県立三室病院の臨床研修医が過労死し、遺族補償一時金の算定方法を巡って争われた訴訟の判決で、奈良地裁は「未払いの時間外手当も算入すべき」と判断した。払っていない手当を払ったものとして算定するのは一見、矛盾しているように見える。
そもそも、県が研修医に時間外手当を払っていないことが問題だ。在院時間を示すポケットベルの受け渡し簿によると、研修医は長時間の在院に加え、早朝や深夜に急な呼び出しを受けていたとみられる。
医師不足の中、研修医は多忙な勤務をしているのに、「研修だから時間外勤務ではない」と言うのは行政の論理。司法が当たり前の判断をしたと言えるだろう。(高瀬)
毎日新聞 2010年8月31日 地方版