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きょうの社説 2010年9月1日
◎民主党代表戦告示 高揚感なきリーダー選び
きょう告示の民主党代表選に、これから日本のリーダーを選ぶという高揚感、新しい政
治が始まる期待感がどれだけあるだろうか。参院選大敗の責任を取らず、権力の中心に居座る首相と、自身の「政治とカネ」の問題で、出馬の資格に疑問符が付く前幹事長が「首相の座」に直結する党首のイスを争う。1票を投じる党員・サポーターにとっても悩ましい選択だろう。31日の日経平均株価は300円超暴落し、終値で年初来安値を更新した。前日発表さ れた政府の経済対策、日銀の追加金融緩和が遅きに失し、内容も期待外れだったからだが、その底流には代表選でどちらが勝っても、日本の危機的状況を打開する糸口が見つかりそうもないという一種のあきらめがあるように思える。 参院選直前に唐突に消費税率引き上げを言い出して民主党大敗の原因をつくった菅直人 首相は、本来なら真っ先に責任を取らねばならぬ立場だった。それでも6月に就任したばかりで「首相をころころ代えるのはよくない」という消極的な理由から続投が支持されている。消費税をめぐる論議で露呈した発言の軽さ、円高・株安対策も含めた経済政策への理解不足は、大きな不安材料だろう。 一方、小沢一郎前幹事長は「政治とカネ」の説明責任を果たしておらず、検察審査会の 議決によっては強制起訴の可能性がある。訴追を免れるために出馬したと非難されるのは織り込み済みなのだろうが、やはり割り切れなさは残る。 実力者同士の対決回避に向けた党内調整がぎりぎりまで続いたこともあって、どんな政 治を目指すのか、いかなる政策を実現したいのか、という肝心な点がおろそかになっているのは残念だ。民主党には、「国民の生活が第一」というキャッチフレーズはあっても、党としての理念と基本政策である「綱領」がない。代表選では双方が明確な理念と政策を掲げ、活発な論戦を展開してほしい。 特に小沢前幹事長は、「相談しない」「説明しない」「説得しない」といわれる。国の リーダーを目指すなら、この「三ない主義」を返上すべきだ。
◎七尾で「等伯検定」 郷土の画聖もっと知ろう
七尾市で今秋、小学5、6年生を対象に、地元出身の画聖長谷川等伯をテーマにした初
の子ども検定が開かれる。等伯については、とりわけ能登にいたころになぞに包まれた部分が多いとされるが、現在、北國新聞社による「長谷川等伯ふるさと調査」が、県七尾美術館と七尾市の協力で精力的に行われている。能登時代の等伯の実像に徐々に光が当たる中で、楽しみながら等伯への知識を得る検定が実施されることは、郷土と関連づけて子どもたちの等伯への関心を高めるという意味でも有意義だろう。漫画家の水木しげる氏の出身地である鳥取県境港市では「妖怪検定」を実施し、東京会 場も設置されるなど全国規模で関心を呼んでいる。等伯の愛好者は、水木漫画のようなファン層とは異なるが、何と言っても日本美術史上屈指の巨星だけに、愛好者の層の厚さと広がりは全国レベルだろう。 小学生向けに始まる等伯検定についても、将来的には、中高生や一般市民、さらには全 国のファンにも挑戦の門戸を開いて「等伯博士」をめざすレベルの高い検定の実施も検討してもらいたい。 これまでの等伯ふるさと調査では、七尾市などの寺院に伝わる作品などを検証した。等 伯の原点とも言える養祖父長谷川無分(むぶん)の「涅槃図」なども含めて、七尾の地で活躍した長谷川家の存在感も浮かび上がってきたように、等伯を軸に据えて、多角的な視点から、能登がはぐくんだ文化の質の高さをあらためて気づかされる内容となっている。 調査は、等伯の作品が残る高岡など富山県呉西地区や日蓮宗の寺院が集まる金沢市三谷 地区なども含め6回程度行われ、来年1月に七尾市内でシンポジウムを開き、調査報告書をまとめる。幅広い層が、等伯をより一層身近に感じる好機にしたい。 これまで雲の上の人だった等伯が、故郷能登でも生き生きと活動してきたことが実感で きれば、地元にとっても何よりの「ふるさと自慢」になる。調査の成果と合わせ、今回の検定を、まずは子どもたちの間に定着させたい。
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