコンの衣装そのままなんらだから」

「…まあどうでもいいか」
「な!?雄二よ!!それはあんまりじゃないかの!?」
「早くシフトをチェンジしてくれ」
「スルーしないでほしいのじゃ!!」
秀吉が涙目です。可愛いです。

「はいはい了解~」
そう言いながらちらりと瑞希を見ます。

ちょうど接客途中でした。
客の視線は胸に集中してますね。計算どおり。
…まあ私が代わっても同じなんでしょうねぇ…。
あんまし秀吉以外に露出した姿を見せたくはないんですが、まあお祭り騒ぎだし、しかたがありませんね。

「さて、じゃあちょうどミスコン瑞希たちの番だし、さっさと着替えて代わってくれる秀吉。私は着替えてくるから」
「じゃからわしはまだ同意しておらぬと――!!」

「雄二と明久はそれぞれ翔子と瑞希・美波の応援よ。ほかに誰がいるのよ」
「ではムッツリーニが――!」
「ムッツリーニはね」
「あ、いたいたムッツリーニ君」

言いかけたところでちょうど愛子ちゃんが入ってくる。
「工藤、愛子…!?」
「ほら、もう僕の番が始まっちゃうんだよ? 必ず君を出血死させてあげるから」

そういいながらムッツリーニの腕を引っ張っていく愛子。
「なにを…!?」
「…あの、愛子ちゃんどうしちゃったんでしょう」
お、瑞希いつの間に?

「んー、とりあえず先に羞恥心を打破することでムッツリーニに優位に立とうとしてるんだろうね、一歩踏み込まれるとスッゴク動揺すると思うけど」
「羨ましいです」
「憧れるわねー」
そういいながら羨望の目で美波が愛子ちゃんを見ます。

私も目線を向けると、ムッツリーニが必死に何か目でサインを送ってました。
「…!(S・O・S)」
「まあ今日は赤十字の献血車も来てるし大丈夫よ。あ、愛子?」
「ん?どうしたのさ彩」
「がんばれ~」
「…? …もちろんだよっ!」
そう勢いのよい返答をして愛子はそのままムッツリーニ君を連行していきました。

…んー、アレはなんか肉体的な方向でごまかしてますねえ…。
それがうまくいってもただ元通りな関係だと思うんですけど。
もうちょっと精神面でも揺さぶりは必要?
でも手荒なことはなあー…。

「…」

…まあ今は学祭学祭最優先です。


「さて、じゃあフロアに入りましょうか」
「主、いつの間に着替えたのじゃ」
「ここで、今さっき」
そのために注意を愛子たちにそらしてたんですし。
「スタッフルーム側だからクラスメイトの視線さえ別に移しちゃえばどーって事ないのです」
「お主というやつは…」
なんか秀吉が頭抱えてます。


……
………ピコーン

「私だって秀吉以外に裸を許す気はないわよー?」
「なっ!?」
「あぁもうかわいいなあ!可愛いなあ!!」
「じゃから主はっ!」
「脱ぎたての制服あるわよ?」
「…っ! わしはそんなものに興味はないわ!!」
「うふふふふ。そんな事言ってこの前私の部屋で」
「な――」

「何の話をしてるんだ?」
「あぁ雄二? 実はね」
「わー! わー!! 彩よ! もう瑞希と変わる時間なんじゃろ!? なら早くせんか!!」

「ちょ、秀吉ひっぱらないでよー? …あ、それと雄二」
「なんだ?」
「あんたもさっさとミスコン会場に行きなさいよ?」
「あ?何で俺が」

「それはね――」

「つきは翔子の番だからよ。坂本雄二」
「き、木下!?」
「あ、優子。お迎え?」
「そうよ。ほらFクラス代表。キリキリ歩きなさい!」
言いながらスタンガンをバチバチさせる優子。

「な!?木下お前なんでそんなモノを!?」
「ごめんなさいね。今回は私情はないけど、あんたをミスコン会場に連行しないと、私の身が危ないの」
「それは思いっきり私情だろうがーーー!!!!」

「あー、雄二がまるでボロ雑巾を引きずられるように連行されていくわね」
「…雄二よ、何事も諦めが肝心じゃぞ…」

「じゃあ私たちもさっさと瑞希たちと交代してあげますか」
「…そうじゃの」






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ちょっと行間を変更



[15751] 清涼祭とミスコンと策謀と③
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/05/20 15:10
思えば2年になってからの私はというと重要なところでいつも拉致されていたように思います。
初めての試験召喚戦争では2回もらちられてますし、それから重要イベントが発生するたびにいつもいいところで拉致されていた気がします。
ある種のお約束となっていた感も否めません。
一応警戒してSPとか雇う手はずにはなっていましたが、配備はそれもこの学園祭が終わってからです。

正直、ちょっと油断しすぎてました。思い立ったら即配置すべきでした。
自分の身分をなめていたといってもいいかもしれません。



まあ何が起こったかといいますと。

またら拉致れました。しかも今回はヤバげっぽ。




視線には鉄骨がむき出しになった柱、まあ要は建築途中の建物内でしょう。
遠くに祭の喧騒が聞こえるので、おそらく新施設の中。
いろいろ同時に立てているので、どの施設かは判りませんが、まあどの施設でも違いはあまりありません。

むしろ重要なのは…

「何、何!? 何でボクこんなところにいるの!? 何で手錠かけられてるの!?」
「…ここ、どこ?」
愛子と翔子もいること。
そして私も含めて後ろ手に手錠をかけられてるところです。
今までには明らかに違う手法です。
それが指す意味は…。

「どうやら誰かに誘拐されたみたいね、私たち」
「彩!」
「…誘拐?」
向日葵の場合は強制的に拉致してはきますがこういう身柄の拘束は絶対にしないですし。
場所的に考えてもこの状態を考えても害意ある人間に拉致られてたとみてまず間違いないと思います。

「お?気がついたみてえだぜ」
さらった奴がどこかにいるかと辺りを見回すと、ちょうど入り口からいかにも柄の悪い男達が入ってきました。
人数は七人…結構多いですね。

「じゃあ早速ヤっちまおうぜ! 俺巨乳チャンね!」
「あっズリー! じゃあ俺2バーン」
「じゃあ俺はそのショートのこにすっかな」

「あ、あんた達何なのさ!? こんな事してただで済むと思ってるの!?」
「ていうか入りながら流れるようにゲスい台詞を吐くとは何という高等スキル。まあ羨ましくもなんともないけど」
「…下種」

「「…」」

「…彩、あんたこんな状況でよくそんな事いえるね…」
誘拐されなれてますしねえ。
「…余裕?」
余裕じゃないよー本当に。
今回はヤバげなので結構あせってますよー。

「ヒャハははは! お前ら状況わかってんの?」
「いやむしろいいんじゃね? 強気な女をヤク打ってよがらせんのとか俺大好き」
言いながら愛子のほうに寄ってくチンピラ。

「いやっ! 来ないで!! 来んなっ!!」
「大丈夫大丈夫、すぐ気持ちよくなるってゲヒャハハハ」

「あー盛り上がってるところ悪いんだけど」
「あ?」
「ちょっと一点お聞きしたいんですが。いいかしら?」
「ぁん? 何だよ」
「…あんた達、なにが目的かしら? 身代金? 何十億要求するか知らないけど、泡銭は身を滅ぼすわよ?」
「…」
私の言葉に顔を見合わせるチンピラたち。

「ギャははははは!!」
そしてそして下種い笑い。
虫唾が走る。

「『泡銭は身を滅ぼすわよ?』だってよ!」
「何言ってんだテメエ? 俺達は単にお前をさらって犯して写真に撮っちまえって言われただけだぜ?」
つまり誰かの依頼、と。
まあそれも気になるけど、それより…。

「…えーと、もしかしてあなたたち、私がどういう人物か知らない?」
「あ? どういう意味だよ」
「ただのハッタリに決まってるって! どうでもいいからさっさとヤっちまおうぜ」
うん、知らないっぽいね。

…うーわー…。

「彩?」
「ちょっと本気で貞操の危機かもー?」
「彩!?」

「言いたいことはそれだけか? じゃあオタノシミの時間――」

まあ一応説得はしますけど。
秀吉以外に犯されるなんてマジありえないですし。

「あんた達に依頼したのは痩せてて中くらいの身長のバーコードハゲ眼鏡じゃないかしら?」
「何で知ってんだ!?」
やっぱり依頼主は竹原みたいね。
「べ、べべべ別に俺らは誰かに依頼されたわけじゃねねねえぞ」
いや、さっき誰かに言われた的な事言ってたじゃないですか。

「…ケータイ持ってる?」
「あ? 当たり前じゃねえか」
「織部彩で検索かけてみなさい。ひらがなでいいから」

カチカチとケータイを取り出して言われるがままに調べ始めるチンピラ。

「日本長者番付2位 投資家 織部彩?」
「そうよ」
これで少しは…。
「…で、長者番付ってなんだ?」
「……」
そういえば見るからにバカでしたこいつら。

「一言で言うと日本お金持ちランキングよ」
「へースゲエじゃん…。ってお前がか!?」
「ようやく分かったかしら?」

「じゃあ犯して写真とったあとに身代金要求したらいいんじゃね?」
「おっ! それナイスアイデアじゃん! あのハゲからもらうよりずっと金ゲットできるじゃん!?」
「日本2位のお金持ちの身代金なら一生遊んで暮らせるじゃん! お前天才!?」
…駄目だこいつら、早く何とかしないと。

「別にあんたらが身代金要求した上で犯すってなら止めはしないけど、多分明日には死体で見つかることになるわよ?」

「「「あ!?」」」

「だって私たちあんたらの顔見てるし。一応これでも裏社会の人とも知り合い…あ、もちろん中央の若頭クラスでいますし。何本か積めばあんたらを物言わぬ亡骸にしようって人はたくさん雇えるし」
「んなハッタリが」
「そういう"裏"のつながりがなくてどうやってただの女子校生が日本有数の億万長者になるのよ」
嘘は言ってません。叔父さん経由で"イタリアの"大マフィアとは繋がりあるし。

「あ、犯して写真とって脅すってのも意味ないわよ? ネットとかに流す前に殺すから。分かったらさっさと開放しなさい。今ならあんたらの雇い主売るだけで許してあげるから」
言いながらチンピラをにらむ。


そして寄り合うチンピラ。
「おいどうすんだよ…」
「こんなヤバイ仕事なんて聞いてねえぞ!?」
「どうせハッタリだって」
「でもあのページにはっきり書いてあったじゃねえか。それにあのハゲのことも知ってるみたいだしよ」
「マジ俺ら死ぬかもしれねえの!? に、にげるか?」
「いや、今ならあのハゲ売れば…」
「じゃあ犯して壊しちまえばいいんじゃね!?」
「それナイス! そうすれば俺らみつからないじゃん!!」
「そうだよな! ちょっと多くクスリ打っちまえばすぐよがり狂って雌奴隷になるって!」

…お前らは何を言ってるんだ。

「あ、彩…?」
「ごめん交渉失敗したかも」
…ごめん。チンピラがあそこまでバカだとは思わなかったのよ。

「たぶんママとかがあのチンピラを惨たらしく殺す手配をしてくれるだろうからそれで納得して」

「あ、彩!? や、やだよ…!? ボ、ボク初めてなのに…」
涙をためて震えだす愛子。
「…雄二以外に奪われるなら舌噛み切って死ぬ」
既に覚悟完了な顔の翔子。

すごいね翔子は。
私とかとても無理ですよ、そんなすぐに覚悟完了とか。
私? 覚悟とか無理です。壊れるのも嫌です。
秀吉以外に犯されるとかありえません。考えられません。
…ホントどうしよう?

どうしよう、どうすれば…。






<side 明久>



彩たちがさらわれた。
休憩が終わってすぐ、ムッツリーニと木下さんから連絡があった。
そして、ムッツリーニの盗聴器(何で持ってるのかはあえて聞かないことにした)で居場所をたどって、二手に別れ、今雄二・僕・秀吉は建設途中の部活棟校舎の入り口前にいる。
ムッツリーニと木下さんは裏口から潜入してるところだ。
連絡は小型トランシーバでやってる。ホントに何でこんなもの常備してるのムッツリーニ。
本当はすぐにでも突入して助けたいけど、それは雄二や秀吉も一緒だろうし、我慢している。
特に秀吉は凄く目が据わっててちょっと怖い。なまじ美少女だけに凄むと怖い。

(おいムッツリーニ、中の音が聞きたいんだが、できるか)
(…いま周波数を合わせる)

『…それ以上近づくと、舌を噛み切る…っ』
『離すのですっ!! 私の身体は秀吉だけのものなのですっ!!』
『いやーっ! 触らないでよ変態!! だれか、助けてよぉー!』
『へっ! 叫んでも誰もこねえって』
『ヒャはは! はーいお注射の時間でちゅよ~もちろんヤクと俺のバットの二本立てのな!』
イヤホンから中の切迫した様子が聞こえてくる。

(っ!)
本当にすぐ危ない! 早く助けないと!
(下郎めッ)
(待て明久、秀吉。気持ちはわかるが勝手に行動するな。向こうは人質がいるんだぞ)
(くっ)
(…わかったよ)
…雄二の言うとおりだ。
ギリッという音が秀吉の口から聞こえた気がする。
学園長室から持ってきた日本刀を持つ手が震えていた。
秀吉が我慢してるのに、ここで僕だけ身勝手な行動をするわけにはいかない。

(ムッツリーニ、木下。配置にはついたか)
(…もう少し)
(中はもうやばい)
(分かってるわよ。あんた達もしくじらないでよ?翔子たちを怪我させたら許さないわ)
(あぁ分かってる)

(よし…じゃあゆっくりと)
雄二の合図でゆっくりと入り口に移動する。
そのとき、イヤホンから聞こえる中の様子が一層騒がしくなった。


『いやぁ…こ、のっヤメテって言ってんでしょうが!!』

ガッ

『グッ何しやがるこのアマ』
『きゃあっ!?』
彩の声と共に男のうめき声とそれに続いての彩の悲鳴。
そしてドンという何かを突き飛ばした音とガシャアン! と派手な音。
抵抗した彩が突き飛ばされる音だ。


(っ!)
頭に血が上るのが分かる。

でもそれは、


ブンッ


隣で何かが風を切る音で一気に覚まされた。

「? あれ? 秀吉?」
横を見ると、そこにいたはずの秀吉がいない。

(オイ落ち着け秀吉!!)
イヤホンから雄二の制止の声が聞こえる。
あわてて前を向くと刀を抜刀した秀吉が工事現場に向かって突っ込んでいるのが目に入った。
さっきの音は刀が風を切る音?
「ちょっ!? 秀吉!!」






「ワシの嫁に何をするんじゃ下郎めがぁぁぁあああああああ!!!」






僕らの声が聞こえないのか叫びながら建物に突進していく秀吉。
それはいつもの秀吉っぽくない様子。
秀吉、もしかしてキレてる?
とにかく追わないと!

「雄二!」
「ったく、秀吉はもう少し冷静だと思ったんだがな!」
悪態をつきながらもなんか雄二は獰猛な笑みを浮かべてた。

そしてそのまま中に突入する。

「はぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
「ギャあああああああああああああああああ!!!!!」
「秀、吉―――っ!?」

中に入ると、ちょうど秀吉が誘拐犯の一人に刀を振り落としていて、赤い飛沫が上がっているところだった。
その横では2人くらいが腕や足を押さえてのた打ち回っていた。

刀が本物だったのにもびっくりしたけど、それよりも秀吉が容赦なくそれを振るってることにもっとびっくりした。
一応腕とか狙ってるみたいだけど。
僕たちが入るまでのごく僅かの時間に3人も斬り倒してる。

あ、なるほど秀吉キレてるんじゃなくて、怒り狂ってるんだね。
秀吉が本当に怒り狂っている様を始めてみた。
普段怒らない人がキレると怖いって言うけど、今の秀吉は鬼かなんかと見違えそうだ。

そしてその姿があまりにも衝撃だったせいで僕の頭がクールダウンする。
「雄二!」
「おう! テメエら全員生きて帰れると思うなよ!!」
言いながら僕が正面にいた奴の顔面を殴り倒し、雄二が後ろにいた奴を一人倒す。
秀吉は逃げようとしていた一人の足を刀で刺していた。

「…主ら、これほどの事をしでかし、覚悟はできておろうな?」
そして秀吉が刀を振って血を払う。
その血はそのまま倒れてるやつ奴にかかった。

「ひっ」
「くそっ! 何だよこいつら!? こんなの聞いてねえぞ!!」
完全に誘拐犯たちは引いている。というか既に半分以上が動けない状態になってる。
残りは一人だっけ。
よし、このまま早く…。

「まて! こいつがどうなってもいいのか!?」
「嫌っ! 離してよ…っ!」
「! 工藤さん!」

声のするほうを向くと、工藤さんが誘拐犯の一人に羽交い絞めにされていた。
そして顔にはナイフが当てられている。


「…卑怯な!」
「卑怯もクソもあるかチクショウ! おとなしくしねえとこの顔をズタズタに」

ブチィ

「な、なんだ?」
「されるのはお前…!!」

ガンッ

聞こえないはずの嫌な音がしたと思ったら、天井からいきなりムッツリーニが音もなく降りてきた。
そしてそのままコンクリート片のようなもので男を殴り倒す。

で。

「……」

ゴッゴッゴッゴッゴッ

ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ

ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ

無言で工藤さんを人質に取っていた男をひたすら殴っている。
手にはナックルが握られていた。
男のほうは完全に意識がないのか殴られるまま首が左右に揺れていた。


怒り狂ってたのはひでよしだけじゃなかったっぽい。


「あ、あんなに怒り狂ったムッツリーニは始めてみたぞい…」
秀吉が呆然とした表情でムッツリーニを見ている。
いや、秀吉もさっきまでそんな感じだったよ。
今も返り血がひどいし。
完全に怒りで我を忘れた人間を見ると落ち着くってのは本当みたい。


秀吉は我に返ったからいいけど、ムッツリーニは…どうしよ。

「ねえ雄二、ムッツリーニどうしよう?」
正直、普段から考え付かないほど怒り狂ってるムッツリーニに近づくのは怖い。

「どうせ犯人がボコられてるだけだし、ほっといていいんじゃないか? それに…」
「それに?」
「案外すぐ正気に戻るんじゃね?」
「それってどういう――」

「ムッツリーニ君!!」
工藤さんの声で言葉がさえぎられる。
見ると、ちょうど横からっタックルするように抱き着かれていた。

「……!?!?!?!?!?」
それと同時にムッツリーニから出ていたさっきが消えて、代わりになんか混乱が始まってた。

「怖かったよぅ怖かったよぅ~~…!」
「おち、落ち着……!?」

「…」
ムッツリーニめなんて羨ましい!
あぁ、なんか今度は僕が嫉妬の炎で怒り狂いそうだよ。
とりあえず、横で涙目の霧島さんに抱きつかれてる雄二と共に後で異端審問会にかけないと。



[15751] 清涼祭とミスコンと策謀と④
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/05/23 15:15
<side 明久>

誘拐犯を縛り上げてから数分後。
ガタイのいいサラリーマン風の外人さん達がやってきて、誘拐犯たちを引き取っていった。
そのとき彩とその外人さんが何かを話していたけど僕は何も聞いてない。
「沈める」とか「臓器」とか「ミンチにして桜の木に…」とか聞こえた気がするけど絶対気のせいだ。
気のせいだったら気のせいだ。
「? 明久、どうしたの?」
「え!? な、なんでもないよ彩! それよりあの人たちって…」
「えーと…インターポールの方から来た人たちよ」
「インターポール?」
「国際警察よ。いろんな国で犯罪やってる犯罪者を捕まえる人たち」
「あ、そうなんだ。よかった」
なるほど、だから外人さんなんだ。
「もしかして、マフィアかなんかだと思ったわけじゃないでしょうね?」
ギクッ
「ま、まさかそんなわけないじゃないかー」
「そうよねー? じゃあ私はちょっと学園長と話があるから。あ、あと学園内はもうSP呼んでるから問題ないけど、念のため帰りにも翔子と愛子たちにはSPつけるからって伝えといて」
「うん。わかったよ彩」




<side 彩>


後のことを明久たちに任せた私は学園長室へと向かうことにします。
え? インターポール?
欧州方面(インターポール本部のあるところ)から来た人たちですが何か?
警察じゃ役に立たないこともあるのですよ。
とりあえず誘拐犯たちは依頼者をちゃんと吐かせた上で『社会貢献』や『環境貢献』してもらうとして、あとは教頭ですかね。
まず間違いなくあのアホが犯人でしょうし。
こんな穴だらけの計画に黒幕も何もあったもんじゃないでしょうしね。
多少の小遣い稼ぎをとやかく言うつもりはないってのに、よりにもよって私を敵に回して実権握ろうとか頭が沸いてるとしか思えないのです。

「こんにちはバヲルちゃん。話があるから人払いをしてもらえるかしら?」
「織部さん!?」
「バヲルちゃんって…」
入室早々歯に衣着せぬ言葉に呆然とする高橋女史とババア長。

「お、織部さん。学園長にそんな物言いはあんまりに失礼ではないのですか?」
「じゃあ言い直すわね。ババア、ちょっとおおっぴらにできない深刻な話があるから人払いをしなさい」
「…高橋先生、席をはずしてもらえるかね?」
「……わかりました」

納得できないといった表情でしぶしぶ高橋女史が退室していく。
でも残念ながら今の私はそういうのを気にする余裕がないので仕方がありません。

「で、何があったんだい?」
「今年の2年の修学旅行はシチリア島にしましょう」
「…教頭が何かやらかしたのかい?」
シチリア島って聞いただけでそこまで察するとは。
話が早くていいですね。

「私とAクラスの霧島翔子、工藤愛子の3名が一時誘拐された上に強姦されかけました」
「…まさかそこまでバカだったとは」
「頭沸いてるとしか思えませんね。小遣い稼ぎの小悪でハイになっちゃったんじゃないんですか?」
「…どうしようもないバカだねえあいつも…」
「誘拐犯たちは私のほうで自白させた上に処分します。表向きには"事件はなかった"。OK?」
「問題ない…というかそれしかないんだろう?」
「もちろんです。で、さっきの話に戻りますが、修学旅行の下見として教頭にはシチリア島に行ってもらいます」
「それだと奴は警戒すると思うんだが」
「警戒しようとシチリアに入った時点で事故死確定ですので。あ、見つかるヘマはしませんのでご安心を。ちなみにシチリア行きを拒否した場合、背任で起訴した上で"自殺"してもらいます」
「簡単に言うねえ…」
「議員を自殺させた実績もある方々ですからバッチリですよ」
そういうのがいるのを知っててSPひとつ雇わなかった私は甘すぎたといわざるを得ませんが…。

「わかったわかった…。勝手におし。シチリアの件以外は私は何も知らない。これでOKかい?」
「なにも問題はないです学園長」





さて、うっとうしいお話も終わったので私も学園祭気分に切り替えるのです。
ああいう嫌なことは忘れるに限ります。
誰かに聞かれたら「嫌な事件だったね」とか言ってごまかしましょうそうしましょう。
とりあえず教室に戻ってミスコンの結果を聞きます。
私たちは体調不良ということで棄権したことになってました。
まあ当然ですかね。残念なのは秀吉の女装姿を見る機会が一回減ったことですかね。
まあ今日の件で「怖いの」とか言ったら大抵の事は聞いてくれそうですけど今の秀吉。
ということは今日は……ふふふふ。
あ、そうだ。『誘拐が奴らの単独犯行かどうかわからないから』とかいう理由で翔子と愛子たちを含めてしばらくホテル暮らしにしましょう。そうしましょう。
如月グランドホテルならすぐにスイート取れますしね。
雄二たちも今回の事件ってのを盾にすれば拒否はできないでしょう。
あ、それならついでに私の交友回りって事で優子と美波と瑞希も呼びましょうそうしましょう。
特に美波と瑞希は明久と同じ部屋に入れたら面白そうです。

「うふふふふふふふ…」
「――ゃ、ちょっと彩! 彩ってば!」
「はっ! え、えっと、なにかしら美波?」
「何かしらじゃないわよ! なんか怖い笑みを浮かべて」
「あの…あんなことがあった直後ですから…無理しないほうが」
心配そうに覗き込んでくる瑞希。
いや違うのです。まあ確かに事件の件ですけどベクトルが違うのです。

「あ、いや…多分想像してるのと違うから大丈夫よ?」
「…そうですか?」
「と、ところでミスコンのほうは誰が優勝したのかしら?」

「ひゃっ…!? ミ、ミスコンですか? それはそのー」
「それがすごいのよ! 1位が瑞希で、2位が私だったんだから」
「あ、そうなんだ~。Fクラスで1位2位独占なんてすごいじゃない」
なのになんで美波ったら彼氏にしたくない(結婚したくない、だっけ?)女子の上位にいるんでしょうねー。
声には出しませんけど。
まあそんな美少女の接客なら私が誘拐されてる間に今日の分の点心が売り切れたのも納得がいきます。

「そんな学園トップの美少女二人に想いを寄せられてる明久は幸せ者ね」
「「……っ!?」」
「明久に見てもらえなくて残念だったわよね」
「そ、そんなことないですよ!た、確かに残念ではあったんですけど…!」
「そ、そうよ。別にアキに見てもらいたかったなんて…見てもらい…見て――」
お、二人とも一瞬で顔が真っ赤です。
いいねえ明久。愛されてますねー。

「この様子なら問題ないか」
「? 何が?」
「申し訳ないんだけど、ちょっと今日から1週間くらいホテル暮らししてもらうから」

「「?」」

「ごめんね、あの件でまだ犯人があいつ等だけか、黒幕がいるかがわからないから。友達を巻き添えにして誘拐されるのはもう…ね?」
「…そういうことなら」
「仕方ないですね…」

「大丈夫、如月グランドホテルのスイートをおさえるし不自由はさせないわ。ちょっとしたお嬢様気分体験ができるとても思ってちょうだい」
「そ、そうよね!こういうのは楽しまないとね!」
「は、はい! ホテルの食事とかとても楽しみです!」

「あぁそれとあなた達の部屋には明久と一緒だからよろしくね」
「「へ?」」
「ちょ、それってどういう――」
『こちら、女装コンテスト運営委員です。ただいまより文月学園女装コンテストを実施しますので参加者及び観客のみなさんは特設ステージまでお越しください』
美波の聞き返す声に校内放送の声が被ります。

「あ、じゃあちょっと私は秀吉捕まえてくるね。美波たちは明久のほうをよろしく。多分奴ら逃げると思うから」
「ちょっと待って! 一緒の部屋って何!? へ? ということは一週間もアキと?」
「彩ちゃん待ってください! もっとそれを詳しく聞かせてください!」
さーて、秀吉はー、と。あ、教室の窓側にいた♪





~少年捕縛中~





とりあえず秀吉は窓から逃げようとしていたのでマッハで抱きついて捕縛したときには、ムッツリーニ、雄二、明久も捕縛されてました。
まあといってもムッツリーニと雄二は捕縛される前から愛子や翔子がべったり引っ付いていて逃げる間もなかったでしょうけど。

「ワ、ワシは絶対女装なんぞせんからの!?」
「そうだぞ! 秀吉はともかく、何で俺まで参加せにゃならんのだ!」
「そうだよ! 秀吉はともかく、何で僕らまで!」
「…秀吉以外…誰得!!」
「主ら! 何故わしが参加することは当たり前のような言い方なんじゃ!?」
まあ秀吉はデフォでしょう。

「雄二の女装、見たい」
「ボ、ボクもムッツリーニ君のそういうの、みてみたいな?」
「アキちゃんはかわいらしいから優勝間違いなしですよ」
「そうね、秀吉には負けるかもしれないけど、アキちゃんなら準優勝くらいはできるわよ」

「断固拒否する。遣るなら秀吉だけにしろ!」
「…同じく…! 秀吉なら皆幸せ」
「やめて! 僕のトラウマを掘り起こさないで! 秀吉だけでいいじゃないか」
「主ら全員敵じゃーーーー!!」

んー完全に平行線ですね。
どうしましょう。

…とりあえず攻略しやすいところから落としていきますか。
「雄二、ムッツリーニ」
言いながら縛られた二人を教室の隅に引きずります。

「…何」
「な、なんだよ」
「私のせいでもあるけど…さっき翔子たちは傷物にされる寸前だったじゃない?」
「「……」」
「まだあれからさほど時間もたってないし、不安なのよ」
「それが何の関係が」
「ついさっきまで二人は完全に貴方達に引っ付いてた。だから逃げられなかったんでしょう」
「だからそれとこれに何の関係が」
「いつものノリに戻すのにはこれが一番都合がいいんだけど…参加しないってなら…」
「「……(ごくり)」」

「翔子と愛子を安心させるために彼女達を抱いてもらうしか…あ、進路資料室と郷土史資料室には休憩所を用意してあるわ♪」

「な!? そ、それはいくらなんでも卑怯じゃねえか!?」
「…理不尽」
「あのね? 貞操を奪われかけたのよ? 表面上平気な顔してるけど、どれだけ不安かわかるかしら?」

「「……」」

「あそ。おーい愛子・翔子」
「わかった! 参加する! 参加するからそっちの選択肢は勘弁してくれ!!」
「致し方ないっ……!」
「…ごめんね」
「しょうがねえんだろ」
「…断腸の思い」
まあこれから1週間のホテル滞在があるのでどっちにしても結果は同じでしょうけど。

で、明久は…。
「FFF団!」
「はっ、ここに」
「明久をアキちゃんに変えて好きにしていいわ」
「御意!」

そしてどこからともなく沸いてくるFFF団。

「え? ちょっと何!? み、皆目が怖いよ!!」
「安心しろ明久。明久はくびり殺してやりたいがアキちゃんはべつだ」
「大丈夫だってアキちゃん。痛いのは最初だけだから」
「おい! 保健室から浣腸もってきたぜ!」
「バカかお前! 保健室そのものを確保して来い!」

「待って皆! ねえ僕どうなるの!? もしかして掘られるの!? あ、彩!?」
「だってコンテスト参加しないっていうしー」
「参加する! 参加するから助けっ!?」
「OK~。須川!」

「何だ彩!俺は今忙し――」
「ユウちゃんコウちゃんアキちゃんの着替え込み生写真でどう?」
「合意した。お前ら撤収だ!」
ぞろぞろと撤収していくFFF団。
こういうことに関してはすごい規律ですね。

さて、あとは…。
「ワ、ワシは嫌じゃぞ!? さ、参加せぬからの!?」
「秀吉、あきらめろ」
「…あきらめは肝心」
「僕らが参加するんだから当然秀吉は参加だよ。僕たちともたちじゃないか」
「ぬ…な、なら仕方ない…のかの…」
秀吉はこうやってほかの3人に説得させればOK、と。

さ、じゃあちゃっちゃと会場に行きますか。



[15751] 清涼祭とミスコンと策謀と⑤
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/06/13 09:41
【エントリーシート】
○このコンテストに応募した理由は何ですか?


坂本雄二の用紙
『既成事実よりはましだ』

審査員のコメント
鬼気迫るなにかを感じますね。


土屋康太の用紙
『既成事実よりはまし』

審査員のコメント
…最近の男子生徒は女装しないと何か既成事実ができるのでしょうか。


吉井明久の用紙
『掘られるよりはマシだから』

審査員のコメント
一体今回の参加者には何があったのでしょう?突拍子もないコメントばかりです。


木下秀吉の用紙
(水滴の跡のみで何も書かれていない)

審査員のコメント
何か悲しいことがあって涙している様子がありありと伝わってきます。
これはポイント高いですね。










<秀吉 side>

「さあ今日この日にお集まりいただいたみなさん! さっきのミスコンがメインでこっちはおまけと思ってるみなさん! まずは私はその幻想をぶっ壊すのです! 帰る頃にはまず間違いなくこの女装コンテストこそがこの清涼祭のメインだったと思って帰るでしょう!」
「きゃー!彩さんカッコイー!(注:FFFの皆さんです)」

「今日この会場にいるみなさん! 新しいナニカに目覚める覚悟はできましたか!?」
「うぉおおおおおおおお!!」

「それでは清涼祭女装男子コンテストを開催します!」
「おおおおおおお!!!!」

どうしてこうなったのじゃ。
何故か司会をやっておる彩が妙なハイテンションで観客を煽りまくっておる。
そして観客も完全に熱狂の渦に包まれておる。
彩が生まれついての扇動者に見えるのはワシだけではなかろう。
その証拠に明久ら3人は苦虫を噛み潰したような顔をしておる。

それだけでも不安じゃというのに、ワシら4人が対戦相手になっている時点で嫌な予感しかせぬ。

「うぅ、どうしてこんなことに…」
「くそ、何とか逃げる方法はねえのか…」
「あきらめるのじゃ坂本…ここはもう彩の自陣じゃ…」
「逃げたら…既成事実が待ってる…」
「くそっ! なんて世の中だ…」

三者三様に愚痴を言っておる。
ただ、彩の言うとおり可憐な浴衣姿に着替えた奴らは完全に女にしか見えぬが。
雄二ですらきつい感じの美人に仕上がってる当たり、メイク技術は恐ろしい。

ちなみにワシらがこういうことをする原因の彩は、、、

「うふふ…かぁいいよ秀吉かぁいいよー」
なんか戯言を言いながらトリップしておる。

「なあ、彩を殺せば全部解決するんじゃねえか?」
「雄二、落ち着いてって。返り討ちにされるだけだよ?」
「…くそっ」

「さあ! それでは予選審査! このグループはレベル高いですねー!」
ワシらの低テンションを無視するかのように彩がすすめる。

「今回の審査は簡単! 試験召喚戦争をしてもらい、最後まで生き残った人が決勝進出です!」



[「「「は?」」」」



審査内容を全く知らせれておらなんだワシらは彩の言葉に一瞬固まる。

つまりそれは負ければ脱落できるわけじゃな…。
…それでは決勝に出たくないワシらは戦わぬと思うのじゃが…。


「ちなみに最初に負けた人には残念賞で『小さな無人島で7泊5日南国二人きりのバカンスツアー』を進呈します!」
そう言うと彩はこちらに向かってとてもいい笑顔をむけてきた。
そして、それと同時にワシらの召喚獣が強制召喚されおった。

それと同時。雄二とムッツリーニがガタガタと震えだしおった。
そして二人の召喚獣ともどもワシらから距離をとる。

彩の目は言っておったのじゃ『誰に渡すかは判るわよね?』と。

今の状況から霧島や工藤が彼奴らに迫れば彼奴らは拒めぬ…というか、拒んでも彩が強制的につれてゆくであろう…つまり、負けることは奴らにとっては人生の墓場への片道切符。

…いい気味じゃ。
よく分かっていない様子の明久に目配せをする。
(雄二を最優先で倒すのじゃ)
(なるほど、霧島さんのためだね!)
(そのとおりじゃ!)
流石は明久。雄二を嵌める策じゃと一瞬で理解しおった。

雄二を二人で殲滅した直後にムッツリーニの召喚獣の前にでも出て攻撃をもろに食らえばよい。そうすれば雄二が残念賞、ムッツリーニが優勝じゃ。
おそらく彩のことじゃ、優勝者にも同じような賞品を用意しておるじゃろうて。
彩の目的もおそらくそれじゃろうしの。

ワシが味わっておる苦労を主らも味わうがよい。
なに、これでああいう生活は中々…。

「なお! 勝負を円滑に進めるためと半自立召喚獣のお披露目のため工藤愛子さん、霧島翔子さん、そして私織部彩の召喚獣が戦闘に参加します!」
彩の言葉と同時に追加で3体の召喚獣が召喚された。

「これらの召喚獣は半自立化していますので誰を攻撃程度の指示で的確に攻撃をしてくれます! しかも!」



 Fクラス   織部彩    VS   Fクラス   木下秀吉
  数学    635点   VS   78点    



「優しく攻撃!」
ガキンッ



 Fクラス   織部彩    VS   Fクラス   木下秀吉
  数学    635点   VS   76点


「強弱も簡単につけられる優れもの! この3体の召喚獣が参加者達をやさしーく攻撃していきます! それでは試合開始!」
彩の声と同時に3体の召喚獣がワシらを囲むような配置につく。

…彩の考えがいまいちよく分からぬ。
召喚獣を追加しても始めの脱落者以外は積極的に攻撃を受けようとしてくると思うのじゃが…。
鉄人の補習と比較しても、優勝よりはましじゃしハラリ。


…ハラリ?


「ひ、秀吉!?」
「…!?(ブシャアアアアアア!)」
明久がこちらを凝視し、ムッツリーニが鼻血で倒れおった。

「なにが…って、なっ!?」
自分を見ると、浴衣の一部が崩れ落ちて腰の部分が露になっておる。

「おおっと言い忘れてたけど、その浴衣は点数が減ると服のあちこちが溶けていくというNASAの新技術で作られているのです!」
「いらんわぁああ!! 前回といい今回といいなに無駄なハイテク素材開発しとるんじゃ、NASAのボケはぁあ!! 」
「ちなみにちゃんとアメリカ航空宇宙局です!」
「そんなもんどおでもいいわぁあ!!」



[15751] 納涼祭とミスコンと策謀と⑥
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/06/28 10:12
(準決勝の様子は省略されました。続きを見たい人はゴスロリドレスを着用の上『須川君は僕の婿!』と叫びながら後ろの処女をFFF団に献上して下さい。)





「…雄二、可愛かった」
「ムッツリーニ君のいい画がたくさん取れたよっ♪」
「あの、明久君のとかありますか?」
「もちろんだよ!」
「焼き増しお願いしますっ」
「あ、ならせっかくだしウチも…」
とても満足げな女性陣。
それに対して男性人は…。
「シクシクシクシクシクシク×3」
明久、雄二、ムッツリーニがさめざめと泣いています。

「男がさめざめと泣いてもキモいだけなので止めてください」
「彩って所々鬼畜よね…」
優子が呆れてますが、事実は事実です。

…まあ、流石にやりすぎた感はありますが…。
でもまあ彼らはあんまり性的な意味でこういう目にあったことがなかったと思いますからまあいいでしょうたまには。

何事も経験です。

あ、ちなみにやりすぎて全員同時に倒しちゃったので優勝は久保君になりました。
まあそんな事はどーでもいいのです。
問題はそっちじゃないのです。
問題は…。

「……っ……っ……(無言で泣いている秀吉)」
完全に秀吉が怒っちゃったことでして。
明久らへの鬼畜言動もちょっと現実逃避してたからなのです。
やっばーホントにどうしよう。

「…あのー? 秀吉?」
「……(プイッ)」
か、可愛い…じゃなくて!
ど、どうしよう。秀吉ってば、結構怒ってる?

「ご、ごめんなさい? まさかそんなに嫌がるなんて…」
「あれで嫌がらぬ者なぞおらんと思うのじゃ」
「ゔっ」
「いくらなんでも此度の仕打ちは酷くないかの?」
「あ、その…」
「ワシはあまり主の裸体を大衆には見せとうないと思うておるのじゃが、主は違うのかの?」
「…ごめんなさい」
「謝罪ではのうて、ワシは答えがほしいのじゃが」
「私もあんまり見てほしくはない、と思う」
「なら此度の仕打ちは「秀吉? ちょっと来なさい」」



<side 秀吉>~秀吉の(性別的な意味で)秀吉心ver~

今度という今度は彩の行動に我慢がならんのじゃ。
ワシは彩が他の男に肌をみだりにさらすのは快く思わんのに、何故彩はワシにそのような仕打ちをするのじゃ。
明久らをそうするのはまだよい。明久らはあまりそういう目にあっておらんからたまにそういう目に遭うのはよかろう。じゃがワシは男子生徒からも変な目で見られるのじゃ。彩がそれをよしとしておるのがワシはなんか悲しいのじゃ。
ワシをそういう目で見てよいのは彩と明久…ではのうて彩だけなのじゃ。
じゃというのに、じゃというのに…。

「…ごめんなさい」
う…。
上目遣い涙目は卑怯なのじゃ…。

…。

い、いや! ここはガツンと言わねばならぬと思うのじゃ。
親しい仲にも何とやらというやつじゃ。
「謝罪ではのうて、ワシは答えがほしいのじゃが」
「私もあんまり見てほしくはない、と思う」
「なら此度の仕打ちは「秀吉? ちょっと来なさい」」
「姉上? 今はちょっと「いいから来なさい」」
ワシの抗議を無視して姉上はワシを彩から引き離す。

「秀吉、あんたが言いたい事もわかるけど、許してあげなさい」
「じゃが、今回は流石に…」
「…まあ、ちょっとやりすぎだとは思うけど…それを鑑みてもあんまり怒らないであげなさいよ」
「何故じゃ?」
「本当にわからないの? 誘拐されたばかりなのよ彩は」
「じゃが、彩は全く気にしておらぬぞ?」
「あんた本当に彩の恋人? あのこの性格的に表にそれを出すと思う?」
「あ…」
「今回の原因はある意味彩が原因なのよ? 少なくとも彩はそう思ってるわよ? だから一人すぐにいつもどおりに振舞ってるし、そのおかげで翔子たちもいつもどおりに見えるけど実際の心の中はどうかしら?」
確かにそうじゃ。
あまりに彩のテンションが高くてそうは思わなかったのじゃが…いや、無理やり振舞おうとしてそういう風になってしまっておるのじゃろう…。
とするとワシは…何ということを…。
気丈に振舞ってる彩になんと言う仕打ちをしてしまったのじゃ!

非常に彩に対して申し訳ない気分になり、彩の様子を見る。
「ところで彩。さっきの木下君の写真も撮ったんだけど」
「でかした愛子ちゃん! 言い値で買うわ。だから今すぐデータだけでも見せて」
「さっすが彩! データはほら…こんなかんじで…」
「ディ・モールト、ディ・モールトいいわ愛子ちゃん!」
「ほかにも、こんなとか…」
「はぅ!? か、かぁいいよぅ秀吉かぁいぃよぅぅ!」
……。

やっぱりどうみてもいつもの彩にしか見えぬのじゃが…。
「まさか『やっぱりいつもどおりの彩にしか見えない』とか思ってるんじゃないでしょうね?」
「そ、そんなことはないのじゃ!」
政財界の魑魅魍魎と渡り合っておる彩ならば仮面をするのは簡単。
じゃからあれも回りに悟られないための仮面…なのじゃよな?
「さあ、さっさと許してあげてきなさい」
「わかったのじゃ」



<side 彩>

…なんか知んないけど優子が秀吉を引っ張ってった後あっさり秀吉が許してくれた。
グッジョブよ優子。セルジュ君包囲網強化しといてあげる。
とりあえず秀吉に甘えておきましょう。うにー。

「あ、そうそう雄二」
「…なんだ彩。まだ追い討ちをかける気かお前は」
「いや、まあそれは後でかけるけど「かけるのかよ!」納涼祭の売上だけどー」
「あ、そういえばウチらの売上以外にもBクラスの売上ももらえるんだったのよね」
「そ。で、とりあえず今回の売上で設備のグレードアップはできるわ。まあ純和風設備なのは相変わらずだけど」
「そこは変わらないんだ…」
「一応向上意欲を出させるための設備差だから、そこはどうにもならないのです。とりあえず業者には依頼したので来週には畳とかふすまとかちゃぶ台が新しくなったFクラスを見れるのですよ」
新しい畳のにおいってすきなんですよねー。楽しみです。












さて、いろいろありましたが納涼祭の片付けとかも終わって下校時刻になったわけですが。

「そろそろかしらね」
「? なにがそろそろなの彩」
私の呟きに明久が反応します。
もうそろそろ、ってきましたね。

ちょうど昇降口のまん前に止まるリムジン。
「「……っ!」」
何かを感じたのか脱兎のごとく駆け出す雄二&ムッツリーニ

「…どこ行くの?」
「逃がさないよ康太君」

「「っ!?」」
それぞれ翔子と愛子に抱きつかれてすっ倒れる雄二&ムッツリーニ。

「は、離せ!」
「後生…」
「…離したら、逃げる」
「逃がすと思うの?」
バカですねー。逃げられると思ってるんですかねー。
校門には鉄人も配置してるのですよー?
学校に許可もらってますしね。

「アキ」
「明久君」
「え? 美波? 姫路さん? 何で僕の両腕をがっしりホールドしてるの?」
まああの二人はもう戦いが始まってますしね。、

「じゃあ皆、車に乗ってねー」
「ねえ彩。これって…?」
「凄くいやな予感がするんだが」
「…おなじく」
言いながらも雄二とムッツリーニはまだ逃げる機会をうかがっています。
あきらめ悪いですね。

「じゃあ行きましょうか」
「おい人の話を――待て翔子! それはまずい! 電圧MAXはまずいやめろ! 判った! 乗るから! 逃げるのはあきらめるからやめろ!」
「さー早くボクたちも乗ろうよー康太君?(ムニムニ)」
「……っ!? ……っ!!?」
ここまでお膳立てしたんだからさっさと落としちゃいなよー? 愛子、翔子?




[15751] ホテル翌朝(小話)
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/09/02 00:17
<明久のTwitter@akihisa>※実際のツイッターと一部表示が違います。


akihisa クルマなう
16:30 movatwitterから

akihisa しばらくヾ(´ω`)ノホテル暮らし♪姉さんと離れられるヾ(´ω`)ノ
16:45 movatwitterから

akihisa @akikunlove ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい_|\○_
16:47 movatwitterから

akihisa 気になってる子が僕の肩にににににに
16:50 movatwitterから

akihisa ホテルなうヾ(´ω`)ノ
17:05 movatwitterから

akihisa え? 部屋同じって…。え?
17:15 movatwitterから

akihisa スイート凄すぎ
18:20 movatwitterから

akihisa wiiなう
18:30 movatwitterから

akihisa ホテルご飯なう
19:30 movatwitterから

akihisa 僕のパッションレジスタンス
21:00 movatwitterから

akihisa 好きな子のパジャマ姿が拝めて僕はもう死んでもいい
21:01 movatwitterから

akihisa 次のテストが怖い
21:05 movatwitterから

akihisa @hideyoshilove 多分1000点くらい
21:08 movatwitterから

akihisa 何で姉さんがいるの!?
21:30 movatwitterから

akihisa 眠 れ な い
22:48 movatwitterから

akihisa @yuji MO☆GE☆RO凸(゚皿゚メ)
22:59 movatwitterから

akihisa @MuttsuriCo SA☆KE☆RO(ノ`Д´)ノ彡┻━┻゛:∴
23:04 movatwitterから

akihisa @hideyoshi 今見に行くね!
23:31 movatwitterから

akihisa @hideyoshilove ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
23:32 movatwitterから

akihisa 逃亡なう
23:47 movatwitterから

akihisa 誰型式
23:59 movatwitterから







--(男性陣的に)陥落の朝--


「くっつきたてのカップルほどいじり甲斐のある人種はいないのですよ」
愛子たちに思い切り発破をかけた成果か、ホテル暮らしを始めたその日に明久・雄二・ムッツリーニ全員が陥落した模様ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
こっちは喰われた三人がとても面白いことになっています。


干からびてるムッツリーニとか


干からびてる雄二とか


状況を理解できてないという顔で干からびてる明久とか




顔がトマトの愛子とか


至福の顔の翔子とか


思いつめた顔の瑞希と美波とか玲姉とか


いやー、やっぱりくっつくまでも楽しいけどくっついてからの観察のほうが100倍面白いですよねー。
今回の件はまあ結果的に被害がありませんでしたし、危機感をちゃんと持てた上にラブコメーズがくっついたって考えればいいイベントだったかなあ。
ま、流石に今回は逃げ切れませんよねー。
あんな強姦寸前な状況に陥ったばかりで不安満点の女の子が懇願してるのに無視するような奴じゃないですよ、彼らは。
私だって夜に仮面崩壊して秀吉に散々慰めてもらいましたし。

…あれは絶対に外には見せられないのです。

ま、私にもまたまともな心が残ってるって安心もしましたケド。
…やっまり分不相応の富は身を蝕みますねぇ…。

それはおいといて、と。

翔子たちも本当はそういう形で迫るなんてしたくなかったでしょうけど、不安なときは甘えたほうが双方のためになるんですよ。
そう説得しました。私が。ワイン飲ませてトロンとしたらそのままそれぞれがいる部屋に放り込んであとはウフフフ。

「いつもに増して楽しそうじゃのぅ、彩よ」
「そりゃそうよー。これで同い年のママ友が出来たもどーぜん! 私の家族計画がマッハで膨らみまくりよー」
「何の話じゃ!?」
「サッカーチームが出来るくらいはほしいと思わない? 秀吉」
「11人!? というか、それは彩に負担がかかると思うのじゃが」
「でもほら、向こうを見てみなさいよ」

「雄二、卒業までに子供は何ダースほしい?」
「翔子落ち着け、普通子供の人数はダース単位では数えない」
「……じゃあ、何桁ほしい?」
「単位がもっとおかしくなってるぞ!?」
「……昨日はあんなに激しかったのに…」
「っ!?」

「康太くーん。お、おはよ…」
「っ!?…お、おはよう…」
「…」
「…」
「「あの」」
「な、なにかな康太くん」
「く、工藤こそ」
「むっ……なんで昨日みたいに愛子って呼んでくれないのさー」
「昨日みた…い…? …っ!?」(ムッツリーニの顔が真っ赤になる)
「っ!? …いやっ! そのっ!」

「「「あのっ!」」」
「み、美波ちゃんからどうぞ!」
「玲先生からのほうが!」
「み、瑞希ちゃんのほうこそ!」
「でも…」
「「いいからっ!」」
「あの…昨日の件なんですけど…」
「…
「…うん」
「その…明久君のことは3人でわけわけしませんか!?」
「ふぇ!?」
「なるほど…その手がありましたか…」



「なんというか…真面目な奴ほど暴走すると際限がないのぅ…」
「なんか愛子たちが一番初々しいのが私的にとてもニヤニヤであると同時にちょっとムカつくわね」
それ以前に、明久組は玲姉がいつの間にか入ってるのが激しく気になるのですが…。
て、問題はそこじゃないのです。

「翔子たちとかは桁単位の家族計画を立ててるんだし、何も問題はないってことを私は言いたかったのよ」
「子供の数は桁単位で考えるものではないぞい!?」
「細けぇこたぁどうだっていいのです!」
「いや一番重要なとこじゃろうが!?」
「秀吉は私と子供作りたくないんだ…」
「そんなことは一言も言っておらぬじゃろうが!」


そうして日は昇っていく。






ちょっと今回はテスト的に会話多めで構成してみました。
暑いですね。家のクーラーが水漏れして熱帯夜で死にそうです。



[15751] 私と秀吉と入れ替わり①
Name: 九束亭恥迷◆ba9bf954 ID:be800a61
Date: 2010/09/02 00:24
「試験召喚獣がオカルトで動いているとはいえ、これは予想外ですねー…」
この世界に生まれてから16年もたちますが流石に今回の事態にはちょっと驚きを隠せません。

「んー…」

忘れて久しい感覚といつもに増して軽い身体。
心地がよいというレベルじゃあありません。

何ですかこのチート

「もういっそこのままでもいいかなあ…」
「よいわけないじゃろうが!」
私が甘い誘惑に駆られかけたところで、いつもよりもキーの高いじじい言葉で秀吉がツッコンできました。

聞きなれているはずの、それでいて違和感のある声色。
目の前には眉を吊り上げて抗議の目を向けている私の体。

「だってー…秀吉の体スッゴク軽くて快適なんでもん。特に肩とかの軽さってば! 何年ぶりかしら!」
「む…た、たしかに彩の身体はなんというのじゃろうか…肩から背中にかけてが少し…重いのぅ」
そりゃ胸に大きな重りが2個ついてますしねー。
「揉んでも、いいのよ?」
「揉まぬわ! 大体今はそのようなことを言っておる場合では」
「じゃあ、揉むわ」

言いつつ手をワキワキさせながら秀吉へと迫ってゆきます。

「なっ!? 待っ――」




今、私と秀吉は身体が入れ替わっています。




いやーびっくりしました。
秀吉の召喚獣と私の召喚獣の頭がゴッツンこしたと思ったら、急に意識が飛んで目が覚めたらこれですからねー。

ちなみに、何で秀吉の召喚獣とバトルしてたかというと、また男子に告白されてたのを秀吉が隠してたからなのです。

だからこの事態も多分秀吉の責任ウエイトが大きいはずなのです。

だから私はちょっとオシオキする権利があるのです。


「…そういえば、男が女の絶頂時と同じ快楽を味わうとショック死するって誰かが言ってたけど本当なのかしら」
「ッハ…ッカハッ…それッ…ならばっ…ワシは…今この瞬間に死んでおるッ…わ!」
上気した顔に潤んだ目を細めながら抗議する秀吉。
ってうわ、私の身体すごいエロイわね。

「その身体は私の身体! 弱いところは完全に把握しているわ!」
「主はワシを殺す気かの!?」
「ま、冗談はこのくらいにして」
「冗談でワシは死にかけたのかの!?」

「大丈夫よ~その刺激は多分まだ序の口よー?」
「なん…じゃと…」
流石に私も校内でそこまで攻め立てる気はないのです。

愕然としている秀吉をひとまず放置して秀吉のスカートから私のケータイを取り出します。



しゅっくせい~しまっしょ♪(着うた)

おしたいさーせておりまっすいい~しょーつくさせー(着うた)


『はいもしもし』
「ニック? 私よ彩よ」
『アヤ? 俺の知ってるアヤって名前の人間はおっかない鬼のような女しかいないんだが』
「…ハバネロが到着するのを待ってやっときた荷物が奥さんの頼んだシルクのカーテンでふてくされた貴方がそれに包まりながら寝て大喧嘩になった事、部下の人たちにばらすわよ」
『おいおい…マジかよ…』
「試験召喚獣同士が頭をぶつけたら私のフィアンセと身体が入れ替わったのよ」
『…』
「心当たり、あるのね。バージョンアップしたのが昨日だからそっちが原因の可能性が高いんだけど?」
『い、いや! 確かにそういうのは思いついたが実装するのは流石に止め――あ』
電話口からキーボード音が聞こえてくる。
「もしかして実装した奴を間違って送ったとかじゃないでしょうね?」
『…テヘッ♪』
「貴方が借りてるレンタルBOXのパスワード、奥さんに住所ごと送っとくわね」
『ま、待ってくれ! あそこにはワイフの魔の手から逃れたハバネロチップスが! あれがないと仕事が手につかないんだ! それだけは勘弁してくれ!!』
「で、元に戻る方法はあるんでしょうね?」
『もちろんだ! そこを怠る俺じゃない!』
「えーと、パスワードは…っと」
『スンマセン調子乗ってました』
「で?」
『もう一度試験召喚獣たちを頭突きさせればいい。そうすりゃ入れ替わったときと同じ理屈で元に戻る』
「案外簡単に戻るのね」
『あぁ、そして元に戻ったらまた同じ人間と入れ替わることはない。そう何回も入れ替わると脳に悪影響がありそうだからロックをかけておいた』
「つまり、秀吉との入れ替わりはこれで最後で、かつ元に戻るのは簡単…と」
『あぁ、そのとおりだ』
「分かったわ。とりあえず至急このアホみたいなプログラムの修正版を送りなさい」
『明日の朝一でそっちに届くように手配するよ』
「あと奥さんにばらすのは2個あるBOXのうち1個だけにしてあげるわ」
『ま、待ってくれ! 半分も没収されたら――』
懇願の声を無視してそのまま電話を切ります。
半分残してあげた私の慈悲をありがたがってほしいくらいです。


「ふぅ…」
「ど、どうじゃった…?」
不安げな顔で秀吉が聞いてきます。
「うん。結構簡単に戻れるみたいよ」
「そうか! それはよかったのじゃ! して、その方法は――って彩、何じゃ…その手は」
「うふふ~♪」
「じょ、冗談はやめるのじゃ! 主! しょ、正気かの!? さっき男が女の快楽を感じると死ぬといったのは主じゃろ!?」
「大丈夫よ~♪ 身体は私なんだから平気平気~」
よく考えたら、私も元男ですし。
最近完全に忘れてましたけど。


「ま、待つのじゃ! お、お願いなのじゃ! ら、らめぇぇええええええ!!!」






こーんな面白いこと、全力で満喫しなきゃ嘘なのです。
今日一日は秀吉の身体で面白おかしく過ごすのです。


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