2010年09月01日
リフレ派対反リフレ派
池田元久財務副大臣が、昨日、為替介入をやる場合には、日
銀は非不胎化をはっきりやってもらわないといけない、と言ったと
いいます。
為替介入もできないくせに、為替介入をやった場合には‥なん
て言っても意味ないじゃん!
その前に、非不胎化と聞いて、すぐ意味が分かりますか?
そうですね、為替介入して‥、つまり外為市場で円を売りドルを
買った結果、市場にはその分円があふれ出るわけですが、それ
を日本銀行がオペを通じて市場から吸収することをいう訳です。
つまり、日本銀行が過剰な流動性を市場から吸収するために
行動するのが不胎化ということであるわけで、その反対に、何に
もしないのが非不胎化ということになる、と。
だから、細かい話で恐縮ですが、仮に池田財務副大臣が持論
を述べるとすれば、不胎化はやるべきでない、というべきなので
す。
まあ、いずれにしても、この人は、デフレ脱却議連の顧問をやっ
ているだけあってリフレ派に属すると思う訳ですが、経済のことに
ついて分かっているとは思えない‥と。
ですから、そんな政治家たちが、脱官僚を目指すと口で幾ら格
好のいいことをいっても、それは余りにも空虚にしか聞こえないと
いうことなのです。
で、本日は、この池田副大臣のことを批判するのが目的かとい
えば、そうではなく、リフレ派の考えを含め現下の経済問題を解
決するためにどんな考え方が主張されているかを改めて整理し
てみようと思う訳です。
歴史をちっとだけ遡ることにしましょう。
マンガマンと揶揄されたあの麻生首相の時代。
彼は、海外から経済の専門家が来て会談するとよく、こんなこと
を言っていましたね。
「日本では、長い間、金利がほぼゼロの水準になっている。し
かし、こんなに金利が下がっても、企業は銀行からお金を借りよ
うとしない。それどころか、これまで借りたお金を銀行に返してい
る。こんなことが起きるなんて経済学の教科書にはこれまで書い
てなかった。で、そうした状況では、政府が国債を発行して公共
事業を行うのは適切な行為なのだ」
で、麻生さんの話を聞いていた外国人が何と返答していいか黙
っていると、麻生さんは、俺はすごいだろ、と得意な顔をするので
した。要するに、教科書よりも俺の言っていることの方が的確な
のだ、と。
確かに、教科書は、不況対策として財政政策と金融政策があ
ることを教えています。そして、金融政策の場合には、不況にな
ったら金融を緩和し、金利を引き下げるべきである、と。
しかし、教科書をよく読めば、金融を緩和しても、金融政策に効
果がない場合もちゃんと記述されているわけです。それに、あの
ケインズでさえ、起業家のマインドが弱まっている場合には、
少々金利を下げたところで効き目がないこともあると言っている
わけなのです。
つまり、麻生さんが、そうした現象を初めて発見したわけではな
いのだ、と。
いずれにしても、麻生さんは、金融政策の効果がないのなら、
財政政策を発動するしかないという立場になります。言うまでも
ありませんが、あの亀井氏なども、同じような発想で、財政出動
をいつも口にしている、と。
ということで、先ずは、財政出動派という人がいるわけです。
で、更に細かくいえば、この人たちのなかには、そうは言っても、
余りに国の借金が増えるのも考えものだという人もいれば‥、そ
うではなく、国の借金とはいっても、それは厳密には政府の借金
であり、また、日本国が海外から借金をしているわけではないの
で、どんなに国債を発行してもいいのだ、という人もいる訳です。
で、麻生総理は、積極的に財政出動をすべきであり、また、ど
れだけ国債を発行しても何も恐れることはない、とあっけらかんと
しているわけです。
貴方は、麻生さんの考え方を支持しますか?
支持するという人もいれば、そうではないという人もいるでしょ
う。
ただ、経済界の大勢や国民の多くは、消費税の増税に理解を
示しており、そのことから考えると、国債の発行には一定の歯止
めが必要であろうという意見の方が主流だということになるわけ
ですが、そうなれば、なかなか財政出動もままならぬ、と。
では、どうするのか?
ここにリフレ派が登場します。
財政出動には限界があるかもれないが、デフレを直すために
は、財政出動に頼らなくても世の中に出回るお金の量を増やしさ
えすればインフレが必ず起きるはずであり、そうなればデフレか
らの脱却が可能である、と。
つまり、リフレ派は、日本銀行の尻を叩いて世の中にどんどん
お金を流通させることを主張するのです。お金の量が増えさえす
ればインフレが起き、そしてインフレが起きれば、貨幣の価値が
下がるから、人々は価値が下がる前にお金を使ってしまおうと思
うだろう、と。そして、そうなれば、消費が活発化し、経済は回復
する、と。
そんなことを主張するのは、竹中教授であり、クルーグマン教
授であり、そして、あの高橋洋一教授は、財政出動派とリフレ派
を兼ね備えたアグレッシブな意見の持ち主である、と。また、お札
に有効期限を設けることを主張する深尾教授もいるわけです。
しかし、リフレ派の言い分は根拠がないというのが、野口悠紀
雄教授であり、小幡績教授であり、また、ブログ界で特に著名な
あの池田信夫教授であるのです。
私、池田信夫教授は、考え方の基本的方向は支持できるので
すが、そのキャラクターにとてもついていけない部分もあり、何と
言っていいのか‥
で、乱暴な言い方をすれば、リフレ派に反対する考え方の多く
は、どちらかと言えば、サプライサイドの面を重視することになる
と思う訳です。
野口教授は言います。物価が低下しているのは、新興国との
競争が激しいからという要素が大きく、そのため、日本として海
外との競争に勝ち抜くためには、人件費の面で顕著な差がある
新興国と真正面からぶつかり合うのではなく、例えば、企画は日
本国内で行っても、製品の生産自体は新興国にアウトソーシング
し、そして、先進国でその製品を売るようなことにすればいい、
と。そうすれば、人件費の格差が大きいとしても、日本の競争力
は維持できる、と。或いは、製造業にばかり目を向けずに、金融
立国を目指すようにすればいいのだ、と。
まあ、私の場合には、金融立国というのを主張する気はありま
せん。それは、今でさえ、日本の金融には大きな規制がかかって
いるからです。
否、別に個別の金融機関が海外を目指すのなら、一向に構わ
ない、と。
しかし、そんなことは簡単には認められないわけです。
考えたらおかしな話です。
日本の金融機関は、もう長い間、資金需要がないと愚痴をもら
してきました。
国内には、後ろ向きの資金需要はあっても、将来性のある融資
先は限られている、と。仮に貸したいところが見つかっても、すぐ
大手の銀行が乗り込んでくる、と。
そんなにお金を豊富に持っているのであれば、何故海外に子
会社を作り、海外の企業や消費者にお金を貸さないのか?
ところが、日本の金融機関というのは、バブルが崩壊した後、
悉く駐在員事務所や海外支店を閉鎖してしまったわけです。つま
り、そうした事務所や支店は本来の役割を果たしていなかったの
だ、と。
もし、日本の金融機関が融資先がないといって困っているので
あれば、金融庁は、金融機関の海外進出をもっと積極的に認め
るべきではないか、と思うのです。
ちょっと話が横道に逸れた感がありますが‥
財政出動派、リフレ派、サプライサイド派‥、それ以外にもあります。
何と名づけていいか迷いますが、社会主義派とでも言いましょ
うか‥
そう、菅総理のブレーンをしている小野教授の考え方です。
景気が悪いのは、国民がお金を使わなくなっているからだ、特
にお金持ちがお金を使わないのが原因だ、と。だとすれば、お金
持ちに税金をかけてそのお金を国が代わりに上手に使って上げ
れば、景気はよくなる筈だ、と。
私も、小野教授の言いたいことは多少は分かります。
しかし、問題は、お金持ちにだけ重い税金をかけることの合理
性をどこに求めるか、ということです。それに、お金持ちは、政治
家を陰で操るわけですから、なかなかお金持ちに税金をかけると
いうことは難しいということで‥。
いずれにしても、まとめると、次にようになるわけです。
景気が悪いのであれば、財政出動をすべきだ、と。これが財政
出動派。
そして次に、デフレの原因は、世の中に出回る貨幣の量が少な
いことが原因だから貨幣の量を増やす政策をとるべきだ、と。そ
して、インフレを起こせば景気回復につながる、と。これがリフレ
派。
そして、そういうことではなく、日本の企業の競争力を維持強化
することが本質だという、サプライサイド派。
そして、最後に、お金持ちに税金をかけてお金を徴収し、政府
がお金持ちの代わりにお金を使えばいいという考え方。これが社
会主義派。
私は、財政出動派の考え方は支持できません。財政出動をす
れば、確かに一時的には経済成長率の落ち込みを防ぐことがで
きるのですが、それ以上に国債残高が累増してしまいます。そし
て、財政出動に頼る姿勢があるために、つい無駄な事業にもお
金を使ってしまい、結果として無駄の温存をしてしまっているの
です。それに、今はまだ問題が顕在化していませんが、いずれ海
外投資家の日本国債の保有割合が増大するような事態になれ
ば、日本の経済的安定性が大きく脅かされることになってしまい
ます。
リフレ派の考え方に対しては、中央銀行というものは、金融の
引き締めは比較的容易に行うことができても、金融の緩和を行う
ことには限度があるということをリフレ派の人は殆ど理解していな
いことを指摘したいと思います。
私は、インフレにする方法がないと言っているのではありませ
ん。しかし、インフレにするためには、日本銀行の尻を叩いて金
融を緩和させることよりも、もっと効果的なことがあるのです。早
い話、工場の操業を一時停止させたり、或いは海外からの輸入
を一時停止させて、モノ不足の状態を人為的に作り出せば、簡単
にインフレは起こります。或いは、政府が、国債の発行に限度を
設けることなく、そして子ども手当どころか、全国民を対象にした
国民手当を一人当たり100万円でも支給すれば簡単にインフレ
になるでしょう。でも、そうやってインフレが起きても、事態は改善
すると言えるのでしょうか。
クルーグマン教授は、お金の価値がなくなると、人々はモノの
購入を急ぐはずと言いますが、必ずしもそうはなりません。お金
の価値がなくなると、金(ゴールド)や他の資産、或いは外国の通
貨に交換されるだけの話かもしれないのです。
やっぱり、不必要な規制をとっぱなるなどして、企業にとってもっ
と儲かるような環境を整えるようなことが基本であるのです。儲
かれば、企業は投資をし、儲からないから投資を控えるのだ、
と。
貴方は、どの考え方を支持しているのでしょうか?
経済政策の考え方がかなり整理できたという方、クリックをお願
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この記事へのコメント
私はもちろんサプライサイド派です。
リフレ派の欠点は、貨幣の問題を考える際に「誰が所有する」貨幣を増やすのかという観点が完全に欠落しているのです。
要するに頭の中が単式簿記で所有も借用も関係なくお金さえすればいいという幼稚さで、現実の経済のしくみを全く分かっていないのです。
ま、バランスシートが云々とか言っている割に複式簿記的思考ができていない訳です。
貨幣供給量自体は相次ぐ金融緩和政策により飽和状態です。
結局、消費が旺盛な主体に、彼らの処分可能な貨幣が行き渡らない。
つまり、貨幣が偏在してしまっていることが問題なのです。
その偏在は誰が作り出したかというと、歪な資源配分を是正してこなかった政府にあるのです。
過去の人口動態は明らかで、高齢化が進みタダでさえ貨幣が偏るのは分かっていた筈なのに、全く無策でむしろ偏在を助長する既得権益保護政策を取り続けてきました。
そして、リフレ派は最終的に、麻生さんと同じように金融政策だけでは効果がないから財政支出だろ!と声高に叫びます。
貨幣の偏在を生み出した張本人である政府や行政機関による資源配分に再び頼ろうということです。
まさに“発達性障害国家日本”ですね。
>もし、日本の金融機関が融資先がないといって困っているのであれば、金融庁は、金融機関の海外進出をもっと積極的に認めるべきではないか、と思うのです。
というのは私も同感で、先日、日銀が外国優良国債を買い入れる非不胎化政策をすべきではないかと主張したのとほぼ同源の話です。
民間が規制やその他の要因で外国への投資ができないのなら代わりに日銀がドカンとやってしまえという訳です。
日本円をジャブジャブ国内に垂れ流せば大丈夫よ!などというリフレ政策とは根本的に発想が違います。
そしてこれは日本円価値を守る最後の盾となるべき財産なのです。
今のうちにしかできません。
国債バブルが崩壊してからでは遅いのです。
しかし、民間が身動きとれない※、政府もこれ以上負債を抱えては危ない・・・と来ると、日銀に頼らざるを得ないという発想もいたしかたないかと考えてもいます。
頼るといっても、通貨の価値を毀損せしめる「政府紙幣案や国債直接買入案」はさすがに自殺行為なので提唱できません。
外国国債の買入れは果たして中央銀行としてどのような行為に該当するのか、論理的整理はできていません。
一説には、世界のオサイフになるだけの愚策との指摘もあります。
世界中にバブルの種まきをするだけ?
世界に害悪をばら撒いて日本経済が延命する是非は?
ま、実現しないでしょうが、考えるのはタダですので。
※民間身動きといっても、もちろん、本質的に日本が生産性を向上させ、金融の規制を緩和し、市場調整機能を取り戻すのが本筋です。
しかし、バラマキ衆愚政治の権化と化した民主党政権では何も期待できません。
一応、このコメント覧は検閲コメントで運用なさっている訳です。
まさか小笠原先生が同意しての掲示許可とは思いたくありません。
申し訳有りませんが、障害者を馬鹿にするような比喩や記述を含むエントリーの掲示意図を説明お願いします。
合わせて、348ts氏の今までの記述言語の品質に対して、先生の見解をお聞かせください。
正直、これは許せません。
348ts氏も、何かしらの説明を頂きたくお願い申し上げます。
障害者と障害者の家族を馬鹿にするにも程があると思います。
友人宅がそうですが、私は友人も友人の奥さんも本当に尊敬しています。
一生懸命頑張っているその子も尊敬し、応援しています。
彼は先生に対して従順な読者かも知れませんが、もう少し348ts氏の問題は直視願えないでしょうか。
私は発達障害は先天性の病気としてしかみておりませんし、そもそも差別用語だという認識は私も含め社会一般でないものと認識しています。
単に日本経済の病状の深刻さを現す比喩として使った次第です。
市場経済が障害により発育不全に陥っている様を示す行為と、障害者をバカにする行為を同じものと読解してしまう人はいないとは思っておりましたが、もしいるのであれば、それはそれで完全に私の誤謬です。
もちろん、どんな意図であろうと、用いられただけで不快に思う関係者の方もいるかもしれませんので、該当箇所を削除するのは同意します。
(経済に関してコメントが全体的に無意味だと思えば全部削除してくださっても構いません。
この程度で炎上はないと思いますが、念のため、これらコメントやり取り全部を消してもらってもぜんぜん構いません。)