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【主張】普天間移設報告 先送りは何も解決しない
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、政府が発表した日米専門家協議の報告書は名護市辺野古周辺に滑走路2本をV字形に配置する案(現行計画)と滑走路を1本とするI字形案を併記するなど、最終決着を11月末の県知事選以降に先送りする姿勢を明示する内容となった。
日米両政府は本来、専門家協議で移設案を一本化し、11月の日米首脳会談で正式決定する段取りだった。にもかかわらず、決着を先送りするのは菅直人政権の怠慢と認識不足といわざるを得ない。日本の安全を守る抑止力の観点からも到底認められない。
12日には名護市議選が控え、政府が明確な方向性と指導力を示さなければ事態はさらに悪化しかねない。日米同盟の信頼と実効性を回復するために首相は期限内決着にあらゆる努力を注ぐべきだ。
報告書は運用上の問題や環境面などから検証を加えた。「埋め立て方式の滑走路建設が適当」と結論づけたのは当然といえる。
しかし、日本側が新たに加えたI字形案の長所は、現行計画と比べて埋め立て面積が少ないことぐらいしかない。新たな環境影響評価が必要となるため、工期は結果的に約9カ月も長びく。また滑走路1本では、米軍運用上のリスクも大きくなると指摘された。
米側が「現行計画が最善かつ最も現実的」と主張する中で、何のためにI字形案を付け加えたのかにも首をかしげざるを得ない。
報告を公表した岡田克也外相は「両案のどちらがいいかは評価していない。沖縄の理解なしに結論を出しても前に進めない」と述べた。だが、そもそも地元に非現実的な「県外移設」をあおり、住民を混乱に陥れたのは鳩山由紀夫前内閣とはいえ、同じ民主党政権ではなかったか。
昨年1年の迷走を反省し、同じ過ちを繰り返さないとするなら、菅首相も岡田外相も地元の変化を座して待つのでなく、率先して住民を説得していく指導力を発揮することが何よりも必要だ。
専門家協議を受けて移設案を一本化する日米外務・防衛閣僚協議(2プラス2)の開催時期も決まっていない。先送りは普天間基地の危険な現状を長期化させ、海兵隊グアム移転も遠のくばかりだ。中国や北朝鮮の挑発的行動に備えるためにも、普天間移設を遅らせてはならない。