「政治無策」が招いた円高、
今こそ大胆な為替介入を!(4/6ページ目)
ユーロ全面安で9%の実質成長率を達成したドイツ
例えば、中国。中央政府は、巨額の貿易黒字に対する世界的な非難をかわすために人民元レートを弾力化し、米ドルに対する多少の上昇を容認する構えを見せていました。現に、為替レートも一時1ドル6.7人民元台まで上昇していました。ところが、ここにきて1ドル6.8人民元台に戻すなど、再び人民元安の方向に向かいつつあるにようにも見えます。
ご存知の方も多いと思いますが、中国と言えば、2010年4〜6月期の名目GDP(米ドル換算)が日本を抜いて世界2位に浮上しました。下の表(主要国の国内総生産)を見て分かるように、同四半期の中国の実質GDP成長率も前年比プラス10.3%と、同時期の日本(前年比プラス0.4%)と比べものにならないほど高い伸びを示しています。にもかかわらず、ギリシャ危機などに伴う世界経済の減速懸念からでしょうか、最近の為替レートを見る限り、中国政府が再び輸出振興のための人民元安を志向しているようにも思えるのです。
こう言うと、経済の成熟度や政治体制が異なる中国と日本とを一律に比較するのはどうか、といった反論もあるかもしれません。ならば、いずれも日本に近いドイツはどうでしょうか。
再び先ほどの表(主要国の国内総生産)を見てください。2010年4〜6月期の実質GDP成長率は年率換算でプラス9.0%と、先進国の中では抜群に高い伸びを示しています(ちなみに、冒頭で述べたように同時期の日本のそれはプラス0.4%に過ぎません)。
言うまでもなく、ドイツはフランスと並ぶEU(欧州連合)・ユーロ圏の中心国です。2010年4〜6月期と言えば、同5月のギリシャ危機の影響による域内景気の悪化を予想する向きも多かったのですが、ドイツはそうした市場の見方を覆して高い経済成長率を達成したのです。その要因の1つに、自国通貨であるユーロの主要通貨に対する全面安の影響があると思います。冒頭の円相場の表を見て分かるように、ギリシャ危機の前後ではユーロの対円レートが大きく下落しています。他通貨に対しても同様の傾向が見られます。そして、こうしたユーロ全面安によってドイツの輸出が拡大し、そのことが同国のGDPを大幅に押し上げたと考えられるわけです。
要するに、各国とも自国通貨安を黙認・放置することによって、その恩恵(輸出拡大による経済成長)を享受しようとしているわけです。
そうした中で、ひとり日本政府だけが「お人よし」をして円高を放置しておけば、それによって打撃を受けるのは、ほかならぬ日本経済そのものです。繰り返しますが、リーマン・ショック後の日本の景気回復を主導してきたのは輸出産業です。円高によって輸出産業の企業業績が悪化すれば、もはや日本経済を支えるものはなくなります。決して脅かすつもりではありません。しかし日本経済の現状を直視すれば、残念ながら輸出産業に代わる経済の牽引役が今のところ見当たらないのが実情です。
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