2010-09-01
過度な思い入れを捨てればあっという間に浮上できると思う理由
「土地登記簿にも明治や江戸時代の人いっぱい生きていそう」今回マスコミは「戸籍上200歳が見つかった」とはしゃいでいるが、実は社会上重大なのは、戸籍の不備問題より、土地登記簿所有者の不備の方がよほど「重大」である。
円高が進んでいることもありますが、日本の国土を売却すればアメリカ全土の3つくらい買える計算になることは一般に良く知られています。何故このようになったのかは、ご存知のとおりバブルの際に吊り上げられたまま負の負債として塩漬けになっているからです。そういった、塩付けになっているような資産は日本ではいたるところで存在します。本来なら不良債権なら価格が下がり流通量が上がるはずですが、上がりません。それには理由があります。
流動性があがらないのは『思い入れ』が塩漬けをたくさん作っているから。
思い入れを支えるための仕組みとして、農地は農地法、海には漁業権、山には水利権等があります。さらに、それらの権利を守るために相続税は安く抑えられています。こういった一連の思い入れを大切にする社会構造が流動性を大きく妨げているのです。そのおかげで使われない土地、権利、財産がいたるところに存在する羽目になってしまいました。しかも、それらの権利が絡み合ったり、あちこちに虫食いに存在していたりいなかったりと管理面でも大きな問題が発生してきています。
私的権利が優先されれば管理が出来ない
現在大きな問題となっている戸籍問題にのみならず、私的権利が優先されれば管理がままなりません。そのほかにも交通渋滞の原因も地権者によるところが大きいことはよく知られた事実です。周辺の道路の土地の権利者が譲らず曲りくねり、広い公園を作ろうにもままならない。地価の高いところではインフラ投資や都市開発、住宅開発は難しく、多額の土地買収料を支払ってまで回収できる有望な事業などは限られている。コスト度外視の無駄使いと揶揄される公共事業ぐらいしかありません。すんなり土地活用がなされれば公共事業も無駄使いなど言われずに済むはずなのですが、そうもいきません。思い入れが優先されて価格が釣り上がるのです。土建公共事業の99%が地権者対策費であり、それを税金で支払うことを無駄というのはある意味笑い話です。
規制の問題を作る「思い入れ」
経済的合理性を超えた「思い入れ」が大きな重荷になっています。『思い入れ』を大切にしたい気持ちも分からないこともありませんが、その『思い入れ』のコストが社会を蝕んでいることにも気づかなければなりません。『思い入れを評価して欲しい』と夢を語ることが、他人の夢を奪っていることにもつながっています。残念ながら、昔の人たちの沢山の夢物語が高値どまりの不良債権を生み出しているの現在なのです。
いままでは需要のある土地、権利、財産でさえ利益を生み出さずにいることを私的財産の保護の観点から許容してきました。しかし、経済が成熟し、停滞から下降に入っているときそれでも許容できる余裕はあるのかを考え直す必要は大いにあると思います。成熟した社会は伸びシロがもうあまりありません。だとするなら、思い入れから脱却して規制を解き放ち、より快適で生産性の高いものを作っていかねばなりません。
耕作放棄された土地を解放して道路や公園、そして大規模な商業開発、工場誘致などができるようにすれば、効率的で新しい街作りは驚くほどスムーズに進みます。森林開発を進めれば、雑木林も整備されますし、公園などの憩いの場をつくることもできます。漁業権を開放し、港を開放すればクルーザーやヨットハーバーが出来てマリンスポーツも盛んになることだと思います。確かに諸問題が起こると思いますが、考えるべきはセーフティネットであり、規制で自由を縛り付けることではありません。
生まれ変わるコストを下げていくこと。
流動性を上げなければ今後さらに多くの不良債権が生み出されます。高値のリスクを背負って、新しいものなど生み出せるはずがありません。今後は思い入れや、こだわりを維持するためにはそれなりの対価を払ってもらうようにしていかなければ立ち行かなくなります。固定資産を流動資産に転換させるような策を講じて、あらゆる流動性は改善する必要があると思います。そうすることで、いままで眠っていた資産も、再度生産性のある形で管理し直すことができますし、流動性をあげれば適正値も算出できますし、履歴も増えるので数々の問題も自動的に解決されていきます。
過疎に悩み、沈みゆく地方ほど、なぜそのようになったのかをよく考える必要があります。息を吹き返すためには新しい血液が必要です。流動化を推奨する基準を導入は凝り固まった老衰寸前の状態を活性化してくれます。考えるべきは損得無視の「思い入れ」を過剰に評価せず、しがらみを取り払い、過去から未来へ視点を移していくことです。
必要な人に必要なものを。本来『思い入れ』は未来を生きるためにあるはずですから。
参考文献
コミュニティを問いなおす―つながり・都市・日本社会の未来 (ちくま新書)
- 作者: 広井良典
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/08/08
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