「政治無策」が招いた円高、
今こそ大胆な為替介入を!(6/6ページ目)
「非不胎化政策」によってデフレからの脱却も視野に
実際、現状と似たような景気回復局面で円高に見舞われた小泉政権下の2003〜2004年に日本政府は35兆円程度の為替介入を行って円安に誘導、その後の輸出主導による景気拡大を実現し、2007年までの戦後最長の景気拡大を支えました。そのことを考えれば、今回も10兆円単位の為替介入を行う必要があると思います。
日本政府がそうした為替介入を行って円高を是正すれば、日本の輸出企業の採算も改善するはずです。そうなれば、輸出企業が海外で稼いだ外貨建ての利益(正確には決算時に円換算した場合の金額)も増大しますから、経営マインドの改善にもつながり、国内の雇用や賃金、設備投資などにもプラスに働くはずです。
一方、日本政府が大規模な為替介入を行えば、国内のデフレ対策にもつながると考えられます。
一般に、政府が為替介入(円売り・ドル買い)を行う際には、市場に流通する通貨量が急速に増えますから、物価が上昇する(インフレになる)可能性があります。そのため、過去の日本政府による為替介入の際には、円売り・ドル買いで市場に大量に放出された通貨(円)を日本銀行が吸収して物価上昇を防ぐ「不胎化」をするのが通例でした。しかし今回の為替介入では、日銀がそうした通貨(円)を吸収しない「非不胎化」とすることによって物価上昇を誘導できれば、念願のデフレからの脱却も視野に入ってくるのではないでしょうか。
日本政府による為替介入の“効能”は、ほかにもあります。
先ほど述べた小泉政権の為替介入は1ドル105円前後の時でした。その介入によって円相場が1ドル120円程度にまで戻したのですが、なぜか日本政府はその際に買い進めたドルを外国為替資金特別会計(外為特会)として積み上げ、以後もそれを手放そうとしなかったのです。いわゆる「外貨準備」です。その結果、現状のような円相場になると、当時介入で得たドル資産には、1ドル当たり20円程度の為替評価損が発生し、外為特会に大きな「マイナス」が生じているのです(日本経済新聞8月18日付記事によれば、同17日時点の為替評価損は過去最大の約31兆円に達し、積立金から評価損を差し引いた「赤字」も約10兆円に上った、とのこと)。従って、もし日本政府が現状の円レートで介入し、ある程度円安に戻った時点でドル売却に動けば、今度は逆に同水準の為替評価益を得ることができるはずです。
このように、輸出産業の採算・マインド改善による景気対策という面においても、日銀の非不胎化政策によるデフレ対策という面においても、さらには政府の外貨準備のドルの「持ち値」を下げるというという意味においても、いま日本政府が為替介入に動くことには非常に大きなメリットがあると考えられます。あとは、政府の覚悟の問題です。
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