「大相撲秋場所番付発表」(30日)
日本相撲協会が30日、大相撲秋場所(9月12日初日、両国国技館)の新番付を発表した。野球賭博に関与し名古屋場所を謹慎休場した幕内6人が十両に、十両4人が幕下に落ち、1922年1月場所に並ぶ最多の9人が入幕した。新入幕は旭南海(32)=大島=と蒼国来(26)=荒汐=の2人。旭南海は史上最も低い西十両12枚目からの昇進で“激動番付”の象徴的存在となった。また、外国出身力士が幕内で19人、十両以上で24人となり、史上最多となった。
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驚きの急上昇だった。「うれしいです。たまたま上がっちゃいました」と照れくさそうに喜んだ。初土俵以来所要105場所は史上2位のスロー昇進、新十両から31場所での入幕も戦後6位タイの遅さ、西十両12枚目からの入幕は十両の地位が明確化されてからは初めて。激動番付の恩恵を一番受けたのが旭南海だった。
先場所は、負け越せば幕下に落ちる可能性もあった。師匠の大島親方(元大関旭国)が「故郷(くに)に帰る手続きもしていた。大して期待していなかった」と振り返るのも冗談には聞こえないほど、がけっぷちに追い込まれていた。それが、フタを開ければ10勝5敗の好成績。地獄から天国へはい上がった。
昇降する番付の枚数は白星と黒星の差が相場となっている。10勝5敗ならば5枚上の十両7枚目が妥当な番付となる。ところが、幕内から雅山ら6人もの力士が十両に降下し、元大関琴光喜の解雇も重なり約2・5倍の13枚分番付を上げた。
周囲も先場所途中までは入幕に半信半疑だった。岐阜県にいる知人からは冗談半分で「幕内に上がったら化粧まわしを作ってあげる」と言われた。“うそから出たまこと”となって、旭南海本人も「まだデザインも知らない」というほどの急ピッチで作製中だ。
来週にも第2子となる長男が誕生予定とあって、秋場所へのモチベーションは高まっている。公式発表から体重は3キロ増えて142キロと、32歳のベテランはまだまだ成長中だ。「その子のためにも頑張りたい。(懸賞で)ミルク代を稼がないと」。幸運で得た幕内の舞台は簡単には手放さない。