東京都稲城市は31日、市立病院(290床、一條真琴院長)が今秋、患者への医師の説明を録音して電子カルテに記録する「医療現場録音システム」を本格導入すると発表した。インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)の強化が狙いで、カルテに音声記録を組み込むシステムの導入は全国初という。一條院長は「医療事故訴訟が増加する中、医師と患者の溝を埋められれば」と話している。
稲城市立病院は、07年から電子カルテ化を進め、昨年3月に全面移行した。新たに導入する音声記録システムは、一度録音すれば改ざんできない仕組み。既に3月から試行し、7月末までに入院患者延べ23人を対象に、手術などの説明について7~50分の録音を行った。9月以降、機材を増やし、外来診療にも導入する。医師と患者の信頼関係に配慮し、使用は医師の判断に任せる方針。
「現場からの医療改革推進協議会」を設立するなど医療現場再生に向けて提言している東京大医科学研究所の上昌広特任教授は「使い方によっては患者と医師に新たなあつれきを生む危険性がある。医師は患者の理解を深めるために役立たせるという視点で運用を考えるべきだ」と指摘している。【松本惇】
毎日新聞 2010年9月1日 東京朝刊