「政治無策」が招いた円高、
今こそ大胆な為替介入を!(2/6ページ目)
景気腰折れ懸念がある中で襲ってきた急激な円高
折しも、内閣府は週明けの8月16日に2010年4〜6月期のGDP(国内総生産)速報値を発表しました。
物価変動の影響を除いた実質GDPの成長率は年率換算でプラス0.4%と、前の期の1〜3月期の同プラス4.4%から大きく鈍化しました。また、物価変動の影響を調整しない名目GDPに至っては成長率が年率換算でマイナス3.7%と、前の期の1〜3月期の同プラス5.6%から大幅に悪化しました(右表参照)。
この結果(2010年4〜6月期のGDP速報値)を見る限り、日本経済は目下、回復基調にある景気が一時的に停滞する「踊り場」にあると考えられます。このように、ただでさえ景気腰折れ懸念がある中で、日本経済を急襲したのが円高とそれに伴う株安の同時進行です。日本政府がこのまま事態を放置しておけば、日本経済が景気の「二番底」に陥る可能性がかなりあると言えるでしょう。
実際、日本の輸出産業の中には為替レートを1ドル90円程度に想定している企業も少なくありません。前出の円相場の表を見てください。昨年の今頃、2009年8月の円相場は1ドル94.84円(期中平均)でした。それでも、多くの企業が「大変な円高」ととらえていたのです。その状況を鑑みれば、現状の1ドル85円台はまさに「あり得ない水準」です。日本企業ひいては日本経済のことを考えれば、むしろ「あってはいけないこと」なのです。
日本を代表する、メーカーの中には、1円の円高で利益が数百億円も減る、と言われています。日本企業の現状の想定レートは1米ドル90円、1ユーロは115円程度です。現状の1ドル85円台のレートが続けば、一企業で1000億円以上もの利益が吹き飛ぶことにもなりかねません。以前の業績好調時なら吸収できたでしょうが、業績回復途上のこの時期では1000億円単位の減益は企業にとって非常に大きなインパクトがあります。中小企業でも輸出依存度が高かったり、輸出企業への納入が多かったりする場合には大きなマイナスとなります。
周知のように、リーマン・ショック(2008年9月)後の日本経済の回復を主導してきたのは輸出企業です。その輸出企業のマインドが円高で悪化すれば、国内の雇用・賃金に悪影響が出る恐れもあります。もちろん、設備投資にも悪影響があります。円高による採算悪化で生産拠点の海外移転がさらに進めば、製造業の「国内空洞化」に拍車がかかる恐れもあります。そうなれば、雇用・賃金だけでなく、国内での設備投資も減少するため、日本経済の一層の悪化は避けられません。
また、円高による企業会計上のデメリットも小さくありません。事業のグローバル展開を進めている日本企業の中には、海外に生産施設を設けるなど、外貨建て資産を保有しているところが多いのです。そうした日本企業にとって、為替レートが円高に振れれば、「為替差損」として損益計算書に費用計上するとともに、「評価換算差額金」として、貸借対照表の純資産にも影響が出るのです。実際、前出の円相場の表を見て分かるように、2010年3月は1ドル90.52円(期中平均)という円高ドル安レートであったことから、2010年3月期決算で評価損を計上する日本企業が続出しました。
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