いつかこの日が来ることを予想していたのか。22日投開票された福岡県添田町の出直し町長選で落選した前町長の山本文男氏(84)。「40年近く町長を務めてきたが、最後にこういう結果になってしまった」と支援者に硬い表情で頭を下げた。39年間にわたって町長を務め、「山本王国」と呼ばれる盤石の地盤を誇った前町長は、2分であいさつを切り上げ事務所を去った。山本氏が地方政治家の「顔」だった時代に終止符が打たれた。
「私のことはみんな知っている。(町内を)回る必要はない」。3回続けて無投票だったため、選挙戦は15年ぶりだったが山本氏は強気だった。
告示前の11日に開いた記者会見では、贈賄罪に問われた事件に関し「予想もしなかった」と淡々と語り、町長選については「自信がなかったら出ない」と笑ってみせた。
長く町政に君臨し、福岡県町村会長、全国町村会長として国や県とわたりあってきた自負心をうかがわせた。しかし、本人の思いと周囲の受け止めは違った。
迎えた告示日。高齢者が目立つ出陣式で、応援演説に立った町議たちは「今回は厳しい」と口をそろえた。厳しい残暑の中での選挙戦。積極的に街頭を駆け巡った他の候補者とは対照的に、山本氏の動きは重かった。
「ハコモノ行政」「長期政権」への批判、加えて汚職事件。「手応えが分からない。(町議選を含む)13回の選挙で初めてだ」。久しぶりの選挙戦は思い描いていた展開ではなかった。投開票前日の21日、取材に答える山本氏から強気の言葉が消えた。「(町長選に)出るつもりはなかった」ともこぼした。
この間、揺れた発言は劣勢と時代の変化を感じ取ったからなのか。午後9時前、結果が伝えられた。報道陣を閉め出した事務所で山本氏は、「おれが(事件で)拘置されていたのが響いた」。後援会幹部にそうつぶやいたという。
事務所を出た山本氏は支援者に「私の不徳の致すところ。おわびします」と述べた。ワンマン、剛腕と称された力強さは過去のものになった。
=2010/08/23付 西日本新聞朝刊=