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きょうのコラム「時鐘」 2010年9月2日
竹山洋さんの連載「かぶきもの」に、前田利家が「親父(おやじ)様(さま)」と呼んだ柴田勝家のことが書かれていた。2人は織田信長軍団の武将と司令官である
竹山さんが脚本を書いた大河ドラマ「利家とまつ」で、2人の強いきずなを知った。身内でなく、赤の他人を「親父様」と呼ぶ。師弟のつながりの強い職人などの世界では、いまも使われる。尊敬と親しみを込めて、ボスをそう呼ぶ。呼ばれる人の度量の大きさも伝わる 美しい言葉だが、耳にする機会は減った。そういえば、この国の指導者に名乗り出た一人は時折、「田中の親父」と口にする。政治の師と仰ぐ元首相のことである。が、当の本人が周囲から同じように「小沢の親父」と呼ばれているのかどうかは、寡聞にして知らない 実の親を指す「オヤジ」は、随分気軽に使われる。なかには場所柄もわきまえず、息子や娘までが平気で口にする。あれは尊敬と親しみでなく、自らの無知と無礼を伝える振る舞いでしかない 徳があるから親父様と呼ばれる、と竹山さんは記す。そうならば、子の乱暴な「オヤジ」ばかりがまかり通る世の中は、何とも味気ない。 |