――エンジニアになったきっかけのようなことはありますか?
岡野 15歳のときに友達の影響からHTMLでホームページを作ったのがきっかけになりますね。それ以前にも、小さい頃から父が趣味でN88-BASICをやっていたので、プログラミングに触れる機会はあったんですが、「ちゃんと教えてほしい」とお願いしてもリファレンスを渡されるだけで終わっていました。父としては自分で調べて解決することを学んでほしかったでしょうね。そういえば、年末に帰省したら父はBASICで「数独」を解くプログラムを組んでいました。
高専に入ってホームページを持つようになると、JavaScriptを使うようになったんですが、自分にはインターネットに接続できる環境がなくて情報処理センターのコンピュータでやるしかありませんでした。ところが、学校のパソコンにはVisual Basic(VB)が入っていて、ほかの学科の人たちがVBでプログラミングをやっている。それがとても面白そうで、本を買ってきて挑戦してみたんです。
――学校は情報処理関係だったんですか?
岡野 いえいえ、機械工学科だったんですよ。同じ学科の友達はバイクをいじったりしていましたね。ロボットコンテスト(ロボコン)に出たこともあったのですが、当時は電子制御などもないころでソフトウェアとは無縁。ロボコンの成績も在学中は良くなかったですね。
――プログラミングはまったくの独学なんですね。
岡野 そうですね。始めて3カ月ぐらいでHTMLのカラーコードを出力するツールができたので、試しにVectorで公開してみた。すると、自分の作ったものに反応がある。それがうれしくて、新しいものを作ろう、とどんどんプログラミングをするようになっていきました。
――ダウンロード数も結構あった?
岡野 一番多かったのはファイル分割ソフト「ファイル破断+」で、Vectorのカテゴリ1位になったはずです。いまだに月間8000~9000のペースでダウンロードされていて、累計で60万ダウンロードほどになっています。
――そのとき16、17歳ですよね。
岡野 そうですね。ちょうど小さなツールがたくさん出てきていた頃で、統合アーカイバプロジェクトのソースを読んで解析したりしていたんですが、どうもDLLのロードなどVBに限界を感じるようになってきた。そこからDelphiに移っていきました。そういえばHTMLに少し触れて以来、その後はVB、DelphiとWindowsアプリばかり作っていましたね。
Vectorでソフトウェアの公開を始めた当時はみんな学校のパソコンで作っていたんですけど、データを持ち出す手段がフロッピーしかなくてきつかった。それで頑張ってバイトして初めて自分のパソコンを手に入れました。
――岡野さんにとってコンピュータというのはどんなものだったんですか?
岡野 コンピュータはいまだにゲーム機って感じかな。ネットゲームをよくやるせいか、コンピュータに向かう理由の半分ぐらいはゲームをやるため。今はもうWindowsである必要はないんですが、それでもWindowsを使っているのはゲームをやるためなんですよ(笑)。
――ゲームを作ることもあったんですか?
岡野 それはなかったですね。挑戦したことはあるんですが、ゲームを作るのは難しいというか、先が長いので断念してしまいました。
Webプログラミングも実はHTMLを触り始めたころに一度、挫折しているんですよ。ホームページを作ったら掲示板を設置したくなってPerlにチャレンジしたんですが、その当時はサーバサイドの理解がなかったので、挑戦しても動かないし、動かし方もまったく分からない。
――北海道の大学を出て札幌で就職されています。
岡野 大学での研究はたいしたことをやっていないのですが、Javaをやったり、Smalltalkをやったり。北海道はとにかく田舎でしたね。
就職したのは、サーバも設置するし受託でシステムも作るというような地場の会社。入社したその日に「これからRailsやるから、勉強しといてね」といきなり本を渡されたのを覚えています。小さな会社のホームページを作成する程度の案件だったのですが、Railsを使ったり、WordPressを改造するためにPHPを使ったり、いろいろ経験できました。
勉強会に参加するようになったのも札幌時代です。主に「Ruby札幌」が中心だったのですが、趣味でDjangoフレームワークを使うようになって、勉強会のために東京に行くこともありました。札幌で面白いのは、コミュニティの数とエンジニアの人数が少ないこともあって参加するといつも同じメンバーで、仲良くなりやすいところですね。
PythonとDjangoで開発するようになったのも東京に出てきてからです。
――ご自身のホームページもDjangoで動いているみたいですね。
岡野 自分のホームページの変遷はすごいんですよ。最初はホスティングサービスにHTMLを置いただけのところから始まり、自宅サーバに挑戦したくなってWindows XPにApacheを入れて動かしたりもしました。しかもブログはDelphiでCGIを作っているというもの。Ajaxを使ってはいたんですが、リクエスト先のURLは直接exeの実行ファイルという。こんなことをやっている人はあまりいないと思いますよ(笑)
その後、大学でZopeベースのCMS「Plone」に触れる機会があってインストールしてみたんですが、正直カスタマイズが難しかった。そこで、同じPythonで何か別の物はないかなと探したらDjangoを見つけた。今の自分のホームページはAmazon EC2上で動かしているのですが、ホスティング用のアプリケーションサーバは自分で書いています。Django でアプリケーションを動かすのはいろいろ設定が面倒なので、それを楽にしようとソフトウェアを作ってみたんです。
――それもオープンソースになっているんですか?
岡野 ドキュメントもないですけど、一応公開はしています。昔からソフトウェアを作っては公開するということを行ってきているもので。いまだに使われているものもあれば、無かったことにしたいというものもあるという感じですけど。
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