ブラジルとブラジルのマーケティングあれこれ

ブラジルで日々おこることをマーケッターの目で解説するページ。広告業界の情報も。筆者はブラジル在住22年目のマーケッター。

新幹線か都市交通か

2010-09-01 06:43:23 | 新幹線
先週の『Exame誌』で強烈な新幹線プロジェクト批判が行われていた。

サンパウロ市南部地区に住む家政婦が、朝7時に勤め先のJardim Paulista(中の上の住宅地)に着くには、4時20分に家をでて、バスを三つ乗り継ぐ。そのどれもラッシュで満員。帰るのには4時間かかるという。距離は30キロ。渋滞がなかったら1時間ぐらいのものだろう。

大部分の都市労働者がこんな劣悪な交通・通勤環境にあるのに、200億ドルもの費用をかけて新幹線を作る必要があるのだろうか? もっと優先すべきものがあるのではないか、それは都市の地下鉄、道路、バス網などの公共交通の整備ではないかというのが趣旨である。平均的なブラジル人のとらえ方だと思う。

ルーラとジルマの選挙戦略とも思える強引さで入札条件が発表されたプロジェクトだけに、対抗馬のセーラも優先事項はたにあると主張している。

新幹線プロジェクトは国が費用をだすわけではなく、民間が出資して建設、運営することによって利益をだすというものだ。しかし、政府は落札業者に政府系銀行を通じて最大約110億ドルの融資を年率3%の超低利(ブラジルではただみたいに安い)でだすことを約束しているし、税制恩典も用意してその負担額は34億ドルというから、国民が負担しないというわけではない。

たしかにこういう国家プロジェクトは国の勢いをつけるのに役立つし、直接、間接の雇用の増大も経済を活性化させる。しかし、このサンパウロの最悪の渋滞、地下鉄の込み具合に悩まされていると、こっちの方を何とかしてくれという気になる、実際。

需要、環境規制とライセンスで、実際どれくらいの費用がかかるか読めないといわれているが、三井物産を幹事とする日本連合も政府の後押しがあるので、後には引けないだろう。しかし、日本企業は本音でいえば、もっと現実的な都市のモノレール建設の方に興味があるそうだ。
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